437 / 1,038
卒業後
436 星暦554年 紺の月 26日 新しいことだらけの開拓事業(8)
しおりを挟む
結局、東の大陸の領事館にたどり着いたのは夜に近かった。
考えてみたら、日が暮れてから到着した場合、町の明かりで街そのものにはたどりつけても領事館を探すのは至難の業だったな。
完全に暗くなる前にたどり着けて良かった。
領事館の庭に空滑機《グライダー》を降ろして物置に運び込み、魔石を外して領事館の中へと足を進める。
一応出発する前に連絡は入れてあるので(そうでないと庭へ着陸した瞬間に攻撃されかねない)、部屋も準備してくれているはずだ。
・・・考えてみたら、この領事館の防犯ってどうなっているんだ?
別に上空に結界が張ってある様子はなかったが。
まあ、王城じゃないんだ。上空に防御結界や探知結界なんぞ普通は張らないか。
だとしたら連絡なしでも来れたか?
「そう言えば明日からケレナが来るんだけど、シェイラも来るの?
時間が合いそうだったら二人合わせて転移門を動かしても良いよ?」
部屋に案内されながらシャルロが言った。
「え、ケレナが来るのか?
いつの間にそんな手配をしたんだ?」
流石に偶然とは思えないが・・・休みを言い渡された後、俺が固定式通信機を領事館との連絡に使っていたのにケレナと連絡を取る暇なんてあったのか?
「ケレナといつでも話せるように、携帯用の通信機を二人用に調整したのを作ったからそれで連絡したんだ。
普通の携帯用通信機じゃあアファル王国まで通信を届けられないけど、ケレナとだけ話せればいいんだから、大き目の魔石を専用に手配して埋め込んだ通信機を作ったんだ」
シャルロがにこやかに教えてくれた。
なるほどね。
携帯用通信機はもともと携帯できることに主眼を置いているから連絡が取れる距離は短めなのだが、共振させる魔石を1セットだけにして、それに強力な魔石を使えばこの距離でも通話できるのか。
俺もシェイラ用に作るべきか?
だが、どうせ夜にちょっとしか話さないしなぁ。
シェイラも遺跡で忙しいから、宿に居ない時間に連絡しても無視されそうな気がするし。
まあ、どちらにせよそんな魔石を入手するにはそれなりに時間と費用が掛かるから、これはまた今度だな。
「へぇ、考えたな。
俺はこれからシェイラに連絡して予定がどうか聞いてみるから、折角だけど遠慮しとくよ。
シェイラが来られるとしても、王都まで出てくるのに時間がかかるだろうからケレナを待たせることになって悪いし」
「分かった。
お休み~」
あっさり頷いてシャルロへ案内された彼の部屋へと入っていった。
俺はまず、シェイラを捕まえないとだな。
今の時間だと・・・宿にいない可能性が高そうだ。
伝言を頼んでおくことになりそうだな・・・。
◆◆◆◆
「あら~、シェイラちゃんなら今朝王都に戻ったわよ?
昨晩、弟さんから何やら緊急の連絡があったらしくって」
宿屋に繋がって女将さんと話したら、なんとシェイラは王都に戻っているとのこと。
???
何があったんだ?
しかも弟に呼び出されたとは。
親父さんが倒れたとかなのか?
取り敢えず、王都のシェイラの部屋の大家に連絡を入れた。
シェイラの事を聞いたら『あら、何かあったの?部屋には戻っていないわよ?』と言われた。
じゃあ、実家か?
う~ん。
アレクの実家なり歴史協会なりに連絡してシェイラの実家の連絡先を聞くよりは、自分で戻った方が早そうだな。
うむ。
これに懲りて、大切な人の家族の連絡先もちゃんと控えるようにしよう。
シャルロの婚約式の騒動で学んでおくべきだった・・・。
「シャルロ、ちょっとシェイラの実家で何かがあったっぽいんで王都に戻るわ。
もしも5日で帰れそうになかったら連絡するから、何かあったら宜しく」
シャルロの部屋に首を突っ込んで、一応知らせておく。
これから風呂に入るつもりだったのか、タオルを手に丁度部屋を出ようとしていたシャルロが、首を傾けた。
「大丈夫?」
「シェイラ本人に問題は無いみたいだからな。
親父さんが倒れたのかも知れないが、まあ大丈夫じゃないか?」
ある意味、親父さんが倒れたんだったら俺が行ったところで出来ることは無いが・・・まあ、久しぶりにシェイラに会いたいし、何があったのかと心配するよりは戻った方が良いだろう。
「分かった、何か手伝えることがあったら言ってね」
そう言ってくれたシャルロに手を振り、下へと急ぐ。
荷物はそのまま持っているからこのまま転移出来る。
さて。
何が起きたのやら・・・。
考えてみたら、日が暮れてから到着した場合、町の明かりで街そのものにはたどりつけても領事館を探すのは至難の業だったな。
完全に暗くなる前にたどり着けて良かった。
領事館の庭に空滑機《グライダー》を降ろして物置に運び込み、魔石を外して領事館の中へと足を進める。
一応出発する前に連絡は入れてあるので(そうでないと庭へ着陸した瞬間に攻撃されかねない)、部屋も準備してくれているはずだ。
・・・考えてみたら、この領事館の防犯ってどうなっているんだ?
別に上空に結界が張ってある様子はなかったが。
まあ、王城じゃないんだ。上空に防御結界や探知結界なんぞ普通は張らないか。
だとしたら連絡なしでも来れたか?
「そう言えば明日からケレナが来るんだけど、シェイラも来るの?
時間が合いそうだったら二人合わせて転移門を動かしても良いよ?」
部屋に案内されながらシャルロが言った。
「え、ケレナが来るのか?
いつの間にそんな手配をしたんだ?」
流石に偶然とは思えないが・・・休みを言い渡された後、俺が固定式通信機を領事館との連絡に使っていたのにケレナと連絡を取る暇なんてあったのか?
「ケレナといつでも話せるように、携帯用の通信機を二人用に調整したのを作ったからそれで連絡したんだ。
普通の携帯用通信機じゃあアファル王国まで通信を届けられないけど、ケレナとだけ話せればいいんだから、大き目の魔石を専用に手配して埋め込んだ通信機を作ったんだ」
シャルロがにこやかに教えてくれた。
なるほどね。
携帯用通信機はもともと携帯できることに主眼を置いているから連絡が取れる距離は短めなのだが、共振させる魔石を1セットだけにして、それに強力な魔石を使えばこの距離でも通話できるのか。
俺もシェイラ用に作るべきか?
だが、どうせ夜にちょっとしか話さないしなぁ。
シェイラも遺跡で忙しいから、宿に居ない時間に連絡しても無視されそうな気がするし。
まあ、どちらにせよそんな魔石を入手するにはそれなりに時間と費用が掛かるから、これはまた今度だな。
「へぇ、考えたな。
俺はこれからシェイラに連絡して予定がどうか聞いてみるから、折角だけど遠慮しとくよ。
シェイラが来られるとしても、王都まで出てくるのに時間がかかるだろうからケレナを待たせることになって悪いし」
「分かった。
お休み~」
あっさり頷いてシャルロへ案内された彼の部屋へと入っていった。
俺はまず、シェイラを捕まえないとだな。
今の時間だと・・・宿にいない可能性が高そうだ。
伝言を頼んでおくことになりそうだな・・・。
◆◆◆◆
「あら~、シェイラちゃんなら今朝王都に戻ったわよ?
昨晩、弟さんから何やら緊急の連絡があったらしくって」
宿屋に繋がって女将さんと話したら、なんとシェイラは王都に戻っているとのこと。
???
何があったんだ?
しかも弟に呼び出されたとは。
親父さんが倒れたとかなのか?
取り敢えず、王都のシェイラの部屋の大家に連絡を入れた。
シェイラの事を聞いたら『あら、何かあったの?部屋には戻っていないわよ?』と言われた。
じゃあ、実家か?
う~ん。
アレクの実家なり歴史協会なりに連絡してシェイラの実家の連絡先を聞くよりは、自分で戻った方が早そうだな。
うむ。
これに懲りて、大切な人の家族の連絡先もちゃんと控えるようにしよう。
シャルロの婚約式の騒動で学んでおくべきだった・・・。
「シャルロ、ちょっとシェイラの実家で何かがあったっぽいんで王都に戻るわ。
もしも5日で帰れそうになかったら連絡するから、何かあったら宜しく」
シャルロの部屋に首を突っ込んで、一応知らせておく。
これから風呂に入るつもりだったのか、タオルを手に丁度部屋を出ようとしていたシャルロが、首を傾けた。
「大丈夫?」
「シェイラ本人に問題は無いみたいだからな。
親父さんが倒れたのかも知れないが、まあ大丈夫じゃないか?」
ある意味、親父さんが倒れたんだったら俺が行ったところで出来ることは無いが・・・まあ、久しぶりにシェイラに会いたいし、何があったのかと心配するよりは戻った方が良いだろう。
「分かった、何か手伝えることがあったら言ってね」
そう言ってくれたシャルロに手を振り、下へと急ぐ。
荷物はそのまま持っているからこのまま転移出来る。
さて。
何が起きたのやら・・・。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる