7 / 12
始まりの厄災
壊された歯車
しおりを挟む
次の日。
「んー。今日は待ちに待った。再開の日だー!あいつら元気にしてるかな~?」
真司は嬉しさのあまりほとんど寝付けなかった。
『ガラガラ』
「行ってきまぁーす」真司は誰もいない家に声をかけ、飛び出した。
『ん?』
真司は島の違和感に気が付いた。彼は学校に行く道中。ほとんど、いや。一人の生徒とも出会わなかったのだった。
『あれーみんなもう行ってるのかな?っというか、江戸崎ってこんなに人が少なかったかな?』
『ガラガラガラ』
真司が力強くドアを開けた。
「おっはようございまーす」
『なんだぁ。みんなもういるじゃん。心配して損したー』
クラスのほとんど全員が、もうすでに着席していた。
これはまだ、序章に過ぎなかった。真司はこれから変わってしまった江戸崎の悲しい真実を知ることになる。
『キンコンカンコーン』
チャイムの音が教室中に鳴り響く。と、同時に一人の少女が席を立つ。見覚えがあった。
「茜―!」
彼女は一瞬ビックリしたような顔をこちらに見せたが、構わず走り去って行く。
「待てよ!」
真司が彼女の腕を掴んだ。
「触らないで!」
「え…?」
「ごめん…」
彼女の目には涙が浮かんでいた。彼女の手がするすと真司から離れていく。
真司はわけもわからず突っ立っていた。
『え?なんで?茜。俺…』
真司の目から自然と涙が零れ落ちる。
「あれ?なんでだろう?俺。何で泣いてるんだろう…なんのために、誰に会いに帰ってきたんだろう…」
『ダッダッダ』
「君?転校生の榊原真司君?駄目じゃない!転校初日で授業さぼったら!」
「え?でも茜が…」
「茜?誰のこと?言い訳はいいから早く戻りなさい!」
『誰ってなんだよ!あんた茜の担任だろ?ほっとくのかよ!』
真司は動転のあまり声にならない声で叫んだ。だが、その教師は有無を言わせず、真司を連れ戻した。
教室に戻った時。彼は思った。
『何もさっきと変わっていない』
机や椅子の配置は当たり前だが、何より誰一人として動いた形跡がないのだ。
元々、真司はずば抜けて感性や洞察力が優れているわけじゃない。だが、明らかに誰一人として微動だにした形跡がないのだ。教室にいる全員がただ、人形のように椅子に座っている。真司はその光景に怖くなった。
「ほら早く座りなさい!」
担任の教師が真司に向かって言った。真司は仕方なく自分の席についた。
時間は刻刻と過ぎていった。二時間目。三時間目。しかしながらその光景は変わらなかった。
『この人たちは生きているのか?』
真司はふと右隣の女子生徒に声をかけてみた。
「すみません。この学校っていつもこんな感じなんですか?」
「……」
返事がない。彼女はただ、ぼぉーっと前の一点を見つめている。真司ははじめ無視されているだけだと思い、今度は左隣の男子生徒に声をかけてみた。
「あのー無視しているだけなんですよね?」
「……」
またしても返事がない。彼も同じくただ一点を眺めている。真司は自分がおかしいのではなく、周りがおかしいことに気が付いた。
四限が終わり。担任の目が離れたところで真司は屋上に向かった。数時間前、真司は茜を追いかけ、屋上に上がったのを目撃したのだ。
「んー。今日は待ちに待った。再開の日だー!あいつら元気にしてるかな~?」
真司は嬉しさのあまりほとんど寝付けなかった。
『ガラガラ』
「行ってきまぁーす」真司は誰もいない家に声をかけ、飛び出した。
『ん?』
真司は島の違和感に気が付いた。彼は学校に行く道中。ほとんど、いや。一人の生徒とも出会わなかったのだった。
『あれーみんなもう行ってるのかな?っというか、江戸崎ってこんなに人が少なかったかな?』
『ガラガラガラ』
真司が力強くドアを開けた。
「おっはようございまーす」
『なんだぁ。みんなもういるじゃん。心配して損したー』
クラスのほとんど全員が、もうすでに着席していた。
これはまだ、序章に過ぎなかった。真司はこれから変わってしまった江戸崎の悲しい真実を知ることになる。
『キンコンカンコーン』
チャイムの音が教室中に鳴り響く。と、同時に一人の少女が席を立つ。見覚えがあった。
「茜―!」
彼女は一瞬ビックリしたような顔をこちらに見せたが、構わず走り去って行く。
「待てよ!」
真司が彼女の腕を掴んだ。
「触らないで!」
「え…?」
「ごめん…」
彼女の目には涙が浮かんでいた。彼女の手がするすと真司から離れていく。
真司はわけもわからず突っ立っていた。
『え?なんで?茜。俺…』
真司の目から自然と涙が零れ落ちる。
「あれ?なんでだろう?俺。何で泣いてるんだろう…なんのために、誰に会いに帰ってきたんだろう…」
『ダッダッダ』
「君?転校生の榊原真司君?駄目じゃない!転校初日で授業さぼったら!」
「え?でも茜が…」
「茜?誰のこと?言い訳はいいから早く戻りなさい!」
『誰ってなんだよ!あんた茜の担任だろ?ほっとくのかよ!』
真司は動転のあまり声にならない声で叫んだ。だが、その教師は有無を言わせず、真司を連れ戻した。
教室に戻った時。彼は思った。
『何もさっきと変わっていない』
机や椅子の配置は当たり前だが、何より誰一人として動いた形跡がないのだ。
元々、真司はずば抜けて感性や洞察力が優れているわけじゃない。だが、明らかに誰一人として微動だにした形跡がないのだ。教室にいる全員がただ、人形のように椅子に座っている。真司はその光景に怖くなった。
「ほら早く座りなさい!」
担任の教師が真司に向かって言った。真司は仕方なく自分の席についた。
時間は刻刻と過ぎていった。二時間目。三時間目。しかしながらその光景は変わらなかった。
『この人たちは生きているのか?』
真司はふと右隣の女子生徒に声をかけてみた。
「すみません。この学校っていつもこんな感じなんですか?」
「……」
返事がない。彼女はただ、ぼぉーっと前の一点を見つめている。真司ははじめ無視されているだけだと思い、今度は左隣の男子生徒に声をかけてみた。
「あのー無視しているだけなんですよね?」
「……」
またしても返事がない。彼も同じくただ一点を眺めている。真司は自分がおかしいのではなく、周りがおかしいことに気が付いた。
四限が終わり。担任の目が離れたところで真司は屋上に向かった。数時間前、真司は茜を追いかけ、屋上に上がったのを目撃したのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
制服の胸のここには
戸影絵麻
青春
金田猛と氷室基子はともに曙高校の2年生。
ある日ふたりは”校長”から協力して極秘のミッションを遂行するよう、命令される。
その任務を達成するための条件は、搭乗者同士の緊密な心の結びつき。
ところがふたりはそれぞれ深刻な悩みを抱えており、特に基子は猛に全く関心を示そうとしないのだった。
猛はといえば、彼もまたある事件から己の性癖に疑問を抱くようになり…。
【完結】天上デンシロック
海丑すみ
青春
“俺たちは皆が勝者、負け犬なんかに構う暇はない”──QUEEN/伝説のチャンピオンより
成谷響介はごく普通の進学校に通う、普通の高校生。しかし彼には夢があった。それはかつて有名バンドを輩出したという軽音楽部に入部し、将来は自分もロックバンドを組むこと!
しかし軽音楽部は廃部していたことが判明し、その上響介はクラスメイトの元電子音楽作家、椀田律と口論になる。だがその律こそが、後に彼の音楽における“相棒”となる人物だった……!
ロックと電子音楽。対とも言えるジャンルがすれ違いながらも手を取り合い、やがて驚きのハーモニーを響かせる。
---
※QUEENのマーキュリー氏をリスペクトした作品です。(QUEENを知らなくても楽しめるはずです!)作中に僅かながら同性への恋愛感情の描写を含むため、苦手な方はご注意下さい。BLカップル的な描写はありません。
---
もずくさん( https://taittsuu.com/users/mozuku3 )原案のキャラクターの、本編のお話を書かせていただいています。
実直だが未熟な高校生の響介は、憧れのロッカーになるべく奔走する。前途多難な彼と出会ったのは、音楽に才能とトラウマの両方を抱く律。
そして彼らの間で揺れ動く、もう一人の友人は──孤独だった少年達が音楽を通じて絆を結び、成長していく物語。
表紙イラストももずくさんのイラストをお借りしています。本編作者( https://taittsuu.com/users/umiusisumi )もイラストを描いてますので、良ければそちらもよろしくお願いします。
「史上まれにみる美少女の日常」
綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる