君と見た黄昏の夕焼け

霧野新庄

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繋がれたバトン

暗い、暗い闇の中

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「誰か誰か!茜を茜を助けてくれ!」

「誰か!誰か…!」

一体何時間叫び続けたのだろう。
真司の声はもうカラカラに枯れていた。

「やばい日が、日が落ちる」

どうしてか真司はこの場所にいてはいけない気がした。

「ガン、ドンドンドン!!」

「!」

『やばい、やばい』

「茜、茜起きろ!!ここに居たら、何か何かやばい事が起きそうだ」

「ガチャ」

2人がいる屋上の扉が開いた。

扉の方に何か、何かがいる。

『助けてくれ…誰か…』 

真司は涙を必死に堪え、名もなき誰かに懇願した。

「真司!!」

「え、康さん!?」

「おい真…茜!…真司、ここは危ない、早くここから逃げろ。悪魔が、、、」

「康さん…」

「いいから、早く立て!!
茜は俺が担ぐから」

「う、うん…」

真司は涙を拭い、訳がわからないまま、彼の後を追った。

「康さん!おいあれ!」

「ッ!」

「こっちだ!」

康さんが強引に腕を引っ張る。

階段を駆け降りる際、ちらりと見えた黒い影、人の形をした、黒い影。人…か?

「康さん、なんなんだよこの状況!」

「逃げろ!とにかくここから逃げろ!」

康さんはただ黙って逃げろと指示する。

「チッ、挟まれた」

3人は黒い、人影に挟まれ、身動きが出来なくなっていた。

「康さん、こっち、ここに音楽室がある!」

「よし!俺のタイミングで中に入れ!」

「うん!」

「3、2、いまだ!」

「ドン!ドガ!ドガ!」

「いっつぅ!」

「おい、真司、大丈夫か?」

「うん。でも、大丈夫なの?あいつら」

「ああ、なーに、影だから中には入ってこれないさ」

「康さん、茜が…それに俺たち」

「ッ!真司、茜、悪かった…」

康さんは苦虫を噛み潰したような顔で神妙に俯いた。

「謝ってほしいわけじゃない!!この状況はなんなんだよ!」

「あぁ…」

「康さん、もう隠し事はしないで」

「…」

康さんは辛そうな表情で話を始める。

「真司、清水川中学校2年C組の厄災の話は知ってるか?」

「うん、茜と愁平が通っていた中学校だよね?」

「そうだ。そこである女の子が行方不明になった」

「青木陽菜」

「あぁ、彼女はな、赤ん坊の頃、島に流れ着いたのは真司も知っておるな?」

「うん」

「それがいけなかったんだ」

「え…」

「彼女は悪魔を呼び寄せてしまった」

「どういうこと?」

「この島にはな、昔、平氏の生き残りが住んどったと言われている」

「それが彼女とどう繋がりがあるの?」

「青木陽菜はあろうことか、源氏の末裔だったのだよ。この島には昔から多くの漂流物が流れ着いてくる。それは物だけではない、人の魂もだ」

「人の魂…」

「ああ…」

「江戸崎には平氏の魂が多く漂っている。中には幼くして亡くなった安徳天皇も祀られている」

「青木陽菜が源氏の末裔だからそれを排除しようと、亡き魂たちが影となって入ってきたってこと?」

「物事はそんな単純なことではない」

「彼女は、あろうことか、平氏が祀られている墓の石碑を壊し、彼らの遺骨を海に放り捨てたのだ…」

「どうしてそんなことを…」

「わしにもわからん。ただ、それからだ、江戸崎がおかしくなったのは…」

「最初はただ、
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