ヴィトンの黄色いエピ

雨音調

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3月9日

少しずつ暖まる朝

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始業時刻は9:00なのに、早い人は7:30頃、そこからぽつぽつと人数が増えて、8:30にはほとんど全員出社しているような職場。流行りのITでもなんでもない古風な保険会社ってこんなもんだ。世の中がいくら変わろうと会社が叫ぼうと、4、50代は絶滅したはずの団塊世代とやらのクローンだらけだ。僕らの少し後、毎日ラスト集団で8:30ギリギリに出社する若い奴らの考え方や感受性はわかっているつもりとか言うところがまた始末が悪い。僕もその始末の悪い世代に、こっちへおいでと呼ばれる歳になり、ささやかな抵抗で、うっかり早く着いた日は会社近くのマクドナルドで時間調整している。


昨日のことがあって、今日はいつもの時間の電車に乗ることに昨夜からこだわっていた。シャワーのあと、念入りに歯磨きして、体や服の匂いをチェックした。

いつもの各駅停車に乗った。千歳烏山駅で、彼女が毎日あの時間の電車に乗るとは限らないし、あんなことをされたのだから時間と乗車位置を変える可能性も高い。そんなことを考えながら車窓から外を眺めていると、ひとつ前の仙川駅でホームに立つ彼女の姿を発見した。彼女を少し通り過ぎて電車が止まり、彼女は4号車あたりから乗り込んだようだ。そうか、自宅は仙川なんだ……。学生の頃、そこに住んでいたというだけだが、妙な親近感を勝手に抱いた。そして、今日も次の千歳烏山駅に着いた。4号車3番ドアの乗車位置に向かって50mほど、ホームを歩く。

昨日と同じところに彼女は先に並んでいた。彼女の横に並ぶ。今日も黄色いバッグに白いスプリングコート、一瞬、チラッと僕の足下を見た。向こうも気づいた様子。
この駅は、新宿方面と調布方面が線路を挟んで別々になっていて、東西に走るこの路線で朝の新宿方面行きのホームに立つと左前方から太陽の光があたる。この時間、影を作ることのない柔らかな光が差し込んでくる。太陽の光を浴びた白いコートの彼女が少しずつ朝を暖めているように見えた。
ホームに急行電車が入ってきて停車する。彼女より一歩先に後ろ向きに乗車して、彼女のスペースを作る。彼女もごく自然にそこに後ろ向きで入ってきたので、僕はバッグを正面で下げて持って彼女に後ろから密着するカタチになった。彼女に続いてまだ数人が背中から乗り込んでくる。僕の後ろも女性が背中合わせ、最高のポジション取りが出来た。これなら左右だけ気をつければ誰にも気づかれない。
電車が動き始める。
昨日の地下鉄でコートにスリットがあることがわかっているので、躊躇わずにそこからから手を差し入れる。スカートは昨日よりは長いが、たくし上げる必要もないくらいの軽いフレアスカート、いきなりお尻のすぐ下、太腿の柔らかいところに触れるとしっとりと潤った皮膚、ストッキングは気のせいかもしれないが、昨日より更に薄い気がした。ショーツのラインを確認したあと、指を伸ばすとそこは中がとろけているような柔らかさ、すでに熱く濡れているようだ。いきなりの少々乱暴な指使いも拒まず、オマンコの佇まいもわかる。たぶん今日もクロッチ部分に縫い目や重ね縫いのない下着だ。
昨日のこの区間では、手の甲で振動を加えただけだったが、今日は最初から指を使っている。ビラビラの佇まいも、クリトリスの突起も、彼女の汁が溢れている膣口も、なんとなくわかる。本当は両手で責めたいところだか、さすがに周りにばれかねない。肩を静止したまま手首から先だけを回転されるように激しく動かし続けると、昨日と違う激しさに怖くなったのか、少し逃げるそぶり。でも、たぶん諦めたのか、大きな息づかいと安定した姿勢をとったことで、快感を受け入れているのがわかる。そして数分後、桜上水で停車する直前、ガクガクっと身体を預けてきた。昨日と同じ、腰が砕けてO脚になっている。そのまま続けて、
明大前駅で一旦、ホームに押し出されて、もう一度乗り込む。さっきほど混んでないから、ただ近くをキープするのみ。次(地下鉄)がまだあるから、って思っていると、彼女が僕の方を見上げていた。しまった、会社のバッジを見られてる、そんな気がした。
地下鉄に乗り換えてからは真後ろに立って押しつけるだけにした。これほど混むのは新宿までの数分間だし、そもそも京王線ほどは混んでないのでここで手を差し込むのはやはり危険だと思いなおして、固くなったペニスをいろんな向きにして押し付けた。彼女がふり払うふりをして触ってくるのも期待したけどそれはなかった。ただ拒絶していないことは確信できた。


そんなことが週に2回か3回続いた。バッグは黄色いヴィトンのエピ、全身から高級そうな艶かしさ、顔は薄幸そうな北川景子、かなりの美人、丸の内のOL風、仕事もできそうだ。流されやすいタイプにも見えない。こんな女が痴漢されて下着を濡らし、トイレで自分で慰め、汚れた下着と臭いオマンコのまま仕事をしてることを想像する、まあ想像に過ぎないかもしれないが…。
しかしそんな恥ずかしめを決して拒絶していないのは美人の余裕なのか、吹っ切れてるオンナなのか。本当にぺニスで突いて、正直なところを言わせてみたい。
そんなことが続いたのは適度に生殺しなのがよかったのかもしれないし、生理の時はしないという安心感もあったのかもしれない。もう、友達のような気がして、それを失なうのもこわかった。だから続いたのだと思う。

それからしばらくいろんなことをした。
パンツスーツの時はファスナーを下ろして前から責めた。ほかの痴漢から守ってるあげたこともあった。バレバレで必死な感じのやつだったから。向かい合った時、彼女のバッグを持つ手に勃起したぺニスをズボン越しだけど押しつけた時は少しだけ反応があった。手のひらを返して握るところまではいかなかったが、手の甲で形を確かめるような動かし方を繰り返してくれた。そんな向い合った時、いつも“終わった”あとで、彼女は僕の眼を見つめるようになったけど、気の弱い僕は目を逸らした、でも友達になれたような変な充実感を感じていた。そして、いつか、街で声をかけたいなと思うようになった。
拒否された触り方もあった。1つは胸をさわること、たまにいるけど、彼女も胸がとても敏感すぎるタイプだったのか、それとも僕の触りかたが下手だったのだろうか。
もう1つ、直接触ること。パンツスーツの前から触ったときはストッキング無しで、お腹の方から下着に手を入れようとして拒まれ、下着の上から触った。ちょっと残念だったけど嫌がることは絶対にしない。
前からだとワレメやクリが下着の上からでもはっきりわかるし、彼女も逃げたり押し付けたりして腰を振っているようだった。パンツスーツに染みたかもしれない。
彼女のオマンコの匂いがたまらなかった。臭くはないけど、メスの欲情した匂い。勃起する匂い。僕の匂いも嗅がしてあげたかった、きっと好きだよね、あの匂い。


そしてその日、いつものように後ろから責めていたけど、なんだかその日は思い切りが良くなっていた、理由はわからないけど。
直接がダメならと、彼女の薄くて伸縮性の高いストッキングを指に被せるみたいにして、下着の脇から侵入した。ショーツの股の部分は片側に完全に寄せらせて、ほぼ直接触るのと同じ、クリを擦ると繊維のせいでかえって刺激が強すぎたのか、この時は振り返って目で訴えてきた。もう、ダメって。
でも、ダメなのか、奥まで入れてほしくてどーしようもなくなったか……。たぶん、欲しくてひくひくしてたのかもと思う。いままでもそうだったのかもしれないけど、ほぼ直接だから濡れかたが凄くて。ストッキングの腿のあたりまでびしょびしょ……。そしていつものように見つめてきたけど、泣いているような目をしていた。傷つけてしまったのかもしれない……その目を見た時は罪悪感でいっぱいになった。
電車が駅に着いて、どっと人がホームに押し出される、
と、その時、スーツの裾を掴まれた!

焦った、ヤバい、このままじゃ人生終わりだ!!本当に気持ち悪い汗が流れた。振り切って走り去ろうかとも考えた。でも彼女を見ると、無言で、虚ろな視線は斜め下にあった。

スーツを掴んでいた手は離してくれた。
何か言わなきゃ、と思ったが、ホーム反対側に乗り換える地下鉄の電車が入ってきたので無言のまま並んで乗車した。通路に入り、彼女は吊革、僕は真後ろにぴったり付く。いつもと同じ位置関係だ。
が、とても押しつけなんかできる“状態”じゃない。でも逃げたりはしないほうがいいという気がした。無言で、ガラスに映る彼女の目を見つめたまま約10分で僕の降りる駅に着く。電車がホームに入った時、彼女の耳元で、ささやくように言った。
「今日は酷いことしてゴメンね。こんどお詫び、なにか考えるよ」
ドアが開いて、僕が離れる時、電車のアナウンスやら駅のザワザワにかき消されていたけど、
「はい」
彼女は確かに言った。
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