君と見た黄昏の夕焼け

霧野新庄

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始まりの厄災

すれ違う心

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 5時間目。真司は茜や愁平。2年C組気になることが多すぎて頭がパンクしそうになっていた。

「ガタン!バキッ!」

「!」

大きな音をたてて真司の斜め前の生徒が椅子から崩れ落ちた。

「おい!」

真司はすぐさま駆け寄った。

「どうした!?大丈夫か??」

「冷たい…」

真司が慌てて彼の脈をとると…

「死んでる…」

真司は辺りを見回すが、誰一人としてこの事実を機にかける者はいなかった。ただのひとりも、だ

ましてや「榊原くん!早く席に戻りなさい」と言われる始末だ。

「お前らは人間じゃない!」

真司は教室を飛び出した。真司はものすごい憎悪と怒りで、今にもはらわたが煮えくりかえるような思いだった。

「この学校は死んだ人間すら気にかけないような場所なのか!?担任もが!自分の生徒が、クラスメイトが死んだというのに!」

真司は屋上に駆け上がった。

「思ったよりも早かったみたい」

茜は先ほどよりも軽い口調で話始めた。

「クスッ。はははは」

狂ったのか、茜は声挙げて笑い出した。

「茜。何がおかしい?」

真司は少し感情的になりながら茜に問いかけた。

「ハハハハハ。だって、おかしいじゃない?」

「お前は!」

真司は茜の制服の胸倉を掴んだ。

「人が、人一人が死んだんだぞ!」
 
「真司!手を放して」

茜が真司の手を振り払った。

「一体…昔のお前はどこに行ったんだ!あんなに優しくて…明るくて、いつも俺たちを励ましてくれた…あの頃の笑顔溢れる茜は何処にいったんだよ!!」

真司は涙目になりながら茜に訴えかけた。

「あんたに何がわかるっていうのよ、、
ずっと何年間も東京に行ってて、帰ってきたと思ったら、早々怒り狂っちゃって…いつまでも友達ずらしないでよ!」

茜が泣きながらヒステリックに叫んだ。

「友達ずら…って…」

真司は怒ること忘れ、その言葉に絶望した。

「私達の縁は所詮そんなものだったのよ。真司。あんたに分かる?目の前で、愁平を…大切な人を失った気持ち」

「俺は…ただ」

「真司。少し頭を冷やしなさい。そして現実を受け止めて!」

「茜―」

「私達はもう子供じゃない。自分の身の回りに起こったことは全て自分たちで解決するの!!」

そう言うと茜は屋上から姿を消した。

『違う。あれはまやかしだ、茜じゃない。茜じゃない』

「これは夢だ。夢だ夢だ夢だ夢だ!!
ああああああああああああ!!」

「覚めろ覚めろ覚めろ!!」

「ガンガンガンガン!!」

「…………」

「ッ!」

『痛い…』

いつの間にか真司の掌は血で溢れかえっていた。

…あれから一体どれくらいの時間が経ったのかな?何時間のようにも、ほんの一瞬のようにも感じる

『そうだ…死のう、死ねば全て終わる…夢だ、これは夢なんだ…きっと俺は…』

真司は屋上の柵を乗り越えた。

『よし!』

『ドン!』

真司は正面から誰かに強く押された気がした。

『逃げるな!』

『逃げるな!現実から目を逸らすな!』

『誰だろう…頭の中に声が響く。聞いたことある、とてもやさしい声……は!愁平』

「愁平!どこ?どこにいるんだ!」

真司が辺りを見渡すと閑散とした景色に浮かぶ黄色い光目に映った。

「声は聞こえるんだ。そこに居るんだろう?俺の事からかってるんだろ?」

『真司聞け』

「愁平…」

『真司!!』

『ビクッ』

黄色い粒子から怒気を挟んだ声が真司の脳に鼓動する。

『真司、俺の肉体は病院で眠っている。これは君の、真司の脳に直接語りかけているんだ。真司…茜は、茜は…君のことを裏切ったわけじゃないんだ。ただ…今彼女の心は暗く、果てしない闇で閉ざされてしまっている。だから…だからお願いだ!!茜を暗い闇の世界から解放してやってくれ!!』

「でも…」

真司は言葉を濁らせた。

『真司。茜は今、ここ東雲高校一年C組で起こっている厄災の渦中にいる。だから、二人で力を合わせてこの厄災を、悲しみの連鎖を終わらせてほしい』

「でも、どうやって?それに…俺は、俺は早く愁平に…愁平に会いたいよ」


『ポロ…ポロ』

真司の目から大粒の涙が零れ落ちる。

『泣くな!今は泣いてる時じゃない。俺だって…俺だって同じ気持ちなんだ!!時が来ればまた三人で必ず会えるさ」

愁平の声は優しく、真司の心を奮い立たせた。

『ポロ…ポロ…』

「グスン。約束だぞ!!』

真司は涙でぐしゃぐしゃになった顔を自分の手で拭った。

『ああ。そのためにもこの厄災は終らせなければならない。俺たちがまた出会い、笑いあうためにも』

「愁平。任せてくれ。お前の、大切な友の頼みだ。絶対成し遂げて見せる」

真司は小さな拳を前に突き出して愁平との約束を固く誓った。

『聞いてくれ真司!!これは俺の憶測だが、厄災を終わらせることができたら、俺はきっと意識を取り戻せる』

「愁平それ、ほんとなのか!?また、愁平と茜と3人で…」

真司は嬉しさのあまりうわずってそれ以上声が出なかった。

『あぁ…必ずまた、3人で会え…悪い真司…どうやら…俺の魂の限界がきたみたいだ…茜はきっとあの場所にいる…」

「待って!!愁平!まだ話したいことが山ほどあるんだ!!頼む…消えないでくれ、俺の前からいなくならないでくれ」

『大丈夫…お前…なら…きっと…』

「あぁぁぁぁ!!愁平!!」

愁平の声が途切れると同時に黄色の粒子が四方へと霧散した。

『カタン』

「ん?」

真司は手首で鼻を啜りながら何が小さなものが落ちているのを見つけた。

『あ!これ!愁平があの時くれた、3人のお揃いのミサンガ…』

愁平のミサンガはもうボロボロで黒く荒んでおり、元の色が分からない程に変色していた。

「愁平…ありがとう…お前が繋いだこのバトン…今度は俺が繋ぐからな」

気のせいだろうか?真司は、今までどんよりと曇っていた空に一筋の虹がかかったのを見つけたのだった。
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