シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

495 星暦554年 桃の月 5日~8日 どうしようか?(2)

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「取り敢えず、どの程度強力に改造できるのか試してみないか?
どっかの悪人が魔術師を誘拐して長期的に魔力を搾取するようなことに使える程に強力になっちまうんだったら、危険すぎるから世の中に出さない方が良いと思う。
どれだけ頑張ってもそこまでいかないんだったら魔力探知機とかちょっとした魔石充填機として売り出してみようぜ」
ちょっと考えてから、提案した。

現時点で、この魔力吸収の魔術回路にたいする出費は俺が出したものだ。
だから俺からこの魔術回路を破棄する条件をはっきりと提案しておくべきだろう。

「そうだな。
回り回って我々が痛い目に遭いかねないような魔道具は開発しないに越したことはない」
アレクが頷いた。

「僕たちが頑張っても出来なかったことを他の誰かがやっちゃう可能性は絶対にないとは言えないけど、取り敢えず僕たち程度でも危険な物が開発できちゃうんだったら確かにこれは世の中に出さない方が良いよね」
シャルロもクッキーに手を伸ばしながら合意した。

こないだの転移箱だってアイディアを出したら比較的短期間であっさりとちゃんと実用的な物が開発されていたのだ。

今現在に魔術師を無力化して無理矢理問答無用に魔力源にするような魔道具が無いからと言って、アイディアを提供しちゃったら誰かがそれを作らないとは限らない。

・・・そう考えると俺達が作れなくても危険性はあるんだから、作らない方が良いかもなんだけどね。
でも、折角金貨10枚も出して買った魔道具だし。

取り敢えず、精一杯頑張って駄目だったら大丈夫だろうと考えて続けちまおう!

◆◆◆◆

「魔石1個だね」
「こちらは魔石1個半」

魔術回路をちょくちょく弄ってみたり、小さいのを複数繋げてみたり、一つの魔術回路を大きくしてみたり、同じ魔術回路でも材料を変えたりと何通りも作ってみたのの効果を確認するためにそれぞれの魔術回路の上に1刻ほど座って作業をしながら魔石への魔力の充填度を確認していた。

「こっちの方が良さげだな。
・・・だけどさ、考えてみたらシャルロと俺やアレクじゃあ垂れ流している魔力の量が違うぞ?」
結果を記録しながら、ふと気が付いたことを口にする。

寝ている時ならまだしも、魔術師ならば起きている時は魔力は垂れ流さずに基本的に自分の内部に押しとどめる。
まあ、普段も特に魔力を使う用事がある時以外はそれ程真剣に魔力を止めている訳では無いし、今は垂れ流した魔力の吸収を確認しているので意図的にそこら辺は緩めているが・・・各々の垂れ流している量は違っている。

「うげ。
となると、この数日間やってきたのをもう一度確認し直し?!」
シャルロがため息をつきながらソファに身を投げ出した。

「私が確認した物、シャルロが確認した物、ウィルが確認した物の中での比較結果は使えるはずだから、それぞれの確かめた試作品の中で一番良かったのをもう一度シャルロで確認すれば良い。
これからの確認作業は全部シャルロがやることになるから確認作業に掛る時間が長くなるが、しょうがない」
アレクがため息をつきながら記録を取った紙束を取り上げて詳細を確認し始めた。

「あ~も~!
もっと効率よく確認出来ないかなぁ?!
1刻ずつ確認していたんじゃあ時間が掛りすぎだよ~~~!!」
シャルロがため息をつきながらバタバタと手足を振り回しはじめた。
どうやら飽きてきたようだ。

「じゃあ、頑張って放出する魔力の量を増やしてみろ。
ちゃんと同じ量だけ垂れ流さないと駄目だぞ」
漏れる魔力の量を削る鍛錬っていうのは魔術学院でやったが、垂れ流す量を多くすると言うのはやらないからなぁ。

「ふんぬ~~!!」
シャルロが唸った。

「・・・まるでトイレで踏ん張っているようだな、シャルロ。
しかも、放出している魔力の量は増えたものの一定量では無いし」
暫し視ていたが、ため息をついてダメ出しする。

「だめ?」
シャルロが力むのを止めて力を抜いた。

「無理に放出しようとしても出力が一定で無いなら意味が無いから、そちらは諦めよう。
充填する魔石をもっと小さい物にして、半刻ずつ充填してどうなるか確認していけば良いだろう」
ため息をつきながらアレクが提案した。

魔力の吸収と充填というある意味受け身な機能だから、確認作業に時間が掛るなぁ・・・。
どの魔術回路も垂れ流しているの以上の魔力を吸収していないっぽいのは有り難いが。

これだけ面倒な作業をしていて、売れなかったら泣くぞ・・・。


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地道な作業が続いてウィル君もちょっと飽きてきてますw

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