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卒業後
408 星暦554年 赤の月 10日 旅立ち?(49)
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ちょっと時間を飛ばして帰国しました。
今回はシェイラの視点です。
--------------------------------------------------------------------------------
>>>サイド シェイラ・オスレイダ
「あら、綺麗ね?
ありがとう」
2日前の晩に『帰宅した』と連絡があったウィルが、会いに来てくれた。
あまりお土産というものを渡す習慣に慣れていないのか、会った早々さっさと渡してしまいたいと言わんばかりに渡されたのが、ちょっと珍しい柄のスカーフと、細かい綺麗な彫刻が施された木箱だった。
時の経過で木が亜麻色になっていて、美しい。
なかなかの骨董品のようだ。
まさか土産にこんな素敵な物を見つけてきてくれるとは思っていなかったので、嬉しい驚きだ。
ふふふ。
お土産なんて、別に良いのに。
まあ、東大陸の遺跡の発掘物を貰えたらそれはそれで嬉しかったけど。
一番の土産は、ウィルが無事に帰ってきたことだ。
水精霊の加護があるウィルに船旅で何かが起きるとは思わなかったが、向こうの街で何か事件に巻き込まれても不思議はないし、海賊船との遭遇だってあり得た。
やはり1月も会わないと色々と悪いことも想像してしまうものだ。
途中で1度連絡を貰えたのは良かったが、その後は『帰国した』の連絡まで音沙汰無しだったし。
「今回行った街の北部に幾つか遺跡があるらしいんだ。
だから遺跡からの発掘物っていうのがあの街の名産物らしくて、もの凄く広い蚤市があったんだが・・・広すぎてとても1日では回りきれる規模じゃなかった。
いつか、シェイラと一緒に行ってみると面白いかもしれないぜ」
仄かに赤くなりながらウィルが答える。
「面白そうね。
だけど流石に往復の船旅だけで1月近く掛るのは難しいかなぁ・・・」
東大陸の遺跡ねぇ。
興味は湧くが・・・ちょっと時間が掛りすぎるかな?
まあ、数年後に今の遺跡での作業が一段落ついたら、次の遺跡の担当になれるまでの間にちょっと船旅に行くのもありかもだけど。
肩を竦めながらウィルが付け加えた。
「あっちの領事館に転移門を設置したんで、シャルロがそのうちケレナを連れていくって言っていたんだよね。
どのくらい魔力を消費するのか聞いて、俺でも何とかなりそうだったら連れて行くぜ?
ただまあ、転移門を使うにしてもあの蚤市をしっかり見て回ろうと思ったらそれなりの日数の休みを取れる時期に行く方が良いとは思うが」
「良いの?!」
ここから王都への転移門だって一般人が使うとそれなりの費用になるのだ。
別の大陸へなんてことになったら、それこそもの凄い金額になるのは想像出来る。
「別に、普段は俺の魔力を特に何かに使っている訳じゃ無いからな。
シェイラとの時間を楽しむために使ったって構わないさ。
ただまあ、俺の魔力だけで跳べないとなると色々高く付くんで老後の楽しみにでも取っておいて貰う必要があるが」
ワインをお互いのグラスに注ぎながらウィルが答えた。
ウィルって時々思いがけず嬉しいことを言ってくれる。
唐変木だからこそ、計算していないこういう言葉って嬉しい。
しっかし。
魔術師なのに、魔力ってあまり使って無いんだ?
まあ、魔道具の開発が主な仕事だものね。
却って私達の発掘現場で手伝っている時の方が普段よりよっぽど魔力を使うって言っていたっけ?
「それで、今回の旅はどうだった?」
ワクワクしながら尋ねる。
ワインを一口飲んで、ウィルがちょっと考えるように首をかしげた。
「船旅は・・・長かった。
最初の数日が過ぎたら退屈だったな。空滑機《グライダー》で飛んで回ったって同じ景色が続くだけだし。
食事も保存食になってからははっきり言って食えた物じゃなかったし。
お陰で俺達は島探しよりも魚釣りの方に熱心だったぐらいさ。
島を見つけた時は中々面白かったが」
「見つけたの!!!???」
凄い。
国が本腰を入れて開発予定の新規交易路で補給に使える島を見つけたとなったら、利権だけでも凄いことになる。
「おう。2つほどね。
一つは補給用に小規模な農業でも出来そうな感じの島だったな。
もう一つは水の補給と海賊対策用の基地になるんじゃないかって話だが」
ちょっと居心地悪げに身じろぎしてから、ウィルが咳払いをした。
「そう言えば、最初の方の島の開拓を手伝うためにまたちょっと王都を離れるかも知れない。
まあ、こういう開拓の準備にどの位時間が掛るか知らないから、出発がいつになるか全く見当も付かないけど」
おやま。
帰って来たばかりなのに、もう次の出発の話ですか。
でもまあ、新しい補給島の開拓となれば、話は大きい。
しかもウィル達が一部とは言え利権を持っているのだ。
是非参加するべきだし、政府にしても『利権があるのだから』という理由で無料で使える魔術師が来てくれたら大歓迎だろう。
ただまあ、こういうのって段取りにもの凄く時間が掛るはずだけどね。
「あら、折角帰って来たばかりなのに残念ね。
出発までは、時間がある間は出来るだけこちらで過ごしてくれると思っていい?」
【後書き】
恋人と時間を過ごしながらついでに遺跡での作業を手伝って貰おうと企んでいるシェイラ嬢w
今回はシェイラの視点です。
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>>>サイド シェイラ・オスレイダ
「あら、綺麗ね?
ありがとう」
2日前の晩に『帰宅した』と連絡があったウィルが、会いに来てくれた。
あまりお土産というものを渡す習慣に慣れていないのか、会った早々さっさと渡してしまいたいと言わんばかりに渡されたのが、ちょっと珍しい柄のスカーフと、細かい綺麗な彫刻が施された木箱だった。
時の経過で木が亜麻色になっていて、美しい。
なかなかの骨董品のようだ。
まさか土産にこんな素敵な物を見つけてきてくれるとは思っていなかったので、嬉しい驚きだ。
ふふふ。
お土産なんて、別に良いのに。
まあ、東大陸の遺跡の発掘物を貰えたらそれはそれで嬉しかったけど。
一番の土産は、ウィルが無事に帰ってきたことだ。
水精霊の加護があるウィルに船旅で何かが起きるとは思わなかったが、向こうの街で何か事件に巻き込まれても不思議はないし、海賊船との遭遇だってあり得た。
やはり1月も会わないと色々と悪いことも想像してしまうものだ。
途中で1度連絡を貰えたのは良かったが、その後は『帰国した』の連絡まで音沙汰無しだったし。
「今回行った街の北部に幾つか遺跡があるらしいんだ。
だから遺跡からの発掘物っていうのがあの街の名産物らしくて、もの凄く広い蚤市があったんだが・・・広すぎてとても1日では回りきれる規模じゃなかった。
いつか、シェイラと一緒に行ってみると面白いかもしれないぜ」
仄かに赤くなりながらウィルが答える。
「面白そうね。
だけど流石に往復の船旅だけで1月近く掛るのは難しいかなぁ・・・」
東大陸の遺跡ねぇ。
興味は湧くが・・・ちょっと時間が掛りすぎるかな?
まあ、数年後に今の遺跡での作業が一段落ついたら、次の遺跡の担当になれるまでの間にちょっと船旅に行くのもありかもだけど。
肩を竦めながらウィルが付け加えた。
「あっちの領事館に転移門を設置したんで、シャルロがそのうちケレナを連れていくって言っていたんだよね。
どのくらい魔力を消費するのか聞いて、俺でも何とかなりそうだったら連れて行くぜ?
ただまあ、転移門を使うにしてもあの蚤市をしっかり見て回ろうと思ったらそれなりの日数の休みを取れる時期に行く方が良いとは思うが」
「良いの?!」
ここから王都への転移門だって一般人が使うとそれなりの費用になるのだ。
別の大陸へなんてことになったら、それこそもの凄い金額になるのは想像出来る。
「別に、普段は俺の魔力を特に何かに使っている訳じゃ無いからな。
シェイラとの時間を楽しむために使ったって構わないさ。
ただまあ、俺の魔力だけで跳べないとなると色々高く付くんで老後の楽しみにでも取っておいて貰う必要があるが」
ワインをお互いのグラスに注ぎながらウィルが答えた。
ウィルって時々思いがけず嬉しいことを言ってくれる。
唐変木だからこそ、計算していないこういう言葉って嬉しい。
しっかし。
魔術師なのに、魔力ってあまり使って無いんだ?
まあ、魔道具の開発が主な仕事だものね。
却って私達の発掘現場で手伝っている時の方が普段よりよっぽど魔力を使うって言っていたっけ?
「それで、今回の旅はどうだった?」
ワクワクしながら尋ねる。
ワインを一口飲んで、ウィルがちょっと考えるように首をかしげた。
「船旅は・・・長かった。
最初の数日が過ぎたら退屈だったな。空滑機《グライダー》で飛んで回ったって同じ景色が続くだけだし。
食事も保存食になってからははっきり言って食えた物じゃなかったし。
お陰で俺達は島探しよりも魚釣りの方に熱心だったぐらいさ。
島を見つけた時は中々面白かったが」
「見つけたの!!!???」
凄い。
国が本腰を入れて開発予定の新規交易路で補給に使える島を見つけたとなったら、利権だけでも凄いことになる。
「おう。2つほどね。
一つは補給用に小規模な農業でも出来そうな感じの島だったな。
もう一つは水の補給と海賊対策用の基地になるんじゃないかって話だが」
ちょっと居心地悪げに身じろぎしてから、ウィルが咳払いをした。
「そう言えば、最初の方の島の開拓を手伝うためにまたちょっと王都を離れるかも知れない。
まあ、こういう開拓の準備にどの位時間が掛るか知らないから、出発がいつになるか全く見当も付かないけど」
おやま。
帰って来たばかりなのに、もう次の出発の話ですか。
でもまあ、新しい補給島の開拓となれば、話は大きい。
しかもウィル達が一部とは言え利権を持っているのだ。
是非参加するべきだし、政府にしても『利権があるのだから』という理由で無料で使える魔術師が来てくれたら大歓迎だろう。
ただまあ、こういうのって段取りにもの凄く時間が掛るはずだけどね。
「あら、折角帰って来たばかりなのに残念ね。
出発までは、時間がある間は出来るだけこちらで過ごしてくれると思っていい?」
【後書き】
恋人と時間を過ごしながらついでに遺跡での作業を手伝って貰おうと企んでいるシェイラ嬢w
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