学校の怪談の正体はね!

立川ありす

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ある日のこと

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「音楽室におばけがでるんだって」
「わっ、おばけだ」
 あたしの言葉に、ゾマは口に手を当ててかわいらしくおどろいた。

 ゾマはあたしの親友で、同じ小学5年生の女の子。
 あたしよりスタイルが良くて、せも高くて、男子からも人気があるんだ。

 ゾマっていうのは、もちろんあだ名。
 本当の名前は、真神そのか。

「チャビーちゃん、それはどんなおばけなの?」
 ゾマはまたまたかわいらしく首をかしげる。

 わたしは、みんなからチャビーってよばれてるの。
 けど本当の名前は、日比野ちか。
 ほかの5年生の子より、ちょっとせが低いのがなやみだ。

「夕方に楽器を返しに行った子が、鳴き声を聞いたんだって。あと、ゆかに給食のパンのかけらが落ちてたんだって」
「おばけが夜な夜な鳴きながら、音楽室で給食のパン食うのか?」
 横からそんなことを言ってきたのはマイだ。
 マイは、ちょっとだらしない感じでつくえにひじをついている。

 そんなマイの名前は、志門まいな。
 いつも、ねむそうな、めんどくさそうな顔をしてて、男の子みたいに話すの。
 でもスポーツばんのうなんだよ。
 それに、いつも髪をかわいいツインテールにしてるの。

 あたしの髪も、ちょっと長いツインテール。
 だけどクセッ毛だから、くるくるのドリルみたいになっちゃうんだ。

「なにかの見まちがえじゃないの?」
 マイのとなりで、まじめな顔で言ったのは、安倍さん。

 安倍さんの名前は、安倍あすか。
 髪は長くてキレイで、下フレームのおしゃれなメガネをかけた、おじょうさま。
 すっごくまじめで、頭も良くて、パパはガードマンの会社の社長なんだよ。

 そんな安倍さんは、すっごくまじめだから、みんなのことを名字でよぶんだ。
 だからあたしも、仲良しだけど安倍さんのことを名字でよぶの。

「どろぼうだったりしてな」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ」
 ニヤニヤ笑いながら言ったマイを、安倍さんがキッとにらむ。

 安倍さんのパパの会社は、わたしたちの学校のガードマンもしてる。
 だから、学校にどろぼうが入ったりすると、安倍さんの会社がお仕事をしてないってことになっちゃう。だから、

「それじゃあ、今夜、学校に来て、音楽室のおばけをさがしてみようよ!」
 わたしは言ってみた。

 どろぼうがいないってわかったら、安倍さんも安心できる。
 それに、おばけってどんなだろうって思うし、友だちになれたら楽しそうだ。
 足はあるのかな? どこにすんでるのかな? でも、

「……子どもは夜は、ねる時間だぞ」
 マイはめんどくさそうに言った。

「わたしも別にそこまでは……」
 安倍さんまでめんどくさそうにする。

 えー。2人とも、ゆめがないなあ……。
 わたしがしゅんとしていると、

「わっ。それならお夜食を作って来るね」
 ゾマが言った。すると、

「お! そのかのおかしが食べれるんなら、つきあうか」
 マイがやる気になってくれた。
 男の子みたいにスポーツばんのうなマイは、食いしんぼうなんだ。

「しょうがないわね」
 マイがやる気になったから、安倍さんも仕方なく来てくれることになった。
 やったね!

 こうして、わたしたちは夜の音楽室を調べることになった。

 でも、もうひとつ。
 わたしは少しはなれたつくえに行って、

「テック。今夜、音楽室でおばけをさがすの。テックも行こうよ」
 スマホを見ていた友だちもさそってみた。

 テックの名前は、工藤てる。
 いつも無口で顔色が悪いけど、パソコンがすごく得意で頭もいいの。でも……

「……ごめんね、チャビー。今夜はネットゲームの友だちと遊ぶ約束をしてるの」
「そっかー、ざんねん」
 他の友だちと約束をしてたんだったら、仕方がないよね。

 テックがいっしょじゃないのは、ざんねんだ。
 でもテックはやくそくをしてたんだもん。やぶらせたらダメだ。

 だから、わたしたちは4人で音楽室を調べることになった。

「それじゃあ日比野さん。おばけさがしのじゅんびをするわよ」
 そう言って、安倍さんはメガネの位置を、くいって直した。
 おおー! なんだか、おばけさがしのプロみたいだ!

「おばけをさがすのに、じゅんびがいるの?」
「ええ。おばけのうわさを、もっとちゃんと聞くのよ。どんなおばけがいるのか予想をたてて、つかまえるじゅんびをするの」
「そこまでキチンとするこたぁないだろ?」
 マイはイヤそうな顔をする。
 あはは。マイはめんどうくさがりだもんね。でも、

「いいかげんにやったって時間のムダじゃないの。ほら、わたしたちは6年生に話を聞くわよ。日比野さんと真神さんは下級生をおねがい」
「うわっ、ちょっとまて」
 安倍さんはマイの耳をひっぱって出ていった。
 まじめな安倍さんは、やると決めたらきちっとしなきゃ気がすまない。

「……わたしも行ってくる。アスカだけじゃ大変だろうし」
 そう言ってテックも出ていった。
 あの調子じゃマイは役に立ちそうもないもんね。

「それじゃ、わたしたちも行こうか?」
「はーい」
 わたしとゾマも教室を出た。
 安倍さんやテックも聞きこみは手伝ってくれるし、わたしたちもがんばらなきゃ!

 そして、下の階にある3年生の教室に行った。
 ろうかでは3年生たちが、友だちと遊んだり、お話をしている。
 3年生の子たちはちっちゃくて、とてもかわいい。

「それじゃ、手分けして話を聞こうか」
「はーい」
 よーし、がんばるぞ!

「ねぇ、ねぇ、そこのあなた」
 わたしは、さっそく、ひとりでまどの外を見ていた子に声をかけた。でも、

「……あなたはだれ? どこのクラス?」
 その子はちょっとめんどくさそうに答えた。

 マイみたいにめんどくさがりの子なのかな?
 テックみたいに無口なのかな?

 でも、わたしは5年生のおねえさんだもん。
 しっかりお話を聞かなきゃ!

「えっとね。5年生だよ」
 ニッコリ笑って答える。

「……うそつき。5年生はもっと大きいのよ」
 ひどーい!
 そりゃ、たしかにわたしは同じクラスの友だちよりちょっとせが低いけど……。

 でも、わたしだって5年生だもん!
 気にせず聞かなきゃいけないことをたずねてみる。

「あのね、音楽室におばけがでるっていううわさのこと、知ってる?」
「……!?」
 あたしが言ったとたん、その子はビックリした顔をして、

「……知らない!」
 教室の中に走って行ってしまった……。

 こわがらせちゃったのかな?
 ちょっとショック。

 しょんぼりしながらゾマのほうを見てみると、

「――音楽室のおばけのこと、なにか知ってるかな?」
「うん! おねえさん! あのね――」
 なんだか、3年生の子たちと楽しそうに話していた……。

 けっきょく、ゾマは、おばけの鳴き声がネコににてるっていう話を聞いた。
 わたしは何も話を聞けなかった……。

 そして自分のクラスに帰ってくると、安倍さんたちもちょうど帰ってきた。
 なので、わたしたちが(ゾマが)3年生から、安倍さんたちが6年生から、それぞれ聞いた話をまとめた。

 安倍さんはゾマの話を聞いて、ちょっとよろこんだ。
 すごくまじめでクールな安倍さんだけど、ネコが大好きなんだ。

 そんな安倍さんたちは、おばけが1週間くらい前からでるっていう話を聞いた。

 そして学校の勉強が終わった後、わたしたちは夕ごはんを食べに家へ帰った。
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