銃弾と攻撃魔法・無頼の少女

立川ありす

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第19章 ティーチャーズ&クリーチャーズ

思わぬ再会

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 舞奈と明日香が引率の大人を探す中、ヴィランのファイヤーボールとイエティの中の人ことキャロル&メリルと思わぬ再会を遂げた晩の、翌日の朝。
 ホームルーム前の初等部5年の教室で、

「日曜の引率の伝手が、どうにかついたよ」
「わっ。良かった」
 伝えた途端に園香は破顔する。
 笑った拍子にふんわりボブカットの髪が揺れ、童顔に似合わぬふくよかな胸がワンピース越しにでもわかるくらい揺れる様子に、千の疲れも吹き飛ぶ思いだ。

「昨日も色んなところに頼みに行ってくれたんだよね? ありがとうマイちゃん」
「なに、お安い御用さ」
 気づかうように微笑む園香に、舞奈も不敵な笑みを返す。

 今週末はチャビーや園香、皆で楽しい毒蜘蛛探しだ。
 だが子供たちだけで探検は危険だと親父さんに言われ、引率の大人を探していた。
 そして昨日、ようやく引率を引き受けてくれた大人がキャロルだ。
 彼女はたまたま演説中の元総理をテロから守ったものの、派手に超能力サイオンを使ったのを見咎められて舞奈の手伝いをすることになったのだ。

「わたしやチャビーちゃんが知ってる人かな?」
「いんや。知り合いの外国人なんだが、腕は確かだ」
 園香の問いに何気に返しつつ、キャロルとの関係をどう話そうかと考える。

 先日の決戦で舞奈たちはファイヤーボールらと戦い、打ち破った。
 その後に彼女は他のヴィランたちと共に加勢してくれた。
 昨日は再会した友人として飯を食いながら駄弁った。
 そんな彼女らは自分にとって何者なのだろうかと考えながら……

「……あ、いや、信頼できる大人だ」
 いつもの仕事のノリで話していたのに気づいてあわてて誤魔化す。
 そんな舞奈の動揺を察し、

「ふふっ、マイちゃんの友達ならきっといい人だよね。会うのが楽しみだ」
 園香は楽しげな笑みを浮かべて言葉を返す。

「今日明日にでも親父さんに挨拶しに行くよ」
 舞奈も笑う。
 そう先方と段取りもついている。
 そんな風に2人で和気あいあいとしている最中……

「……ん、騒がしいな」
 ふと舞奈は気づいた。

 早朝で人気も少ない教室が、普段より少しざわざわしている。
 また余計なトラブルだろうか?
 やれやれと内心で苦笑しながらクラスを見渡した途端――

「――あっ志門さん、高等部の人が呼んでるのです」
 反対側から声をかけられた。
 委員長だ。

「あたしに用だと? ……女の子か?」
「そうなのです。でも2人ともわたしの知らない人なのです」
「そっか。誰だろう?」
(楓さんじゃないってことか。小夜子さんたちかな?)
 やれやれと腰を上げつつ問いかけながら、委員長の答えに首をかしげる。

 桂木楓は以前に怪異に狙われた委員長の身代わりをしたことがある。
 その際に容姿を確認すべく絵のモデルにしたとも聞いている。

 奈良坂も桜と仲が良いので面識がある可能性は多分にある。

 だが小夜子やサチは、委員長とは直接に面識はなかったはずだ。
 2人とも当日はバイト――【機関】の仕事で忙しいと聞いたばかりだ。
 事情が変わったのだろうか?
 まあ今さらと言えば今さらだが、人手が増えるのなら歓迎だ。

「すまん、ちょっと行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
 仕方なく側の園香に声をかける。
 マイちゃんはいつも違う女の人と仲良しだね?
 そんな表情の園香を誤魔化すように笑いかけながら向かった先には……

「……おっレインちゃんじゃないか」
「あっ舞奈さん。お久しぶりです」
 金髪の女子高生がいた。

 県の支部の執行人エージェントレイン。
 ウェーブがかかった長い金髪が印象的な美少女だ。
 長い手足は華奢ながら、セーラー服の胸はダイナミックに膨らんでいる。
 うつむき加減な姿勢のおかげで、見上げる舞奈と自然に目が合うのもいい。
 色白な顔の、気弱そうに下がった目じりが保護欲をそそる。
 
 彼女と最初に会ったのは、四国の大規模作戦に参加する少し前だったか。
 新開発区で泥人間を殲滅する際、共闘したチーム【グングニル】は壊滅した。
 その唯一の生き残りが彼女だ。

 彼女は大能力【戦士殺しワルキューレ】の保持者でもある。
 これは自身に加えられた近接攻撃を反射するという危ういが強力な大能力だ。
 それにより件の作戦で彼女は生き残ることができた。

 席の園香が知っている顔を見てほっとする気配に舞奈も安堵する。
 園香も以前に一度だけレインと会ったことがある。
 たしかレナがホームステイを始めたのと同じ頃だったか。

 ついでにクラスがざわざわしていた理由もわかった。
 金髪が珍しいのだ。
 レナやルーシアが帰国して金髪ロスっぽくなっていたクラスの皆(主に男子)が、新たな金髪美少女の登場に色めきだっているのだ。
 しかも今度は大人っぽい女子高生だ。
 盛りのついたチンパ……小学生の群に見つめられ、気の弱いレインが縮こまる。

――志門の知り合いだって!
――また志門か。いいなー

(ったく、好き勝手なこと言いやがって)
 舞奈はやれやれと苦笑する。

「不躾ですまん」
「い、いえ、大丈夫です……」
 困ったように片手で胸を隠す仕草に、胸を凝視していた事に気づいて目をそらす。

「わたしも白人なンすよ?」
 割って入ったジャネットに、

「でもおまえ赤毛じゃん」
 男子が冷たくツッコミを入れる。
 まあ塩対応なのはクラスメートなので珍しくないという理由も少しある。
 いつもクラスの皆と一緒なジャネットの白い顔に浮かんだソバカスと、背が低くて小太りな体形にはナイスバディ金髪女子高生のようなゴージャスさはない。
 そんな事はわかっているが扱いの落差に少し凹んだジャネットに、

「キミ、赤毛なんだ。格好いいね」
「えっ? そうなンすかね」
 レインの隣にいたもうひとりの少女が笑いかけた。
 しゃがみこみ、少し驚いたジャネットと視線を合わせる。

 年の頃……というか学年はレインと同じ。
 胸も同じくらい大きくて、けど背はレインより少しだけ高い。
 ひとつに編んだ髪と健康的な肌色が印象的な、お姉さんな雰囲気の女子高生だ。

「何処から来たの?」
「……ロサンゼルスなンすよ」
「アメリカだ。凄いなー。言われてみれば顔立ちもキリッとしてるよね」
「エヘヘ、そうでもないンすよ」
 ニコニコ話すお姉さんに、ジャネットは柄にもなくもじもじした笑みを返す。
 こういう反応をされたことがあまりないのだろう。
 赤毛をポリポリかきながら、まんざらでもない様子だ。

 いきなり上級生に懐いたジャネットにビックリした麗華様が彼女を睨みつける。
 ジャネットの中心が自分じゃないのが気に入らないのかもしれない。

「そちらのベッピンさんは?」
「あ、はい、実は彼女は……」
 苦笑しながら尋ねた舞奈にレインはしどろもどろになりつつ答えかけ、

「高等部の白樫しらかしこずえよ。はじめまして舞奈ちゃん。噂どおり可愛くて強そうだね」
「あ、どうも。はじめまして」
 振り返ってニッコリ笑った彼女に、今度は舞奈が少し動揺しながら答える。
 彼女の距離の取り方が独特だなと思った。

 舞奈は自他共に認める最強Sランクだが、強そうだとか可愛いとか面と向かって言われた事はあまりない。
 自分より背の高い上級生や大人から目線を合わせられた記憶も皆無だ。
 バイト柄、性格柄、そして最強だからという理由で。
 何故なら事情を知っている者からすると、舞奈は年齢を超えた絶対強者だ。
 知らない者からすると小生意気で食い意地の張ったエロガキだ。
 けど、そんな思惑を知られるのが気恥ずかしくて、意識して何食わぬ口調で、

「その梢さんが、あたしに何の用事かな?」
 問いかける。

 どんなに調子が狂っても、彼女の来訪が【機関】絡みであろうことはわかる。
 しかも県の支部の厄介事だ。
 レインに他の用事で訪問されるほど彼女と深い関係を築けている訳ではない。
 もっとも舞奈の対応次第では今後は違うのかもしれないが。

「あのね、実は梢ちゃんはわたしの所の支部の占術士ディビナーで……」
「だろうな」
 何食わぬ表情で答える舞奈の口元には笑み。

 梢が占術士ディビナーだと聞いて少し驚いたのは事実だが、納得できない話ではない。
 何故なら県の支部に術者はセイズ呪術師の占術士ディビナーひとりだと聞いている。
 先日の決戦が目と鼻の先で行われたのにも関わらず、特に戦力が融通されたりとかもしなかったのもそのせいだろう。
 他所に貸し出せるほど術者がいないのだ。
 そういうのは怪異のるつぼである新開発区を担当する巣黒支部に集中している。

 それよりレインが梢を親しげに呼んでいる事実が気に入った。
 彼女らは学校の友人なのだろう。
 あるいは【機関】でも部署こそ違えど気の合うパートナーなのかもしれない。

 先日の共同任務の際に、レインが属する【グングニル】は壊滅した。
 そんな彼女の側に友人がいて、素直に良かったと思う。
 そんな梢は……

「舞奈ちゃんたち、今度の日曜日に街はずれの林に探検に行くんだよね? 引率の大人を探してるって聞いたんだけど……」
「誰からその話を?」
巣黒すぐろ支部の技術担当官マイスターに相談したら、舞奈ちゃんの事を教えてもらったんだよ」
(ニュットか……)
 舞奈は口をへの字に曲げる。

 いけ好かない糸目こと技術担当官マイスターニュットは顔が広く、組織の内外にコネがある。
 なので知らない人に適当な事を吹きこんで後始末を舞奈に丸投げすることもある。
 奴の面白おかしく無責任な言動には舞奈も度々手を焼かされている。
 何度も奴の言葉に踊らされるのは気に入らない。

 それでも、まあ今回に限ってはこちらの益になる話なのも事実だ。
 そもそも支部で遠足の引率を募ったのは自分だ。
 そう納得しかけて……

「……ちょっと待ってくれ。そっちでも何かあったのか?」
 相談したら、という言葉に反応して問いかけた途端に、

「いやね、預言で少し厄介なものを視ちゃって……」
「預言か……」
 そんな答えが返ってきた。

 まあ事情はわからないでもない。
 物的被害も証拠もない預言だけでは各支部の戦力の中核である執行部は動かせない。
 占術士ディビナーが視た預言がどれほど切羽詰まっていても同じだ。
 何故なら各支部の行動を決定する【機関】上層部の面々は占術士ディビナーじゃない。
 口で何を言っても信じてくれないのだ。

 だが諜報部で対処しようにも、県の支部の術者は占術士ディビナーひとりしかいない。
 彼女以外は異能力者のチー牛しかいないはずだ。
 度を越えた荒事への対処はできない。
 そこで最強でありながら仕事人トラブルシューターという比較的に融通の効かせやすい立場の、飯や色香で簡単に釣られる食い意地の張ったエロガキの出番だ。
 県の占術士ディビナーが巣黒に何かを相談する理由なんて、確かにそのくらいしかない。

 舞奈は正直、その話の先を聞きたくないと少し思った。
 人災由来のトラブルに文句ひとつ言わずに取りかかっているという理由で、別のトラブルまで押しつけられてはやってられない。
 舞奈の人生、終始こんなのばっかりだ。
 とんだブラック小学生である。

 隣のレインが本気で申し訳なさそうな表情をしているのも不安を誘う。

 だがトラブルを視界の外に追い出しても勝手に消えてくれたりしないのも事実だ。
 逆に目をそらした隙に大きく逞しく成長し、再び目の前にあらわれる。
 それが舞奈が10年そこそこの人生で得た何よりの教訓だ。泣ける。
 だから……

「……その預言って、どんな内容だったんだ?」
 仕方なく梢に問いかける。

「見えたのは戦ってるビジョンよ」
「相手は何だ?」
「巨大な……」
 不穏な言葉の続きを無言でうながし、

「……何か?」
「おい」
 あやふなや情報に口をへの字に曲げる。

 廊下の隅で、麗華様がジャネットに「何処から来ましたの?」とか言っていた。
 先ほど年上のお姉さんにしたような反応が欲しいのかもしれない。
 あるいは新しい遊びだと思ったのかも知れない。
 だが交わされた会話は「麗華様の家からなンす?」「そうじゃなくて!」
 ジャネットも困惑している。
 あまつさえデニスに「今度は何に頭をやられたんですか?」と本気で気遣われる。
 そんな愉快な麗華様を見やって舞奈は苦笑しつつ、

「魔獣や歩行屍俑じゃないよな?」
 舞奈は梢から、せめて可能な限りの情報を引き出そうとする。
 どんなに状況が不透明でも、可能な限り情報を集めて対策するのは仕事でのトラブル対応でも私的なトラブルでも変わらない。だが、

「ごめんね、どっちも見たことが無くて……」
「そっか……」
 眉をハの字に曲げる彼女から帰ってきた答えに舞奈も困る。
 本気で申し訳なさそうな表情だし嘘ではないのだろう。
 彼女らに舞奈を困らせる理由もないし。

「人の形じゃなかったのは確かだと思うんだけど……?」
「……そりゃあ正確な情報をどうも」
 続く言葉に苦笑する。
 口調から、言い回しから不安しか感じない追加情報だ。

 舞奈は預言によるビジョンがどのように術者にもたらされるのか知らない。
 知っているのは、それを術者は時空の何処かから召喚するということだけだ。
 現状分析の先にある洞察や予測ではない。

 なので得られた結果があいまいで突拍子が無いのは術者のせいじゃない。
 世界が悪い。

 それでも預言をよくする多々の術者の言動から、それは術者の知識や経験を呼び水にして召喚されるのだと察しはつく。
 要は元より知らない知識を預言によって学習することはできないのだ。
 わかるのは知っている対象に訪れる運命だけ。

 だが、そんなことを言われても困るというのが舞奈の正直な気持ちだ。

 ちょっと大ぶりな蜘蛛を探すのと歩行屍俑や魔獣の相手じゃ勝手が違う。
 危険なら園香やチャビーを連れて行きたくない。
 だが、ただでさえ証拠のない預言の、しかも具体性に欠ける内容を元にして週末の冒険を中止したところで、園香もチャビーも納得しないだろう。
 そういう所だけは【機関】上層部と同じだ。
 だから……

「だからね、舞奈ちゃんたちに調査を手伝って欲しいかなーって」
「わかったよ。代わりに友達の護衛を頼んでいいか? あたしと明日香と、あと2人ほど腕の立つ奴が同行するが、そういう状況なら人数は多いほうがいい」
 せめてもの交換条件として彼女らも誘ってみる。

 本当に正体不明な巨大な何かと戦う羽目になるとした場合、大能力者とセイズ呪術師の彼女らがいてくれたほうが心強いのは事実だ。
 正直、彼女らに戦力として期待している訳じゃない。
 だが2人に園香とチャビーをまかせることができる。
 そうすれば舞奈と明日香とファイヤーボール、巨大なイエティが敵への対処に集中できると考えれば、まんざら悪い話でもない。
 あとトラブルが余計に増えたのだから、おっぱいも増やしてもバチは当たらない。
 そういう心境だった。

「もちろんよ。よろしく頼むわね」
「お願いします」
 対して梢とレインは二つ返事で引き受ける。
 最初からそのつもりで来たらしい。

 こうしてレインたち2人も週末の蜘蛛探しに同行することになった。

「おーい園香! 彼女たちも週末に……ってあれ?」
「真神さんなら、桜さんが拾ってきたドングリから変な虫が出て来たのでチャビーさんと外に捨てに行ってくれているのです」
「あいつもロクな事しねぇな……」
 せっかく新たな同行者の事を話そうとした出鼻をくじかれて苦笑する。
 そんな舞奈を見やってレインと梢も「あはは」と笑いつつ、

「護衛対象は舞奈ちゃんのお友達の真神園香ちゃんと、日比野千佳ちゃんだよね」
「知ってたのか」
「そりゃまあ。デスメーカー……如月小夜子さんの連れ子さんでしょ?」
「まあ連れ子っちゃあ連れ子だが……」
「やっぱり!」
 ふと舞奈が答えた途端、梢の瞳が輝く。

「小夜子さん……そっちじゃ有名なのか?」
「そりゃもう! 数多の怪異を焼き尽くす爆炎の呪術師ウォーロック! 単身で怪異の巣を殲滅する元執行部の【死体作成人】! 支部の垣根を超えた諜報部の憧れの的です!」
 梢は拳をうならせて語る。
 隣でレインが苦笑する。

「……その妙な二つ名、チャビーの前では言わんでくれよ」
 それに、それは諜報部員としての尊敬のし方とは少し違うと思うが。
 舞奈も一緒に苦笑する。

 梢は小夜子に個人的に好意を抱いているらしい。
 小夜子から彼女の話を聞いたことは無いので一方的なものなのだろう。
 舞奈は少し不安になった。

 それでも放課後。
 商店街の一角でキャロルたちと待ち合わせ、皆で園香の家へ挨拶に向かった。

 舞奈と明日香。
 キャロルとメリル。
 レインと梢。
 それに加えて園香とチャビーの8人が、週末の蜘蛛探しのメンバーだ。
 まあ楽しそうな面子だと言われれば否定はできない。

「彼女が引率を引き受けてくれたキャロルだ」
「よろしく。これでも荒事には慣れてるつもりだし、アウトドアも初めてじゃないから
安心して。お宅の娘さんたちを傷ひとつなく送り迎えするよ」
 紹介する舞奈の側で金髪ティーンエイジャーのキャロルが不敵に笑う。
 そんな彼女を見やり、

「君は……」
 園香父は少し驚いてみせた。

 件の元首相暗殺阻止の動画を何処かで見たのだろうか?
 まあ親父さんも他国のプリンセスを預けられるほどの人物だ。
 その程度の情報は集まると考えるべきか。
 だが件の動画が非公式であることも知っているのだろう。

「こちらのお嬢さんも一緒に行くのかね?」
「そのとおり!」
 何食わぬ表情で少し身をかがめて足元のメリルに笑いかける。
 連れ子の様子でキャロルの人となりを探る算段なのだと舞奈は察した。

 そんな園香父は、銀髪幼女の満面のドヤ顔に満足したようだ。
 初対面の金髪の彼女は、舞奈が認めるくらいに腕が立つ。
 そして連れ子が素直に自由奔放に振る舞えるくらい愛情をもって接し、配慮もできる立派な人物だと。その正体がヴィランだなんて考えもしないほどに。だから、

「そうか。娘をよろしく頼む」
 キャロルに深々と一礼した。

「よろしくお願いします」
「小夜子さんの代理として、一命に変えても娘さんたちを御守りします!」
「いやその、お嬢さんたちも無理はしないでいただきたいが……」
 頭を下げるレイン……の隣で力強く訴えかける梢に父は少し引き気味に答える。

「皆さんありがとうございます。よろしくお願いします」
 親父さんの隣に並んだ園香は礼儀正しく挨拶し、

「小夜子さんのお友達なんだ! よろしくね!」
 チャビーは知らない顔が多いのが新鮮なのか、少し興奮していた。
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