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召喚されました
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その部屋には制服の男女がたくさんいた。
見覚えがあるそれは、蓮が卒業した高校の制服。
中にはヒゲ面のオッサンもいたが、制服を着ているのできっと高校生なのだろう。ざっと見渡せばものすごくスタイルの良い女の子ややたら爽やかそうなイケメン。ちょっと斜めに構えたような感じの子もいる。ずいぶんバラエティ豊かなクラスのようだ。
周囲は石造りの部屋で、中央に祭壇らしきものがある以外はなにもない。
周りの高校生たちが取り乱していてうるさい。まあ、突然見知らぬところに来たら取り乱すのは仕方ない。
蓮は一通り見渡すと、自分を見た。くたびれたスーツ、メガネ、片手には某有名チェーン店の牛丼。
うむ、仕方がない。なにせ昼休みで牛丼屋にいたのだから。まさに今牛丼を食べようとしたところで床が光って、気がついたらここにいたのだ。なのに「なんだコイツ」みたいな視線をすごく感じる。蓮のせいではないのにすごくいたたまれない。・・・・納得いかない!
「皆様」
凛とした美しい声があたりに響いて、騒がしかった高校生たちが一瞬で静かになった。
「わたくしはラズィネール王国第3王女リズリットと申します」
長く波打つ美しい金の髪の、17・18歳くらいの女性は
そういうとゆったり微笑んだ。
テンプレっぽい感じで、ものすごく胡散臭いです。しかしなぜ自分はここにいるのか、と蓮は首を傾げる。見た感じ、ファンタジー小説とかでよくあるクラスごと異世界転移というやつだろう。だが、蓮は高校の教師ではない。小さな雑貨屋の店員だ。召喚された面々とはまったく接点がない。あえていうなら、蓮が卒業した高校という程度だ。
お姫様は、戸惑っている高校生や蓮を置き去りに、滔々とこの世界の現状を語っている。なんでも邪神が現れて世界がピンチなんだとか。世界を救う英雄が必要らしい。
まったく興味がありません。
周りの高校生たちははじめはかなり騒いでいたが、やがて邪神を倒せば帰れるといわれて、静かになった。
正直、王女はめちゃくちゃ胡散臭いし、信頼度はゼロだ。異世界からムリヤリ子供拉致って戦力にするとかドン引きである。
王女様の話が終わると、一人ずつ能力を測定される。水晶玉みたいなアイテムに手をかざすとゲームでよくあるステータス画面がひらくようだ。
「勇者、賢者、聖女、大魔道士・・・・」
聞こえてくる限り、ずいぶん豊作のようだ。心なしか、高校生たちも楽しそう。
「最後は・・・・なにをなさっているのかしら?」
王女が蓮を見て、唖然としている。
「お昼ゴハンを食べている」
早く食べないと牛丼が冷めて美味しくなくなるだろう。なんでそんなあたりまえのことを、と蓮も不思議そうに王女を見る。
「そ、そう?あら?わたくしが間違っているのかしら?」
「もちろん、間違ってる。私はお昼を食べるとこだったの」
「貴様!無礼な!」
王女の後ろから騎士が怒鳴るが、蓮は肩を竦めた。
「なんで?人がゴハンを食べる直前に勝手にここに連れてきたのはそっち。そういうことするほうが非常識でしょ?」
「それは、申し訳ありません。ですが今ここでそのようなものを食べるのはいかがなものかと」
「なんで?」
「その、ここは神聖な場所なので」
「それはそっちの都合でしょ?食事も出さずにいつまでも待たせるほうが悪くない?」
蓮がそういうと、王女の後ろの騎士二人が真っ赤になる。なんか周りの高校生の視線も痛い。
「・・・・わかりました。とにかく、こちらの水晶玉に触れてください」
王女はなにかを諦めたようにため息をつくと、メイドさんが持っていた水晶玉を蓮の前に出す。
「んー、これでいい?」
蓮が水晶玉に触れると、水晶玉が僅かに光る。光はすぐに消えて、半透明な板が目の前に出てきた。
名前:白峰蓮
職業:クリエイター
レベル:1
「クリエイター・・・・聞いたことのない職業ですね」
「・・・・なんの役にも立たない職業だよ」
バカみたい。小さく呟いたその声は、近くにいた王女にも届くことなく消えていった。
見覚えがあるそれは、蓮が卒業した高校の制服。
中にはヒゲ面のオッサンもいたが、制服を着ているのできっと高校生なのだろう。ざっと見渡せばものすごくスタイルの良い女の子ややたら爽やかそうなイケメン。ちょっと斜めに構えたような感じの子もいる。ずいぶんバラエティ豊かなクラスのようだ。
周囲は石造りの部屋で、中央に祭壇らしきものがある以外はなにもない。
周りの高校生たちが取り乱していてうるさい。まあ、突然見知らぬところに来たら取り乱すのは仕方ない。
蓮は一通り見渡すと、自分を見た。くたびれたスーツ、メガネ、片手には某有名チェーン店の牛丼。
うむ、仕方がない。なにせ昼休みで牛丼屋にいたのだから。まさに今牛丼を食べようとしたところで床が光って、気がついたらここにいたのだ。なのに「なんだコイツ」みたいな視線をすごく感じる。蓮のせいではないのにすごくいたたまれない。・・・・納得いかない!
「皆様」
凛とした美しい声があたりに響いて、騒がしかった高校生たちが一瞬で静かになった。
「わたくしはラズィネール王国第3王女リズリットと申します」
長く波打つ美しい金の髪の、17・18歳くらいの女性は
そういうとゆったり微笑んだ。
テンプレっぽい感じで、ものすごく胡散臭いです。しかしなぜ自分はここにいるのか、と蓮は首を傾げる。見た感じ、ファンタジー小説とかでよくあるクラスごと異世界転移というやつだろう。だが、蓮は高校の教師ではない。小さな雑貨屋の店員だ。召喚された面々とはまったく接点がない。あえていうなら、蓮が卒業した高校という程度だ。
お姫様は、戸惑っている高校生や蓮を置き去りに、滔々とこの世界の現状を語っている。なんでも邪神が現れて世界がピンチなんだとか。世界を救う英雄が必要らしい。
まったく興味がありません。
周りの高校生たちははじめはかなり騒いでいたが、やがて邪神を倒せば帰れるといわれて、静かになった。
正直、王女はめちゃくちゃ胡散臭いし、信頼度はゼロだ。異世界からムリヤリ子供拉致って戦力にするとかドン引きである。
王女様の話が終わると、一人ずつ能力を測定される。水晶玉みたいなアイテムに手をかざすとゲームでよくあるステータス画面がひらくようだ。
「勇者、賢者、聖女、大魔道士・・・・」
聞こえてくる限り、ずいぶん豊作のようだ。心なしか、高校生たちも楽しそう。
「最後は・・・・なにをなさっているのかしら?」
王女が蓮を見て、唖然としている。
「お昼ゴハンを食べている」
早く食べないと牛丼が冷めて美味しくなくなるだろう。なんでそんなあたりまえのことを、と蓮も不思議そうに王女を見る。
「そ、そう?あら?わたくしが間違っているのかしら?」
「もちろん、間違ってる。私はお昼を食べるとこだったの」
「貴様!無礼な!」
王女の後ろから騎士が怒鳴るが、蓮は肩を竦めた。
「なんで?人がゴハンを食べる直前に勝手にここに連れてきたのはそっち。そういうことするほうが非常識でしょ?」
「それは、申し訳ありません。ですが今ここでそのようなものを食べるのはいかがなものかと」
「なんで?」
「その、ここは神聖な場所なので」
「それはそっちの都合でしょ?食事も出さずにいつまでも待たせるほうが悪くない?」
蓮がそういうと、王女の後ろの騎士二人が真っ赤になる。なんか周りの高校生の視線も痛い。
「・・・・わかりました。とにかく、こちらの水晶玉に触れてください」
王女はなにかを諦めたようにため息をつくと、メイドさんが持っていた水晶玉を蓮の前に出す。
「んー、これでいい?」
蓮が水晶玉に触れると、水晶玉が僅かに光る。光はすぐに消えて、半透明な板が目の前に出てきた。
名前:白峰蓮
職業:クリエイター
レベル:1
「クリエイター・・・・聞いたことのない職業ですね」
「・・・・なんの役にも立たない職業だよ」
バカみたい。小さく呟いたその声は、近くにいた王女にも届くことなく消えていった。
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