君と見た黄昏の夕焼け

霧野新庄

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始まりの厄災

変わってしまった友

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『ダッダッダッダ』

「茜!」

彼女はその場にたたずんでいた。ただ、江戸崎の景色を眺めて。

「真司?」

彼女は振り返らずに問いかけた。

「ああ。俺だ、茜。説明してほしいことがたくさんあるけど…愁平、愁平はどこにいるんだよ?ここに来た時から一度も会ってないんだ…」

「うん…じゃあちょっとこっち来て」

茜はか細い声で言った。真司は茜の横顔を見た瞬間、血の気が引いた。彼女の顔はとても蒼白で、生気が感じられない、まるで人形のようだった。

「茜!おい茜!どうしたんだよ?その顔!以前のお前はもっと…」

真司は口を詰んでしまった。

「ごめんね…ごめんね…」

彼女は眉一つ動かさず、ただ、ただ、涙を流し、ごめんね…ごめんね…と繰り返した。

「いい!謝らなくていいから!」

真司はそっと茜を抱きしめた。

「真司…」

茜が重く閉ざしていた口を開いた。

「真司。愁平はいないの…」
  
「いない!?どうして?」

真司は感情的になって茜の肩を振り回した。

「真司…痛いよ…」

茜の声はとてもか細く、その言葉が何を物語っているのか真司にもわかった。

「ごめん…」

「愁平はね、今、病院で眠ってるの」

茜の声は本当に悲しくなるように乏しかった。

「病院…どこか具合でも悪いのか横に振った。

「愁平は二年前の厄災に巻き込まれたの…」

「厄災…それは自然災害とか…海難事故とか…?」

茜はまた無言で首を横に振った。

「厄災とは、私たちの2年C組で起こったことなの…」

「C組?でも…この学校は1クラスしかないよね?」  

「いいえ、前は3クラスあったのよ」

「じゃあ…なんで?」

「真司は何も知らないのね…?初め、あなたがここ、江戸崎に来た時、康さんが迎えにいったわよね?」

「え、う、うん」

「康さん、少し変じゃなかった?」

「変?まあ、言われてみれば…何かに怯えているようだった」

「もしかして…康さんもその厄災について関わっているの?」  

「関わっている、というよりは知っている。かな」

「茜。教えて!愁平のこと、この学校のこと全て!」

真司が語気を強めた。

『コクン』

茜は無言で頷いた。

『キーンコーンカーンコーン』

チャイムがなった。

『ガタン』

屋上のドアが開く音がした。

「あーここにいたの?ったくいい加減にしてよ、こっちだって忙しいんだからさぁ!」

担任の教師が真司を連れ戻しに来たのだ。

「先生。待って!茜が…」

彼女は問答無用で真司を引っ張っていく。

「茜―」

「真司。時が来ればあなたも分かるわ」

茜は小さく呟いた。
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