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卒業後
467 星暦554年 緑の月 29日 俺達専用の屋形船(15)
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「へぇぇ。
それなりに早く動くじゃねえか」
家の設計事務所に屋敷船の機能やデザインを確認してもらい、パディン夫人の意見や俺達の個人的に欲しいと思った修正も反映させた設計図が出来上がったので船大工のおっさんに船の建造を頼むことになった。
ついでに俺達の小型船の最終チェックも海でやってみることになったのだが・・・船大工のおっさんは屋敷船よりも魔道具を使った小型船に興味があるのか、一緒についてきた。
そこでシャルロとアレクが小型船を動かしているのを俺と船大工のおっさんが岸から見ているのだが・・・おっさんも感心したようだ。
外輪の数を増やそうとすると設置できるスペースの問題で車輪が小さくなってしまうため、結局4つの車輪を付けるのが小型の外輪船の動力としては一番効率が高いことが分かった。
シャルロのファンを使った推進機もファンのサイズを大きくしたり小さくしたりと何通りか試してみたのだが、却って大きくし過ぎると出力が下がってしまったり羽根が折れてしまったりである程度以上は効率が上がらなかった。
で。
俺達が作れる最高の効率でも相変わらず満足出来る速度が出せなかったので、外輪とファンの両方を小型船に付けてしまうことにしたのだ。
乗り降りできるだけの空間さえちゃんと確保できれば、別に両方を一つの船に付けてはいけない理由はない・・・はず。
と言うことで最終的に一番効率的になったはずの複合型小型船を海で試運転しているのだ。
俺達の家の近所の貯水池で試した際には問題無かったが、波のある海で動かしたら何か問題があるかも知れないからね。
一応転覆しても大丈夫なように蒼流に傍で待機してもらい、シャルロが動かしている。
「これだったら島の周りを周回したりするのにも使えそうだな」
小型船が港を出て行こうとしていた帆船を追い越すと、帆船の船員が目を丸くして甲板から身を乗り出してシャルロ達を見ている。
まあ、港内で帆を絞ってゆっくりと動いている船だからね。
追い越しても不思議はない。
魔石に使用量はそこそこ大きいので、シャルロか俺がいる時は蒼流か清早に頼むことになるだろうが、取り敢えず俺やシャルロが居なくても適当に動き回るのにはこれで何とかなりそうだ。
「ついでにあれで普通の帆船を港内で引っ張れるかも試してみたいんだが、試せる船は無いかな?」
先日、フェルダン・ダルムが風が無い時でも港内で船を動かせるようになったら凄く利便性が高まると言っていたからな。
そこそこの日数をこの小型船の開発にかけたので、もしも需要があるなら売り込みたい。
それが終わったら転移箱に取りかかる予定だ。
普通の家ですら建てるのに半年ぐらい掛るのだ。
屋敷船という変則的な物となればもっと時間が掛ってもおかしくない。
暫くはもう港に来る予定はないので、曳舟として使えるのかの確認も今日終わらせてしまいたい。
「どうせならダルム商会に行ったらどうだ?直ぐに船を提供してくれるだろうし、使えるようだったらその場で注文してくれるんじゃないか?」
船大工のおっさんが答えた。
そうだな。
考えてみたら、小型の交易船を動かせてもダルム商会で使っているような大型交易船を動かせなければあまり意味が無いだろうし。
「うっし。
試してみよう」
◆◆◆◆
流石に船を使った交易に強い商会だけあって、船大工のおっさんに案内されたダルム商会の港湾事務所は王都の中心部からの便も良く、港に入った大型船も泊めやすい、かなり便利な所にあった。
どうせならもう少し端っこにあった方がちんたら船を引きずって動かせるかテストをしていても邪魔にならないんだけどな。
まあしょうが無い。
誰かが文句を言ってきたらフェルダンが対応してくれるだろう。
事務所に居たフェルダンは俺達が魔道具を使った小型船で交易船を動かせるのか試してみたいと言ったら、即座に仕事を投げ出してついてきた。
良いんかね?
まあ、一緒に仕事をしていたおっさんも付いてきているのでそれなりにダルム商会に取って興味のある話のようだが。
「行くよ~」
シャルロが声を掛け、小型船の魔道具を起動した。
最初に外輪の方を動かし、最後に後部につけてあるファンを動かす。
外輪を起動したら小型船が動き出し、ダルム商会の大型船に繋いでいる縄がピンと引っ張られて真っ直ぐになった。
後部の魔道具も起動したら小型船が更に早く動き出して縄が海から持ち上がって宙に姿を現し・・・
メキメキメキ!!!
「げ!!」
縄が結びつけられていた小型船の後壁が引きちぎれた。
1本の縄だけで大きな交易船を引っ張れるのかと密かに心配していたのだが、どうやら俺の太股ぐらいの太さのある縄よりも、適当に買った中古の小型船の後壁の方が脆かったらしい。
「凄いじゃ無いか!!
船を壊せるほどの出力が出るのなら、曳舟として十分使える可能性が高いよ!!!!
是非、もっと頑丈な船で作らせてくれたまえ!!!」
ぶんぶんと俺の手を握って振り回しながら、フェルダンが言ってきた。
まあ、そちらで造るんだったら好きにやってくれ。
俺達は・・・自分達の小型船をもう少し丈夫に作り直そう。
船って動力が強すぎると船体が壊れるんだね・・・。
【後書き】
取り敢えずこれで魔道式小型船は完成~。
曳舟としての完成はダルム商会に頑張って貰う予定ですw
それなりに早く動くじゃねえか」
家の設計事務所に屋敷船の機能やデザインを確認してもらい、パディン夫人の意見や俺達の個人的に欲しいと思った修正も反映させた設計図が出来上がったので船大工のおっさんに船の建造を頼むことになった。
ついでに俺達の小型船の最終チェックも海でやってみることになったのだが・・・船大工のおっさんは屋敷船よりも魔道具を使った小型船に興味があるのか、一緒についてきた。
そこでシャルロとアレクが小型船を動かしているのを俺と船大工のおっさんが岸から見ているのだが・・・おっさんも感心したようだ。
外輪の数を増やそうとすると設置できるスペースの問題で車輪が小さくなってしまうため、結局4つの車輪を付けるのが小型の外輪船の動力としては一番効率が高いことが分かった。
シャルロのファンを使った推進機もファンのサイズを大きくしたり小さくしたりと何通りか試してみたのだが、却って大きくし過ぎると出力が下がってしまったり羽根が折れてしまったりである程度以上は効率が上がらなかった。
で。
俺達が作れる最高の効率でも相変わらず満足出来る速度が出せなかったので、外輪とファンの両方を小型船に付けてしまうことにしたのだ。
乗り降りできるだけの空間さえちゃんと確保できれば、別に両方を一つの船に付けてはいけない理由はない・・・はず。
と言うことで最終的に一番効率的になったはずの複合型小型船を海で試運転しているのだ。
俺達の家の近所の貯水池で試した際には問題無かったが、波のある海で動かしたら何か問題があるかも知れないからね。
一応転覆しても大丈夫なように蒼流に傍で待機してもらい、シャルロが動かしている。
「これだったら島の周りを周回したりするのにも使えそうだな」
小型船が港を出て行こうとしていた帆船を追い越すと、帆船の船員が目を丸くして甲板から身を乗り出してシャルロ達を見ている。
まあ、港内で帆を絞ってゆっくりと動いている船だからね。
追い越しても不思議はない。
魔石に使用量はそこそこ大きいので、シャルロか俺がいる時は蒼流か清早に頼むことになるだろうが、取り敢えず俺やシャルロが居なくても適当に動き回るのにはこれで何とかなりそうだ。
「ついでにあれで普通の帆船を港内で引っ張れるかも試してみたいんだが、試せる船は無いかな?」
先日、フェルダン・ダルムが風が無い時でも港内で船を動かせるようになったら凄く利便性が高まると言っていたからな。
そこそこの日数をこの小型船の開発にかけたので、もしも需要があるなら売り込みたい。
それが終わったら転移箱に取りかかる予定だ。
普通の家ですら建てるのに半年ぐらい掛るのだ。
屋敷船という変則的な物となればもっと時間が掛ってもおかしくない。
暫くはもう港に来る予定はないので、曳舟として使えるのかの確認も今日終わらせてしまいたい。
「どうせならダルム商会に行ったらどうだ?直ぐに船を提供してくれるだろうし、使えるようだったらその場で注文してくれるんじゃないか?」
船大工のおっさんが答えた。
そうだな。
考えてみたら、小型の交易船を動かせてもダルム商会で使っているような大型交易船を動かせなければあまり意味が無いだろうし。
「うっし。
試してみよう」
◆◆◆◆
流石に船を使った交易に強い商会だけあって、船大工のおっさんに案内されたダルム商会の港湾事務所は王都の中心部からの便も良く、港に入った大型船も泊めやすい、かなり便利な所にあった。
どうせならもう少し端っこにあった方がちんたら船を引きずって動かせるかテストをしていても邪魔にならないんだけどな。
まあしょうが無い。
誰かが文句を言ってきたらフェルダンが対応してくれるだろう。
事務所に居たフェルダンは俺達が魔道具を使った小型船で交易船を動かせるのか試してみたいと言ったら、即座に仕事を投げ出してついてきた。
良いんかね?
まあ、一緒に仕事をしていたおっさんも付いてきているのでそれなりにダルム商会に取って興味のある話のようだが。
「行くよ~」
シャルロが声を掛け、小型船の魔道具を起動した。
最初に外輪の方を動かし、最後に後部につけてあるファンを動かす。
外輪を起動したら小型船が動き出し、ダルム商会の大型船に繋いでいる縄がピンと引っ張られて真っ直ぐになった。
後部の魔道具も起動したら小型船が更に早く動き出して縄が海から持ち上がって宙に姿を現し・・・
メキメキメキ!!!
「げ!!」
縄が結びつけられていた小型船の後壁が引きちぎれた。
1本の縄だけで大きな交易船を引っ張れるのかと密かに心配していたのだが、どうやら俺の太股ぐらいの太さのある縄よりも、適当に買った中古の小型船の後壁の方が脆かったらしい。
「凄いじゃ無いか!!
船を壊せるほどの出力が出るのなら、曳舟として十分使える可能性が高いよ!!!!
是非、もっと頑丈な船で作らせてくれたまえ!!!」
ぶんぶんと俺の手を握って振り回しながら、フェルダンが言ってきた。
まあ、そちらで造るんだったら好きにやってくれ。
俺達は・・・自分達の小型船をもう少し丈夫に作り直そう。
船って動力が強すぎると船体が壊れるんだね・・・。
【後書き】
取り敢えずこれで魔道式小型船は完成~。
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