シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

414 星暦554年 赤の月 18日 次の旅立ち?(5)

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「開拓に役に立つ魔道具って何だと思う?」
シャルロが黒板モドキの前でペンを手に持ちながら、俺達に声を掛けてきた。

ちなみに、俺はちゃんと2日の予定の日数の中でシャルロの婚約式用の靴を無事に購入し、更に今後にこんなことがあっても大丈夫なように俺とシェイラが納得のいく機能を有する礼装用の靴を発注し、シェイラが欲しがったバッグも入手できた。
本当に・・・疲れたぜ。

これからは面倒くさがらずに、何か買っておいた方が良い物があるか、定期的にシェイラに相談しておこう。

2度とあの地獄の店周りツアーは繰り返したくない。

アレクとシャルロもそれぞれの色々あった用事が終わったようだったので、取り敢えず時間つぶしも兼ねて今日は新しい魔道具について考えることにしたのだ。

「家や開拓地の周りを守る結界とか?
でも、今回の開拓地はどちらもそう危険そうな動物は居なかったか・・・」
自分で提案しておきながら、考え直して自分で否定してしまった。

アレクが首をかしげてちょっと考え込んだ。
「確かに・・・場所によっては保護結界があった方が良い場所もあるだろうが、危険な動物を閉め出せるような結界だとかなり魔力を使うだろうから、それよりは物理的に塀で囲った方が現実的だろうな」

まあねぇ。
危険な場所だったら最初はそれなりに兵力を注ぎ込むだろうし。
と言うか、今回みたいに島そのものには危険が無い場所でも、外からの邪魔を警戒してどちらにせよ兵力は必要なんだろうなぁ。

「暖房器具とか?」
シャルロが提案した。

「それは既存の魔道具で十分だろ?」
特に、俺達が作った温風を出すタイプの魔道具だったら服や生地を乾かすのにも使えるし。

「水や食料の毒探知機みたいのは?新しい場所だと、生えている植物や捕まえた生き物が食べても大丈夫か確認するのって重要じゃ無い?」
シャルロがめげずに提案を続ける。

確かに。
食糧は持ち込むよりは現地で原生している物を食べられればそれに越したことは無い。

「確かにそれは有用だろうが・・・魔道具でそれを作るのは難しくないか?」
アレクが眉をひそめて聞き返した。

シャルロが考え込む。
「あ~。
どうだろ?
確か、貴族用の魔道具で毒を探知するのがあったはずだけど、あれはもしかしたら毒の種類を登録していたのかも。
だから一般的に使われていない毒とかだと探知できないって聞いた気がする」

こえ~。
やはり貴族は毒を盛られる心配する必要があるんだ??
まあ、シャルロだったら蒼流が何とかしてくれるだろうけど、それは魔道具には組み込めないよなぁ。

「じゃあ、その毒探知の魔道具がどう機能するのか、魔術院で魔術回路を調べるか?」
魔術回路を見て、一般的に害になる物を探知する仕組みなら使えるかも知れない。

「いや、毒探知の魔術回路は登録されていないか、それなりに権限がある人間しか閲覧出来ないだろう。
それこそ、研究されて探知されない毒を開発されては元も子もないからな」
アレクが首を横に振った。

・・・確かに。

しっかし。
開拓ねぇ。まずは家や道を作るんだよな?
「地ならしとか、木材や石材を運びやすくする魔道具とか?」

「確かに有り難いだろうけど・・・物理的に物を持ち上げて動かすなんてことになると、魔力の消費量はかなり凄いことになるよ?
多分、それだったら安い労働力を船で連れて行く方が経済的なんじゃないかなぁ。
地ならしに関しては、木の根や地に埋まっている石とかを砕けたり地表に出せる物があれば便利かも知れないけど」
シャルロが肩を竦めた。
流石領地持ち貴族。
現実的な話を知っている。

「ある意味、ウィルが向こうに行ってアスカに手伝って貰うのが一番役に立つんじゃないか?
土竜《ジャイアント・モール》だから地中の物を動かしたりどかしたりするのは得意だろうし、木材はともかく石材にも影響を及ぼせるんじゃないか?」
アレクがちょっとニヤニヤしながら提案した。

いや、確かに手伝いたいとは思うけどさぁ。
開拓が終わるまであっちに居ることになったら一体いつ帰ってこれるか分からないじゃないか。
俺が帰ってこなくても良いって言うの?

「そんな、ウィルだけが酷使されるようなのは駄目だよね。
そうなると・・・船に何か役に立つ物でも作る?
あそこの行き来には船が必要なんだから、何か便利な物が出来たら間接的にだけど役に立つだろうし」
シャルロがお茶を淹れながら提案してきた。

確かになぁ。
船の生活は色々と不便だったから、魔道具の役に立つ場面は色々とありそうだ。


【後書き】
結局開発する物はまだ決まらず・・・。
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