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卒業後
420 星暦554年 紫の月 19~20日 次の旅立ち?(12)
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ちょっと前話と時間が交差しちゃってます。
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「やあ、よく来てくれたね。
待っていたんだよ」
意外なことに、オレファーニ本邸に到着した俺達は入り口でシャルロの長兄のアシャル氏に出迎えられた。
シャルロは直ぐさま母親と主役の段取りについて話し合ってこいとさっさと追いやられ、俺達は応接間に連れ込まれた。
「頼みたいこともあるからその打ち合わせも兼ねて早めに来てくれと何度もシャルロに言ったんだけどねぇ。
シャルロが婚約式なんだから大げさな準備は要らないと繰り返すばかりで、中々来なくってヒヤヒヤしたよ」
軽くため息をつきながらアシャル氏が言った。
「開発中の真水抽出用魔道具が良い感じに形になってきていたもので、ついシャルロも私達も夢中になってしまいまして。
開発は別にそこまで急ぐ物では無かったので、もっと早くこちらに来るようにシャルロに強く言うべきでしたね、すいません」
アレクが苦笑いしながらアシャル氏に謝った。
いや、俺達だって何度かシャルロに言ったんだぜ?
結婚式ほどの規模じゃあ無いせよ、家族と親しい友人だけでやるこの婚約式って・・・ある意味侯爵家と伯爵家の繋がりという政治的な付き合いとかも入ってきちゃう結婚式よりももっと本人や家族的には重要な可能性は高いし、それなりに準備とかあるだろう。
どうせ開拓へは直ぐに参加できないんだ。
だとしたら真水抽出の魔道具はそこまで急ぐもんじゃあないんだから、ここは早めに婚約式の準備に行くべきだろうって。
だけど、魔道具の効率が良い感じにやればやるほど上げられて、シャルロが夢中になっちまって。
で、ついつい俺達も熱中しちゃって、あまり強く言わなかったんだよね。
流石に前日になって、本当に『当日行く』だけで良いのか?と問い正したら、『そう言えば、兄さんからアレク達に手伝いを頼みたいことがあるって言われてた』と教えられて焦ったが。
慌てて、取り敢えず形になった魔道具をセビウス氏に渡して、こちらに来たのだが・・・。
「本当に、よく来てくれた。
実は、式について提案したいことがあったのだが・・・。
シャルロは魔術師だろう?
そして今回招いた親友達も魔術師なのだから、この際魔術師だからこそ出来る幻影みたいなもので式を彩って貰えたらと思ってね。
本当は何日か前に準備にこちらに来たシャルロと一緒に来てくれたらその際に頼もうと思っていたのだが、中々シャルロが来なくって・・・もう今から頼むのでは、無理かな?」
アシャル氏が苦笑しながら聞いてきた。
うひぃ~。
婚約式は明日だぜ???
もっと早く言ってくれれば良いのに!!!
「幻影というと・・・どのような物をお考えで?」
アレクが尋ねた。
「それこそ、学院祭で君たちや他の寮の生徒達が見せていた様な花や光が宙を舞うようなのを考えていたんだがね。
今からでは、難しいかな?」
部屋にいたメイドにお茶を淹れるように身振りで指示しながらアシャル氏が聞いてきた。
シャルロ。
恨むぞ。
もっと早くこっちに来るべきだった・・・。
「アレク。
最初の年の学院祭でやってた、舞踏会でダレン先輩が踊るのに合わせて花をまき散らすのはお前も相談に乗ってたよな?
あれの改訂版を何か出来ないか?
清早と協力したら、俺の方は虹やキラキラした飛沫を飛ばせると思うんだが」
清早に周りの人が濡れないように頼んで、飛沫を空中に飛ばしたらそれなりにキラキラしい雰囲気になるはず。
そこに花の幻影を飛ばせばかなり雰囲気は盛り上がらないか?
学院祭の時は、踊っている2人の足元から花の幻影を飛ばすのに苦労したと聞いているが、今回は動かない2人の回りに飛ばすのだ。
もう少し楽じゃないかな?
「ああ、ちょっと下準備が必要だが、出来ると思う。
だが、虹って・・・明日は晴れるのか?」
アレクが少し考えてから答えた。
「蒼流が、シャルロが出る式典で雨を降らせるわけが無いだろ?
まあ、曇り空じゃあ虹も飛沫も綺麗に見えないから、後で清早に蒼流を捕まえてきてもらって、協力を仰ぐが。
・・・まず、問題は無いと思うぜ?」
虹を宙に描くのは清早と契約した後に色々試した時にやっているので、それ程難しくは無い。
流石に清早の力では空の雲を全部散らすのは難しいが、蒼流なら特に問題は無いはず。
キラキラしく飛沫を飛ばすのも、何とかなる。
後で式場とその時間帯の太陽の向きを確認しておく必要があるが。
「虹を作れるのかい?
それは良いねぇ。
水の愛し子であるシャルロにはお似合いだ」
アシャル氏がニコニコしながら口を挟んできた。
まあねぇ。
虹って綺麗だが、近くでやると飛沫に濡れることになるからそこは清早に頼んで客(特に女性客!)が濡れないようにしないとならないが。
取り敢えず。
予行練習だ!
【後書き】
到着したのは昼過ぎ。
婚約式は明日の昼前。
ちょっと太陽の向きは変わっちゃうけど、何とかなる・・・はず!
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「やあ、よく来てくれたね。
待っていたんだよ」
意外なことに、オレファーニ本邸に到着した俺達は入り口でシャルロの長兄のアシャル氏に出迎えられた。
シャルロは直ぐさま母親と主役の段取りについて話し合ってこいとさっさと追いやられ、俺達は応接間に連れ込まれた。
「頼みたいこともあるからその打ち合わせも兼ねて早めに来てくれと何度もシャルロに言ったんだけどねぇ。
シャルロが婚約式なんだから大げさな準備は要らないと繰り返すばかりで、中々来なくってヒヤヒヤしたよ」
軽くため息をつきながらアシャル氏が言った。
「開発中の真水抽出用魔道具が良い感じに形になってきていたもので、ついシャルロも私達も夢中になってしまいまして。
開発は別にそこまで急ぐ物では無かったので、もっと早くこちらに来るようにシャルロに強く言うべきでしたね、すいません」
アレクが苦笑いしながらアシャル氏に謝った。
いや、俺達だって何度かシャルロに言ったんだぜ?
結婚式ほどの規模じゃあ無いせよ、家族と親しい友人だけでやるこの婚約式って・・・ある意味侯爵家と伯爵家の繋がりという政治的な付き合いとかも入ってきちゃう結婚式よりももっと本人や家族的には重要な可能性は高いし、それなりに準備とかあるだろう。
どうせ開拓へは直ぐに参加できないんだ。
だとしたら真水抽出の魔道具はそこまで急ぐもんじゃあないんだから、ここは早めに婚約式の準備に行くべきだろうって。
だけど、魔道具の効率が良い感じにやればやるほど上げられて、シャルロが夢中になっちまって。
で、ついつい俺達も熱中しちゃって、あまり強く言わなかったんだよね。
流石に前日になって、本当に『当日行く』だけで良いのか?と問い正したら、『そう言えば、兄さんからアレク達に手伝いを頼みたいことがあるって言われてた』と教えられて焦ったが。
慌てて、取り敢えず形になった魔道具をセビウス氏に渡して、こちらに来たのだが・・・。
「本当に、よく来てくれた。
実は、式について提案したいことがあったのだが・・・。
シャルロは魔術師だろう?
そして今回招いた親友達も魔術師なのだから、この際魔術師だからこそ出来る幻影みたいなもので式を彩って貰えたらと思ってね。
本当は何日か前に準備にこちらに来たシャルロと一緒に来てくれたらその際に頼もうと思っていたのだが、中々シャルロが来なくって・・・もう今から頼むのでは、無理かな?」
アシャル氏が苦笑しながら聞いてきた。
うひぃ~。
婚約式は明日だぜ???
もっと早く言ってくれれば良いのに!!!
「幻影というと・・・どのような物をお考えで?」
アレクが尋ねた。
「それこそ、学院祭で君たちや他の寮の生徒達が見せていた様な花や光が宙を舞うようなのを考えていたんだがね。
今からでは、難しいかな?」
部屋にいたメイドにお茶を淹れるように身振りで指示しながらアシャル氏が聞いてきた。
シャルロ。
恨むぞ。
もっと早くこっちに来るべきだった・・・。
「アレク。
最初の年の学院祭でやってた、舞踏会でダレン先輩が踊るのに合わせて花をまき散らすのはお前も相談に乗ってたよな?
あれの改訂版を何か出来ないか?
清早と協力したら、俺の方は虹やキラキラした飛沫を飛ばせると思うんだが」
清早に周りの人が濡れないように頼んで、飛沫を空中に飛ばしたらそれなりにキラキラしい雰囲気になるはず。
そこに花の幻影を飛ばせばかなり雰囲気は盛り上がらないか?
学院祭の時は、踊っている2人の足元から花の幻影を飛ばすのに苦労したと聞いているが、今回は動かない2人の回りに飛ばすのだ。
もう少し楽じゃないかな?
「ああ、ちょっと下準備が必要だが、出来ると思う。
だが、虹って・・・明日は晴れるのか?」
アレクが少し考えてから答えた。
「蒼流が、シャルロが出る式典で雨を降らせるわけが無いだろ?
まあ、曇り空じゃあ虹も飛沫も綺麗に見えないから、後で清早に蒼流を捕まえてきてもらって、協力を仰ぐが。
・・・まず、問題は無いと思うぜ?」
虹を宙に描くのは清早と契約した後に色々試した時にやっているので、それ程難しくは無い。
流石に清早の力では空の雲を全部散らすのは難しいが、蒼流なら特に問題は無いはず。
キラキラしく飛沫を飛ばすのも、何とかなる。
後で式場とその時間帯の太陽の向きを確認しておく必要があるが。
「虹を作れるのかい?
それは良いねぇ。
水の愛し子であるシャルロにはお似合いだ」
アシャル氏がニコニコしながら口を挟んできた。
まあねぇ。
虹って綺麗だが、近くでやると飛沫に濡れることになるからそこは清早に頼んで客(特に女性客!)が濡れないようにしないとならないが。
取り敢えず。
予行練習だ!
【後書き】
到着したのは昼過ぎ。
婚約式は明日の昼前。
ちょっと太陽の向きは変わっちゃうけど、何とかなる・・・はず!
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