君と見た黄昏の夕焼け

霧野新庄

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いざ、東京へ

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「見ろ、俺たちの故郷があんなに遠くに見える」船の波風が家族3人になびいている。

「真司。もういいぞ。よく頑張った。えらいぞ」

父が優しく真司の頭に手をかける。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ。お父さん!お母さん!」

真司が心の中にため込んでいたものが一気に溢れ出した。

「ああ。えらかった。もういいぞ。好きなだけ泣け」

「グスン」

思わず母までもがもらい泣きをしてしまう。

「おいおい…お前まで泣いてどうするんだ」

「だってぇ」

母がまるで子供のように言った。

「でも…やっぱり真司には悪いことをしたな。親の事情で遠い未知の場所へ連れていかれるんだから」

「なーに今頃弱気になっているのよ!これから私達の新しい生活が始まるのよ」

母が弱気になっている父の背中をおした。

「んーそうだったな!ここからが本当のスタートラインだ」

父は伸びをしながら言った。

「そうよ!」

「でも、その前にその顔なんとかしろよな笑」

「え?」

母は先ほどの涙で化粧が落ち、顔がぐしゃぐしゃになっていた。

「あらやだ、わたしったら。ちょっとお化粧直してくるわ」

「ああ」 

「真司。これから辛いことも悲しいことも沢山あるかもしれない。一つ一つ家族で乗り越えていこうな」

父は黄昏の夕日に向かって考えを露わにした。
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