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第12章 GOOD BY FRIENDS
儀式前夜
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悪魔のかつらを維持するため、喫煙者を狩って贄にしていたハゲのロッカー。
萩山光。
彼は今週末の日曜日に、次の儀式を行う。
舞奈たちは、その儀式を襲撃しようと計画していた。
彼の行為が【機関】や【組合】に問題視され、最悪の事態になる前に。
そんな波乱を目前に控えていても、舞奈の表向きの身分は小学生だ。
だから平日には普通に学校に行って、普通に授業を受ける。
なので普段通りに登校した、とある朝。
初等部の校舎の側で、
「先生、ちーっす」
舞奈は担任教師を見つけて挨拶した。
「ああ志門か。おはよう」
小太りでサングラスをかけた担任は、舞奈に気づいて振り返る。
大きな板のような何かを持ち上げようとしていたらしい。
「こんなとこで何してるんすか?」
舞奈は思わず問いかける。
始業前の忙しい時間帯に、教員が外をうろついているのは珍しい。
しかも大荷物を運ぼうとして難儀しているとなれば、なおさらだ。
「この前の日曜にウサギ小屋の扉を取り替えたんで、古い扉を仕舞おうとしていたところなんだ。誰かがふざけて怪我でもしないうちにな」
「なるほどドアごと替えたんすか。ひとりで運べるっすか?」
「……いや、少し厳しいな」
まあ正直なところ、支えるだけでやっとなのは見ればわかる。
小太りな彼は大人の男だが、いい歳でもある。なので、
「……そうっすか」
「あっ」
生返事を返しつつ、舞奈はひょいとドアを持ち上げる。
割と必死に支えていた質量が不意になくなったせいで、担任は軽くよろめく。
「あのなあ志門。前にも言ったと思うが、学校ではあまり本気をだなあ……」
担任は口ごもるように小言を言う。
ほっとした感を醸し出しながらも、立場上、言わなければならないのだ。
だから舞奈もドアを担いでバランスをとりながら、
「わかってますって。ちゃんと目立たないようにしてるっすよ」
足早に歩きながら、余裕の笑みを浮かべて返事を返す。
ハゲの脂虫殺害犯を探す最中、舞奈は彼を少し疑った。
彼の七三分けの髪が実はカツラだからだ。
だが、犯人はそもそもハゲじゃなかった。
だからというわけではないが、彼には何か親切なことがしたかった。
「いや、そういう問題では……」
舞奈の内心など知らずに担任はごにょごにょ小言を続けようとする。だが、
「あら榊先生。それに先生のクラスの志門さん、おはようございます」
「あっ栗原先生」
横から声をかけられて驚く。
そこにいたのは、中学生くらいのサイズでジャージ姿の女教師だ。
「先生ちーっす」
舞奈は普通に挨拶を返す。
普通なら舞奈の位置からは板が邪魔になって栗原先生の姿は見えない。
だが舞奈は事前に気配を読んで、近づいてきたのを察していた。
その程度、舞奈にとっては朝飯前だ。
「わっそれ一人で運ぶんですか? 志門さんは相変わらず力が強いですね」
栗原先生は驚きながらも、
「榊先生がいつも自慢げに話してくれるんですよ」
ニコニコ笑顔でそう言った。
舞奈は担任をジト目で見上げる。
目立たないようにしろっていつもセンセが言ってるのに。
担任はそっと目をそらす。
そして3人は並んで歩きながら、
「ふふ。志門さん、こっち側を持ちましょうか?」
栗原先生が笑顔で申し出た。
「だいじょうぶっすよ」
舞奈は笑顔で答え、
「それより――」
「あっ栗原先生!」
「おおっと」
慌てる担任の側で、いつの間にかドアは舞奈の反対側の肩に移動していた。
そして開いた手には、ジャージ姿の女教師。
……栗原先生は側の何もないところで転んで、舞奈に受け止められていた。
彼女も奈良坂と同じように、2つのことを一度にするのは苦手らしい。
舞奈を気にかける自分の足元には注意が行き届かず、案の定コケた。
それを舞奈が受け止めた。
運んでいたドアが邪魔で見えなかったが、気配を察するまでもなくわかった。
女教師の彼女はそもそもハゲでもないしカツラでもない。
だから嫌疑も濡れ衣も関係ない。
犯人の萩山光とは何の共通点もない。
だが彼女は誰に対しても親切で、生徒の悩みに真摯に向き合ってくれている。
ありていに言うと善人だ。
だから、彼女がピンチの時には進んで手を差し伸べたい。
萩山光にそうしたいと思ったのと同じように。だから、
「……前見て歩いてください。流石にこれ持ったまま支えるのは厳しいんで」
言いつつ舞奈は苦笑した。
そうやって舞奈がささやかな労働を終えた後。
ホームルーム前の教室で、
「でね、そのロッカーさんがすっごくカッコよかったんだよ!」
「そうなの! スマートで、強くて、天使みたいにゴージャスな金髪をしてたのー」
「そうなんだ」
チャビーと桜が、テックに熱く語っていた。
内容はツチノコ探しの顛末。
正確には、その最中に襲われた自分たちの前に、颯爽とあらわれたロッカーの話だ。
チャビーは幼女みたいな容姿のクセに、惚れた腫れたの話をよくする。
気になる人とやらの話をしたことも少なくない。
おそらく亡き兄の代わりをまだ見ぬ誰かに求めているのだろう。
だから相手を寄り好みしない反面、その想いが成就することは決してない。
桜がどうして彼を気に入ったのかは知らない。
派手で印象的な彼の容姿が、自分と吊り合うと考えたのかも知れない。
「うんうん、良い人だったよね」
園香もにこやかに同意する。
礼儀正しい園香は、自分を救ってくれた人物への感謝の気持ちを忘れない。
「格好いいだけじゃなくて、つま弾くギターの音色も素敵なのです。あの人は確かな技術を持っているのです。いつかちゃんと歌っているのを聞いてみたいのです」
委員長も珍しく拳を握りしめて語る。
彼女はロッカーの彼が、自身の目指す道の先にいると認識している。
そんな4人を尻目に、テックはじっと舞奈を見やる。
登校してきたのに気づいたのだろう。
舞奈はテックに笑みを返す。
今週末の日曜日、舞奈たちは4人が慕うロッカーを襲撃する。
彼の美しい金髪(を含む各種の髪型)を維持する儀式を妨害する形で。
彼の髪が、脂虫を贄にした儀式で生みだされた偽物だからだ。
だがそれは、彼から何かを奪うことを意味しない。
彼の今の彼のやり方では、いつか彼は【機関】や【組合】【協会】と敵対し、本当にすべてを失うことになる。それを止めるのだ。
事件の犯人がスミスじゃないかと疑い、その疑惑が晴れてから、舞奈は考えていた。
そもそも今回の依頼は、怪人の排除や捕縛ではない。
ただ無分別な喫煙者の殺害を止められればいいのだ。
だから舞奈は彼の儀式に割って入り、伝えたかった。
かつての悟やネコポチのように滅びへと向かう彼に、伝えたかった。
おまえの想いは、していることは間違ってなどいない。
だがやり方が、少しずれているのだと。だから、
「そのうち聞けるさ。あいつの歌がな」
かしましく笑う4人を見やり、舞奈も笑った。
そして何事もなく授業が終わって放課後。
校門前の警備室で、
「悪魔術の使い手ですか。あまり良い思い出が……」
クレアが言って苦笑した。
足元にじゃれついてきたサバトラの子猫に気づき、抱きかかえる。
ルージュが校内の『見回り』から帰って来たのだ。
「あんたの方が知ってたのか……」
舞奈はやれやれと苦笑する。
ルージュは呑気に「にゃぁ~」と鳴く。
少し前に犯人について情報収集をした際、ベティにも話を聞いた。
あの大ざっぱな面白黒人は、案の定、役に立つ情報を持っていなかった。
だがクレアには特に尋ねなかった。
当時の舞奈たちが探していたのが、謎の呪術儀式を行うハゲだったからだ。
だから術者でない彼女に聞いても困らせるだけだろうと思った。
だが犯人の正体が明らかになった今、ちょっと舞奈がこぼしてみたらこれである。
悪魔術の発祥は、かつて『地獄の火クラブ』と呼ばれた秘密結社だと聞いた。
高等魔術の礎となった『黄金の夜明け団』と同じイギリスの組織である。
なんというか、あの国は……
「……まあいいや。そいつはどんな奴だったんだ?」
敵の流派がどんなものか感触を知りたくて、尋ねてみる。
スミスから概要は聞いていたが、実際に相対した者の話を聞けるなら重畳だ。だが、
「そうですね、厄介……というのが正直な印象でしょうか」
クレアは言って苦笑しつつ、指先でルージュの頭を撫でる。
子猫は気持ちよさそうに身体をそらせてクレアを見上げる。
クレアは子猫のあごをかく。
そんな様子を明日香が羨むように見やる。
「強い……ってことか?」
問いつつ舞奈は、子猫をおびえさせてやるなよと手で制す。
明日香はそんな舞奈を睨む。
そんな2人を見やりつつ、クレアは苦笑を浮かべたまま答える。
「というか、上からの命令も周囲の声も聞かず、独自の思想に従って動くんですよ」
「……? 交戦経験があるのでは?」
「あ、いえ」
首を傾げる明日香の言葉に、クレアは慌てて訂正した。
「前職で組んだことかあるんですよ」
「ああ、仲間だったのか」
その答えに舞奈は笑う。
側の明日香は舞奈を見やり、
「わたしが貴女と組む前に、小室さんと組んだ的な感じね。……心中お察しするわ」
言いつつ心の底から同情する目でクレアを見た。
ルージュもつられてクレアを見上げて「なぁ~」と鳴く。
クレアの前職は軍か諜報機関だろうと予想していたが、前者ではないようだ。
そんなみゃー子みたいな奴と、平時のまともな軍隊では組まされないと思いたい。
だが、これから戦う敵と同じ流派の術者と、クレアは仲間だった。
その事実がなんとなく嬉しかった。
舞奈は萩山を討ちたいわけじゃない。
彼を止めて、彼を来たるべく破滅から救いたい。
そんな内心に気づかれぬよう誤魔化すように、
「おっボスに舞奈様じゃないっすか。お帰りですか?」
「おい明日香。今、あたしを誰と対応させやがったよ?」
見回りから戻ってきたベティを見やり、側の明日香に軽口を叩いた。
そして下校後。
2人は経過報告を兼ねて【機関】支部を訪れた。
「……なるほど、それで今週末に、その悪魔術師のハg……萩山氏と対決するのだな」
「そういうことだ」
会議室の向かいに座ったニュットが、舞奈の言葉にうむうむとうなずく。
舞奈はそういう言い間違いをしてやらんでくれとニュットを睨む。
「すまんが増援を出してやるわけにはいかんのだが……」
「いいよ別に。あたしらを誰だと思ってるんだ」
珍しく殊勝なニュットに余裕の笑みを返し、
「代わりに彼らを連れて行ってやってほしいのだ」
「……いらん」
申し出を、にべもなくつっぱねる。
何故なら舞奈の目前に並ぶのは、戦闘学ランを着こんだ異能力者たち。
特徴的なのにどうでもいい感じの不細工な顔立ちは、見知った諜報部の少年たちだ。
みなまで言うまでもなく、銃と魔法が交錯する戦場で異能力者なんて邪魔なだけだ。
なにせ彼らの得物は刀剣だけ、一部を除いて防御手段もないのだ。
いくら善良だとはいえ呪術師が相手では、弾除けにすらならない。
そんなことはニュットも十分に理解しているはずだ。だが、
「いやな、今回の件を仕事人まかせにすると、【組合】に対する影響力に問題が発生するやもと上層部が危惧しておるのだよ」
ニュットは変わらぬ糸目のまま、そんなことを言ってきた。
「ったく、余計なことばっかり気にしやがって」
くだらない、しかも的外れな政治的配慮に舞奈は思わず舌打ちする。
隣の明日香も顔をしかめる。
「まあ、形式上だけ作戦に協力すればいいのだから、無関係なアニメショップの警備でも命じておいてもらって構わないのだよ」
「いや、そういうわけには……」
身も蓋もない提案に、生真面目な明日香が難色を示す。
「……ま、そこら辺のことは、週末までに考えておくよ」
言って舞奈は苦笑した。
それより今日は、ほかに寄りたい場所がある。
なので明日香と別れ、帰路につく。
その途中で、統零町の片隅にある、新開発区の廃墟によく似た一角に立ち寄った。
「……ったくスミスの奴は、いつ看板を直す気なんだ?」
ネオンの看板を見上げ、愚痴りつつも笑う。
廃ビルの隙間で、派手なネオンが無駄に自己主張している。
その『画廊・ケリー』の文字の、『ケ』の字の横線は消えかけて点滅している。
いつもと同じ古物商の看板。
そんな看板を、しばし笑顔で見やっていると、
「あら、志門ちゃん。よく来たわね」
奥から出てきたスミスが普段通りに出迎えてくれた。
野太い声に相応しく、中東系の彫りの深い顔立ち。
岩のようなアゴ一面には剃り残しが広がっていて、カイゼル髭はムースでかっちり固められている。
なのに内股で女言葉という、ツッコミどころを凝固したようなハゲマッチョ。
だが、そんな彼の容姿も言動も、まあ見慣れれば親しみが持てると言えなくもない。
「おー! しもんだ!」
いっしょにやってきたリコの、バードテールの頭を撫でる。
「ふふ、改造拳銃とワイヤーショットのメンテ、終わってるわよ」
「いつもスマンな」
普段と同じように、スミスが奥の部屋から持ってきた拳銃と黒皮の手袋。
それらを受け取りながら、普段と同じように舞奈は笑う。
舞奈はスミスに犯人の嫌疑をかけた。
彼が博学で魔法の知識を持っていて、ハゲだったからだ。
そんな彼を失うのだと、舞奈は悲痛な覚悟をした。
だが彼は当然のように、自身の潔白を証明してみせた。
舞奈の嫌疑が少しずれていたことを教えてくれた。
そして彼の知識を得て、捜査は真犯人までたどり着いた。
だから2人は何も失っていない。
2人の関係は変わらない。
彼は舞奈のために兵站を担い、舞奈は彼を含む世界を守るために戦う。
……まあ、美香との思い出に関する何か大事なものを、少しばかり失いはしたが。
「奥に短機関銃も用意してあるわ」
「おっ、サンキュ」
「けど本当に『魔女撃ち弾』は必要ないのね?」
「ああ。……今回の相手、男だしな」
スミスの問いに、舞奈は不敵な笑みを浮かべて答える。
魔女撃ち弾は魔法を使う目標を傷つけることなく、その心を射手と繋ぐ。
その弾丸を、かつて舞奈は紅葉に対して用いた。
そして紅葉は姉ともども、同志として舞奈の側にいる。
敵を説得するためにこれ以上なく有用なこの力。
だが舞奈はそれを今回は使わないと決めた。
命中させるタイミングのシビアなこの弾丸に、紅葉と違って術者として熟達した彼との戦闘では頼るべきじゃないと思ったからだ。
それに先日、デーモンを経由して話した彼と、今度は自分の言葉で話したかった。
気のいい彼に興味を持ったのは本当だ。だから、
「代わりに、悪魔術について詳しく教えて欲しい。敵のこと、できるだけ正確に知っておきたいからな」
そう言って舞奈は笑った。
今日は彼とも、もう少し話をしたかったという理由もある。
そして、その夜。
舞奈は自室で踊っていた。
ステージは天井と壁と床しかない殺風景な自室。
引き締まった肢体を飾るはキュロットにブラウス。
その上に掛けられたショルダーホルスター。
そして両手にそれぞれ拳銃と、改造拳銃。
銃を握った両腕を両翼の如く左右にピンと伸ばす。
次の瞬間、両腕を交差させる。
両手の銃を前に向けて構える。
研ぎ澄まされた動作は銃の撃鉄の様に鋭い。
ポーズは鋳抜かれた鉄のように正確で力強い。
舞奈の肌には玉の汗が浮かんでいる。
だが口元にあいまいな笑みすら浮かべた童顔には息の上がった様子はない。
静寂の中に、四肢が風を切る音と筋肉が軋む音が響き渡る。
合間に舞奈が発する「はっ」という鋭い声が混ざる。
それ以外の音はない。
何故ならここは、人も車も通らぬ廃墟の街のボロアパートの一室だからだ。
だが舞奈の心は戦闘のリズムに満たされている。
それは戦場の嵐のように激しく、同時に馴染み深い心臓の鼓動のように心安らぐ。
周囲の空気が接するもののすべてを舞奈に伝え、内側から突き動かすリズム。
幼いピクシオンとして激戦の中で会得し、舞奈の内で醸造されたリズム。
敵に速やかな死をもたらし、それにより守りたいものの命を育む音のないメロディ。
そのリズムを、奴のロックンロールと共鳴させるのが今では楽しみになっていた。
舞奈は奴に――萩山光に伝えたかった。
おまえの想いは間違ってなどいない、と。
そして、おまえのように大事な何かを失った人間が、ここにもいると。
萩山光。
彼は今週末の日曜日に、次の儀式を行う。
舞奈たちは、その儀式を襲撃しようと計画していた。
彼の行為が【機関】や【組合】に問題視され、最悪の事態になる前に。
そんな波乱を目前に控えていても、舞奈の表向きの身分は小学生だ。
だから平日には普通に学校に行って、普通に授業を受ける。
なので普段通りに登校した、とある朝。
初等部の校舎の側で、
「先生、ちーっす」
舞奈は担任教師を見つけて挨拶した。
「ああ志門か。おはよう」
小太りでサングラスをかけた担任は、舞奈に気づいて振り返る。
大きな板のような何かを持ち上げようとしていたらしい。
「こんなとこで何してるんすか?」
舞奈は思わず問いかける。
始業前の忙しい時間帯に、教員が外をうろついているのは珍しい。
しかも大荷物を運ぼうとして難儀しているとなれば、なおさらだ。
「この前の日曜にウサギ小屋の扉を取り替えたんで、古い扉を仕舞おうとしていたところなんだ。誰かがふざけて怪我でもしないうちにな」
「なるほどドアごと替えたんすか。ひとりで運べるっすか?」
「……いや、少し厳しいな」
まあ正直なところ、支えるだけでやっとなのは見ればわかる。
小太りな彼は大人の男だが、いい歳でもある。なので、
「……そうっすか」
「あっ」
生返事を返しつつ、舞奈はひょいとドアを持ち上げる。
割と必死に支えていた質量が不意になくなったせいで、担任は軽くよろめく。
「あのなあ志門。前にも言ったと思うが、学校ではあまり本気をだなあ……」
担任は口ごもるように小言を言う。
ほっとした感を醸し出しながらも、立場上、言わなければならないのだ。
だから舞奈もドアを担いでバランスをとりながら、
「わかってますって。ちゃんと目立たないようにしてるっすよ」
足早に歩きながら、余裕の笑みを浮かべて返事を返す。
ハゲの脂虫殺害犯を探す最中、舞奈は彼を少し疑った。
彼の七三分けの髪が実はカツラだからだ。
だが、犯人はそもそもハゲじゃなかった。
だからというわけではないが、彼には何か親切なことがしたかった。
「いや、そういう問題では……」
舞奈の内心など知らずに担任はごにょごにょ小言を続けようとする。だが、
「あら榊先生。それに先生のクラスの志門さん、おはようございます」
「あっ栗原先生」
横から声をかけられて驚く。
そこにいたのは、中学生くらいのサイズでジャージ姿の女教師だ。
「先生ちーっす」
舞奈は普通に挨拶を返す。
普通なら舞奈の位置からは板が邪魔になって栗原先生の姿は見えない。
だが舞奈は事前に気配を読んで、近づいてきたのを察していた。
その程度、舞奈にとっては朝飯前だ。
「わっそれ一人で運ぶんですか? 志門さんは相変わらず力が強いですね」
栗原先生は驚きながらも、
「榊先生がいつも自慢げに話してくれるんですよ」
ニコニコ笑顔でそう言った。
舞奈は担任をジト目で見上げる。
目立たないようにしろっていつもセンセが言ってるのに。
担任はそっと目をそらす。
そして3人は並んで歩きながら、
「ふふ。志門さん、こっち側を持ちましょうか?」
栗原先生が笑顔で申し出た。
「だいじょうぶっすよ」
舞奈は笑顔で答え、
「それより――」
「あっ栗原先生!」
「おおっと」
慌てる担任の側で、いつの間にかドアは舞奈の反対側の肩に移動していた。
そして開いた手には、ジャージ姿の女教師。
……栗原先生は側の何もないところで転んで、舞奈に受け止められていた。
彼女も奈良坂と同じように、2つのことを一度にするのは苦手らしい。
舞奈を気にかける自分の足元には注意が行き届かず、案の定コケた。
それを舞奈が受け止めた。
運んでいたドアが邪魔で見えなかったが、気配を察するまでもなくわかった。
女教師の彼女はそもそもハゲでもないしカツラでもない。
だから嫌疑も濡れ衣も関係ない。
犯人の萩山光とは何の共通点もない。
だが彼女は誰に対しても親切で、生徒の悩みに真摯に向き合ってくれている。
ありていに言うと善人だ。
だから、彼女がピンチの時には進んで手を差し伸べたい。
萩山光にそうしたいと思ったのと同じように。だから、
「……前見て歩いてください。流石にこれ持ったまま支えるのは厳しいんで」
言いつつ舞奈は苦笑した。
そうやって舞奈がささやかな労働を終えた後。
ホームルーム前の教室で、
「でね、そのロッカーさんがすっごくカッコよかったんだよ!」
「そうなの! スマートで、強くて、天使みたいにゴージャスな金髪をしてたのー」
「そうなんだ」
チャビーと桜が、テックに熱く語っていた。
内容はツチノコ探しの顛末。
正確には、その最中に襲われた自分たちの前に、颯爽とあらわれたロッカーの話だ。
チャビーは幼女みたいな容姿のクセに、惚れた腫れたの話をよくする。
気になる人とやらの話をしたことも少なくない。
おそらく亡き兄の代わりをまだ見ぬ誰かに求めているのだろう。
だから相手を寄り好みしない反面、その想いが成就することは決してない。
桜がどうして彼を気に入ったのかは知らない。
派手で印象的な彼の容姿が、自分と吊り合うと考えたのかも知れない。
「うんうん、良い人だったよね」
園香もにこやかに同意する。
礼儀正しい園香は、自分を救ってくれた人物への感謝の気持ちを忘れない。
「格好いいだけじゃなくて、つま弾くギターの音色も素敵なのです。あの人は確かな技術を持っているのです。いつかちゃんと歌っているのを聞いてみたいのです」
委員長も珍しく拳を握りしめて語る。
彼女はロッカーの彼が、自身の目指す道の先にいると認識している。
そんな4人を尻目に、テックはじっと舞奈を見やる。
登校してきたのに気づいたのだろう。
舞奈はテックに笑みを返す。
今週末の日曜日、舞奈たちは4人が慕うロッカーを襲撃する。
彼の美しい金髪(を含む各種の髪型)を維持する儀式を妨害する形で。
彼の髪が、脂虫を贄にした儀式で生みだされた偽物だからだ。
だがそれは、彼から何かを奪うことを意味しない。
彼の今の彼のやり方では、いつか彼は【機関】や【組合】【協会】と敵対し、本当にすべてを失うことになる。それを止めるのだ。
事件の犯人がスミスじゃないかと疑い、その疑惑が晴れてから、舞奈は考えていた。
そもそも今回の依頼は、怪人の排除や捕縛ではない。
ただ無分別な喫煙者の殺害を止められればいいのだ。
だから舞奈は彼の儀式に割って入り、伝えたかった。
かつての悟やネコポチのように滅びへと向かう彼に、伝えたかった。
おまえの想いは、していることは間違ってなどいない。
だがやり方が、少しずれているのだと。だから、
「そのうち聞けるさ。あいつの歌がな」
かしましく笑う4人を見やり、舞奈も笑った。
そして何事もなく授業が終わって放課後。
校門前の警備室で、
「悪魔術の使い手ですか。あまり良い思い出が……」
クレアが言って苦笑した。
足元にじゃれついてきたサバトラの子猫に気づき、抱きかかえる。
ルージュが校内の『見回り』から帰って来たのだ。
「あんたの方が知ってたのか……」
舞奈はやれやれと苦笑する。
ルージュは呑気に「にゃぁ~」と鳴く。
少し前に犯人について情報収集をした際、ベティにも話を聞いた。
あの大ざっぱな面白黒人は、案の定、役に立つ情報を持っていなかった。
だがクレアには特に尋ねなかった。
当時の舞奈たちが探していたのが、謎の呪術儀式を行うハゲだったからだ。
だから術者でない彼女に聞いても困らせるだけだろうと思った。
だが犯人の正体が明らかになった今、ちょっと舞奈がこぼしてみたらこれである。
悪魔術の発祥は、かつて『地獄の火クラブ』と呼ばれた秘密結社だと聞いた。
高等魔術の礎となった『黄金の夜明け団』と同じイギリスの組織である。
なんというか、あの国は……
「……まあいいや。そいつはどんな奴だったんだ?」
敵の流派がどんなものか感触を知りたくて、尋ねてみる。
スミスから概要は聞いていたが、実際に相対した者の話を聞けるなら重畳だ。だが、
「そうですね、厄介……というのが正直な印象でしょうか」
クレアは言って苦笑しつつ、指先でルージュの頭を撫でる。
子猫は気持ちよさそうに身体をそらせてクレアを見上げる。
クレアは子猫のあごをかく。
そんな様子を明日香が羨むように見やる。
「強い……ってことか?」
問いつつ舞奈は、子猫をおびえさせてやるなよと手で制す。
明日香はそんな舞奈を睨む。
そんな2人を見やりつつ、クレアは苦笑を浮かべたまま答える。
「というか、上からの命令も周囲の声も聞かず、独自の思想に従って動くんですよ」
「……? 交戦経験があるのでは?」
「あ、いえ」
首を傾げる明日香の言葉に、クレアは慌てて訂正した。
「前職で組んだことかあるんですよ」
「ああ、仲間だったのか」
その答えに舞奈は笑う。
側の明日香は舞奈を見やり、
「わたしが貴女と組む前に、小室さんと組んだ的な感じね。……心中お察しするわ」
言いつつ心の底から同情する目でクレアを見た。
ルージュもつられてクレアを見上げて「なぁ~」と鳴く。
クレアの前職は軍か諜報機関だろうと予想していたが、前者ではないようだ。
そんなみゃー子みたいな奴と、平時のまともな軍隊では組まされないと思いたい。
だが、これから戦う敵と同じ流派の術者と、クレアは仲間だった。
その事実がなんとなく嬉しかった。
舞奈は萩山を討ちたいわけじゃない。
彼を止めて、彼を来たるべく破滅から救いたい。
そんな内心に気づかれぬよう誤魔化すように、
「おっボスに舞奈様じゃないっすか。お帰りですか?」
「おい明日香。今、あたしを誰と対応させやがったよ?」
見回りから戻ってきたベティを見やり、側の明日香に軽口を叩いた。
そして下校後。
2人は経過報告を兼ねて【機関】支部を訪れた。
「……なるほど、それで今週末に、その悪魔術師のハg……萩山氏と対決するのだな」
「そういうことだ」
会議室の向かいに座ったニュットが、舞奈の言葉にうむうむとうなずく。
舞奈はそういう言い間違いをしてやらんでくれとニュットを睨む。
「すまんが増援を出してやるわけにはいかんのだが……」
「いいよ別に。あたしらを誰だと思ってるんだ」
珍しく殊勝なニュットに余裕の笑みを返し、
「代わりに彼らを連れて行ってやってほしいのだ」
「……いらん」
申し出を、にべもなくつっぱねる。
何故なら舞奈の目前に並ぶのは、戦闘学ランを着こんだ異能力者たち。
特徴的なのにどうでもいい感じの不細工な顔立ちは、見知った諜報部の少年たちだ。
みなまで言うまでもなく、銃と魔法が交錯する戦場で異能力者なんて邪魔なだけだ。
なにせ彼らの得物は刀剣だけ、一部を除いて防御手段もないのだ。
いくら善良だとはいえ呪術師が相手では、弾除けにすらならない。
そんなことはニュットも十分に理解しているはずだ。だが、
「いやな、今回の件を仕事人まかせにすると、【組合】に対する影響力に問題が発生するやもと上層部が危惧しておるのだよ」
ニュットは変わらぬ糸目のまま、そんなことを言ってきた。
「ったく、余計なことばっかり気にしやがって」
くだらない、しかも的外れな政治的配慮に舞奈は思わず舌打ちする。
隣の明日香も顔をしかめる。
「まあ、形式上だけ作戦に協力すればいいのだから、無関係なアニメショップの警備でも命じておいてもらって構わないのだよ」
「いや、そういうわけには……」
身も蓋もない提案に、生真面目な明日香が難色を示す。
「……ま、そこら辺のことは、週末までに考えておくよ」
言って舞奈は苦笑した。
それより今日は、ほかに寄りたい場所がある。
なので明日香と別れ、帰路につく。
その途中で、統零町の片隅にある、新開発区の廃墟によく似た一角に立ち寄った。
「……ったくスミスの奴は、いつ看板を直す気なんだ?」
ネオンの看板を見上げ、愚痴りつつも笑う。
廃ビルの隙間で、派手なネオンが無駄に自己主張している。
その『画廊・ケリー』の文字の、『ケ』の字の横線は消えかけて点滅している。
いつもと同じ古物商の看板。
そんな看板を、しばし笑顔で見やっていると、
「あら、志門ちゃん。よく来たわね」
奥から出てきたスミスが普段通りに出迎えてくれた。
野太い声に相応しく、中東系の彫りの深い顔立ち。
岩のようなアゴ一面には剃り残しが広がっていて、カイゼル髭はムースでかっちり固められている。
なのに内股で女言葉という、ツッコミどころを凝固したようなハゲマッチョ。
だが、そんな彼の容姿も言動も、まあ見慣れれば親しみが持てると言えなくもない。
「おー! しもんだ!」
いっしょにやってきたリコの、バードテールの頭を撫でる。
「ふふ、改造拳銃とワイヤーショットのメンテ、終わってるわよ」
「いつもスマンな」
普段と同じように、スミスが奥の部屋から持ってきた拳銃と黒皮の手袋。
それらを受け取りながら、普段と同じように舞奈は笑う。
舞奈はスミスに犯人の嫌疑をかけた。
彼が博学で魔法の知識を持っていて、ハゲだったからだ。
そんな彼を失うのだと、舞奈は悲痛な覚悟をした。
だが彼は当然のように、自身の潔白を証明してみせた。
舞奈の嫌疑が少しずれていたことを教えてくれた。
そして彼の知識を得て、捜査は真犯人までたどり着いた。
だから2人は何も失っていない。
2人の関係は変わらない。
彼は舞奈のために兵站を担い、舞奈は彼を含む世界を守るために戦う。
……まあ、美香との思い出に関する何か大事なものを、少しばかり失いはしたが。
「奥に短機関銃も用意してあるわ」
「おっ、サンキュ」
「けど本当に『魔女撃ち弾』は必要ないのね?」
「ああ。……今回の相手、男だしな」
スミスの問いに、舞奈は不敵な笑みを浮かべて答える。
魔女撃ち弾は魔法を使う目標を傷つけることなく、その心を射手と繋ぐ。
その弾丸を、かつて舞奈は紅葉に対して用いた。
そして紅葉は姉ともども、同志として舞奈の側にいる。
敵を説得するためにこれ以上なく有用なこの力。
だが舞奈はそれを今回は使わないと決めた。
命中させるタイミングのシビアなこの弾丸に、紅葉と違って術者として熟達した彼との戦闘では頼るべきじゃないと思ったからだ。
それに先日、デーモンを経由して話した彼と、今度は自分の言葉で話したかった。
気のいい彼に興味を持ったのは本当だ。だから、
「代わりに、悪魔術について詳しく教えて欲しい。敵のこと、できるだけ正確に知っておきたいからな」
そう言って舞奈は笑った。
今日は彼とも、もう少し話をしたかったという理由もある。
そして、その夜。
舞奈は自室で踊っていた。
ステージは天井と壁と床しかない殺風景な自室。
引き締まった肢体を飾るはキュロットにブラウス。
その上に掛けられたショルダーホルスター。
そして両手にそれぞれ拳銃と、改造拳銃。
銃を握った両腕を両翼の如く左右にピンと伸ばす。
次の瞬間、両腕を交差させる。
両手の銃を前に向けて構える。
研ぎ澄まされた動作は銃の撃鉄の様に鋭い。
ポーズは鋳抜かれた鉄のように正確で力強い。
舞奈の肌には玉の汗が浮かんでいる。
だが口元にあいまいな笑みすら浮かべた童顔には息の上がった様子はない。
静寂の中に、四肢が風を切る音と筋肉が軋む音が響き渡る。
合間に舞奈が発する「はっ」という鋭い声が混ざる。
それ以外の音はない。
何故ならここは、人も車も通らぬ廃墟の街のボロアパートの一室だからだ。
だが舞奈の心は戦闘のリズムに満たされている。
それは戦場の嵐のように激しく、同時に馴染み深い心臓の鼓動のように心安らぐ。
周囲の空気が接するもののすべてを舞奈に伝え、内側から突き動かすリズム。
幼いピクシオンとして激戦の中で会得し、舞奈の内で醸造されたリズム。
敵に速やかな死をもたらし、それにより守りたいものの命を育む音のないメロディ。
そのリズムを、奴のロックンロールと共鳴させるのが今では楽しみになっていた。
舞奈は奴に――萩山光に伝えたかった。
おまえの想いは間違ってなどいない、と。
そして、おまえのように大事な何かを失った人間が、ここにもいると。
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