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第2章 魔帝と仔猫と栗鼠と
巨兵
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「……機体のほうが【火霊武器】だったか?」
舞奈は派手に四散炎上するソードマンに背を向ける。
そして3号機へと走り寄る。
「スプラ、無事か?」
通信機に向かって叫ぶ。
返事はない。
3号機は仰向けに倒れたまま動かない。
舞奈は3号機と瓦礫の隙間にもぐりこむ。
肩口がビルに引っかかって斜めになっている。
なので砲塔の背面に位置するコックピットハッチの下には隙間がある。
幸いにもハッチは無傷だ。
近くの瓦礫を足場にハッチの横のカバーに跳びつき強引にこじ開ける。
中に収められていた人間サイズのレバーを引いて、強制的にハッチを開ける。
「おっと」
真下に開いたハッチからスプラが降ってきた。
避けた舞奈の横に転がり落ちる。
年若い小柄な少年を一瞥する。
オープンタイプのヘルメットに血がにじみ、やわらかな茶髪を濡らしている。
息はあるが意識はない。
舞奈はスプラの側にしゃがみこみ、頬を拳で5往復殴る。
「う……ここは……?」
鍛え抜かれた舞奈はパンチの威力も相当だ。
その甲斐あって少年は目覚める。だが、
「い、痛い、イタイ! 足が、ボクの足がぁぁぁ……!?」
彼は見た目にはなんともない片足を押さえてうめく。
強打された頬ではなく。
「フィードバックの副作用だ。安心しろ、頭以外は無事だ」
舞奈は努めて冷静に諭す。
装脚艇の動力であるPKドライブは、機体の動作をも司る。
原理は不明だが、パイロットの意識と半ば同調して挙動の調整を行なうのだ。
フィードバックと呼ばれるこの作用によって、パイロットは操縦桿を握って大まかな動作を意図するだけで装脚艇を操作できる。
機体の破損に痛覚が反応する現象は、その副作用だ。
「それより動けるか? 後はあたしが何とかする」
「うぅ……。ま、舞奈? 装脚艇の操縦なんてできるの……?」
「1年間みっちり練習させられたからな。車庫入れくらいはできるさ」
「しゃこ……? そっか、なら頼む。恩に着るよ」
提案に、少年は素直にうなずく。
自身の身体も相当なダメージを受けているのはわかるのだろう。
近くにあったマンホールの蓋を開け、よろめきながら降りる。
下水道を伝ってアジトへ戻る算段だ。
舞奈は入れ替わりにコックピットへ登る。
横向きになったシートに無理やりに腰かける。
レバーを操作して背後のハッチを閉める。
装脚艇の数が不足しているために斥候に徹していた舞奈。
だが、平時に練習がてら動かしたことがある。
ボーマンの厳しい指導を思い出しつつ、視界いっぱいにひしめく計器やスイッチを操作して起動シーケンスを開始する。
――ハロー、マスター
脳裏に声が響く。
パイロットとPKドライブの同調――フィードバックの前兆だ。
フィードバックによる同調の度合いには相性がある。
装脚艇と最も深い絆を結べるのはボーマン曰く、機体に『似ている』少年たちだ。
これこそが、元自衛隊員や民間軍事会社の傭兵すら擁するレジスタンスの精鋭を差し置いて、年端もゆかぬ少年たちが主戦力を駆る理由である。
だが舞奈は3号機に『似ていない』。
舞奈は女だし、異能力も持っていない。
年不相応に生意気でひねくれ者な舞奈と、似た者なんて過去にも現在にもいない。
だから機体の積極的な協力を得られぬまま四苦八苦しつつ、それでも起動シーケンスを終わらせる。
――僕は【雷霊武器】
「――知ってるよ」
舞奈はコンソールパネルの隅に刻まれた『RAITO』の文字を撫でる。
口元に乾いた笑みを浮かべて操縦桿を握り、機体の体勢を立て直す。
レーダーを見やる。
装脚艇の反応は敵味方あわせて5。
自機以外の味方は2機。
出現した敵は8機。
うち2機は撃破済みだから、敵か味方が3機撃破された?
だが気配を感じ、舞奈は操縦桿をひねる。
黄頭の巨人は瓦礫を蹴散らし横に跳ぶ。
機体と一心同体とはいかなくとも、カリバーンの反応速度はソードマンより速い。
ソードマンの緩慢なそれを泥人間に例えるならば、カリバーンの動きは人間の異能力者並みといったところか。
そんなカリバーンの残像を斬り裂くようにソードマンが出現する。
斬り損じた太刀を振り抜いたポーズのまま。
側に、剣を構えたもう1機が姿をあらわす。
レーダーにも反応が2つ追加される。
敵機はすべて【偏光隠蔽】だから、当然ながら新手もそうだ。
慣れぬ機体の前に立ちふさがる2機のソードマン。
だが、舞奈の口元には不敵な笑みが浮かぶ。
「来たのが5機じゃないってことは、バーンとピアースは上手くやってるってことか」
舞奈はレバーを押しやる。
鋼鉄の手が剣を投げ捨て、車体の横にマウントされた低反動砲をつかむ。
戦車の砲塔についているような短砲身の滑腔砲も、装脚艇が持つと拳銃だ。
『この距離で砲撃だと? 素人が!!』
叫んだソードマンが太刀を振り上げた瞬間、車体に風穴。
教本では愚策とされる、だが舞奈が得意とする至近距離からの正確無比な早撃ち。
それが巨人の急所を無慈悲に穿ったのだ。
3号機は足元の無限軌道を唸らせ、素早く敵機に走り寄る。
「いらないなら、あたしが使ってやるよ」
舞奈は拡声器ごしに言い放つ。
空いた手で腰の拳銃を奪う。
直後、駆け抜けたカリバーンの背後でソードマンが爆発した。
同時に残る1機が霜をふりまく剣を振り上げて突撃してくる。
舞奈は敵機の中心に2つの照準をあわせる。
カリバーンは振り向きながら両腕の拳銃を構える。
引鉄を引く。
2丁の拳銃が火を吹く。
直撃を受けた【氷霊武器】が倒れこみながら爆ぜた。
異能の力を操り巨大な剣を振り回す鋼鉄の巨人。
だがそれは、乗り手を無敵の英雄にしたりはしない。
油断ひとつで、強固な鋼鉄の鎧は容易く鉄の棺桶へと変わる。
敵も味方も、自分も。
レーダーを見やる。
反応は5。
2機と1機が交戦中。残りの2機は動かない。
スロットルを引きしぼり、カリバーンを交戦区画へと走らせる。
21年前には数多の怪異たちが潜んでいた廃ビルの隙間。
そこを地上の新たな主となった鋼鉄の巨人が駆ける。
そして崩れ落ちた瓦礫を蹴散らし駆けつけた先。
3号機を出迎えたのは、真新しい装脚艇の残骸だった。
幸いにも暗緑色のソードマンだ。
歪な鋼鉄の塊の側。
不自然に隆起した氷塊の陰に、2機のカリバーンが身を隠していた。
「バーン! ピアース! 無事か!」
『乗っているのは舞奈か!?』
舞奈の叫びに答えるように、通信モニターに眼鏡をかけた細面が映る。
2号機パイロットのピアースだ。
『まあ、いい。1機は墜としたが、厄介な奴がいる』
通信を遮るように、爆音が氷塊を揺るがす。
青い頭のカリバーン2号機【氷霊武器】が手にした剣は、周囲の水分を凝固させて氷塊と化すことができる。
堅牢な氷の壁は、PKドライブの出力が許す限り無限に修復することができる。
だから重い砲撃に震えながらも、その陰に隠れる2機のカリバーンを守り抜く。
対するソードマンは、隠れる物もなく仁王立ちのまま、ライフルのように両手で構えた長砲身の低反動カノン砲を撃ちまくっている。
舞奈は舌打ちする。
敵は異能力で強化することのできない火砲を主武装にしている。
つまり剣や弓矢を強化する以外の厄介な異能力を持っているということだ。
『ったく! 撃ち合いなんか俺のガラじゃねぇってのに!』
モニターに、勝気そうなクセ毛の青年が映る。
1号機パイロットのバーンだ。
赤い頭の1号機は、砲声の合間を縫って氷の壁の端から拳銃を撃つ。
2発が側のビル壁を砕き、3発目がソードマンの車体をかすめる。
そして4発目が車体に突き刺さる。
だが装脚艇の装甲を易々と貫くはずの砲弾は、敵の装甲に弾かれて地に落ちる。
傷すらつけることはなかった。
「……【装甲硬化】か」
装甲を強化し、無限の強度を与える異能力の名をひとりごちる。
『スプラがいれば、あんなチキン野郎なんか屁でもねぇのによ!』
モニターの中でバーンが歯がみする。
負傷してアジトへ帰還したスプラは異能力者【魔力破壊】だ。
異能を消す異能があれば、堅牢な【装甲硬化】を貫くことなど容易いはずだった。
「なら、代わりにあたしがなんとかするよ」
言うが速いか、舞奈は操縦桿をひねる。
2丁の拳銃を構えた3号機が廃ビルの陰から跳び出す。
ソードマンは舞奈に向き直り、続けざまにアサルトライフルを撃つ。
だが鉄杭の如く砲弾は3号機を捉えきれず、代りに廃ビルを粉砕する。
「さっすが長砲身、すごい威力だ」
舞奈は口元に笑みを浮かべ、素早く照準を合わせて引鉄を引く。
ソードマンが爆ぜる。
砲塔と車体の合間を撃ち抜かれたのだ。
装甲を強化する【装甲硬化】では装甲の合間を守ることはできない。
故に舞奈に対しては無力。
『やるねぇ!』
通信モニターのピアースに笑みを返し、舞奈はレーダーを見やる。
反応は4。
2機の味方機と、動きのない2機の敵機。
――――――――――――――――――――
予告
舞奈と仲間が対峙するは2匹の未知なる装脚艇。
魔術。
妖術。
鋼鉄と瓦礫と死にまみれた今を脅かすのは、失くしたはずの過去の残滓。
次回『異形』
Burnはオノマトペではなく燃焼の意。
猛る刃が焼き貫くのは敵か? 味方か? それとも……?
舞奈は派手に四散炎上するソードマンに背を向ける。
そして3号機へと走り寄る。
「スプラ、無事か?」
通信機に向かって叫ぶ。
返事はない。
3号機は仰向けに倒れたまま動かない。
舞奈は3号機と瓦礫の隙間にもぐりこむ。
肩口がビルに引っかかって斜めになっている。
なので砲塔の背面に位置するコックピットハッチの下には隙間がある。
幸いにもハッチは無傷だ。
近くの瓦礫を足場にハッチの横のカバーに跳びつき強引にこじ開ける。
中に収められていた人間サイズのレバーを引いて、強制的にハッチを開ける。
「おっと」
真下に開いたハッチからスプラが降ってきた。
避けた舞奈の横に転がり落ちる。
年若い小柄な少年を一瞥する。
オープンタイプのヘルメットに血がにじみ、やわらかな茶髪を濡らしている。
息はあるが意識はない。
舞奈はスプラの側にしゃがみこみ、頬を拳で5往復殴る。
「う……ここは……?」
鍛え抜かれた舞奈はパンチの威力も相当だ。
その甲斐あって少年は目覚める。だが、
「い、痛い、イタイ! 足が、ボクの足がぁぁぁ……!?」
彼は見た目にはなんともない片足を押さえてうめく。
強打された頬ではなく。
「フィードバックの副作用だ。安心しろ、頭以外は無事だ」
舞奈は努めて冷静に諭す。
装脚艇の動力であるPKドライブは、機体の動作をも司る。
原理は不明だが、パイロットの意識と半ば同調して挙動の調整を行なうのだ。
フィードバックと呼ばれるこの作用によって、パイロットは操縦桿を握って大まかな動作を意図するだけで装脚艇を操作できる。
機体の破損に痛覚が反応する現象は、その副作用だ。
「それより動けるか? 後はあたしが何とかする」
「うぅ……。ま、舞奈? 装脚艇の操縦なんてできるの……?」
「1年間みっちり練習させられたからな。車庫入れくらいはできるさ」
「しゃこ……? そっか、なら頼む。恩に着るよ」
提案に、少年は素直にうなずく。
自身の身体も相当なダメージを受けているのはわかるのだろう。
近くにあったマンホールの蓋を開け、よろめきながら降りる。
下水道を伝ってアジトへ戻る算段だ。
舞奈は入れ替わりにコックピットへ登る。
横向きになったシートに無理やりに腰かける。
レバーを操作して背後のハッチを閉める。
装脚艇の数が不足しているために斥候に徹していた舞奈。
だが、平時に練習がてら動かしたことがある。
ボーマンの厳しい指導を思い出しつつ、視界いっぱいにひしめく計器やスイッチを操作して起動シーケンスを開始する。
――ハロー、マスター
脳裏に声が響く。
パイロットとPKドライブの同調――フィードバックの前兆だ。
フィードバックによる同調の度合いには相性がある。
装脚艇と最も深い絆を結べるのはボーマン曰く、機体に『似ている』少年たちだ。
これこそが、元自衛隊員や民間軍事会社の傭兵すら擁するレジスタンスの精鋭を差し置いて、年端もゆかぬ少年たちが主戦力を駆る理由である。
だが舞奈は3号機に『似ていない』。
舞奈は女だし、異能力も持っていない。
年不相応に生意気でひねくれ者な舞奈と、似た者なんて過去にも現在にもいない。
だから機体の積極的な協力を得られぬまま四苦八苦しつつ、それでも起動シーケンスを終わらせる。
――僕は【雷霊武器】
「――知ってるよ」
舞奈はコンソールパネルの隅に刻まれた『RAITO』の文字を撫でる。
口元に乾いた笑みを浮かべて操縦桿を握り、機体の体勢を立て直す。
レーダーを見やる。
装脚艇の反応は敵味方あわせて5。
自機以外の味方は2機。
出現した敵は8機。
うち2機は撃破済みだから、敵か味方が3機撃破された?
だが気配を感じ、舞奈は操縦桿をひねる。
黄頭の巨人は瓦礫を蹴散らし横に跳ぶ。
機体と一心同体とはいかなくとも、カリバーンの反応速度はソードマンより速い。
ソードマンの緩慢なそれを泥人間に例えるならば、カリバーンの動きは人間の異能力者並みといったところか。
そんなカリバーンの残像を斬り裂くようにソードマンが出現する。
斬り損じた太刀を振り抜いたポーズのまま。
側に、剣を構えたもう1機が姿をあらわす。
レーダーにも反応が2つ追加される。
敵機はすべて【偏光隠蔽】だから、当然ながら新手もそうだ。
慣れぬ機体の前に立ちふさがる2機のソードマン。
だが、舞奈の口元には不敵な笑みが浮かぶ。
「来たのが5機じゃないってことは、バーンとピアースは上手くやってるってことか」
舞奈はレバーを押しやる。
鋼鉄の手が剣を投げ捨て、車体の横にマウントされた低反動砲をつかむ。
戦車の砲塔についているような短砲身の滑腔砲も、装脚艇が持つと拳銃だ。
『この距離で砲撃だと? 素人が!!』
叫んだソードマンが太刀を振り上げた瞬間、車体に風穴。
教本では愚策とされる、だが舞奈が得意とする至近距離からの正確無比な早撃ち。
それが巨人の急所を無慈悲に穿ったのだ。
3号機は足元の無限軌道を唸らせ、素早く敵機に走り寄る。
「いらないなら、あたしが使ってやるよ」
舞奈は拡声器ごしに言い放つ。
空いた手で腰の拳銃を奪う。
直後、駆け抜けたカリバーンの背後でソードマンが爆発した。
同時に残る1機が霜をふりまく剣を振り上げて突撃してくる。
舞奈は敵機の中心に2つの照準をあわせる。
カリバーンは振り向きながら両腕の拳銃を構える。
引鉄を引く。
2丁の拳銃が火を吹く。
直撃を受けた【氷霊武器】が倒れこみながら爆ぜた。
異能の力を操り巨大な剣を振り回す鋼鉄の巨人。
だがそれは、乗り手を無敵の英雄にしたりはしない。
油断ひとつで、強固な鋼鉄の鎧は容易く鉄の棺桶へと変わる。
敵も味方も、自分も。
レーダーを見やる。
反応は5。
2機と1機が交戦中。残りの2機は動かない。
スロットルを引きしぼり、カリバーンを交戦区画へと走らせる。
21年前には数多の怪異たちが潜んでいた廃ビルの隙間。
そこを地上の新たな主となった鋼鉄の巨人が駆ける。
そして崩れ落ちた瓦礫を蹴散らし駆けつけた先。
3号機を出迎えたのは、真新しい装脚艇の残骸だった。
幸いにも暗緑色のソードマンだ。
歪な鋼鉄の塊の側。
不自然に隆起した氷塊の陰に、2機のカリバーンが身を隠していた。
「バーン! ピアース! 無事か!」
『乗っているのは舞奈か!?』
舞奈の叫びに答えるように、通信モニターに眼鏡をかけた細面が映る。
2号機パイロットのピアースだ。
『まあ、いい。1機は墜としたが、厄介な奴がいる』
通信を遮るように、爆音が氷塊を揺るがす。
青い頭のカリバーン2号機【氷霊武器】が手にした剣は、周囲の水分を凝固させて氷塊と化すことができる。
堅牢な氷の壁は、PKドライブの出力が許す限り無限に修復することができる。
だから重い砲撃に震えながらも、その陰に隠れる2機のカリバーンを守り抜く。
対するソードマンは、隠れる物もなく仁王立ちのまま、ライフルのように両手で構えた長砲身の低反動カノン砲を撃ちまくっている。
舞奈は舌打ちする。
敵は異能力で強化することのできない火砲を主武装にしている。
つまり剣や弓矢を強化する以外の厄介な異能力を持っているということだ。
『ったく! 撃ち合いなんか俺のガラじゃねぇってのに!』
モニターに、勝気そうなクセ毛の青年が映る。
1号機パイロットのバーンだ。
赤い頭の1号機は、砲声の合間を縫って氷の壁の端から拳銃を撃つ。
2発が側のビル壁を砕き、3発目がソードマンの車体をかすめる。
そして4発目が車体に突き刺さる。
だが装脚艇の装甲を易々と貫くはずの砲弾は、敵の装甲に弾かれて地に落ちる。
傷すらつけることはなかった。
「……【装甲硬化】か」
装甲を強化し、無限の強度を与える異能力の名をひとりごちる。
『スプラがいれば、あんなチキン野郎なんか屁でもねぇのによ!』
モニターの中でバーンが歯がみする。
負傷してアジトへ帰還したスプラは異能力者【魔力破壊】だ。
異能を消す異能があれば、堅牢な【装甲硬化】を貫くことなど容易いはずだった。
「なら、代わりにあたしがなんとかするよ」
言うが速いか、舞奈は操縦桿をひねる。
2丁の拳銃を構えた3号機が廃ビルの陰から跳び出す。
ソードマンは舞奈に向き直り、続けざまにアサルトライフルを撃つ。
だが鉄杭の如く砲弾は3号機を捉えきれず、代りに廃ビルを粉砕する。
「さっすが長砲身、すごい威力だ」
舞奈は口元に笑みを浮かべ、素早く照準を合わせて引鉄を引く。
ソードマンが爆ぜる。
砲塔と車体の合間を撃ち抜かれたのだ。
装甲を強化する【装甲硬化】では装甲の合間を守ることはできない。
故に舞奈に対しては無力。
『やるねぇ!』
通信モニターのピアースに笑みを返し、舞奈はレーダーを見やる。
反応は4。
2機の味方機と、動きのない2機の敵機。
――――――――――――――――――――
予告
舞奈と仲間が対峙するは2匹の未知なる装脚艇。
魔術。
妖術。
鋼鉄と瓦礫と死にまみれた今を脅かすのは、失くしたはずの過去の残滓。
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