1 / 3
ある日のこと
しおりを挟む
「音楽室におばけがでるんだって」
「わっ、おばけだ」
あたしの言葉に、ゾマは口に手を当ててかわいらしくおどろいた。
ゾマはあたしの親友で、同じ小学5年生の女の子。
あたしよりスタイルが良くて、せも高くて、男子からも人気があるんだ。
ゾマっていうのは、もちろんあだ名。
本当の名前は、真神そのか。
「チャビーちゃん、それはどんなおばけなの?」
ゾマはまたまたかわいらしく首をかしげる。
わたしは、みんなからチャビーってよばれてるの。
けど本当の名前は、日比野ちか。
ほかの5年生の子より、ちょっとせが低いのがなやみだ。
「夕方に楽器を返しに行った子が、鳴き声を聞いたんだって。あと、ゆかに給食のパンのかけらが落ちてたんだって」
「おばけが夜な夜な鳴きながら、音楽室で給食のパン食うのか?」
横からそんなことを言ってきたのはマイだ。
マイは、ちょっとだらしない感じでつくえにひじをついている。
そんなマイの名前は、志門まいな。
いつも、ねむそうな、めんどくさそうな顔をしてて、男の子みたいに話すの。
でもスポーツばんのうなんだよ。
それに、いつも髪をかわいいツインテールにしてるの。
あたしの髪も、ちょっと長いツインテール。
だけどクセッ毛だから、くるくるのドリルみたいになっちゃうんだ。
「なにかの見まちがえじゃないの?」
マイのとなりで、まじめな顔で言ったのは、安倍さん。
安倍さんの名前は、安倍あすか。
髪は長くてキレイで、下フレームのおしゃれなメガネをかけた、おじょうさま。
すっごくまじめで、頭も良くて、パパはガードマンの会社の社長なんだよ。
そんな安倍さんは、すっごくまじめだから、みんなのことを名字でよぶんだ。
だからあたしも、仲良しだけど安倍さんのことを名字でよぶの。
「どろぼうだったりしてな」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ」
ニヤニヤ笑いながら言ったマイを、安倍さんがキッとにらむ。
安倍さんのパパの会社は、わたしたちの学校のガードマンもしてる。
だから、学校にどろぼうが入ったりすると、安倍さんの会社がお仕事をしてないってことになっちゃう。だから、
「それじゃあ、今夜、学校に来て、音楽室のおばけをさがしてみようよ!」
わたしは言ってみた。
どろぼうがいないってわかったら、安倍さんも安心できる。
それに、おばけってどんなだろうって思うし、友だちになれたら楽しそうだ。
足はあるのかな? どこにすんでるのかな? でも、
「……子どもは夜は、ねる時間だぞ」
マイはめんどくさそうに言った。
「わたしも別にそこまでは……」
安倍さんまでめんどくさそうにする。
えー。2人とも、ゆめがないなあ……。
わたしがしゅんとしていると、
「わっ。それならお夜食を作って来るね」
ゾマが言った。すると、
「お! そのかのおかしが食べれるんなら、つきあうか」
マイがやる気になってくれた。
男の子みたいにスポーツばんのうなマイは、食いしんぼうなんだ。
「しょうがないわね」
マイがやる気になったから、安倍さんも仕方なく来てくれることになった。
やったね!
こうして、わたしたちは夜の音楽室を調べることになった。
でも、もうひとつ。
わたしは少しはなれたつくえに行って、
「テック。今夜、音楽室でおばけをさがすの。テックも行こうよ」
スマホを見ていた友だちもさそってみた。
テックの名前は、工藤てる。
いつも無口で顔色が悪いけど、パソコンがすごく得意で頭もいいの。でも……
「……ごめんね、チャビー。今夜はネットゲームの友だちと遊ぶ約束をしてるの」
「そっかー、ざんねん」
他の友だちと約束をしてたんだったら、仕方がないよね。
テックがいっしょじゃないのは、ざんねんだ。
でもテックはやくそくをしてたんだもん。やぶらせたらダメだ。
だから、わたしたちは4人で音楽室を調べることになった。
「それじゃあ日比野さん。おばけさがしのじゅんびをするわよ」
そう言って、安倍さんはメガネの位置を、くいって直した。
おおー! なんだか、おばけさがしのプロみたいだ!
「おばけをさがすのに、じゅんびがいるの?」
「ええ。おばけのうわさを、もっとちゃんと聞くのよ。どんなおばけがいるのか予想をたてて、つかまえるじゅんびをするの」
「そこまでキチンとするこたぁないだろ?」
マイはイヤそうな顔をする。
あはは。マイはめんどうくさがりだもんね。でも、
「いいかげんにやったって時間のムダじゃないの。ほら、わたしたちは6年生に話を聞くわよ。日比野さんと真神さんは下級生をおねがい」
「うわっ、ちょっとまて」
安倍さんはマイの耳をひっぱって出ていった。
まじめな安倍さんは、やると決めたらきちっとしなきゃ気がすまない。
「……わたしも行ってくる。アスカだけじゃ大変だろうし」
そう言ってテックも出ていった。
あの調子じゃマイは役に立ちそうもないもんね。
「それじゃ、わたしたちも行こうか?」
「はーい」
わたしとゾマも教室を出た。
安倍さんやテックも聞きこみは手伝ってくれるし、わたしたちもがんばらなきゃ!
そして、下の階にある3年生の教室に行った。
ろうかでは3年生たちが、友だちと遊んだり、お話をしている。
3年生の子たちはちっちゃくて、とてもかわいい。
「それじゃ、手分けして話を聞こうか」
「はーい」
よーし、がんばるぞ!
「ねぇ、ねぇ、そこのあなた」
わたしは、さっそく、ひとりでまどの外を見ていた子に声をかけた。でも、
「……あなたはだれ? どこのクラス?」
その子はちょっとめんどくさそうに答えた。
マイみたいにめんどくさがりの子なのかな?
テックみたいに無口なのかな?
でも、わたしは5年生のおねえさんだもん。
しっかりお話を聞かなきゃ!
「えっとね。5年生だよ」
ニッコリ笑って答える。
「……うそつき。5年生はもっと大きいのよ」
ひどーい!
そりゃ、たしかにわたしは同じクラスの友だちよりちょっとせが低いけど……。
でも、わたしだって5年生だもん!
気にせず聞かなきゃいけないことをたずねてみる。
「あのね、音楽室におばけがでるっていううわさのこと、知ってる?」
「……!?」
あたしが言ったとたん、その子はビックリした顔をして、
「……知らない!」
教室の中に走って行ってしまった……。
こわがらせちゃったのかな?
ちょっとショック。
しょんぼりしながらゾマのほうを見てみると、
「――音楽室のおばけのこと、なにか知ってるかな?」
「うん! おねえさん! あのね――」
なんだか、3年生の子たちと楽しそうに話していた……。
けっきょく、ゾマは、おばけの鳴き声がネコににてるっていう話を聞いた。
わたしは何も話を聞けなかった……。
そして自分のクラスに帰ってくると、安倍さんたちもちょうど帰ってきた。
なので、わたしたちが(ゾマが)3年生から、安倍さんたちが6年生から、それぞれ聞いた話をまとめた。
安倍さんはゾマの話を聞いて、ちょっとよろこんだ。
すごくまじめでクールな安倍さんだけど、ネコが大好きなんだ。
そんな安倍さんたちは、おばけが1週間くらい前からでるっていう話を聞いた。
そして学校の勉強が終わった後、わたしたちは夕ごはんを食べに家へ帰った。
「わっ、おばけだ」
あたしの言葉に、ゾマは口に手を当ててかわいらしくおどろいた。
ゾマはあたしの親友で、同じ小学5年生の女の子。
あたしよりスタイルが良くて、せも高くて、男子からも人気があるんだ。
ゾマっていうのは、もちろんあだ名。
本当の名前は、真神そのか。
「チャビーちゃん、それはどんなおばけなの?」
ゾマはまたまたかわいらしく首をかしげる。
わたしは、みんなからチャビーってよばれてるの。
けど本当の名前は、日比野ちか。
ほかの5年生の子より、ちょっとせが低いのがなやみだ。
「夕方に楽器を返しに行った子が、鳴き声を聞いたんだって。あと、ゆかに給食のパンのかけらが落ちてたんだって」
「おばけが夜な夜な鳴きながら、音楽室で給食のパン食うのか?」
横からそんなことを言ってきたのはマイだ。
マイは、ちょっとだらしない感じでつくえにひじをついている。
そんなマイの名前は、志門まいな。
いつも、ねむそうな、めんどくさそうな顔をしてて、男の子みたいに話すの。
でもスポーツばんのうなんだよ。
それに、いつも髪をかわいいツインテールにしてるの。
あたしの髪も、ちょっと長いツインテール。
だけどクセッ毛だから、くるくるのドリルみたいになっちゃうんだ。
「なにかの見まちがえじゃないの?」
マイのとなりで、まじめな顔で言ったのは、安倍さん。
安倍さんの名前は、安倍あすか。
髪は長くてキレイで、下フレームのおしゃれなメガネをかけた、おじょうさま。
すっごくまじめで、頭も良くて、パパはガードマンの会社の社長なんだよ。
そんな安倍さんは、すっごくまじめだから、みんなのことを名字でよぶんだ。
だからあたしも、仲良しだけど安倍さんのことを名字でよぶの。
「どろぼうだったりしてな」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ」
ニヤニヤ笑いながら言ったマイを、安倍さんがキッとにらむ。
安倍さんのパパの会社は、わたしたちの学校のガードマンもしてる。
だから、学校にどろぼうが入ったりすると、安倍さんの会社がお仕事をしてないってことになっちゃう。だから、
「それじゃあ、今夜、学校に来て、音楽室のおばけをさがしてみようよ!」
わたしは言ってみた。
どろぼうがいないってわかったら、安倍さんも安心できる。
それに、おばけってどんなだろうって思うし、友だちになれたら楽しそうだ。
足はあるのかな? どこにすんでるのかな? でも、
「……子どもは夜は、ねる時間だぞ」
マイはめんどくさそうに言った。
「わたしも別にそこまでは……」
安倍さんまでめんどくさそうにする。
えー。2人とも、ゆめがないなあ……。
わたしがしゅんとしていると、
「わっ。それならお夜食を作って来るね」
ゾマが言った。すると、
「お! そのかのおかしが食べれるんなら、つきあうか」
マイがやる気になってくれた。
男の子みたいにスポーツばんのうなマイは、食いしんぼうなんだ。
「しょうがないわね」
マイがやる気になったから、安倍さんも仕方なく来てくれることになった。
やったね!
こうして、わたしたちは夜の音楽室を調べることになった。
でも、もうひとつ。
わたしは少しはなれたつくえに行って、
「テック。今夜、音楽室でおばけをさがすの。テックも行こうよ」
スマホを見ていた友だちもさそってみた。
テックの名前は、工藤てる。
いつも無口で顔色が悪いけど、パソコンがすごく得意で頭もいいの。でも……
「……ごめんね、チャビー。今夜はネットゲームの友だちと遊ぶ約束をしてるの」
「そっかー、ざんねん」
他の友だちと約束をしてたんだったら、仕方がないよね。
テックがいっしょじゃないのは、ざんねんだ。
でもテックはやくそくをしてたんだもん。やぶらせたらダメだ。
だから、わたしたちは4人で音楽室を調べることになった。
「それじゃあ日比野さん。おばけさがしのじゅんびをするわよ」
そう言って、安倍さんはメガネの位置を、くいって直した。
おおー! なんだか、おばけさがしのプロみたいだ!
「おばけをさがすのに、じゅんびがいるの?」
「ええ。おばけのうわさを、もっとちゃんと聞くのよ。どんなおばけがいるのか予想をたてて、つかまえるじゅんびをするの」
「そこまでキチンとするこたぁないだろ?」
マイはイヤそうな顔をする。
あはは。マイはめんどうくさがりだもんね。でも、
「いいかげんにやったって時間のムダじゃないの。ほら、わたしたちは6年生に話を聞くわよ。日比野さんと真神さんは下級生をおねがい」
「うわっ、ちょっとまて」
安倍さんはマイの耳をひっぱって出ていった。
まじめな安倍さんは、やると決めたらきちっとしなきゃ気がすまない。
「……わたしも行ってくる。アスカだけじゃ大変だろうし」
そう言ってテックも出ていった。
あの調子じゃマイは役に立ちそうもないもんね。
「それじゃ、わたしたちも行こうか?」
「はーい」
わたしとゾマも教室を出た。
安倍さんやテックも聞きこみは手伝ってくれるし、わたしたちもがんばらなきゃ!
そして、下の階にある3年生の教室に行った。
ろうかでは3年生たちが、友だちと遊んだり、お話をしている。
3年生の子たちはちっちゃくて、とてもかわいい。
「それじゃ、手分けして話を聞こうか」
「はーい」
よーし、がんばるぞ!
「ねぇ、ねぇ、そこのあなた」
わたしは、さっそく、ひとりでまどの外を見ていた子に声をかけた。でも、
「……あなたはだれ? どこのクラス?」
その子はちょっとめんどくさそうに答えた。
マイみたいにめんどくさがりの子なのかな?
テックみたいに無口なのかな?
でも、わたしは5年生のおねえさんだもん。
しっかりお話を聞かなきゃ!
「えっとね。5年生だよ」
ニッコリ笑って答える。
「……うそつき。5年生はもっと大きいのよ」
ひどーい!
そりゃ、たしかにわたしは同じクラスの友だちよりちょっとせが低いけど……。
でも、わたしだって5年生だもん!
気にせず聞かなきゃいけないことをたずねてみる。
「あのね、音楽室におばけがでるっていううわさのこと、知ってる?」
「……!?」
あたしが言ったとたん、その子はビックリした顔をして、
「……知らない!」
教室の中に走って行ってしまった……。
こわがらせちゃったのかな?
ちょっとショック。
しょんぼりしながらゾマのほうを見てみると、
「――音楽室のおばけのこと、なにか知ってるかな?」
「うん! おねえさん! あのね――」
なんだか、3年生の子たちと楽しそうに話していた……。
けっきょく、ゾマは、おばけの鳴き声がネコににてるっていう話を聞いた。
わたしは何も話を聞けなかった……。
そして自分のクラスに帰ってくると、安倍さんたちもちょうど帰ってきた。
なので、わたしたちが(ゾマが)3年生から、安倍さんたちが6年生から、それぞれ聞いた話をまとめた。
安倍さんはゾマの話を聞いて、ちょっとよろこんだ。
すごくまじめでクールな安倍さんだけど、ネコが大好きなんだ。
そんな安倍さんたちは、おばけが1週間くらい前からでるっていう話を聞いた。
そして学校の勉強が終わった後、わたしたちは夕ごはんを食べに家へ帰った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

灰色のねこっち
ひさよし はじめ
児童書・童話
痩せっぽちでボロボロで使い古された雑巾のような毛色の猫の名前は「ねこっち」
気が弱くて弱虫で、いつも餌に困っていたねこっちはある人と出会う。
そして一匹と一人の共同生活が始まった。
そんなねこっちのノラ時代から飼い猫時代、そして天に召されるまでの驚きとハラハラと涙のお話。
最後まで懸命に生きた、一匹の猫の命の軌跡。
※実話を猫視点から書いた童話風なお話です。
アンナのぬいぐるみ
蒼河颯人
児童書・童話
突然消えてしまったぬいぐるみの行く先とは?
アンナは五歳の女の子。
彼女のお気に入りのくまのぬいぐるみが、突然姿を消してしまい、大変なことに!
さて、彼女の宝物は一体どこに行ったのでしょうか?
表紙画像は花音様に企画で描いて頂きました。
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる