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きみを添えて5日目
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あれから彼は暫くの間、僕に抱きついていたがいつの間にか眠っており僕は彼を起こさないよう寝かせた。
僕は少々慣れないことをしていたことで彼の寝顔をじっと眺めてしまったが怪我に気付きそっと触れて回復魔法を唱える。体の汚れもついでに清浄魔法で清潔にして、僕は棚から服を取って魔法により一瞬で彼に着せた。清浄は魔力消費が少ないが回復と着替えに行った魔法の魔力消費が残り少ない僕の魔力をさらに少なくしたことでふらふらから視界がぐらぐらになる。
「これは本当にまずい……」
吐き気までしてきた僕は口を押さえ、ヨロヨロとベッドから下り、部屋の窓際に置かれた椅子に腰掛ける。そして重たい瞼を閉じれば気を失うように眠りについた。
何か布らしき物を自分にかけられる感覚に目を覚ます。まだ開きにくい視界に映るのは日が出る前の早朝の街の景色と目の前で固まる人の脚だ。
「ん……?」
頭が回らない僕は一瞬誰だと思ったが昨夜の記憶を思い出し、視線を上にあげると苦笑いの表情を浮かべる彼と目が合った。
「起こしてすまない……」
「いや、いいよ。きみはもう起きるの?」
「大丈夫?」や「体は平気か」などを聞こうかしたが触れづらく、起きるには早すぎる気がした僕はこの話題を出すと頷かれる。
「いつまでも俺がいては邪魔だし。今日こそはクエストに同行しなくちゃ……」
こんな早くに追い出すほど僕は外道じゃないがクエストの同行というワードが初耳でつい、「同行?」と聞いてしまう。すると彼は表情を暗くして「あの昨日の男のクエストに同行して報酬を少し分けてもらうんだ」と耳を疑うことを言う。
「え、それはどうして……? もしかして僕はいらぬお節介でもした?」
実は仲の良い二人で昨日のあれは外での特殊なプレイ……? 僕は当て馬やお邪魔だったなどと朝から脳を高速回転していると「全くしていない、本当に助かったと思っているよ」と彼がフォローしてくれる。けれどそれなら何故、加害者のあの男のクエストに自ら同行するのか理由が分からない。彼自身でクエストを受ければいいはずだ。
「……それなら、どうして同行を選ぶんだい?」
「そうしないと俺の実力では生活出来ないっ」
少し語尾が強く言い返され、彼の触れられたくない話題だと理解したし、同行の意味も分かった。確かにクエストの危険度が低ければ報酬はかなり安い。僕が討伐した昨日のレベルを月五回行えば生活は安定するような報酬額だ、低級であれば生活困難は容易に想像出来る。
しかし昨日襲われた男に会いに行くのは流石にまずいと僕は思うのだが……。生活がかかれば無茶も承知なのだろうか?
僕はほんの少し頭を悩ませ、これも彼の大切な物を踏みつけて壊した僕が出来る償いだと口を開く。
「よかったら僕、あ、俺のクエストに同行するといいよ。報酬は半分ずつでどう?」
彼は僕の言葉に目を見開くも俯き、首を横に振る。
「これ以上迷惑はかけたくない……」
「迷惑だと思っていたらこんなこと言わないさ。普通に考えて昨日の彼と同行は危険だ、俺はきみを引き留めたいんだ」
僕の言葉に眉を下げた彼がこちらを見つめてきたので微笑んでおく。
「どうしてそこまで俺に?」
「危険な場所に飛び込もうとする人がいたら止めない? ……まあ、きみの物を壊してしまった償いも込めてる」
「……ああ、そうだったのか。あなたは悪くない、償いなんて必要ない」
彼の言い分に僕は不器用だなと思った。僕の言葉通り償いを盾に、こちらをこき使うことだって出来るのにそれを簡単に捨てる彼をますますここで見捨てるべきではない。
「きみには必要なくても俺にはいるんだ……。きみは同行の件が解決して、俺は償いが出来る。そして本当にきみを心配しているんだよ」
頷けと僕は彼を見つめ念じる。
彼は答えを出すのに時間がかかったが念じたのが通じたようで「お願いするよ……」と頷いた。
僕は少々慣れないことをしていたことで彼の寝顔をじっと眺めてしまったが怪我に気付きそっと触れて回復魔法を唱える。体の汚れもついでに清浄魔法で清潔にして、僕は棚から服を取って魔法により一瞬で彼に着せた。清浄は魔力消費が少ないが回復と着替えに行った魔法の魔力消費が残り少ない僕の魔力をさらに少なくしたことでふらふらから視界がぐらぐらになる。
「これは本当にまずい……」
吐き気までしてきた僕は口を押さえ、ヨロヨロとベッドから下り、部屋の窓際に置かれた椅子に腰掛ける。そして重たい瞼を閉じれば気を失うように眠りについた。
何か布らしき物を自分にかけられる感覚に目を覚ます。まだ開きにくい視界に映るのは日が出る前の早朝の街の景色と目の前で固まる人の脚だ。
「ん……?」
頭が回らない僕は一瞬誰だと思ったが昨夜の記憶を思い出し、視線を上にあげると苦笑いの表情を浮かべる彼と目が合った。
「起こしてすまない……」
「いや、いいよ。きみはもう起きるの?」
「大丈夫?」や「体は平気か」などを聞こうかしたが触れづらく、起きるには早すぎる気がした僕はこの話題を出すと頷かれる。
「いつまでも俺がいては邪魔だし。今日こそはクエストに同行しなくちゃ……」
こんな早くに追い出すほど僕は外道じゃないがクエストの同行というワードが初耳でつい、「同行?」と聞いてしまう。すると彼は表情を暗くして「あの昨日の男のクエストに同行して報酬を少し分けてもらうんだ」と耳を疑うことを言う。
「え、それはどうして……? もしかして僕はいらぬお節介でもした?」
実は仲の良い二人で昨日のあれは外での特殊なプレイ……? 僕は当て馬やお邪魔だったなどと朝から脳を高速回転していると「全くしていない、本当に助かったと思っているよ」と彼がフォローしてくれる。けれどそれなら何故、加害者のあの男のクエストに自ら同行するのか理由が分からない。彼自身でクエストを受ければいいはずだ。
「……それなら、どうして同行を選ぶんだい?」
「そうしないと俺の実力では生活出来ないっ」
少し語尾が強く言い返され、彼の触れられたくない話題だと理解したし、同行の意味も分かった。確かにクエストの危険度が低ければ報酬はかなり安い。僕が討伐した昨日のレベルを月五回行えば生活は安定するような報酬額だ、低級であれば生活困難は容易に想像出来る。
しかし昨日襲われた男に会いに行くのは流石にまずいと僕は思うのだが……。生活がかかれば無茶も承知なのだろうか?
僕はほんの少し頭を悩ませ、これも彼の大切な物を踏みつけて壊した僕が出来る償いだと口を開く。
「よかったら僕、あ、俺のクエストに同行するといいよ。報酬は半分ずつでどう?」
彼は僕の言葉に目を見開くも俯き、首を横に振る。
「これ以上迷惑はかけたくない……」
「迷惑だと思っていたらこんなこと言わないさ。普通に考えて昨日の彼と同行は危険だ、俺はきみを引き留めたいんだ」
僕の言葉に眉を下げた彼がこちらを見つめてきたので微笑んでおく。
「どうしてそこまで俺に?」
「危険な場所に飛び込もうとする人がいたら止めない? ……まあ、きみの物を壊してしまった償いも込めてる」
「……ああ、そうだったのか。あなたは悪くない、償いなんて必要ない」
彼の言い分に僕は不器用だなと思った。僕の言葉通り償いを盾に、こちらをこき使うことだって出来るのにそれを簡単に捨てる彼をますますここで見捨てるべきではない。
「きみには必要なくても俺にはいるんだ……。きみは同行の件が解決して、俺は償いが出来る。そして本当にきみを心配しているんだよ」
頷けと僕は彼を見つめ念じる。
彼は答えを出すのに時間がかかったが念じたのが通じたようで「お願いするよ……」と頷いた。
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