鋼鉄の棺を魔女に捧ぐ

立川ありす

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第2章 魔帝と仔猫と栗鼠と

初陣

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『こんなところに工場を作って篭っていたのね! 小ざかしい!!』
 高層ビルの頂上で、拡声器ごしに【猫】は叫ぶ。

 廃墟に偽装されたレジスタンスの基地を見下ろす。
 眼下の各所には新たに編成した殲滅部隊が配置済みだ。
 敵兵力をあぶり出すべく牽制しつつ、一斉攻撃の合図を待っている。

『攻撃部隊を全滅させ、ゴートマンの釈尊まで墜としたゲリラども! でも今度は、さっきみたいにはいかせない!! 全部隊、攻撃――』
 ――開始。
 と合図を出す直前、何かが光った。

『あれは! ……まさか!?』
 拡声器ごしに漏れる驚愕。
 殲滅部隊の真っ只中に、流星の如く輝く何かが流れ落ちた。

 鮮やかなワインレッドの流れ星――スクワールのコックピットで、

「やっこさんも、いよいよ本気みたいだな! あたり一面ソードマンだらけだ!」
 ひとりごちつつ舞奈はスロットルを引きしぼる。
 射出用カタパルトを使い、群成す敵軍の真っ只中に降り立ったスクワール。
 だが新品のシートに座る舞奈の口元には余裕の笑みすら浮かぶ。

『嬢ちゃん、調子はどうじゃ?』
 通信モニターにサコミズ爺が映しだされる。
 スクワールのコンソールパネルにはカリバーンに比べてはるかに多い計器やメーターが並んでいて、戦車というより航空機のそれに近い。

『さっきも言ったが、ヴリル・ドライブの出力はPKドライブとは桁違いのハイパワーじゃ。代わりに異能力は使えない』
「安心しな、そんなの使ったためしもないよ!」
 舞奈は不敵に笑い、引鉄トリガーを引く。

 鋼鉄の栗鼠が、小ぶりな両腕に握られた拳銃低反動砲を乱射する。
 否、乱射にあらず。
 如何な妙技によるものか、放たれた砲弾は襲いくるソードマンたちの車体をあやまたず撃ち抜く。

 ソードマンの挙動を泥人間に、カリバーンを異能力者に例えるならば、スクワールは純然たる鋼鉄だ。
 操縦桿を握る舞奈の手管を、意図を、誤魔化すことなく機体に伝える。
 それは、まるで異能力も魔術も使えない舞奈が熟達した拳銃ジェリコ941の如く。
 あるいはアサルトライフルガリルARMの如く。

『武装は今撃ってる2門の低反動砲と、頭部カメラと連動した機銃。車体の後ろについとるのはウェポンベイじゃ。格納された武装の詳細はリストにして送った』
「頭は鉄砲で、尻尾は武器庫か? そいつは気前がいい!」
 モニターの中の老人に、ニヤリと笑みを返してみせる。

 そんな舞奈のスクワールに、突出したソードマン3機が肉薄する。
 機体を高速化する【狼牙気功ビーストブレード】。

 3機のソードマンは異能力で速度を増した無限軌道キャタピラで爆走。
 そうしながら【火霊武器ファイヤーサムライ】によって灼熱する斬撃を続けざまに繰り出す。
 ……失われたかつての仲間のように。

 だが舞奈の口元には浮かぶのは悔恨ではなく笑み。
 ただし少しばかり剣呑な。
 操縦桿をひねり、ヒラリ、ヒラリと事もなげにかわしながら交差する。

「なんだそのヘッピリ腰は! 園香の親父さんの方がおっかなかったぞ!」
 軽口を叩きつつ後方を確認。
 視線の先で、ソードマンは再び突撃を見舞おうと高速でカーブを描く。
 対して舞奈もスロットルを引きしぼる。

 スクワールのかかとには巨大な車輪がついている。
 車輪には小型の推進装置スラスターがいくつもついている。
 その推進装置スラスターが一斉に光の粉を吹き、車輪をすさまじい勢いで回す。
 機動輪パンジャンドラムだ。
 その速度は異能力で強化された無限軌道キャタピラすらも上回る。

 両足の機動輪パンジャンドラムを駆って猛スピードで急反転、疾走。
 そうしながら鋼鉄の栗鼠は前のめりに車体を傾ける。
 地を駆ける獣のような体勢のまま、手近な1機めがけて突き進む。

「そーら、流れ星だ!!」
 栗鼠の耳から放たれた2門の機銃が、無骨な装脚艇ランドポッドの股に無数の穴を穿つ。

 次いで鋼鉄の栗鼠は残った2機にも襲いかかる。
 3機のソードマンが爆発する。

「お次はグレネード、セット!」
 口元に軽薄な笑みを作りながらボタンを操作。

 スクワールの両腕が、自動化された動きで拳銃低反動砲を尻尾の横に揃える。
 尻尾のサイドが開いてアームを展開し、砲身の下にグレネード発射器をセットする。

 舞奈は群なすソードマンたちの中心に照準をあわせ、引鉄トリガーを引く。
 白煙を吹きながら2発のミサイルが放たれ、群のど真ん中に突き刺さる。
 廃墟に爆音が響き渡り、ソードマンたちは大爆発に飲まれて消える。

 要はアサルトライフルガリルARMにつけるグレネードランチャーGL40と同じオプションである。
 だが装脚艇ランドポッドのサイズとなると威力は桁違い。
 砲撃というより爆撃だ。

「イヤァァァァァッヘェイ!! こりゃすごい火の海だ!!」
『ちっとは加減しな! 基地まで壊す気かい!』
「ははっ! めんごめんご」
 ボーマンの怒声に軽薄な笑みを返す。
 そんな舞奈とスクワールの前に、

『そこまでよ! 新型!!』
 拡声器からあふれる叫びとともに、4体の【猫】が踊り出る。

「へへっ、愛しのお姫様のお出ましだ」
 舞奈は笑う。

 4体の【猫】は、両足の推進装置スラスターを地面に吹かして光の粉を散らし、地を滑るようにスクワールの周囲を旋回する。
 ホバークラフトのようなものであろう。
 そして4体のうち、本物の【猫】は1機のみ。

 4体の【猫】の、それぞれの双眸から2条の加粒子砲グラムが放たれる。
 スクワールは避ける。
 6条は虚空に消える。
 車体をかすめた1条が背後のビルを穿つ。
 もう1条は車体の中心を射抜く。だが表面を蒸発させるに留まる。

『怯むな嬢ちゃん! 対ビーム気化装甲の前に、そんなビームなぞ屁でもないわ!!』
「サンキュー爺さん! 最高だぜ!」
 笑いつつ引鉄トリガーを構え、最も近い【猫】に照準をあわせる。
 先ほど『本物の』ビームを撃った1体だ。

 栗鼠は拳銃低反動砲を構えて至近距離に踏みこむ。
 砲口が火を吹く。回避不能。
 だが確実に本体を狙ったはずの砲弾は、幻を射抜いて虚空へと消える。

「こいつじゃないのか?」
 訝しむ。

 再び放たれた6条のビームを、機動輪パンジャンドラムを駆使したターンによって尻尾で受ける。
 ふり向きざまに2発。
 こんどは確実に見抜いたはずの『本物』と、保険のために狙った別の1体が同時に幻となって消える。

「っていうか、どれ狙ってもニセモノに当たるんじゃないのか!?」
 キレて叫ぶ。

 それでも【猫】は分身を失って1体になった。
 だからか推進装置スラスターから大量の光を吹き散らしながら高層ビルを駆け上る。
 分身を失った後は機体性能を生かして高所をとるのが彼女の戦法か。
 だが今や、空へと登れるのは彼女だけではない。

「ヒュー! 可愛らしい良いケツだ!」
 軽口を叩きつつ舞奈はスロットルを引きしぼる。
 機動輪パンジャンドラムがコンクリートのビル壁を削る。
 尻尾に内蔵された姿勢制御用の推進装置スラスターを最大出力で吹かし、力まかせにビルを垂直に駆け上がって【猫】の尻尾を追いかける。

「待ってくれよ、お姫様! あたしはあんたにゾッコン惚れちゃったんだ、装脚艇ランドポッドの尻尾じゃなくて、あんたの尻の匂いを嗅ぎたいんだ!」
 舞奈は無理やりに通信回線を開く。
 美少女に目がないからだ。

 それに1年前、廃墟の世界に放り出されてから、舞奈はずっと魔法を探していた。

 20年の時を超える方法を、舞奈は知らない。
 もちろんボーマンも、サコミズも知らない。
 ならば、舞奈がこの時代に来た意味を知る者は誰か?
 科学技術の枠を超えた神秘の御業を操る魔法使い、その中でも知性によって魔術の秘密を解き明かした魔術師ウィザード以外に有り得ない。

 だから舞奈は探していた。
 魔術師ウィザードを。
 恋い焦がれるように。

「せめて名前だけでも教えてくれよ! あたしは舞奈だ。志門舞奈!」
『ちょっと舞奈、戦闘中までそれかい?』
 ため息混じりのボーマンの文句を聞き流し、

「ヒューッ!! こりゃ眼福だ!」
 舞奈は口元に笑みを浮かべる。
 モニターに【猫】のパイロットらしき少女が映ったからだ。

 舞奈より少し幼い顔立ちをした、可愛らしい少女だ。
 長いツインテールをなびかせ、黒地に金の刺繍が入ったカッチリしたデザインの制服を着こんでいる。少女らしい容姿と無骨な制服のアンバランスさもたまらない。
 くりくりとした大きなつり目は、勝気な性格をあらわすようにつり上がっている。
 だが目じりが優しげに垂れているので不思議と威圧感はない。

『志門舞奈! ……志門舞奈ですって!?』
 モニターに映った少女は叫ぶ。
 次いで【猫】はビルの頂上で停止する。

 スクワールは勢いあまってジャンプする。
 だが推進装置スラスターを吹かせて体勢を立て直して屋上に着地する。
 今にも崩れそうなビルの屋上は、遠目で見るよりいくらか広い。

 そんな廃ビルの真上を滑空しつつ、【猫】は光の粉を振りまきながらふり返る。

『なら教えてあげる! わたしは真神レナ、おまえを――!』
 モニターごしに叫びながら【猫】は両腕を振りかざす。
 両の掌から飛び出た金属板をつかむ。
 金属板に刻まれたルーン文字が輝く。
 それが何をあらわすのかは無学な舞奈にはわからない。

『おまえを殺すために、ここに来た! 野牛ウルズ!!』
 魔術語ガルドルの一語で、突き出した両掌の金属片が粒子ビームと化して襲い来る。
 両目から放たれるそれより、はるかに大きい。

 だが舞奈は口元に笑みを浮かべて操縦桿をひねる。
 スクワールは2本のビームをステップで回避しつつ、2丁の拳銃低反動砲で【猫】を撃つ。
 砲弾は避けた【猫】の脚部をかすめる。

『きゃあ!! こ、この! 駿馬エフワズ!!』
 続けざまに【猫】は新たな金属片をつかむ。
 途端、その姿がゆらぎ、4機にぶれた。
 だが対する舞奈の口元には笑み。

「さっき分身の魔術か? マスターキー、セットだ!」
 叫びつつボタンを操作。

 再び栗鼠の両腕が拳銃低反動砲を尻尾の横に揃える。
 展開したアームがグレネードを取り外し、替わりに散弾のオプションをセットする。

 舞奈は2つの照準を、4機の【猫】の中心に向ける。
 砲声。
 スクワールが放った散弾が幻影をかき消し、【猫】本体を吹き飛ばす。

「機体の性能が同じなら、あんたはあたしに勝てると思うかい?」
『負けるわけないでしょ! おまえなんかに!! イサ!! ハガラズ!!』
 叫びとともに、【猫】の全身から凍てつくオーラがあふれ出す。

「しまっ……!?」
 舞奈は口元を歪める。

 様子からして先ほどまでとは桁違いの大技のようだ。
 魔術師ウィザードがそういう手札を隠し持っていることを舞奈は知っている。
 だが常識を超えた強力な魔術を、ここまで素早く施術できるとは思わなかった。

 冷気は周囲の水分を凝固させ、氷の刃と化す。
 装脚艇ランドポッドを砕くか潰すか切断するかといったサイズの巨大な刃が空にひしめく。
 その数、無数。

 次の瞬間、それらすべてがスクワールめがけて一斉に襲いかかった。

 舞奈はスティックに手をかける。
 だが、ここは広いとはいえビルの屋上。
 逃げ場はない。

 そう理解して唇をかみしめた瞬間、血のように赤い光が視界を支配した。

――我は力の宝珠メルカバー魔力王マスターを護るものなり

『な……!?』
 モニターから漏れる、驚くような少女の声。

 気がつくと目前に【猫】がいた。
 すばやくコンソールパネルに目をやる。
 スクワールに損傷はない。

 舞奈は首をかしげる。
 避け場のない屋上で、凍てつく刃の奔流をまともにくらったはずだ。
 現に周囲は氷原と化している。
 なのに奴が狙ったはずの、スクワールにだけは傷ひとつついていない。

 だが、予想外の状況なのは敵も同じらしい。
 通信モニターの中で、レナと名乗ったパイロットは驚愕に目を見開いていた。

『そうか、おまえが力の宝珠メルカバーを……』
 憎々しげにひとりごち、ギリリと音がするほど歯がみする。

『おのれ、撤退する!』
 そう叫び、推進装置スラスターから光の粉を吹いてビルを駆け下りる。

『聞こえるかい! 舞奈! ソードマンどもが撤退を始めたよ!!』
 通信機から、ボーマンの弾んだ声があふれ出す。
 レーダーを見やると、敵機を示す光点が散り散りになって基地から遠ざかっていた。

『嬢ちゃん! 指揮機をやったか!!』
 サコミズの歓声が通信機か聞こえる。
 だが舞奈は答えない。

「どういうことだ? あたしがあいつに憎まれるような何をした?」
 モニターを見やりながらひとりごちる。

「それに、なんだよ今の? なんだよ力の宝珠メルカバーって……?」
 答えのない問いを誰にともなく投げかけながら、ただ茫然と【猫】が去っていった虚空を見つめていた。

 そのようにして魔帝マザー軍が撤退した日の晩。

「やれやれ、今日は酷い目にあったぜ」
 横たわるソードマンの残骸に腰かけたまま、舞奈は廃墟から目をあげ、空を見やる。

 背後の基地では消耗した機体の修理と補充が急ピッチで進められている。
 そんな中で子供がうろうろしてても邪魔になるだけだ。
 なので舞奈は基地の外れでひとり、鉛色の空を眺めていた。

 天地を繋ぐ巨大な塔のシルエットが、朽ちたビルの群を見下ろすように起立する。
 魔砦タワー
 この戦争の元凶である魔帝マザーが座する最重要拠点だ。
 舞奈が、レジスタンスが倒すべき敵は、あの遠い塔の頂上にいる。

「まるでマーリンの塔だね」
「あんたの知り合いかい? カワイコちゃんなら、あたしにも紹介してくれよ」
 背後からかけられた声に、何食わぬ顔で答える。
 ボーマンは気を使ったのか足跡こそ忍ばせていたようだ。
 だが近づいてくれば舞奈は気づく。

「あんたの頭の中には、それしかないのかい」
 ボーマンは苦笑し、舞奈の隣に腰かける。

「残念ながら爺さんだよ。おとぎ話の魔法使いさ」
 ひとりごちるように話し始める。

「魔法使いマーリンは、魔法によって王の望みを叶え、王国に繁栄をもたらした。けど弟子にした女魔法使いにたぶらかされて禁断の魔法を教えちまったせいで、魔法の塔に閉じこめられて出られなくなったのさ」
「そりゃご愁傷様。で、その後、爺さんはどうなったんだ?」
「さあね、大昔の話なんだ。けど今でも塔の中にいるっていう奴もいる。楽園アヴァロンにある魔法の塔の中にね」
「そうかい」
 舞奈はひとりごちるような相槌を返し、再び空を見やる。

 天地を繋ぐ影の塔。
 魔砦タワー
 アヴァロン地点ポイントの中心にそびえ立つ、魔帝マザーの最重要拠点。

「なあ、ボーマン。魔帝マザーってのは、どんな奴なんだ?」
 何食わぬ調子で問いかける。

 舞奈は魔帝マザーの顔を見たことがない。
 それどころか舞奈は魔帝マザーについて何も知らない。
 1年の間、魔帝マザーの軍勢と戦い続けているのに。

「だいたい目的は何だよ? 圧倒的な魔力と戦力で世界を滅ぼして、征服して、その後の10年間はレジスタンスを狩ってただけじゃないか。訳がわからないよ」
 そう言って、側の女性を盗み見る。

 ボーマンなら魔帝マザーのことを知っているかもしれないと、ふと思った。
 魔帝マザーから宇宙の知識を盗み出したという彼女なら。

 だがボーマンは答えない。
 まあ当然だろう。
 魔帝マザーの行動は不可解すぎて、その目的を理解できる人間なんていないからだ。
 狂っているという風説がいちばんしっくりくるように思える。
 だが、そんな理由で所縁もない自分たちが払わされた代償を考えるとやりきれない。
 そう思って口元を歪ませる舞奈に、

「舞奈、あんたに望みってのはあるのかい?」
 ボーマンはひとりごちるように問いかけた。

 舞奈はボーマンを見やり、無言で先をうながす。
 妙齢の女博士は、暗い空の向うにうっすらと見える塔を眺めながら重ねて問う。

「あんたは、この戦いの果てに何があればいいと思う?」
「何だよ、やぶからぼうに」
 舞奈は誤魔化すようにそう言って、しばし虚空を見やる。

 自分が何を望んでいたのか。
 世界がどうあればいいと思っていたのか。
 舞奈はそれを、とうの昔に忘れていた。

 望みが叶った試しなんてない。
 だから手をのばしてつかめる範囲の外に想いを巡らせることを止めていた。

 平和で満ち足りた生活なんて知りようもない。
 だから愛銃ジェリコ941とともに銃弾と攻撃魔法エヴォケーションが交錯するスリルに身をまかせた。

 出会うすべての人々を守ることなんてできない。
 だから近しい人たちだけを守ることに喜びを見出した。

 母親の愛を得られないから無節操に少女を口説き、母性を感じさせてくれる彼女たちとのロマンスを愉しんだ。

 それだけあれば十分だった。
 それすらも、つまらないミスによって失われた。

 だから今は、レジスタンスの尖兵として装脚艇ランドポッドを駆り、魔帝マザーを討つ。
 やりたいことはそれだけだ。

 だから舞奈は普段と同じように、口元に乾いた笑みを浮かべる。
 そして夜闇に幻のように浮かぶ塔を見やりながら、

「……わかんないよ」
 ひとりごちるように、つぶやいた。

――――――――――――――――――――

 予告

 ある者は過去を呪う。
 またある者は過去を悔やむ。
 振り上げた拳の行き場を見定めながら、少女は砲火と魔術の狭間で今に苛立つ。

 次回『平穏』

 心の渇きを癒せるものは血ではなく、肉でもなく。
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