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第18章 黄金色の聖槍
血肉の成れ果て
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「……つまり、どういうことだよ?」
市民病院の病室で、ベッドに腰かけたまま舞奈は問う。
側には生真面目な表情で付きそう明日香。
気遣う様に寄りそうルーシア。
公園で宣戦布告の後に襲いかかってきたヘルバッハを辛くも退けた日曜の午後。
舞奈は病院で検査を受けていた。
今は平気とはいえ、一度は完全な状態のWウィルスに感染したからだ。
だが検査の結果、身体には異常はなし。
Wウィルスも完全に消滅していた。
同じ結界に閉じこめられたルーシアや麗華も似たような検査を受けた。
そして、ひと足先に無傷と健康を確認したルーシアは舞奈の病室を訪れていた。
明日香もルーシアの護衛を兼ねて舞奈に付きそっている。
そんな3人の対面で、
「いえその……」
長身を無理やり縮こまらせた萩山に代わり、
「つまりデスね……」
側のイリアが話し始めた……。
……時間は少し遡る。
場所は萩山のアパートの一角にある萩山の親父さんの部屋。
萩山父が、息子とイリアの前で頭からはずした小さな白い布切れ。
それは可愛らしいデザインの女性用下着だった。
具体的にはフリルがいっぱいついた純白のパンティだった。
驚く萩山。
状況がよく飲みこめてないイリア。
対して父は取り乱す様子もなく……
「……そろそろこのことを、おまえにも話さないといけないなと思っていたところだ」
側の机に置かれた古いノートパソコンの電源を入れる。
ハードディスクがカタカタ鳴るパソコンを見守る父の後頭部は、イリアの特製眼鏡の中でWウィルスへの完全耐性を表す燐光に包まれていた。
そして父は立ち上がったパソコンでブラウザを開く。
スカイフォール王国の公式サイトにアクセス。
魔法の国の軽いサイトは骨董品のような古いパソコンでも素早く表示される。
「ここには実は裏サイトがあるんだ」
言いつつ父はマウスを不自然な感じに動かす。
途端、画面が変わった。
表示されていたのは西洋風の剣や盾。
併記された説明文には、魔法が焼きつけられた武具の通販とある。
「Oh!? papaさん……」
「親父……!?」
イリアは、萩山は驚く。
2人ともスカイフォール王国のサイトに裏サイトがあることは知っていた。
一部の術者や執行人が、仕事に使う魔道具をそこから仕入れていることも。
それを一般人である萩山父が知っていることに驚いたのだ。
だが、そんな風に驚く2人の目前で、
「だが、これもフェイクだ」
「Wha……!?」
萩山父はさらりと流してマウスを操作する。
その様子をイリアは息を飲んで見守る。
側の萩山は……
「…………」
何故か顔色が悪かった。
ちょっと待ってくれ親父……みたいなことを小声でつぶやいていた。
そして画面に表示されたのは先ほどと似た作りだが胡散臭い雰囲気のサイト。
販売されているのは可愛らしいデザインのランジェリー。
あえて誰のもの、とは書かれていない。
だが王女の使用済みであるとほのめかすような説明文……というか煽り文。
販売責任者の名も伏せられているが、小さく記された紋章はマーサのものだ。
「……スカイフォールの王女たちのlingeriesデスね」
ふむとうなずいたのはイリア。
Wウィルスの調査の際に、同じデザインの下着を身に着けているのを見た。
同性で科学者で下心のない彼女には、レナもルーシアもガードが薄い。
その一方で、
「ああっ!?」
思わず上ずった声をあげて後ずさったのは萩山。
ひょろ長い彼の顔は蒼白だ。
その挙動でイリアは気づいた。
「ということは、これもそうだったデスか?」
「!?」
言いつつイリアも懐から何か取り出す。
それは父が手にした代物と似たデザインのパンティ。
イリア本人のものではない。
彼女が愛用しているのは布地の多い子供パンツだ。
「ヒカルのタンスの隅から出てきたデス」
「そ、それは……」
「これはヒカルが買ったpantyデスね?」
詰め寄るイリア。
「そうか。おまえはもう知っていたのか」
「それは……」
達観したような温かい目で見てくる親父。
対して萩山は蒼白な顔で口をパクパクさせることしかできなかった……
「……という訳デス」
「お、おう……」
「そうですか……」
「……」
病院の一室で、イリアの話を聞いた舞奈は困惑。
側の明日香は真顔。
スカイフォールの王女ルーシアは珍しく感情のない能面ような表情のまま無言。
対面の萩山は禿頭に脂汗を滲ませながらオロオロしている。
そんな居心地の悪い雰囲気の中、イリアは気にせず……
「……わたしはpapaさんとヒカルからpantiesを借りて調査したデス」
むしろ興奮気味に話を続ける。
飛び級で博士号をとった天才科学者の面目躍如か。
「結論から言いマスと、プリンセスや一部の人たちが持っていたWウィルスへの耐性の正体は、プリンセスの体内で増殖する対抗ウィルスだったデス」
「ウィルスだと?」
「はいデス。少女の身体から発せられるラクトンと結合することで活性化してWウィルスを消滅させ、その影響を打ち消す善玉ウィルスなのデス」
うきうきしたイリアの説明に、
「それで黒き災いを鎮めるプリンセスの血肉ですか」
明日香が納得する。
彼女はスカイフォールの預言について、ニュットたちから聞いていたらしい。
ルーシアの様子がおかしかったので、こちらに問いただしたのだそうな。
だが具体的な打開策が見つからぬまま口を閉ざしていた。
要は舞奈たちと同じだ。
それはともかく、Wウィルスへの耐性の原因が王女由来の別のウィルスだと言うのなら、騎士団の面子、デニスやジャネットが耐性を持っていた理由も納得できる。
彼ら、彼女らはレナやルーシア、麗華様と日常的に濃厚接触しているはずだ。
対抗ウィルスとやらに感染しても不思議じゃない。
「そして対抗ウィルスは宿主それぞれの体内で変異して変異株になるデス。宿主が異なる複数の対抗ウィルス株に感染すると、Wウィルスに対する抵抗力が増します」
「要はレナちゃんとルーシアさんと麗華様では、微妙に違うウィルスって訳か」
「Yes,デス」
「つまり複数が集まることで威力が倍増するという預言も……」
十中八九、この複数の耐性ウィルス株による抵抗力の増加を指しているのだろう。
側の明日香と同じように、舞奈も納得しかけ……
「……ちょっと待て。それじゃあたしやリコに耐性がある理由にならんだろ」
ふと気づく。
「萩山や親父さんはプリンセスと接点ないし、そもそもパンツの話は何処行ったよ?」
「それもそうね」
「対抗ウィルスはプリンセスの血中はもちろん、爪や髪や垢にも宿っていたデス」
「爪や髪!?」
新たな問いに対するイリアの答えに思わず驚き、
「血肉の成れ果て……というのは、そういう意味ですか……」
「そうだったデスよ……」
脱力する明日香。
答えるイリアもちょっと小声。
聞いてる舞奈も同じ気持ちだ。
まあ確かに爪や髪は人の皮膚が変化した肉体の一部だ。
けど血が通っている部位ではないし、伸びすぎて邪魔になったら切ってしまう。
髪に至っては別になくても自尊心が傷つく以外は問題なく生活できる。
垢も同じだ。皮膚を構成していた古い角質が剥がれたものだ。
それらを血肉の成れ果てと表現するなら納得するしかないし、まぎらわしい不吉な字面を預言に遺した預言者どもに文句を言おうにも彼らは遠い過去の人だ。
「リコちゃんは、この前、わたくしの鼻をパクッとしましたし」
「まあ、そのせいだろうな……」
無理やりに笑顔を作りながらのルーシアの言葉に苦笑する。
リコはくわえた鼻の脂からでも感染したのだろう。
どんなにケアしていても、プリンセスだって人だ。
だがイリアの解説には続きがある。
「対抗ウィルスは、汗にもにょ……おしっこにも宿ってるデス!」
「そこを言い換えてもマイルドな表現にはならんだろう……」
舞奈は疲れた表情で苦笑する。
明日香もだ。
そして、その先の台詞を予想して表情を硬くするルーシアと萩山の前で、
「なのでプリンセスの使用済みのpantyにも対抗ウィルスが付着してたデス」
「そりゃそうだろうな……」
イリアが事もなげに告げた事実に再び苦笑する。
どんなに気をつけていても、プリンセスだって人だ。
汗だってかくし、ちょっと漏れたり拭き漏らしたりすることだってあるだろう。
だがルーシアは耳を押さえてしゃがみこむ。無理もない。
萩山はいたたまれない様子でうつむいている。
「対抗ウィルスが付着したpantyは何度か手にするだけでもWウィルスに対する高い抵抗力を得られたデス。定期的に頭にかぶったり間近で匂いを嗅いだりすると、なんと完全耐性が得られたデス!」
「お、おう……」
「そうですか……」
イリアは力強く言い切ってみせる。
流石の舞奈もこれには困惑。
明日香は真顔。
萩山も耐えきれずにしゃがみこむ。
つまり通販で買えた王女のパンツは、対抗ウィルスが付着した聖なるアレだった。
パンツを買ったは良いが奥手が災いして手に取って眺めるだけだった萩山は対抗ウィルスにちょっと感染し、Wウィルスへの高い抵抗力を獲得した。
対して萩山の親父さんは……がっつり対抗ウィルス漬けになって完全耐性を得た。
そう言うことらしい。
リコが街で視た花屋のバイトや喫茶店のマスターも……おそらく同類だろう。
理屈はわかるが、釈然としない舞奈や明日香の側で――
「――そして禍川支部攻略戦の面々も例のサイトでランジェリーを買っていたのだよ」
明後日の方向から声。
見やるとドアを開けて糸目の女子高生があらわれた。
何食わぬ表情のニュットだ。
側には神妙な表情だが内心はどうだかな感じのマーサもいる。
この2人が、今の舞奈には同類に見える。
ルーシアが凄く何か言いたそうな表情をしてるが意図的に気にしないようにする。
何故なら舞奈も地味にそれどころじゃなかった……
「そうか……」
「……」
側の明日香と顔を見合わせる。
明日香の顔には表情がなかったが、自分も同じだろうと思う。
バーンは魔剣をスカイフォールから買ったと言っていた。
おそらく例のサイトを使ったのだろう。
そのついでに……ということは十分にあり得る話だ。
同様にトルソやスプラ、切丸たちも……いや、やめよう。
ピアースがWウィルスに対する希少な耐性を持っていた理由を、彼の友人であるテックにどう説明すればいいのか正直なところわからない。
いっそ聞いていなかったことにしたいくらいだ。
テックが今回の件に深く関わっていないのが不幸中の幸いだと思った。
こんな結末がわかっていたならら、殴山一子をもっと痛めつけて倒したのに。
静かに、深くそう思う。
「Oh! そうデシタ。ヒカルのpanty、返しマス」
イリアが萩山にパンツを手渡す。
Wウィルスと耐性の秘密を解き明かした彼女は達成感で満面の笑顔だ。対して、
「……レナのですね、それ」
「すいません……」
ルーシアは氷のような声色で補足する。
萩山はガクガク震えながらパンツをズボンのポケットにねじこむ。
この状況で姉に返しても困るし余計に気分が悪いだけだと気づける程度には萩山は大人だ。だからといってルーシアの目つきが優しくなったりはしないが。
そんな針のむしろのような様子を見ながら……
「……ちょっと待ってくれ」
「流石にわたしたちは殿下の下着をネットで買ったりとかしてないつもりですが」
舞奈と明日香が珍しくステレオで抗議する。
明日香はもとより舞奈だって、女の子のパンツをこっそり通販で買ったりはしない。
欲しければ本人に直に頭を下げて譲ってもらえばいいのだ。
そもそも舞奈たちがレナやルーシアと会ったのは四国から帰ってきた後だ。
「シモンとアスカは違うデスよ」
「じゃあ他にどういう……」
「……そういうことか」
「はいデス」
イリアの答えに、ひと足先に気づいた舞奈は頭を抱える。
続いて明日香も露骨に嫌そうな顔をする。
そういうことなら舞奈と明日香の完全耐性の原因は麗華だ。
思えば麗華様、調理実習中はいつもノーマスクで暴れまわっていた。
学校訪問の時もそうだったが、給食の当番でもたまにあんな感じだ。
おまけに三角巾から縦ロールがはみ出ている。
1日に100本くらい抜けて生え変わるという髪の毛が散らかり放題だ。
そもそも麗華様は飯時以外でも大声で高笑いしながらはしゃぎまくっている。
つまり舞奈たちの教室も給食も、麗華様のつばや抜け毛でいっぱいだ。
クラスの皆は麗華株の対抗ウィルスに絶えず感染していたという訳だ。
つまり舞奈や明日香だけでなく、クラス全員が完全耐性持ちということになる。
こちらの真相も大概だ。
潔癖症気味なテックが今回の件に深く関わっていなくて本当に良かった。
だが先ほどの戦闘で舞奈が生きのびられたのも、そのおかげなのは事実だ。
舞奈は上記の理由で麗華株に感染していた。
以前に園香の家に一緒に泊まった際にレナ株にも感染したのだろう。
そして、あの時ぬぐった涙を媒体にルーシア株に感染した。
3人のプリンセスの体内で変異した3つの株が舞奈の体内でひとつになり、直接感染した完全版のWウィルスをも消し去った。
聖なる血肉とその成れ果ては災厄を鎮める。
血肉の慣れ果ては複数が集まることで威力が倍増する。
そんな不吉な預言は、思いもかけぬ下品でしょうもない手段で成就されたのだ。
やれやれ。
脱力する舞奈だが、
「王女たちの協力で、ヘルバッハを倒すことのできる銃弾を作れるデス!」
「何だと?」
イリアは続けてニヤリと笑う。
舞奈は一瞬だけ驚き、すぐに同じ笑みを浮かべる。
預言の真実はこんなだったが、ヘルバッハの脅威が減じた訳じゃない。
あの戦闘で、舞奈は奴の鎧の隙間に大口径弾をまとめて叩きこんだ。
だが鎧の内側で跳弾した弾頭に臓器をかき回されながら奴は普通に動いていた。
撤退したのもダメージが深刻だからではなく、仮面を割られたからのようだ。
奴の身体は骨の髄まで完全版のWウィルスで強化されている。
そんなヘルバッハに効果のある弾丸を、用意できると彼女は言う。
「奴の身体はいつかのテロドスと同じ――Wウィルスによって強化されているデス。ウィルスが奴の身体の一部になって、強度とマイナスの魔力を高めてるデス」
「らしいな」
続くイリアの言葉に相槌を打ち……
「……つまり、奴に直接、対抗ウィルスを喰らわせるってことか?」
「はいデス」
「手段はどうする? 弾頭に髪の毛でも入れるのか?」
「――それならもっと良い方法がありますよ」
再び声と共にドアを開け、病室に入ってきたのは、
「あんたたち……!」
3人の女だ。
ひとりはコートをクールに着こなした女。
もうひとりは金髪をなびかせた行者。室内なので深編笠はかぶっていない。
最後のひとりはコスプレ婦警。
即ち猫島朱音、フランシーヌ草薙、KAGE。
以前に委員長の家で相対し、KASC攻略戦で共闘した公安の術者たち。
彼女らも今回の件に協力してくれるということだろう。
何とも心強い味方である。
なるほどヘルバッハのしたことは、いわば海外のヴィランを使った侵略だ。
派手なパフォーマンスもやらかしたし、国家を守護する公安が出張るのも当然だ。
「アーガスさんは一緒じゃないのか?」
「ふえ? 何でですか?」
「公園で待ち合わせしてたんだろあんた。そのうち大使館経由で苦情が来るぞ……」
舞奈はKAGEに苦笑して、
「それより、いい方法とはなんでしょう?」
明日香がフランシーヌに問いかける。
無理やりにでも気持ちを切り替えたかったのだろう。
そんな気持ちを知ってか知らずか、金髪の修験術士はにこやかに微笑みながら、
「以前にお話しした中華料理屋の店主が、垢擦りをできるそうなのです」
「へえ、張にそんな特技があったなんてな」
言った言葉に舞奈は少し驚く。
だが好都合なことには変わりない。
毛も垢も、プリンセスの血肉の成れ果てなのは同じだ。
プリンセスたちの多いとはいえ綺麗な髪の毛を毟ったり抜け毛を集めるより、そのほうが穏便だし手っ取り早い。
空気の流れで察知できる範囲では、あいつらに処理するような毛はまだないし。
「もうすぐ麗華様も検査が終わる頃か。レナちゃんは――」
「――志門舞奈! 検査の結果はどうだった!?」
言った途端にレナ本人がドアから飛びこんできた。
「あたしは無事だぜ。あんたの姉さんもだ」
「それは良……当然でしょ!」
軽口を叩いた舞奈にレナは素直じゃない笑みを向ける。
「それより今は手伝って欲しいことがある」
「何よ?」
「敵の首領に致命打を与えられる方策に、殿下たちの御力が必要なんです」
そう言って明日香とルーシアに加えてレナを連れ、
「志門さん!」
「検査の結果は如何でしたか!?」
「麗華様は何ともなかったンす!」
「ああ平気さ。それより丁度いい! おまえも付き合え!」
「「「?」」」
タイミングよくあらわれた麗華とデニス、ジャネットも連れて病院を飛び出す。
明日香がナチュラルに呼んだ装甲リムジンに連れ立って乗りこむ。
車中でレナたちにスカイフォールの預言と対抗ウィルスの真実を話して唖然とされながら、向かうは繁華街の一角にある張の店。
3人の天女と『太賢飯店』の店名が描かれた看板の下。
営業終了の立て札を無視して両開きのドアをガラリと開ける。
中では店主の張、先回りして来たらしいフランシーヌと朱音にKAGE、マーサにニュットが待っていた。
「舞奈ちゃん、明日香ちゃん、事情は聞いたアル」
「なら話は早い!」
「よろしくお願いします」
「まかせるアル! お姫様たちをツルッツルの綺麗な身体にして差し上げるアルよ!」
早速、手始めに麗華を預け……
――ここがいいアルか? いいアルか?
――ああっ……! そこは……!
「…………」
「……麗華様は大丈夫なのか?」
控室から聞こえてくる麗華の嬌声を聞きながら明日香は、舞奈は苦笑する。
「ふふ、本来はマッサージですからね。気持ちいいですよ?」
「そうかい」
フランシーヌの言葉に肩をすくめてみせる。
側で朱音も苦笑する。
そのさらに側で、
「わたくしの血肉に秘められた力と言うのは、このようなものだったのですね」
「殿下……」
「姉さま……」
ルーシアは自身の手の平をじっと見やりながら、ひとりごちる。
そんな彼女を明日香が、レナが不安げに見やる。
彼女の大切な人たちは、Wウィルスによって全滅した。
対抗ウィルスのしょうもない謎が明らかになっても、彼らが戻ってくることはない。
だから……
「……わたくしが……もっと積極的に接していたら、月輪様や【禍川総会】の皆さまを救えたでしょうか……?」
「全員にパンツを配るのか?」
「ちょっと! そんな言い方って――!」
舞奈は口元に乾いた笑みを浮かべる。
レナが睨んでくるが構わず、
「あたしが四国で出会った仲間は、あんたやレナちゃんの……おかげで完全耐性を持ってた。けど、あたしは奴らを守れなかった。Sランクのあたしがだ」
慰めとも自嘲ともつかぬ独白。
対するルーシアの表情は読めない。
王女として悩みや負の感情を表に出さない生き方が身についているのだろう。
けれど……だからこそ、舞奈は言葉を続ける。
「だから、あたしは明日香と2人で殴山一子を殺った。次は奴の番だ」
押し殺した声で、ひとりごちるように語る。
奴とはもちろんヘルバッハのことだ。
一連の事件の元凶を【機関】も【組合】もディフェンダーズも許すはずもない。
もちろん舞奈もだ。
「ところで殿下、そちらの心構えは大丈夫ですか?」
明日香が問う。
仮面の黒騎士ヘルバッハの正体が、10年前に失踪したスカイフォールのバッハ王子と同一人物なのは明白だ。
つまりルーシアとレナは、これから血を分けた兄と戦うことになる。それでも、
「見くびらないで! 顔も知らない血縁者なんて王族にとっては普通よ!」
レナは躊躇なく答える。
同じ台詞をヘルバッハ本人からも聞いたので、まあそういうものかと納得する。
「そんな奴らが魔法を悪事に使うというなら、容赦はしないわ!」
「……ええ。それに、あの方はわたしから大切なものを奪いました」
興奮するレナに、静かに同意したのはルーシア。
珍しく激情の片鱗をあらわにした彼女を見やり、
「いい顔だ」
舞奈は笑う。
「そういう気持ち、心の中に仕舞いこんで溜めこむより、相手にぶつけてやった方がスカッとする。ストレスは溜めない方が肌にも良いしな」
「あっ! ちょっと! どさくさにまぎれて何するのよ!」
さりげなく2人の王女の尻を触った舞奈をレナが睨む。
別に触ってない明日香まで睨んでくる。
側のルーシアは遠い目をしてから……
「……月輪様も、以前に同じことを言ってくださいました」
懐かしむように微笑む。
そんな彼女を見やって舞奈たちも釣られたように笑みを浮かべ――
「――ところでマーサ」
ルーシアはマーサを見やる。
「今回の件について、納得のいく説明をお願いしたいのですけど」
マーサを問い詰める。
珍しく声色が低い。
表情も先ほどまでとは違った意味で硬いが、その理由は言わずもがな。
国営サイトの裏サイトのさらに裏で、彼女らの下着が販売されていた件だ。
しかも効用から察するに本物である。
まさか本人が承諾した訳じゃなかろうと思っていたら、案の定そうだったらしい。
「いえほら、国庫の足しにと思いまして……」
「我が国の財政は、それほどひっ迫してはいないはずですが」
「じ、実はその……表のサイトにルーシア様とレナ様のご尊顔を掲載したところ、各国の殿方にそれはそれは好評で……」
「なるほど……」
マーサはいけしゃあしゃあと笑顔で答える。
対するルーシアは今までに見せたことがないような冷淡な表情で追い詰める。
まあ通販でパンツ買った奴が何人もいるというのなら、それで満足した奴がほぼ同じ数だけいるということになる。それもまたプラスの感情の一種ではあるのだろう。
マーサは魔術師の性として、そうした感情を賦活させようとした。
何故なら魔力を創造する魔術師にとって、プラスの感情は魔力の源だから。
と、いう理論が成立しない訳ではないとは思う。
その言い訳が使用済みパンティを無断で売られた王女たちに通用するかは知らんが。
そもそも王女様が可愛いからと言って、パンツ買って喜ぶ心情がピンとこない。
無論、小5の舞奈が他人の下半身事情をとやかく言うのが不躾なのは理解できる。
舞奈だってレナやルーシアのそういった場所が気にならない訳じゃない。
それでも貝合わせは肌と肌が触れ合うから愉しいのであって、パンツじゃ代わりにならないだろうと素直に思う。
そんな釈然としない気分のまま、ふと気づく。
「……そういやあ思ったんだが、2人のお袋さんのパンツは売らなかったんだな」
「王妃ですか? ええ、まあ王妃は成人してますし、その、お召し物にこんなことして知られでもしたら……どんなお仕置きをされるか……」
「そう言う話なら、今、割とアウトなんじゃないか? あんた」
「そ、それは……!」
側で睨んでいるレナからマーサはあわてて目をそらす。
するとルーシアと目が合って顔を青ざめさせる。
次いで救いを求めるような視線をこちらに向ける。
だが舞奈も明日香も礼儀正しく無視。
王家のことは王家で何とかして欲しいし、何と言うか……マーサは人生いろいろ舐めてる感じだし、一度ちゃんと痛い目を見た方がいい気がする。
それにルーシアのこちらの感情も、溜めこむより発散したほうが良いだろう。
なので我関せずにこやかな笑顔のまま舞奈と明日香が見守る先で……
「……それでマーサ、知ってるとは思いますが……わたくし、その……いつも量が多くて汚してしまっていますよね? ……さすがに、その時のものは……」
「ええ、もちろん念入りな洗浄の末――」
(ほっ)
「――シミの残ったものだけを特別版と銘打ったプレミアム価格で」
「キャアアアアアアア!」
「マーサァァァァァ!」
ルーシアは顔を真っ赤にしてうずくまる。
レナがガチギレして叫ぶ。
そんな楽しそうな王家の面々を見やりつつ、舞奈は口元に笑みを浮かべる。
明日香も心の底から呆れ果てた様子ながらも表情は穏やかだ。
使用済みの下着を勝手に売られていたことについては彼女らに同情する。
同じことをされたら舞奈なら殴ると思う。
だが顔を真っ赤にしてうずくまるルーシアの表情に、今やそれ以上の懸念はない。
何故ならスカイフォールの預言はもはや彼女らの血肉を欲してはいない。
最初から誰も犠牲になる必要なんてなかった。
血肉の慣れ果て――髪の毛や垢や、おりもので十分だったのだ。
四国の惨事に対する悔恨も、自分なりにふっきれたのだと舞奈は思う。
そんなタイミングを見計らったかのように――
「――麗華ちゃん、お疲れ様アルよ」
「感謝しますわ! まるで生まれ変わったような軽やかな気分ですわ!」
「よかったですね麗華様」
「お肌がツルツルなンすよ」
奥の部屋から張と、何だかツヤツヤした麗華たちが出て来た。
張の手には大きめの小袋。
中身は垢擦りして出てきた垢だろう。
それだけ取れれば体も軽くなるだろうと少し思った。
舞奈は、ふと側を見やり、
「次はルーシアちゃんの番アルよ、おまたせアル」
「気晴らしに行ってこいよ。気持ちいいらしいぜ」
ルーシアに笑いかけた。
市民病院の病室で、ベッドに腰かけたまま舞奈は問う。
側には生真面目な表情で付きそう明日香。
気遣う様に寄りそうルーシア。
公園で宣戦布告の後に襲いかかってきたヘルバッハを辛くも退けた日曜の午後。
舞奈は病院で検査を受けていた。
今は平気とはいえ、一度は完全な状態のWウィルスに感染したからだ。
だが検査の結果、身体には異常はなし。
Wウィルスも完全に消滅していた。
同じ結界に閉じこめられたルーシアや麗華も似たような検査を受けた。
そして、ひと足先に無傷と健康を確認したルーシアは舞奈の病室を訪れていた。
明日香もルーシアの護衛を兼ねて舞奈に付きそっている。
そんな3人の対面で、
「いえその……」
長身を無理やり縮こまらせた萩山に代わり、
「つまりデスね……」
側のイリアが話し始めた……。
……時間は少し遡る。
場所は萩山のアパートの一角にある萩山の親父さんの部屋。
萩山父が、息子とイリアの前で頭からはずした小さな白い布切れ。
それは可愛らしいデザインの女性用下着だった。
具体的にはフリルがいっぱいついた純白のパンティだった。
驚く萩山。
状況がよく飲みこめてないイリア。
対して父は取り乱す様子もなく……
「……そろそろこのことを、おまえにも話さないといけないなと思っていたところだ」
側の机に置かれた古いノートパソコンの電源を入れる。
ハードディスクがカタカタ鳴るパソコンを見守る父の後頭部は、イリアの特製眼鏡の中でWウィルスへの完全耐性を表す燐光に包まれていた。
そして父は立ち上がったパソコンでブラウザを開く。
スカイフォール王国の公式サイトにアクセス。
魔法の国の軽いサイトは骨董品のような古いパソコンでも素早く表示される。
「ここには実は裏サイトがあるんだ」
言いつつ父はマウスを不自然な感じに動かす。
途端、画面が変わった。
表示されていたのは西洋風の剣や盾。
併記された説明文には、魔法が焼きつけられた武具の通販とある。
「Oh!? papaさん……」
「親父……!?」
イリアは、萩山は驚く。
2人ともスカイフォール王国のサイトに裏サイトがあることは知っていた。
一部の術者や執行人が、仕事に使う魔道具をそこから仕入れていることも。
それを一般人である萩山父が知っていることに驚いたのだ。
だが、そんな風に驚く2人の目前で、
「だが、これもフェイクだ」
「Wha……!?」
萩山父はさらりと流してマウスを操作する。
その様子をイリアは息を飲んで見守る。
側の萩山は……
「…………」
何故か顔色が悪かった。
ちょっと待ってくれ親父……みたいなことを小声でつぶやいていた。
そして画面に表示されたのは先ほどと似た作りだが胡散臭い雰囲気のサイト。
販売されているのは可愛らしいデザインのランジェリー。
あえて誰のもの、とは書かれていない。
だが王女の使用済みであるとほのめかすような説明文……というか煽り文。
販売責任者の名も伏せられているが、小さく記された紋章はマーサのものだ。
「……スカイフォールの王女たちのlingeriesデスね」
ふむとうなずいたのはイリア。
Wウィルスの調査の際に、同じデザインの下着を身に着けているのを見た。
同性で科学者で下心のない彼女には、レナもルーシアもガードが薄い。
その一方で、
「ああっ!?」
思わず上ずった声をあげて後ずさったのは萩山。
ひょろ長い彼の顔は蒼白だ。
その挙動でイリアは気づいた。
「ということは、これもそうだったデスか?」
「!?」
言いつつイリアも懐から何か取り出す。
それは父が手にした代物と似たデザインのパンティ。
イリア本人のものではない。
彼女が愛用しているのは布地の多い子供パンツだ。
「ヒカルのタンスの隅から出てきたデス」
「そ、それは……」
「これはヒカルが買ったpantyデスね?」
詰め寄るイリア。
「そうか。おまえはもう知っていたのか」
「それは……」
達観したような温かい目で見てくる親父。
対して萩山は蒼白な顔で口をパクパクさせることしかできなかった……
「……という訳デス」
「お、おう……」
「そうですか……」
「……」
病院の一室で、イリアの話を聞いた舞奈は困惑。
側の明日香は真顔。
スカイフォールの王女ルーシアは珍しく感情のない能面ような表情のまま無言。
対面の萩山は禿頭に脂汗を滲ませながらオロオロしている。
そんな居心地の悪い雰囲気の中、イリアは気にせず……
「……わたしはpapaさんとヒカルからpantiesを借りて調査したデス」
むしろ興奮気味に話を続ける。
飛び級で博士号をとった天才科学者の面目躍如か。
「結論から言いマスと、プリンセスや一部の人たちが持っていたWウィルスへの耐性の正体は、プリンセスの体内で増殖する対抗ウィルスだったデス」
「ウィルスだと?」
「はいデス。少女の身体から発せられるラクトンと結合することで活性化してWウィルスを消滅させ、その影響を打ち消す善玉ウィルスなのデス」
うきうきしたイリアの説明に、
「それで黒き災いを鎮めるプリンセスの血肉ですか」
明日香が納得する。
彼女はスカイフォールの預言について、ニュットたちから聞いていたらしい。
ルーシアの様子がおかしかったので、こちらに問いただしたのだそうな。
だが具体的な打開策が見つからぬまま口を閉ざしていた。
要は舞奈たちと同じだ。
それはともかく、Wウィルスへの耐性の原因が王女由来の別のウィルスだと言うのなら、騎士団の面子、デニスやジャネットが耐性を持っていた理由も納得できる。
彼ら、彼女らはレナやルーシア、麗華様と日常的に濃厚接触しているはずだ。
対抗ウィルスとやらに感染しても不思議じゃない。
「そして対抗ウィルスは宿主それぞれの体内で変異して変異株になるデス。宿主が異なる複数の対抗ウィルス株に感染すると、Wウィルスに対する抵抗力が増します」
「要はレナちゃんとルーシアさんと麗華様では、微妙に違うウィルスって訳か」
「Yes,デス」
「つまり複数が集まることで威力が倍増するという預言も……」
十中八九、この複数の耐性ウィルス株による抵抗力の増加を指しているのだろう。
側の明日香と同じように、舞奈も納得しかけ……
「……ちょっと待て。それじゃあたしやリコに耐性がある理由にならんだろ」
ふと気づく。
「萩山や親父さんはプリンセスと接点ないし、そもそもパンツの話は何処行ったよ?」
「それもそうね」
「対抗ウィルスはプリンセスの血中はもちろん、爪や髪や垢にも宿っていたデス」
「爪や髪!?」
新たな問いに対するイリアの答えに思わず驚き、
「血肉の成れ果て……というのは、そういう意味ですか……」
「そうだったデスよ……」
脱力する明日香。
答えるイリアもちょっと小声。
聞いてる舞奈も同じ気持ちだ。
まあ確かに爪や髪は人の皮膚が変化した肉体の一部だ。
けど血が通っている部位ではないし、伸びすぎて邪魔になったら切ってしまう。
髪に至っては別になくても自尊心が傷つく以外は問題なく生活できる。
垢も同じだ。皮膚を構成していた古い角質が剥がれたものだ。
それらを血肉の成れ果てと表現するなら納得するしかないし、まぎらわしい不吉な字面を預言に遺した預言者どもに文句を言おうにも彼らは遠い過去の人だ。
「リコちゃんは、この前、わたくしの鼻をパクッとしましたし」
「まあ、そのせいだろうな……」
無理やりに笑顔を作りながらのルーシアの言葉に苦笑する。
リコはくわえた鼻の脂からでも感染したのだろう。
どんなにケアしていても、プリンセスだって人だ。
だがイリアの解説には続きがある。
「対抗ウィルスは、汗にもにょ……おしっこにも宿ってるデス!」
「そこを言い換えてもマイルドな表現にはならんだろう……」
舞奈は疲れた表情で苦笑する。
明日香もだ。
そして、その先の台詞を予想して表情を硬くするルーシアと萩山の前で、
「なのでプリンセスの使用済みのpantyにも対抗ウィルスが付着してたデス」
「そりゃそうだろうな……」
イリアが事もなげに告げた事実に再び苦笑する。
どんなに気をつけていても、プリンセスだって人だ。
汗だってかくし、ちょっと漏れたり拭き漏らしたりすることだってあるだろう。
だがルーシアは耳を押さえてしゃがみこむ。無理もない。
萩山はいたたまれない様子でうつむいている。
「対抗ウィルスが付着したpantyは何度か手にするだけでもWウィルスに対する高い抵抗力を得られたデス。定期的に頭にかぶったり間近で匂いを嗅いだりすると、なんと完全耐性が得られたデス!」
「お、おう……」
「そうですか……」
イリアは力強く言い切ってみせる。
流石の舞奈もこれには困惑。
明日香は真顔。
萩山も耐えきれずにしゃがみこむ。
つまり通販で買えた王女のパンツは、対抗ウィルスが付着した聖なるアレだった。
パンツを買ったは良いが奥手が災いして手に取って眺めるだけだった萩山は対抗ウィルスにちょっと感染し、Wウィルスへの高い抵抗力を獲得した。
対して萩山の親父さんは……がっつり対抗ウィルス漬けになって完全耐性を得た。
そう言うことらしい。
リコが街で視た花屋のバイトや喫茶店のマスターも……おそらく同類だろう。
理屈はわかるが、釈然としない舞奈や明日香の側で――
「――そして禍川支部攻略戦の面々も例のサイトでランジェリーを買っていたのだよ」
明後日の方向から声。
見やるとドアを開けて糸目の女子高生があらわれた。
何食わぬ表情のニュットだ。
側には神妙な表情だが内心はどうだかな感じのマーサもいる。
この2人が、今の舞奈には同類に見える。
ルーシアが凄く何か言いたそうな表情をしてるが意図的に気にしないようにする。
何故なら舞奈も地味にそれどころじゃなかった……
「そうか……」
「……」
側の明日香と顔を見合わせる。
明日香の顔には表情がなかったが、自分も同じだろうと思う。
バーンは魔剣をスカイフォールから買ったと言っていた。
おそらく例のサイトを使ったのだろう。
そのついでに……ということは十分にあり得る話だ。
同様にトルソやスプラ、切丸たちも……いや、やめよう。
ピアースがWウィルスに対する希少な耐性を持っていた理由を、彼の友人であるテックにどう説明すればいいのか正直なところわからない。
いっそ聞いていなかったことにしたいくらいだ。
テックが今回の件に深く関わっていないのが不幸中の幸いだと思った。
こんな結末がわかっていたならら、殴山一子をもっと痛めつけて倒したのに。
静かに、深くそう思う。
「Oh! そうデシタ。ヒカルのpanty、返しマス」
イリアが萩山にパンツを手渡す。
Wウィルスと耐性の秘密を解き明かした彼女は達成感で満面の笑顔だ。対して、
「……レナのですね、それ」
「すいません……」
ルーシアは氷のような声色で補足する。
萩山はガクガク震えながらパンツをズボンのポケットにねじこむ。
この状況で姉に返しても困るし余計に気分が悪いだけだと気づける程度には萩山は大人だ。だからといってルーシアの目つきが優しくなったりはしないが。
そんな針のむしろのような様子を見ながら……
「……ちょっと待ってくれ」
「流石にわたしたちは殿下の下着をネットで買ったりとかしてないつもりですが」
舞奈と明日香が珍しくステレオで抗議する。
明日香はもとより舞奈だって、女の子のパンツをこっそり通販で買ったりはしない。
欲しければ本人に直に頭を下げて譲ってもらえばいいのだ。
そもそも舞奈たちがレナやルーシアと会ったのは四国から帰ってきた後だ。
「シモンとアスカは違うデスよ」
「じゃあ他にどういう……」
「……そういうことか」
「はいデス」
イリアの答えに、ひと足先に気づいた舞奈は頭を抱える。
続いて明日香も露骨に嫌そうな顔をする。
そういうことなら舞奈と明日香の完全耐性の原因は麗華だ。
思えば麗華様、調理実習中はいつもノーマスクで暴れまわっていた。
学校訪問の時もそうだったが、給食の当番でもたまにあんな感じだ。
おまけに三角巾から縦ロールがはみ出ている。
1日に100本くらい抜けて生え変わるという髪の毛が散らかり放題だ。
そもそも麗華様は飯時以外でも大声で高笑いしながらはしゃぎまくっている。
つまり舞奈たちの教室も給食も、麗華様のつばや抜け毛でいっぱいだ。
クラスの皆は麗華株の対抗ウィルスに絶えず感染していたという訳だ。
つまり舞奈や明日香だけでなく、クラス全員が完全耐性持ちということになる。
こちらの真相も大概だ。
潔癖症気味なテックが今回の件に深く関わっていなくて本当に良かった。
だが先ほどの戦闘で舞奈が生きのびられたのも、そのおかげなのは事実だ。
舞奈は上記の理由で麗華株に感染していた。
以前に園香の家に一緒に泊まった際にレナ株にも感染したのだろう。
そして、あの時ぬぐった涙を媒体にルーシア株に感染した。
3人のプリンセスの体内で変異した3つの株が舞奈の体内でひとつになり、直接感染した完全版のWウィルスをも消し去った。
聖なる血肉とその成れ果ては災厄を鎮める。
血肉の慣れ果ては複数が集まることで威力が倍増する。
そんな不吉な預言は、思いもかけぬ下品でしょうもない手段で成就されたのだ。
やれやれ。
脱力する舞奈だが、
「王女たちの協力で、ヘルバッハを倒すことのできる銃弾を作れるデス!」
「何だと?」
イリアは続けてニヤリと笑う。
舞奈は一瞬だけ驚き、すぐに同じ笑みを浮かべる。
預言の真実はこんなだったが、ヘルバッハの脅威が減じた訳じゃない。
あの戦闘で、舞奈は奴の鎧の隙間に大口径弾をまとめて叩きこんだ。
だが鎧の内側で跳弾した弾頭に臓器をかき回されながら奴は普通に動いていた。
撤退したのもダメージが深刻だからではなく、仮面を割られたからのようだ。
奴の身体は骨の髄まで完全版のWウィルスで強化されている。
そんなヘルバッハに効果のある弾丸を、用意できると彼女は言う。
「奴の身体はいつかのテロドスと同じ――Wウィルスによって強化されているデス。ウィルスが奴の身体の一部になって、強度とマイナスの魔力を高めてるデス」
「らしいな」
続くイリアの言葉に相槌を打ち……
「……つまり、奴に直接、対抗ウィルスを喰らわせるってことか?」
「はいデス」
「手段はどうする? 弾頭に髪の毛でも入れるのか?」
「――それならもっと良い方法がありますよ」
再び声と共にドアを開け、病室に入ってきたのは、
「あんたたち……!」
3人の女だ。
ひとりはコートをクールに着こなした女。
もうひとりは金髪をなびかせた行者。室内なので深編笠はかぶっていない。
最後のひとりはコスプレ婦警。
即ち猫島朱音、フランシーヌ草薙、KAGE。
以前に委員長の家で相対し、KASC攻略戦で共闘した公安の術者たち。
彼女らも今回の件に協力してくれるということだろう。
何とも心強い味方である。
なるほどヘルバッハのしたことは、いわば海外のヴィランを使った侵略だ。
派手なパフォーマンスもやらかしたし、国家を守護する公安が出張るのも当然だ。
「アーガスさんは一緒じゃないのか?」
「ふえ? 何でですか?」
「公園で待ち合わせしてたんだろあんた。そのうち大使館経由で苦情が来るぞ……」
舞奈はKAGEに苦笑して、
「それより、いい方法とはなんでしょう?」
明日香がフランシーヌに問いかける。
無理やりにでも気持ちを切り替えたかったのだろう。
そんな気持ちを知ってか知らずか、金髪の修験術士はにこやかに微笑みながら、
「以前にお話しした中華料理屋の店主が、垢擦りをできるそうなのです」
「へえ、張にそんな特技があったなんてな」
言った言葉に舞奈は少し驚く。
だが好都合なことには変わりない。
毛も垢も、プリンセスの血肉の成れ果てなのは同じだ。
プリンセスたちの多いとはいえ綺麗な髪の毛を毟ったり抜け毛を集めるより、そのほうが穏便だし手っ取り早い。
空気の流れで察知できる範囲では、あいつらに処理するような毛はまだないし。
「もうすぐ麗華様も検査が終わる頃か。レナちゃんは――」
「――志門舞奈! 検査の結果はどうだった!?」
言った途端にレナ本人がドアから飛びこんできた。
「あたしは無事だぜ。あんたの姉さんもだ」
「それは良……当然でしょ!」
軽口を叩いた舞奈にレナは素直じゃない笑みを向ける。
「それより今は手伝って欲しいことがある」
「何よ?」
「敵の首領に致命打を与えられる方策に、殿下たちの御力が必要なんです」
そう言って明日香とルーシアに加えてレナを連れ、
「志門さん!」
「検査の結果は如何でしたか!?」
「麗華様は何ともなかったンす!」
「ああ平気さ。それより丁度いい! おまえも付き合え!」
「「「?」」」
タイミングよくあらわれた麗華とデニス、ジャネットも連れて病院を飛び出す。
明日香がナチュラルに呼んだ装甲リムジンに連れ立って乗りこむ。
車中でレナたちにスカイフォールの預言と対抗ウィルスの真実を話して唖然とされながら、向かうは繁華街の一角にある張の店。
3人の天女と『太賢飯店』の店名が描かれた看板の下。
営業終了の立て札を無視して両開きのドアをガラリと開ける。
中では店主の張、先回りして来たらしいフランシーヌと朱音にKAGE、マーサにニュットが待っていた。
「舞奈ちゃん、明日香ちゃん、事情は聞いたアル」
「なら話は早い!」
「よろしくお願いします」
「まかせるアル! お姫様たちをツルッツルの綺麗な身体にして差し上げるアルよ!」
早速、手始めに麗華を預け……
――ここがいいアルか? いいアルか?
――ああっ……! そこは……!
「…………」
「……麗華様は大丈夫なのか?」
控室から聞こえてくる麗華の嬌声を聞きながら明日香は、舞奈は苦笑する。
「ふふ、本来はマッサージですからね。気持ちいいですよ?」
「そうかい」
フランシーヌの言葉に肩をすくめてみせる。
側で朱音も苦笑する。
そのさらに側で、
「わたくしの血肉に秘められた力と言うのは、このようなものだったのですね」
「殿下……」
「姉さま……」
ルーシアは自身の手の平をじっと見やりながら、ひとりごちる。
そんな彼女を明日香が、レナが不安げに見やる。
彼女の大切な人たちは、Wウィルスによって全滅した。
対抗ウィルスのしょうもない謎が明らかになっても、彼らが戻ってくることはない。
だから……
「……わたくしが……もっと積極的に接していたら、月輪様や【禍川総会】の皆さまを救えたでしょうか……?」
「全員にパンツを配るのか?」
「ちょっと! そんな言い方って――!」
舞奈は口元に乾いた笑みを浮かべる。
レナが睨んでくるが構わず、
「あたしが四国で出会った仲間は、あんたやレナちゃんの……おかげで完全耐性を持ってた。けど、あたしは奴らを守れなかった。Sランクのあたしがだ」
慰めとも自嘲ともつかぬ独白。
対するルーシアの表情は読めない。
王女として悩みや負の感情を表に出さない生き方が身についているのだろう。
けれど……だからこそ、舞奈は言葉を続ける。
「だから、あたしは明日香と2人で殴山一子を殺った。次は奴の番だ」
押し殺した声で、ひとりごちるように語る。
奴とはもちろんヘルバッハのことだ。
一連の事件の元凶を【機関】も【組合】もディフェンダーズも許すはずもない。
もちろん舞奈もだ。
「ところで殿下、そちらの心構えは大丈夫ですか?」
明日香が問う。
仮面の黒騎士ヘルバッハの正体が、10年前に失踪したスカイフォールのバッハ王子と同一人物なのは明白だ。
つまりルーシアとレナは、これから血を分けた兄と戦うことになる。それでも、
「見くびらないで! 顔も知らない血縁者なんて王族にとっては普通よ!」
レナは躊躇なく答える。
同じ台詞をヘルバッハ本人からも聞いたので、まあそういうものかと納得する。
「そんな奴らが魔法を悪事に使うというなら、容赦はしないわ!」
「……ええ。それに、あの方はわたしから大切なものを奪いました」
興奮するレナに、静かに同意したのはルーシア。
珍しく激情の片鱗をあらわにした彼女を見やり、
「いい顔だ」
舞奈は笑う。
「そういう気持ち、心の中に仕舞いこんで溜めこむより、相手にぶつけてやった方がスカッとする。ストレスは溜めない方が肌にも良いしな」
「あっ! ちょっと! どさくさにまぎれて何するのよ!」
さりげなく2人の王女の尻を触った舞奈をレナが睨む。
別に触ってない明日香まで睨んでくる。
側のルーシアは遠い目をしてから……
「……月輪様も、以前に同じことを言ってくださいました」
懐かしむように微笑む。
そんな彼女を見やって舞奈たちも釣られたように笑みを浮かべ――
「――ところでマーサ」
ルーシアはマーサを見やる。
「今回の件について、納得のいく説明をお願いしたいのですけど」
マーサを問い詰める。
珍しく声色が低い。
表情も先ほどまでとは違った意味で硬いが、その理由は言わずもがな。
国営サイトの裏サイトのさらに裏で、彼女らの下着が販売されていた件だ。
しかも効用から察するに本物である。
まさか本人が承諾した訳じゃなかろうと思っていたら、案の定そうだったらしい。
「いえほら、国庫の足しにと思いまして……」
「我が国の財政は、それほどひっ迫してはいないはずですが」
「じ、実はその……表のサイトにルーシア様とレナ様のご尊顔を掲載したところ、各国の殿方にそれはそれは好評で……」
「なるほど……」
マーサはいけしゃあしゃあと笑顔で答える。
対するルーシアは今までに見せたことがないような冷淡な表情で追い詰める。
まあ通販でパンツ買った奴が何人もいるというのなら、それで満足した奴がほぼ同じ数だけいるということになる。それもまたプラスの感情の一種ではあるのだろう。
マーサは魔術師の性として、そうした感情を賦活させようとした。
何故なら魔力を創造する魔術師にとって、プラスの感情は魔力の源だから。
と、いう理論が成立しない訳ではないとは思う。
その言い訳が使用済みパンティを無断で売られた王女たちに通用するかは知らんが。
そもそも王女様が可愛いからと言って、パンツ買って喜ぶ心情がピンとこない。
無論、小5の舞奈が他人の下半身事情をとやかく言うのが不躾なのは理解できる。
舞奈だってレナやルーシアのそういった場所が気にならない訳じゃない。
それでも貝合わせは肌と肌が触れ合うから愉しいのであって、パンツじゃ代わりにならないだろうと素直に思う。
そんな釈然としない気分のまま、ふと気づく。
「……そういやあ思ったんだが、2人のお袋さんのパンツは売らなかったんだな」
「王妃ですか? ええ、まあ王妃は成人してますし、その、お召し物にこんなことして知られでもしたら……どんなお仕置きをされるか……」
「そう言う話なら、今、割とアウトなんじゃないか? あんた」
「そ、それは……!」
側で睨んでいるレナからマーサはあわてて目をそらす。
するとルーシアと目が合って顔を青ざめさせる。
次いで救いを求めるような視線をこちらに向ける。
だが舞奈も明日香も礼儀正しく無視。
王家のことは王家で何とかして欲しいし、何と言うか……マーサは人生いろいろ舐めてる感じだし、一度ちゃんと痛い目を見た方がいい気がする。
それにルーシアのこちらの感情も、溜めこむより発散したほうが良いだろう。
なので我関せずにこやかな笑顔のまま舞奈と明日香が見守る先で……
「……それでマーサ、知ってるとは思いますが……わたくし、その……いつも量が多くて汚してしまっていますよね? ……さすがに、その時のものは……」
「ええ、もちろん念入りな洗浄の末――」
(ほっ)
「――シミの残ったものだけを特別版と銘打ったプレミアム価格で」
「キャアアアアアアア!」
「マーサァァァァァ!」
ルーシアは顔を真っ赤にしてうずくまる。
レナがガチギレして叫ぶ。
そんな楽しそうな王家の面々を見やりつつ、舞奈は口元に笑みを浮かべる。
明日香も心の底から呆れ果てた様子ながらも表情は穏やかだ。
使用済みの下着を勝手に売られていたことについては彼女らに同情する。
同じことをされたら舞奈なら殴ると思う。
だが顔を真っ赤にしてうずくまるルーシアの表情に、今やそれ以上の懸念はない。
何故ならスカイフォールの預言はもはや彼女らの血肉を欲してはいない。
最初から誰も犠牲になる必要なんてなかった。
血肉の慣れ果て――髪の毛や垢や、おりもので十分だったのだ。
四国の惨事に対する悔恨も、自分なりにふっきれたのだと舞奈は思う。
そんなタイミングを見計らったかのように――
「――麗華ちゃん、お疲れ様アルよ」
「感謝しますわ! まるで生まれ変わったような軽やかな気分ですわ!」
「よかったですね麗華様」
「お肌がツルツルなンすよ」
奥の部屋から張と、何だかツヤツヤした麗華たちが出て来た。
張の手には大きめの小袋。
中身は垢擦りして出てきた垢だろう。
それだけ取れれば体も軽くなるだろうと少し思った。
舞奈は、ふと側を見やり、
「次はルーシアちゃんの番アルよ、おまたせアル」
「気晴らしに行ってこいよ。気持ちいいらしいぜ」
ルーシアに笑いかけた。
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