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第8章 魔獣襲来
戦闘2-2 ~ウアブ魔術&呪術vs氷霊術士
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ミノタウロスが氷の斧を振り上げる様を、楓は身動きを封じられたまま見ていた。
その目前を、横殴りの雨が吹き抜けた。
否、雨ではない。
連なる銃声。
巨大なミノタウロスの側頭を無数の弾丸が穿つ。
次いで視界の端から、車輪と無限軌道を備えた装甲車が跳びこんできた。
半装軌装甲車だ。
旧ドイツの装甲車がミノタウロスの顔面に着地する。
無限軌道が牛頭を削る。
ミノタウロスはたまらず叫ぶ。
半装軌車は勢いのままミノタウロスの後方に降り立ち、砂煙をあげてスピンしながら強引に停車する。
無限軌道が荒れ地を削る音。ブレーキ音。
荷台に設置された機関砲を影法師が操り、ミノタウロスの頭へ再び照準をつける。
そして斉射。
ミノタウロスが怯む隙に、荷台の端から2人の少女が跳び出す。
地面に尻餅をついたセーラー服は奈良坂。
側の明日香は華麗に着地し、楓の元に走り寄る。
そして楓の足元を縛める氷の棘を一瞥する。
「術による凍結ですね。わたしは冷気を抑えますので、楓さんは消去をお願いします」
「魔法消去……ですか!?」
「所詮は異能力の延長です。本体から離れていれば反転される心配はありません」
楓は予備の小杖を取り出し、言われるがままに【あらがう言葉】を行使する。
消去の魔術を反転される危険を危惧した楓だが、予想外にあっさり魔法が消える手ごたえがあった。
明日香は咒を唱えずに不動明王をイメージし、「投与」と締める。
すると彼女の細い指先から光線が放たれ、楓の足元を縛める氷を溶かす。
熱の光線によって対象を温める【熱波】の魔術。
明日香は攻撃魔法だけでなく、戦闘に使える多種の魔術に熟達している。
「わたしの式神たちが少しの間なら抑えておけます。一旦、退却を」
式神の半装軌車はミノタウロスとの距離を保ちつつ機関砲の斉射で翻弄している。
2柱のメジェドは遠巻きにレーザー光線を照射している。
だがダメージを与えられている様子はない。
1柱は釣鐘状の胴体の上に紅葉を乗せている。
楓の指示を待たずに回収してくれたらしい。
だが脚と腹部を凍てつかせた紅葉の身体は、ピクリとも動かない。
今の楓たちに、明日香の言葉に従う以外の道はない。
「わかりました」
楓はメジェドのコントロールを取り返して呼び寄せる。
紅葉を抱えた1柱と、地上の1柱は逞しい足で地を駆けてくる。
空中の1柱は飛来して足を出して着地する。
そして釣鐘状のボディの下側に腕を生成してウアス杖を回収し、楓にかしずくように首を垂れる。
やはり3柱しかいない。
1柱はコントロールを失っている間に倒されてしまったようだ。
楓のミスだ。
だが悔やんでも失われた魔神は戻らない。
楓は明日香と奈良坂の手を借りてメジェドのボディによじ登る。
2人は別のメジェドに相乗りする。
明日香の合図で、楓はメジェドをミノタウロスから逃げるように走らせた。
そして3柱のメジェドは頭上に少女を乗せて走る。
奈良坂が落ちそうになったので追加の腕を生成してつかませる。
走る内に、足の冷えが取れて動くようになってきた。
明日香は楓に合図する。
楓は明日香たちのメジェドに命じ、紅葉のメジェドに併走させる。
明日香は先ほどと同じ光線を照射して、紅葉の足を縛めていた氷を溶かす。
そして足裏を剥された靴を慎重に脱がす。
すぐさま楓も呪文を唱える。
無理やりに剥ぎ取られた足の傷を魔法の光が包み、傷を癒す。
式神による擬似的な器官を創りだして傷を癒す【治癒の言葉】の魔術。
かつて猫のバーストを治療したのと同じ術だ。
次いで解凍された腹部の傷をもふさぐ。
楓の呪文に癒された紅葉は、ゆっくりと目を開く。
「紅葉ちゃん! よかった……」
「……ありがとう、姉さん。それに明日香ちゃん、奈良坂さん」
紅葉は半身を起こし、凛々しく笑う。
「打撃を受ける直前に……おそらく【風の守護】で防御しましたね。そのおかげで致命傷を免れたようです」
明日香の冷静な分析に、楓の口元に安堵の笑みが浮かぶ。
あの時、紅葉は残された手札を最大限に活用して自分の命を繋ごうとしていた。
必死で生きようとしてくれていた。
その事実が嬉しかった。
「けれど、どうしてわたしたちの苦境を……?」
「奈良坂さんが【弁才天法】で他の部隊の状況を占っていたところ、こちらの戦況が思わしくないとの結果が得られたんです」
「あの、手持無沙汰だからって舞奈さんが……」
「そっか、舞奈ちゃんが……」
紅葉はひとりごち、微笑む。
舞奈は飄々としているが、友人に対して過保護に振舞うことがある。
かつて自分たちと同じように何かを失った彼女は、その後の人生で得たものを何としても守り抜こうとしている。
そのおかげで、自分は……自分たちは救われた。
「けど、この先はどうするつもりですか?」
再び楓が問いかける。
今や楓も落ち着きを取り戻していた。
「わたしたちはミノタウロスを倒さなければならないはずです」
「ええ。そもそも、わたしの式神でミノタウロスを倒すことはできません。追いつかれるのは時間の問題でしょう」
「だったら、何故――?」
式神を犠牲にしてまで逃げたのかと詰め寄りかけた楓を制し、明日香は笑う。
「紅葉さんは以前に単体で【地の刃の氾濫】を発動させたと聞きましたが」
「あ、ああ……」
「結界の破壊にも使用しましたから」
思わず紅葉が答え、楓も補足する。
いかにも、それは姉妹が結界の破壊に用いた、魔術と呪術の合わせ技だ。
そして、紅葉が舞奈と初めて戦ったときに使った必殺の呪術でもある。
紅葉は強敵である舞奈を確実に倒そうとこの術を使った。
だが妨害によって術は暴走し、あやうく舞奈を殺しかけた。
その事実を、舞奈の友人である明日香だって聞いていたはずだ。
「その術をもう一度、行使することはできますか?」
「ああ。あの時はアンクを壊しちゃったけど、今は姉さんと力を合わせて使うから何度か使える」
「なるほど。本来はウアブ魔術と呪術を共に極めた大魔道士が用いる術ですからね」
友人の命を奪いかけた術について、笑みすら浮かべて冷静に語る。
「それをミノタウロスへの足止めに使います」
「君はそれで……いいのかい?」
「問題ありませんよ。ミノタウロスが余裕をもって収まる範囲であれば狭くしても構いませんが、できるだけ深く掘り返してください」
「術を即席の落とし穴として利用するということですね」
意図を察して楓が頷く。
明日香は不敵に笑う。
「……明日香ちゃんは、すごいな」
紅葉は尊敬の念をこめて微笑む。
楓も頷く。
紅葉は拘束したミノタウロスを相手に油断し、楓は紅葉を討たれて我を忘れた。
だが明日香はどこまでも冷静だ。
鮮やかな手管で楓を救い、式神を犠牲にして時間を稼いだ。
そして紅葉を治療する僅かな間に、残された手札を使った反撃の策を講じた。
姉妹が亡き弟の影を追いながら生きているのに、彼女は前を見て歩いている。
友人を殺しかけた術をすら、冷徹に利用する。
あるいは最強の友人が、必殺の呪術程度で傷つくことはないと信頼しているのか。
ずっと大人になりたいと願い努力していた自分より、明日香はずっと大人だ。あるいは志門舞奈と共に戦った彼女の時間は、それほど濃密な経験だったのだろうか?
そんな明日香の端正な横顔に、切りそろえられた黒髪に見とれる。
「みっ、みなさん! ミノタウロスが……!!」
奈良坂が叫んだ。
指さす先から、巨大な牛頭の魔獣が走って来るのが見える。
それなりに速度のあるメジェドを、脚の長さを活かした猛スピードで追って来る。
「新たな怪異が? さっきまではいなかったはずなのに」
「予測より遅いと思ったら、新たな手下を創りだしていたようですね」
明日香は舌打ちする。
魔獣の周囲には群れなす毒犬。
新たな手下が泥人間じゃないのは、狼型の怪異の方が速いからだろう。
口から霜を吐いているから、おそらく異能力は【氷霊武器】。
ミノタウロスに劣らぬ速さで3柱のメジェドに追いすがる。
「毒犬はわたしと奈良坂さんでなんとかします。紅葉さん、楓さん、足止めの準備を」
前の作戦のニュットのように指示を出しつつ、明日香はメジェドから跳び下りる。
「了解です」
「了解」
「は、はひっ!」
楓と紅葉も跳び下りる。
その側に奈良坂が落ちる。
そんな彼女らの前に、ミノタウロスの先兵となった毒犬の群が迫る。
幾つもの双眸が不気味に光る。
「奈良坂さんは【不動火車法】を」
「わかりましたっ!」
奈良坂に指示を出しつつ、明日香もクロークの内側からベルトで繋がれたドッグタグを取り出す。
炎と重力を統べる不動明王の咒を諳んじながら、ベルトを頭上に放り投げる。
タグに刻まれたルーン文字が一斉に輝く。
奈良坂も起き上がりつつ、スカートの中から符の束を取り出す。
まき散らしつつ不動明王の咒を紡ぐ。
するとそれぞれの符が燃えあがり、火矢となって一斉に飛ぶ。
同時に明日香は「災厄」と唱える。
ベルトに繋がれたドッグタグのそれぞれが火の玉に変わる。
その大きさは奈良坂の火矢の倍以上。しかも着弾すると爆発する。
即ち【火嵐・弐式】。
群れなす火矢と火球は黒煙をあげ、凍てつく毒犬の群めがけて飛ぶ。
そして一斉に着弾する。
連なる爆音。炎。熱。
火球は爆発し、火矢は直撃し、毒犬を焼いて塵へと還す。
炎の洗礼を潜り抜けた数匹の毒犬が、明日香と奈良坂に迫る。
明日香はクロークの内側から短機関銃を取り出し、両手で構えて斉射する。
連なる銃声。
普段は式神として呼びだすことが多いが、今回は半装軌車と機関砲を呼びだしていたので自分で撃った。
慣れぬとはいえ的確な斉射で、間近に迫った1匹を塵と化す。
その一方で奈良坂も新たな符を取り出して握りしめる。
物品創造を司る梵天の咒を唱える。
すると手の中の符が拳銃に変わる。
符を即席の武器に変える【梵天創杖法】。
本来なら銃の使えぬ奈良坂の、護身のための苦肉の策だ。
召喚魔法による銃撃の初撃の速さは【不動火矢法】に劣るが、連射の速度はこちらに分がある。
奈良坂は両手でしっかり拳銃を構える。
へっぴり腰だが間違ってはいないフォームで毒犬めがけて撃つ。
銃声。銃声。
命中率も良くはないが、それでも毒犬は怯む。
そこを3柱のメジェドがレーザーを放って焼き払う。
明日香は思った。彼女の腕では狙っても当たりはしないと割り切って牽制に徹する思いきりのいい戦法は、いったい誰の入れ知恵だろうか?
そうやって毒犬の群が残らず塵に帰すと同時に、ミノタウロスが追いすがる。
短機関銃の射程には遠いが、ライフルがあれば狙える程度。
即ち呪術は十分に届き、範囲に巻きこまれる恐れのない絶妙の距離だ。
「姉さん、いくよ!」
「ええ!」
姉妹は結界を破壊した時と同じように、手を繋いで呪文を唱える。
ミノタウロスの周囲の地面から岩の槍が無数に突き出る。
結界を破壊した【地の刃の氾濫】。
だが先程より範囲は狭い。
代わりに地中深くから掘り起こされた岩槍は、以前に増して巨大で長い。
屈強なミノタウロスの肉体が、鋭い岩槍を砕いてへし折る。
だが槍の長さなど副産物だ。
ミノタウロスは足元に空いた穴に脚をとられてバランスを崩す。
地面が崩れ、人型の魔獣が沈んでいく。
凄まじい地響きをたて、砂煙と霜をふりまきながら、一行の背丈より高い下半身がすっぽり地に飲みこまれる。
それでも崩落は収まらず、ミノタウロスの上半身がもがきながら沈んでゆく。
魔術と呪術の合わせ技により、地面を構成する土砂は槍になって跳び出した。
だからミノタウロスの足元は空洞になったのだ。
深く掘るよう指示した明日香自身が、意図を超える掘削の深さに驚く。
僅かな期間で習得したはずの姉妹の魔術は、呪術は本物だ。
だが明日香は舌打ちする。
素早く不動明王の咒を唱え、地に手をついて「栄誉」と締める。
ミノタウロスと一行を遮断するように、炎の壁が燃えあがる。
即ち【火壁・弐式】。
近接攻撃に対して炎で反撃する壁を生み出す防御魔法。
同時にミノタウロスの手から巨大な斧が飛ぶ。
霜をふりまく氷の巨斧が、回転しながら宙を斬る。
咄嗟に反応したメジェドのレーザー光線が斧の表面を溶かす。
溶けかけた斧は炎の壁に飛びこむ。
それでも完全には溶けず、明日香たちめがけて鋭い破片となって飛び出す。
だが明日香は帝釈天の咒を唱え終えていた。
そして「守護」と締める。
放電するドーム状のバリアが形成される。
電磁バリアで広範囲を防御する【雷壁】が、斧の破片を弾いて消し去る。
「すまない、明日香ちゃん」
「今の攻撃を……見抜いたのですか!?」
驚く姉妹に、明日香は不敵な笑みで答える。
相手は敵だ。自分たちを全力で殺そうとしている。
明日香が今まで戦ってきた敵は、こういった状況で黙って倒されることはなかった。
舞奈と共に戦う中で、そうしたことは嫌というほど学んだ。
だから反撃の芽を完全に潰すため、再び帝釈天の咒を紡いで「魔弾」と締める。
稲妻の砲弾を放つ【雷弾・弐式】が、ミノタウロスの巨大な肩をえぐる。
メジェドたちはレーザー光線を収束させて、反対側の二の腕を焼き斬る。
地面に埋められ腕を奪われ、先程の楓と同じように成す術もないミノタウロス。
もはや腕を再生させる余裕もない。
そんな魔獣は辛うじて地上に残った半身で地面を揺らし、巨大な牛の口で咆哮する。
だが、いずれも反撃には成りえない。
けれど明日香は油断なく一瞥する。
舞奈と同じように銃弾と魔術の飛び交う戦場に慣れ親しんだ明日香は、敵の息の音が完全に止まるまで気を緩めない。
「楓さん、止めを刺しますよ」
言いつつクロークの内側から小さな錫杖を取り出す。
「ハヌッセン・文観」
すると錫杖の柄がひとりでにのびて、明日香の背丈ほどの長さになる。
先端には髑髏。
髑髏を囲う輪形に通された16個の遊環がシャランと鳴る。
戦闘魔術師が用いる聖なる杖、双徳神杖。
その杖を見て、楓は明日香の意図に気づいた。
明日香は双徳神杖の先を敵に向け、不動明王の咒を紡ぐ。
今回の戦闘で幾度となく唱えている炎を司る仏の咒は、雷術に重きを置く普段の明日香はあまり使わない。
そんな咒を多用したのは、相手が氷術をよくする【氷霊術士】だからだ。
楓が明日香のこの術を見るのは2度目だ。
1度目は、楓を止めようとした彼女と戦った時だ。
無理やりに魔法少女に変身した楓を明日香はこの術で牽制し、雷撃の雨で迎撃した。
そして楓は気づいた。
自分が何度も昔のことを思い出すのは、氷の魔獣を前に、無意識にあの日の記憶を呼び覚まそうとしていたからだ。
楓は明日香に並んでウアス杖を構え、自身の内なる神へ捧げる呪文を唱える。
奉ずる神はセクメト。
ラーと同じく太陽に宿り、陽光の熱を統べる炎神である。
楓がこの呪文を唱えるのも2度目だ。
1度目は、脂虫が麻薬の取引に使っていた薄汚れた店舗を焼いた時だった。
明日香との勝負に負け、その明日香から炎術の美しさを聞き、呪文を唱えた。
あの時と同じように、杖の先から熱線が照射される。
セクメトが司る裁きの熱が空気を焼き、炎となってミノタウロスを襲う。
即ち【火吹きの杖】の魔術。
同時に明日香の術も完成する。
あの時と同じように「放射」と唱えると同時に、杖の先から炎が噴き出す。
即ち【火炎放射】の魔術。
2つの魔炎が、氷を操る魔獣を焼く。
灼熱が、魔獣がまとった霜のベールを蒸発させ、白い身体を蹂躙する。
由緒ある火炎放射の作法にのっとった2人の罵倒が、言葉すら持たぬはずのミノタウロスの心を砕く。
魔獣は拘束され、灼熱の炎に炙られながら、巨大な牛頭をのけ反らして咆哮する。
それが断末魔の叫びとなった。
巨大な身体が、炙られた氷のような勢いで溶けてゆく。
溶けた身体は霧散し、蒸発する。
そうやって、ミノタウロスは消えた。
跡には何も残らなかった。
「ありがとうございます、明日香さん」
楓は側の明日香に向かって微笑みかける。
小学生の彼女と目線を合わせるためには、しゃがまなければならない。
けれど彼女は、まぎれもなく仕事人の先輩だ。
今だって、楓と紅葉の命を救ってくれた。
そして楓に気づかせてくれた。
幼い頃、楓は魔法使いになりたかった。
そして芸術と出会ってからは、芸術家になりたかった。
紅葉や瑞葉を楽しませたかった。
その夢を、すべて叶えてなにが悪い?
「痛っ」
「紅葉!?」
「ごめん姉さん、何かとがったものを踏んだみたいだ」
「そりゃまあ、新開発区ですから」
真面目な顔で明日香が言って、皆で笑う。
瓦礫と岩石が転がる新開発区の荒野を、裸足で歩くのは無謀だ。
紅葉は裸足だ。
足裏を無理矢理に剥された靴は脱がしたし、斧で薙がれたセーラー服は破れている。
けれど、その下の紅葉の身体は、いつもの健康的な紅葉のそれだ。
楓が魔術で癒したからだ。
そう。楓は今や魔術師にして芸術家だ。
怪異を倒し、ひとつでも悲劇の芽を積んで、人々を笑顔にする。
当面の目的は、志門舞奈の元にたどり着いて、彼女を魔法少女にすることだ。
あの『美』を体現した少女から受け取った、あの感動で。
楓が見た『美』を凝縮した、あの呪文で。
それは仲間にとって有益で、楓にとってこの上ない喜びだ。
だから立ち止まっている暇などない。
楓は胸元の通信機に報告する。
「こちら【メメント・モリ】。ミノタウロスの排除に成功しました」
その目前を、横殴りの雨が吹き抜けた。
否、雨ではない。
連なる銃声。
巨大なミノタウロスの側頭を無数の弾丸が穿つ。
次いで視界の端から、車輪と無限軌道を備えた装甲車が跳びこんできた。
半装軌装甲車だ。
旧ドイツの装甲車がミノタウロスの顔面に着地する。
無限軌道が牛頭を削る。
ミノタウロスはたまらず叫ぶ。
半装軌車は勢いのままミノタウロスの後方に降り立ち、砂煙をあげてスピンしながら強引に停車する。
無限軌道が荒れ地を削る音。ブレーキ音。
荷台に設置された機関砲を影法師が操り、ミノタウロスの頭へ再び照準をつける。
そして斉射。
ミノタウロスが怯む隙に、荷台の端から2人の少女が跳び出す。
地面に尻餅をついたセーラー服は奈良坂。
側の明日香は華麗に着地し、楓の元に走り寄る。
そして楓の足元を縛める氷の棘を一瞥する。
「術による凍結ですね。わたしは冷気を抑えますので、楓さんは消去をお願いします」
「魔法消去……ですか!?」
「所詮は異能力の延長です。本体から離れていれば反転される心配はありません」
楓は予備の小杖を取り出し、言われるがままに【あらがう言葉】を行使する。
消去の魔術を反転される危険を危惧した楓だが、予想外にあっさり魔法が消える手ごたえがあった。
明日香は咒を唱えずに不動明王をイメージし、「投与」と締める。
すると彼女の細い指先から光線が放たれ、楓の足元を縛める氷を溶かす。
熱の光線によって対象を温める【熱波】の魔術。
明日香は攻撃魔法だけでなく、戦闘に使える多種の魔術に熟達している。
「わたしの式神たちが少しの間なら抑えておけます。一旦、退却を」
式神の半装軌車はミノタウロスとの距離を保ちつつ機関砲の斉射で翻弄している。
2柱のメジェドは遠巻きにレーザー光線を照射している。
だがダメージを与えられている様子はない。
1柱は釣鐘状の胴体の上に紅葉を乗せている。
楓の指示を待たずに回収してくれたらしい。
だが脚と腹部を凍てつかせた紅葉の身体は、ピクリとも動かない。
今の楓たちに、明日香の言葉に従う以外の道はない。
「わかりました」
楓はメジェドのコントロールを取り返して呼び寄せる。
紅葉を抱えた1柱と、地上の1柱は逞しい足で地を駆けてくる。
空中の1柱は飛来して足を出して着地する。
そして釣鐘状のボディの下側に腕を生成してウアス杖を回収し、楓にかしずくように首を垂れる。
やはり3柱しかいない。
1柱はコントロールを失っている間に倒されてしまったようだ。
楓のミスだ。
だが悔やんでも失われた魔神は戻らない。
楓は明日香と奈良坂の手を借りてメジェドのボディによじ登る。
2人は別のメジェドに相乗りする。
明日香の合図で、楓はメジェドをミノタウロスから逃げるように走らせた。
そして3柱のメジェドは頭上に少女を乗せて走る。
奈良坂が落ちそうになったので追加の腕を生成してつかませる。
走る内に、足の冷えが取れて動くようになってきた。
明日香は楓に合図する。
楓は明日香たちのメジェドに命じ、紅葉のメジェドに併走させる。
明日香は先ほどと同じ光線を照射して、紅葉の足を縛めていた氷を溶かす。
そして足裏を剥された靴を慎重に脱がす。
すぐさま楓も呪文を唱える。
無理やりに剥ぎ取られた足の傷を魔法の光が包み、傷を癒す。
式神による擬似的な器官を創りだして傷を癒す【治癒の言葉】の魔術。
かつて猫のバーストを治療したのと同じ術だ。
次いで解凍された腹部の傷をもふさぐ。
楓の呪文に癒された紅葉は、ゆっくりと目を開く。
「紅葉ちゃん! よかった……」
「……ありがとう、姉さん。それに明日香ちゃん、奈良坂さん」
紅葉は半身を起こし、凛々しく笑う。
「打撃を受ける直前に……おそらく【風の守護】で防御しましたね。そのおかげで致命傷を免れたようです」
明日香の冷静な分析に、楓の口元に安堵の笑みが浮かぶ。
あの時、紅葉は残された手札を最大限に活用して自分の命を繋ごうとしていた。
必死で生きようとしてくれていた。
その事実が嬉しかった。
「けれど、どうしてわたしたちの苦境を……?」
「奈良坂さんが【弁才天法】で他の部隊の状況を占っていたところ、こちらの戦況が思わしくないとの結果が得られたんです」
「あの、手持無沙汰だからって舞奈さんが……」
「そっか、舞奈ちゃんが……」
紅葉はひとりごち、微笑む。
舞奈は飄々としているが、友人に対して過保護に振舞うことがある。
かつて自分たちと同じように何かを失った彼女は、その後の人生で得たものを何としても守り抜こうとしている。
そのおかげで、自分は……自分たちは救われた。
「けど、この先はどうするつもりですか?」
再び楓が問いかける。
今や楓も落ち着きを取り戻していた。
「わたしたちはミノタウロスを倒さなければならないはずです」
「ええ。そもそも、わたしの式神でミノタウロスを倒すことはできません。追いつかれるのは時間の問題でしょう」
「だったら、何故――?」
式神を犠牲にしてまで逃げたのかと詰め寄りかけた楓を制し、明日香は笑う。
「紅葉さんは以前に単体で【地の刃の氾濫】を発動させたと聞きましたが」
「あ、ああ……」
「結界の破壊にも使用しましたから」
思わず紅葉が答え、楓も補足する。
いかにも、それは姉妹が結界の破壊に用いた、魔術と呪術の合わせ技だ。
そして、紅葉が舞奈と初めて戦ったときに使った必殺の呪術でもある。
紅葉は強敵である舞奈を確実に倒そうとこの術を使った。
だが妨害によって術は暴走し、あやうく舞奈を殺しかけた。
その事実を、舞奈の友人である明日香だって聞いていたはずだ。
「その術をもう一度、行使することはできますか?」
「ああ。あの時はアンクを壊しちゃったけど、今は姉さんと力を合わせて使うから何度か使える」
「なるほど。本来はウアブ魔術と呪術を共に極めた大魔道士が用いる術ですからね」
友人の命を奪いかけた術について、笑みすら浮かべて冷静に語る。
「それをミノタウロスへの足止めに使います」
「君はそれで……いいのかい?」
「問題ありませんよ。ミノタウロスが余裕をもって収まる範囲であれば狭くしても構いませんが、できるだけ深く掘り返してください」
「術を即席の落とし穴として利用するということですね」
意図を察して楓が頷く。
明日香は不敵に笑う。
「……明日香ちゃんは、すごいな」
紅葉は尊敬の念をこめて微笑む。
楓も頷く。
紅葉は拘束したミノタウロスを相手に油断し、楓は紅葉を討たれて我を忘れた。
だが明日香はどこまでも冷静だ。
鮮やかな手管で楓を救い、式神を犠牲にして時間を稼いだ。
そして紅葉を治療する僅かな間に、残された手札を使った反撃の策を講じた。
姉妹が亡き弟の影を追いながら生きているのに、彼女は前を見て歩いている。
友人を殺しかけた術をすら、冷徹に利用する。
あるいは最強の友人が、必殺の呪術程度で傷つくことはないと信頼しているのか。
ずっと大人になりたいと願い努力していた自分より、明日香はずっと大人だ。あるいは志門舞奈と共に戦った彼女の時間は、それほど濃密な経験だったのだろうか?
そんな明日香の端正な横顔に、切りそろえられた黒髪に見とれる。
「みっ、みなさん! ミノタウロスが……!!」
奈良坂が叫んだ。
指さす先から、巨大な牛頭の魔獣が走って来るのが見える。
それなりに速度のあるメジェドを、脚の長さを活かした猛スピードで追って来る。
「新たな怪異が? さっきまではいなかったはずなのに」
「予測より遅いと思ったら、新たな手下を創りだしていたようですね」
明日香は舌打ちする。
魔獣の周囲には群れなす毒犬。
新たな手下が泥人間じゃないのは、狼型の怪異の方が速いからだろう。
口から霜を吐いているから、おそらく異能力は【氷霊武器】。
ミノタウロスに劣らぬ速さで3柱のメジェドに追いすがる。
「毒犬はわたしと奈良坂さんでなんとかします。紅葉さん、楓さん、足止めの準備を」
前の作戦のニュットのように指示を出しつつ、明日香はメジェドから跳び下りる。
「了解です」
「了解」
「は、はひっ!」
楓と紅葉も跳び下りる。
その側に奈良坂が落ちる。
そんな彼女らの前に、ミノタウロスの先兵となった毒犬の群が迫る。
幾つもの双眸が不気味に光る。
「奈良坂さんは【不動火車法】を」
「わかりましたっ!」
奈良坂に指示を出しつつ、明日香もクロークの内側からベルトで繋がれたドッグタグを取り出す。
炎と重力を統べる不動明王の咒を諳んじながら、ベルトを頭上に放り投げる。
タグに刻まれたルーン文字が一斉に輝く。
奈良坂も起き上がりつつ、スカートの中から符の束を取り出す。
まき散らしつつ不動明王の咒を紡ぐ。
するとそれぞれの符が燃えあがり、火矢となって一斉に飛ぶ。
同時に明日香は「災厄」と唱える。
ベルトに繋がれたドッグタグのそれぞれが火の玉に変わる。
その大きさは奈良坂の火矢の倍以上。しかも着弾すると爆発する。
即ち【火嵐・弐式】。
群れなす火矢と火球は黒煙をあげ、凍てつく毒犬の群めがけて飛ぶ。
そして一斉に着弾する。
連なる爆音。炎。熱。
火球は爆発し、火矢は直撃し、毒犬を焼いて塵へと還す。
炎の洗礼を潜り抜けた数匹の毒犬が、明日香と奈良坂に迫る。
明日香はクロークの内側から短機関銃を取り出し、両手で構えて斉射する。
連なる銃声。
普段は式神として呼びだすことが多いが、今回は半装軌車と機関砲を呼びだしていたので自分で撃った。
慣れぬとはいえ的確な斉射で、間近に迫った1匹を塵と化す。
その一方で奈良坂も新たな符を取り出して握りしめる。
物品創造を司る梵天の咒を唱える。
すると手の中の符が拳銃に変わる。
符を即席の武器に変える【梵天創杖法】。
本来なら銃の使えぬ奈良坂の、護身のための苦肉の策だ。
召喚魔法による銃撃の初撃の速さは【不動火矢法】に劣るが、連射の速度はこちらに分がある。
奈良坂は両手でしっかり拳銃を構える。
へっぴり腰だが間違ってはいないフォームで毒犬めがけて撃つ。
銃声。銃声。
命中率も良くはないが、それでも毒犬は怯む。
そこを3柱のメジェドがレーザーを放って焼き払う。
明日香は思った。彼女の腕では狙っても当たりはしないと割り切って牽制に徹する思いきりのいい戦法は、いったい誰の入れ知恵だろうか?
そうやって毒犬の群が残らず塵に帰すと同時に、ミノタウロスが追いすがる。
短機関銃の射程には遠いが、ライフルがあれば狙える程度。
即ち呪術は十分に届き、範囲に巻きこまれる恐れのない絶妙の距離だ。
「姉さん、いくよ!」
「ええ!」
姉妹は結界を破壊した時と同じように、手を繋いで呪文を唱える。
ミノタウロスの周囲の地面から岩の槍が無数に突き出る。
結界を破壊した【地の刃の氾濫】。
だが先程より範囲は狭い。
代わりに地中深くから掘り起こされた岩槍は、以前に増して巨大で長い。
屈強なミノタウロスの肉体が、鋭い岩槍を砕いてへし折る。
だが槍の長さなど副産物だ。
ミノタウロスは足元に空いた穴に脚をとられてバランスを崩す。
地面が崩れ、人型の魔獣が沈んでいく。
凄まじい地響きをたて、砂煙と霜をふりまきながら、一行の背丈より高い下半身がすっぽり地に飲みこまれる。
それでも崩落は収まらず、ミノタウロスの上半身がもがきながら沈んでゆく。
魔術と呪術の合わせ技により、地面を構成する土砂は槍になって跳び出した。
だからミノタウロスの足元は空洞になったのだ。
深く掘るよう指示した明日香自身が、意図を超える掘削の深さに驚く。
僅かな期間で習得したはずの姉妹の魔術は、呪術は本物だ。
だが明日香は舌打ちする。
素早く不動明王の咒を唱え、地に手をついて「栄誉」と締める。
ミノタウロスと一行を遮断するように、炎の壁が燃えあがる。
即ち【火壁・弐式】。
近接攻撃に対して炎で反撃する壁を生み出す防御魔法。
同時にミノタウロスの手から巨大な斧が飛ぶ。
霜をふりまく氷の巨斧が、回転しながら宙を斬る。
咄嗟に反応したメジェドのレーザー光線が斧の表面を溶かす。
溶けかけた斧は炎の壁に飛びこむ。
それでも完全には溶けず、明日香たちめがけて鋭い破片となって飛び出す。
だが明日香は帝釈天の咒を唱え終えていた。
そして「守護」と締める。
放電するドーム状のバリアが形成される。
電磁バリアで広範囲を防御する【雷壁】が、斧の破片を弾いて消し去る。
「すまない、明日香ちゃん」
「今の攻撃を……見抜いたのですか!?」
驚く姉妹に、明日香は不敵な笑みで答える。
相手は敵だ。自分たちを全力で殺そうとしている。
明日香が今まで戦ってきた敵は、こういった状況で黙って倒されることはなかった。
舞奈と共に戦う中で、そうしたことは嫌というほど学んだ。
だから反撃の芽を完全に潰すため、再び帝釈天の咒を紡いで「魔弾」と締める。
稲妻の砲弾を放つ【雷弾・弐式】が、ミノタウロスの巨大な肩をえぐる。
メジェドたちはレーザー光線を収束させて、反対側の二の腕を焼き斬る。
地面に埋められ腕を奪われ、先程の楓と同じように成す術もないミノタウロス。
もはや腕を再生させる余裕もない。
そんな魔獣は辛うじて地上に残った半身で地面を揺らし、巨大な牛の口で咆哮する。
だが、いずれも反撃には成りえない。
けれど明日香は油断なく一瞥する。
舞奈と同じように銃弾と魔術の飛び交う戦場に慣れ親しんだ明日香は、敵の息の音が完全に止まるまで気を緩めない。
「楓さん、止めを刺しますよ」
言いつつクロークの内側から小さな錫杖を取り出す。
「ハヌッセン・文観」
すると錫杖の柄がひとりでにのびて、明日香の背丈ほどの長さになる。
先端には髑髏。
髑髏を囲う輪形に通された16個の遊環がシャランと鳴る。
戦闘魔術師が用いる聖なる杖、双徳神杖。
その杖を見て、楓は明日香の意図に気づいた。
明日香は双徳神杖の先を敵に向け、不動明王の咒を紡ぐ。
今回の戦闘で幾度となく唱えている炎を司る仏の咒は、雷術に重きを置く普段の明日香はあまり使わない。
そんな咒を多用したのは、相手が氷術をよくする【氷霊術士】だからだ。
楓が明日香のこの術を見るのは2度目だ。
1度目は、楓を止めようとした彼女と戦った時だ。
無理やりに魔法少女に変身した楓を明日香はこの術で牽制し、雷撃の雨で迎撃した。
そして楓は気づいた。
自分が何度も昔のことを思い出すのは、氷の魔獣を前に、無意識にあの日の記憶を呼び覚まそうとしていたからだ。
楓は明日香に並んでウアス杖を構え、自身の内なる神へ捧げる呪文を唱える。
奉ずる神はセクメト。
ラーと同じく太陽に宿り、陽光の熱を統べる炎神である。
楓がこの呪文を唱えるのも2度目だ。
1度目は、脂虫が麻薬の取引に使っていた薄汚れた店舗を焼いた時だった。
明日香との勝負に負け、その明日香から炎術の美しさを聞き、呪文を唱えた。
あの時と同じように、杖の先から熱線が照射される。
セクメトが司る裁きの熱が空気を焼き、炎となってミノタウロスを襲う。
即ち【火吹きの杖】の魔術。
同時に明日香の術も完成する。
あの時と同じように「放射」と唱えると同時に、杖の先から炎が噴き出す。
即ち【火炎放射】の魔術。
2つの魔炎が、氷を操る魔獣を焼く。
灼熱が、魔獣がまとった霜のベールを蒸発させ、白い身体を蹂躙する。
由緒ある火炎放射の作法にのっとった2人の罵倒が、言葉すら持たぬはずのミノタウロスの心を砕く。
魔獣は拘束され、灼熱の炎に炙られながら、巨大な牛頭をのけ反らして咆哮する。
それが断末魔の叫びとなった。
巨大な身体が、炙られた氷のような勢いで溶けてゆく。
溶けた身体は霧散し、蒸発する。
そうやって、ミノタウロスは消えた。
跡には何も残らなかった。
「ありがとうございます、明日香さん」
楓は側の明日香に向かって微笑みかける。
小学生の彼女と目線を合わせるためには、しゃがまなければならない。
けれど彼女は、まぎれもなく仕事人の先輩だ。
今だって、楓と紅葉の命を救ってくれた。
そして楓に気づかせてくれた。
幼い頃、楓は魔法使いになりたかった。
そして芸術と出会ってからは、芸術家になりたかった。
紅葉や瑞葉を楽しませたかった。
その夢を、すべて叶えてなにが悪い?
「痛っ」
「紅葉!?」
「ごめん姉さん、何かとがったものを踏んだみたいだ」
「そりゃまあ、新開発区ですから」
真面目な顔で明日香が言って、皆で笑う。
瓦礫と岩石が転がる新開発区の荒野を、裸足で歩くのは無謀だ。
紅葉は裸足だ。
足裏を無理矢理に剥された靴は脱がしたし、斧で薙がれたセーラー服は破れている。
けれど、その下の紅葉の身体は、いつもの健康的な紅葉のそれだ。
楓が魔術で癒したからだ。
そう。楓は今や魔術師にして芸術家だ。
怪異を倒し、ひとつでも悲劇の芽を積んで、人々を笑顔にする。
当面の目的は、志門舞奈の元にたどり着いて、彼女を魔法少女にすることだ。
あの『美』を体現した少女から受け取った、あの感動で。
楓が見た『美』を凝縮した、あの呪文で。
それは仲間にとって有益で、楓にとってこの上ない喜びだ。
だから立ち止まっている暇などない。
楓は胸元の通信機に報告する。
「こちら【メメント・モリ】。ミノタウロスの排除に成功しました」
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