458 / 1,038
卒業後
457 星暦554年 緑の月 7日 俺達専用の屋形船(5)
しおりを挟む
>>サイド パディン夫人
「海に浮かぶ家、ですか?」
暫く新しく発見されたとか云う補給島の開拓に出かけていた雇い主3人組だが、やっと帰ってきたと思ったら、何やら不思議な質問をされた。
海に浮かぶ屋敷の船を造りたいので、家を造る事に関して私の意見を聞きたい、とのこと。
「そう~。
年に2、3回はパストン島に行くと思うんだけど、その際に一々転移門を使って東の大陸に行って、その後あちらで船を探して、島に行って宿を探して泊まるよりも、僕に加護をくれている水の精霊の蒼流やウィルの清早に船を動かして貰う方が同じぐらいの時間で着く上に、居心地のいい自分の部屋で過ごせるからいいと思うんだ。
ただまあ、掃除とかお料理とかを頼まなきゃいけないんで、パディン夫人に出来れば一緒に来てもらいたいな~って。
時間が取れそうなら旦那さんも一緒に来てくれたら、旦那さんの食事を心配しなくていいし、向こうで散歩とか楽しめると思うよ~?
でも、旦那さんの都合が悪くって、夜にパディン夫人が家に帰れないと困るっていうんだったら短期にその時だけ臨時に人を雇うつもりだけど。
どちらにせよ、新しい別荘みたいなのを建てるような感じで考えてくれたらいいんだ。
で、どんな部屋を含めておくべきか、家の面倒を見るプロのパディン夫人に意見を聞きたいと思って」
シャルロ君が焼き立てのクッキーが冷めるのを待ちながら説明してくれた。
台所でお菓子を焼いていると『味見』にシャルロ君が立候補に現れるのはいつものことなんだけど、今回の質問はちょっと想定外だわね。
「別荘、ですか。
どんな家を現時点では想定しているんです?」
火傷しないぐらいに冷めたクッキーを一つ手に取りながら、確認する。
「とりあえず、僕たち個人の寝室が3つでしょ、後は客室なんだけど・・・ウィルとアレクは1つで良いと言っているんだ。
僕は4つぐらいあった方が良いかとも思ったんだけどね~。
そんでもって居間。
これも、ウィルとアレクは1つで良いって言っているんだけど、客室4つなら居間も2つの方が良いかな~って思っているんだよねぇ。
後はお風呂場2つにトイレ3つ、台所に食堂(ダイニングルーム)、パディン夫人用の部屋、工房、貨物室ってところかな?」
クッキーを受け取りながらシャルロ君が答えた。
別荘に客室4つとは、なんとも贅沢なこと。
この家にだってめったに誰も遊びに来ないのに、その別荘用の船の上に造った家にそんなにお客様があるのかしら?
「シャルロさんのご家族に、どのくらいの頻度でその屋敷船を使ってパストン島に遊びに行く予定があるのか、聞いてみたらどうです?
そうしたら客室の数もおのずと決まりますでしょう?
客室の数から居間やトイレがいくつ必要になるか決まるでしょうし。
本当に客室を4つつけるなら私一人ではちょっと大変なので、メイドを一人雇っていただきたいですね。
あと、船の中にあるという話ですが、水や食料はどうするんです?」
ぽんっと手を叩いて、シャルロ君がポケットから紙を取り出して何やら書き込み始めた。
「パントリーは大きめにしないとね。
パストン島ではまだしばらくの間は食糧を余剰生産できないと思うから、最初から積んでいく必要があるよね。
貨物室に入れるんじゃあちょっと料理の際に出し入れが大変だから、ちゃんと台所の隣に大き目なパントリーを作っておこう。
水に関してはこないだ発明した魔道具を使うから、海から汲んできて魔道具でろ過して使えばいいだけだからそれ程場所は取らないと思うよ。
というか、僕かウィルがいたらすぐに真水を出せるし。
でもまあ、海から汲んだ水なり、僕たちが出した水なりを溜めておく場所はある程度は必要だよね。
後は各寝室や客室の傍に顔を洗う場所を作っておく方が良いよね~。
ふむふむ。
じゃあ、まずは僕の家族にどのくらい遊びに来るか、聞いてくるね!」
そう言うと、クッキーを数枚つかんでシャルロ君は出ていってしまった。
「おやおや、忙しないですねぇ。
あの調子だったら、船のキッチンにもオーブンを設置してもらった方が良さそうけど・・・出来るのかしら?」
【後書き】
船大工とか家大工の相談場面も書こうと思ったのですが、また今度になりましたw
「海に浮かぶ家、ですか?」
暫く新しく発見されたとか云う補給島の開拓に出かけていた雇い主3人組だが、やっと帰ってきたと思ったら、何やら不思議な質問をされた。
海に浮かぶ屋敷の船を造りたいので、家を造る事に関して私の意見を聞きたい、とのこと。
「そう~。
年に2、3回はパストン島に行くと思うんだけど、その際に一々転移門を使って東の大陸に行って、その後あちらで船を探して、島に行って宿を探して泊まるよりも、僕に加護をくれている水の精霊の蒼流やウィルの清早に船を動かして貰う方が同じぐらいの時間で着く上に、居心地のいい自分の部屋で過ごせるからいいと思うんだ。
ただまあ、掃除とかお料理とかを頼まなきゃいけないんで、パディン夫人に出来れば一緒に来てもらいたいな~って。
時間が取れそうなら旦那さんも一緒に来てくれたら、旦那さんの食事を心配しなくていいし、向こうで散歩とか楽しめると思うよ~?
でも、旦那さんの都合が悪くって、夜にパディン夫人が家に帰れないと困るっていうんだったら短期にその時だけ臨時に人を雇うつもりだけど。
どちらにせよ、新しい別荘みたいなのを建てるような感じで考えてくれたらいいんだ。
で、どんな部屋を含めておくべきか、家の面倒を見るプロのパディン夫人に意見を聞きたいと思って」
シャルロ君が焼き立てのクッキーが冷めるのを待ちながら説明してくれた。
台所でお菓子を焼いていると『味見』にシャルロ君が立候補に現れるのはいつものことなんだけど、今回の質問はちょっと想定外だわね。
「別荘、ですか。
どんな家を現時点では想定しているんです?」
火傷しないぐらいに冷めたクッキーを一つ手に取りながら、確認する。
「とりあえず、僕たち個人の寝室が3つでしょ、後は客室なんだけど・・・ウィルとアレクは1つで良いと言っているんだ。
僕は4つぐらいあった方が良いかとも思ったんだけどね~。
そんでもって居間。
これも、ウィルとアレクは1つで良いって言っているんだけど、客室4つなら居間も2つの方が良いかな~って思っているんだよねぇ。
後はお風呂場2つにトイレ3つ、台所に食堂(ダイニングルーム)、パディン夫人用の部屋、工房、貨物室ってところかな?」
クッキーを受け取りながらシャルロ君が答えた。
別荘に客室4つとは、なんとも贅沢なこと。
この家にだってめったに誰も遊びに来ないのに、その別荘用の船の上に造った家にそんなにお客様があるのかしら?
「シャルロさんのご家族に、どのくらいの頻度でその屋敷船を使ってパストン島に遊びに行く予定があるのか、聞いてみたらどうです?
そうしたら客室の数もおのずと決まりますでしょう?
客室の数から居間やトイレがいくつ必要になるか決まるでしょうし。
本当に客室を4つつけるなら私一人ではちょっと大変なので、メイドを一人雇っていただきたいですね。
あと、船の中にあるという話ですが、水や食料はどうするんです?」
ぽんっと手を叩いて、シャルロ君がポケットから紙を取り出して何やら書き込み始めた。
「パントリーは大きめにしないとね。
パストン島ではまだしばらくの間は食糧を余剰生産できないと思うから、最初から積んでいく必要があるよね。
貨物室に入れるんじゃあちょっと料理の際に出し入れが大変だから、ちゃんと台所の隣に大き目なパントリーを作っておこう。
水に関してはこないだ発明した魔道具を使うから、海から汲んできて魔道具でろ過して使えばいいだけだからそれ程場所は取らないと思うよ。
というか、僕かウィルがいたらすぐに真水を出せるし。
でもまあ、海から汲んだ水なり、僕たちが出した水なりを溜めておく場所はある程度は必要だよね。
後は各寝室や客室の傍に顔を洗う場所を作っておく方が良いよね~。
ふむふむ。
じゃあ、まずは僕の家族にどのくらい遊びに来るか、聞いてくるね!」
そう言うと、クッキーを数枚つかんでシャルロ君は出ていってしまった。
「おやおや、忙しないですねぇ。
あの調子だったら、船のキッチンにもオーブンを設置してもらった方が良さそうけど・・・出来るのかしら?」
【後書き】
船大工とか家大工の相談場面も書こうと思ったのですが、また今度になりましたw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる