シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

492 星暦554年 桃の月 2日 相談?(4)

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「態々足を運んでいただきまして、ありがとうございます。
こちらが先日話しておりました不思議な感覚のする魔道具なんですの」
俺にお茶を勧めたパラティアが、箱を机の上に置いた。

ちゃんとお茶の準備をしておくなんて、流石だな。
今回は俺が呼び出したのでは無く俺を呼び出したからか、前もって手配していたようだ。

会議室に行く前に食堂に寄ってお茶を貰ってこようとしたら『もうちゃんと部屋に準備してあるよ』とおばちゃんに言われたのには驚いたぜ。
やっぱり女性だとこういうことを考えるように躾けられているんかね?
少なくとも、俺が学生の頃は誰かと会うのにお茶を準備しなきゃいけないなんて思い浮かびもしなかったぜ。

「引退して暇になったのもあって、父が何人かを遠方へ送り出してアファル王国では見かけないような魔道具を入手させているんです。
取り敢えず私が研究して何か役に立てばよし、特に必要ないならアファル王国で売れば珍しいと言うことでそれなりの値段で売れるだろうって・・・。
まだ魔道具作成の授業も受けていないので、魔道具を受け取ってもそれが珍しいかすら良く分からないのですが、お陰で色々と魔道具を目にする機会は増えました」
肩を竦めながらパラティアが説明した。

あれだけ罰金を払ってもそんなことに掛ける金があるなんて、一体どれだけ儲けていたんだ、ガルヴァ・サリエル・・・。

しかもちょっと親馬鹿?
まだ魔道具作成の授業すら受けてなくて興味があるかどうかすら分からないのに、今から魔道具を集めてどうするんだ・・・。

「東の大陸の骨董市には、偽物も多かったが中にはちょっと洗脳効果があるようなヤバい魔道具もあった。
何をするのか分からない魔道具はあまり素人が手当たり次第に手にしない方が無難だぞ?
確かに遠方の魔道具っていうのはこの国では知られていない魔術回路なんかもあるから研究するのは面白いかも知れないが」
関心があるならな。

「そうですわね。
まだ魔道具の解析や開発に私が興味があるか、才能があるかも不明なので取り敢えずは全て倉庫に入れて、分かることだけでも記録するようにしているのですが・・・何かこれだけはちょっと不思議な感覚がありましたの。
しかも専用の箱に入っていて、使用時期以外は箱から出すべからずという注意書きまであって。
ちょっと心配になりますでしょう?」
パラティアがお茶を注ぎながら小さく顔をしかめて見せた。

ははは。
確かにそれはちょっと不安になるわな。

机の上に置かれた箱を心眼《サイト》で観察する。
箱その物に魔力を遮断する効果がある。
不思議な感覚がすると言うことなので、変に周りに害を及ぼさないように魔力を遮断しているのかも知れないが・・・中を視れないのってかなり不安なんだよねぇ。

そうは言っても流石に自分がスポンサーとなっているガキに相談を受けているのに肝心の魔道具が中身が視えない箱に入っているからさよならすると云う訳にはいかない。

しょうがないので何かが飛び出してきても避けられるようにさりげなく身構えながら、箱を開けてみた。

・・・うん。
当然の事ながら、何も飛び出してこなかった。

中に入っていたのは自鳴琴《オルゴール》に見えるような小箱型の魔道具。
魔力を遮断する箱の蓋が開かれたことで、魔道具が再起動し始めたのか少しずつ魔力が流れるのが視える。

・・・何をやっているんだ、この魔道具は?
周囲から魔力を吸収するタイプの魔道具というのは確かに珍しいので、それが『不思議な感覚』とパラティアに感じさせたのかも知れないが・・・吸収した魔力って大抵は光を発するとかファンを動かすとかいった結果を起こすことに使われる。
もしくは固定化の術を継続させたり。

だが、この魔道具は特に何をしているようにも視えない。

「ちなみに、この魔道具は何をするんだ?」
箱を開ける前に聞くべきだったな。

「なんでも、嵐を弱める魔道具と言われているそうです。
昔、北の方で使われていた魔道具だとかですが、最近は廃れて殆ど新しく作られていないそうです。
父の手の者が骨董品屋で見つけて面白そうだと購入してきましたの」
パラティアが答えた。

嵐を弱める魔道具?
魔術師が何人かで協力してもそんな力は無いぞ?
精霊の助けでも無ければ、天候を操るのはほぼ不可能だ。
このちっぽけな魔道具でそれが出来るとは到底思えないが・・・。



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ちょっと親馬鹿に隠し財産を使いまくっているガルヴァ・サリエルでしたw
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