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大人への階段
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「んー!Tokyo着いたー」
サンバイザーに半袖姿という格好の母が空に向かって叫んだ。
「雲一つない快晴の空。まるで空まで私達を歓迎しているよう」
母はこの上なく嬉しそうだ。
「あんまり騒がないでくれ、みっともない」
父は『ハア』と大きく溜息をついた。
「どうだー真司。東京は良いところだろー?」
「別に。江戸崎の方が空気もおいしいし、人もこんなに多くない。それに…なりより友達がいた。だから僕は東京が好きじゃない」
真司の声は、か細くとも強い意志が感じられた。
「愁平君も茜ちゃんもきっとうまくやっているさ。俺たちも新規一転、新しい自分になったつもりで頑張ろう。な?」
「…コクン」
父は誰よりも真司の気持ちを分かっているつもりだった。
「よーし。着いたぞーここが新しい我が家だ。そしてここから徒歩五分。ほら、あそこに丘が見えるだろ?」
「コクン」
「あそこにある学校が、真司が明日から通う小学校だぞ」
「…」
真司は相変わらずほとんど喋らなかった。
「ねえねえ。ここってなんか江戸崎みたいじゃない?」
「んー、そう言われれば…そーだな!確かに。あっちを見てみろよ。あっちには海が見えるぞー」
「えーどこどこぉー?わー!ほら、真司も見てみなさいよ。綺麗ねー」
【ポロ…ポロ…】
「え?え?ええ、どうしたの?真司」
真司は窓からの光景を見た瞬間。泣き出してしまった。
「あの景色」
真司は海岸の方を指さした。その光景は真司がいつも茜や愁平と見ていたあの夕日だった。
【ポロ…ポロ】
「うう。愁平。茜。二人とも元気かな?」真司が問いかけてきた。
「ああ。さっきも言ったろ?あの2人は強い。真司もいつか成長した姿を彼らに見せてやらないとな」
「うん!」
真司は東京で生きていくことを決意し、彼らにまた笑顔で再開できることを強く願った。この瞬間。一人の小さな少年が。また一歩。大人への階段を上がった瞬間だった。
サンバイザーに半袖姿という格好の母が空に向かって叫んだ。
「雲一つない快晴の空。まるで空まで私達を歓迎しているよう」
母はこの上なく嬉しそうだ。
「あんまり騒がないでくれ、みっともない」
父は『ハア』と大きく溜息をついた。
「どうだー真司。東京は良いところだろー?」
「別に。江戸崎の方が空気もおいしいし、人もこんなに多くない。それに…なりより友達がいた。だから僕は東京が好きじゃない」
真司の声は、か細くとも強い意志が感じられた。
「愁平君も茜ちゃんもきっとうまくやっているさ。俺たちも新規一転、新しい自分になったつもりで頑張ろう。な?」
「…コクン」
父は誰よりも真司の気持ちを分かっているつもりだった。
「よーし。着いたぞーここが新しい我が家だ。そしてここから徒歩五分。ほら、あそこに丘が見えるだろ?」
「コクン」
「あそこにある学校が、真司が明日から通う小学校だぞ」
「…」
真司は相変わらずほとんど喋らなかった。
「ねえねえ。ここってなんか江戸崎みたいじゃない?」
「んー、そう言われれば…そーだな!確かに。あっちを見てみろよ。あっちには海が見えるぞー」
「えーどこどこぉー?わー!ほら、真司も見てみなさいよ。綺麗ねー」
【ポロ…ポロ…】
「え?え?ええ、どうしたの?真司」
真司は窓からの光景を見た瞬間。泣き出してしまった。
「あの景色」
真司は海岸の方を指さした。その光景は真司がいつも茜や愁平と見ていたあの夕日だった。
【ポロ…ポロ】
「うう。愁平。茜。二人とも元気かな?」真司が問いかけてきた。
「ああ。さっきも言ったろ?あの2人は強い。真司もいつか成長した姿を彼らに見せてやらないとな」
「うん!」
真司は東京で生きていくことを決意し、彼らにまた笑顔で再開できることを強く願った。この瞬間。一人の小さな少年が。また一歩。大人への階段を上がった瞬間だった。
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