隣町は魔物ひしめく廃墟。俺は彼女のヒーローになる

立川ありす

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第2章 SAMURAI FIST ~選ばれし者の証

再会

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 その週の日曜日も、俺は千佳といつも通りの朝の時間を過ごしていた。
 出張中の両親はいない。
 だから俺が朝食を作って、起き抜けで眠たそうな千佳と2人で食べる。

 今日も千佳の体調は良さそうだ。
 バターをたっぷり塗ったトースト片手に、手製の卵焼きをほおばってニッコリ笑う。
 よかった。

「お兄ちゃんの卵焼き、甘くてだーい好き!」
「僕も、千佳が嬉しそうに食べてくれて嬉しいよ」
 腕を振るったかいがあった。

 俺はベーコンエッグだけじゃなく卵焼きも得意だ。
 ちなみにスクランブルエッグにも自信がある。
 千佳が卵料理が好きだからだ。

 妹の無垢な笑顔を見やりながら、『【火霊武器ファイヤーサムライ】を使って料理をしたらガス代が浮くんじゃないだろうか』という誘惑に負けずに普通に卵を焼いてよかったと思った。

 けれど、テレビがタイミング悪く傷害事件のニュースを映し出した。
 千佳は眉をひそめる。

「最近、こういうの多いんだって。なんかこわいね」
「うん……」
 ニュースは通り魔による犯行だと報道する。

 不審者に注意をうながすテロップが流れる。
 同時に、くわえ煙草の男のイラストが大写しになる。

 俺は思った。
 これは屍虫による事件なのだろうと。
 だから何らかの手段で【機関】が手を回したのだろう。
 怪異の存在が世に知られないように。

 千佳は不安げにテレビを見つめている。だから、

「だいじょうぶだよ。悪い奴があらわれても、お兄ちゃんがやっつけてあげるから」
 千佳を安心させるように笑いかける。

 そう、俺に与えられた【火霊武器ファイヤーサムライ】は、卵を焼くための異能力じゃない。
 怪異を討ち、人々を守るための力だ。
 でも千佳は口をへの字に曲げて、

「ダメだよ、お兄ちゃん。ケガしちゃう」
 まるで姉が弟に言い含めるように言った。
 俺は反論しようとする。
 だが【機関】や異能力のことを話すわけにもいかない。だから、

「そんなことないさ。千佳がピンチになったら、僕が千佳のヒーローになるよ」
 けれど、千佳は遠くを見るような目をして笑う。

「ヒーローなんかにならなくていいよ」
 屈託のない笑みを浮かべながら、けど、じっと俺を見やる。
 病弱な妹が、兄の顔を少しでも長く見ていたいと願うように。

「お兄ちゃんは、今のままのお兄ちゃんでいてくれば、それでいいよ」
 そんな千佳の笑みを見やりながら、俺も複雑な気持ちで笑った。

 そして朝食を済ませて食器を洗う。
 部屋に学校の友達を招くという千佳の部屋の片づけを手伝う。

 そうやって日曜の午前を過ごした後、俺は新開発区を訪れた。

 以前と同じく、新開発区の入り口にはガードマンがいた。
 だが今度はきちんと挨拶して奥へと進む。

「何回見ても、酷い所だな……」
 視界いっぱいに広がる荒野に立ち並ぶ廃ビル、廃ビル、錆びた車に、また廃ビル。
 埃っぽい乾いた風のせいで喉が痛い。

 変な薬品でも流れ出ているのか、ひび割れた荒れ地のような地面からは奇妙な植物がまばらに生えている。

 ビルの片隅に座りこんでいたマネキンの頭がポロリと落ちた。
 ぎょっとして思わず見やる。
 その開襟シャツの胸元から、仔猫ほどの大きさのドブネズミが顔を出した。
 ドブネズミは驚く俺に構いもせずに日陰へと逃げ去る。廃ビルの中へ。

 新開発区。
 怪異が跋扈する廃墟の街。

 執行人エージェントの主な仕事場だ。
 だからそこを、きちんと見ておかなければならないと思って訪れた。

 以前は怪異に襲われて、舞奈たちに救われた。

 だが今の俺には異能力がある。
 さらに俺が着ている制服も【機関】から支給された戦闘タクティカル学ランだ。
 防刃/防弾性能を持つ新素材で形成されているらしい。

 そんな対怪異用の装備に身を固めた俺は、廃墟の街を散策する。
 散らばる瓦礫を戦闘タクティカルスニーカーで踏みしめる。
 横たわる鉄骨やコンクリートの塊に足を取られないよう気をつけて歩く。

 漂ってきたヤニの悪臭に顔をしかめる。
 人のいないはずの廃墟の街になぜ煙草の臭いがするんだろう?
 そう思い、ふと、この糞尿のような煙草の悪臭を振りまく怪異の存在を思い出す。

「この近くに屍虫がいる……?」
 しばし迷った後、拳に炎を灯し、悪臭のする方向に向かって歩き出す。

 本当に怪異がいるなら、それを倒すのが執行人エージェントの仕事だ。
 俺たちの……俺の仕事だ。

 そんなことを考えながら臭いを辿る。
 路地の向う側からだ。

 見やると、ひとりの男が歩いてくるところだった。
 ヤニで歪んだ顔と虚ろな目をして、雑巾みたいな色の背広を着こんでいる。
 男の手には火のついた煙草。

 こんな廃墟に、人が?

 彼は怪異なのか?
 それともただの喫煙者なのか?

 それを確かめようと、俺も男に歩み寄る。

「あの――」
 その刹那、銃声。
 男の頭が弾ける。

「そいつは屍虫だぞ!?」
 振り返ると、硝煙たちぼる拳銃ジェリコ941を構えた少女がいた。
 この前、いっしょに怪異どもと戦った――志門舞奈だ。

 一方、頭に風穴を開けた男はドウと倒れる。

 その指先からは、いつの間にか鋭いカギ爪が生えていた。

 気がつかなかった。
 もし、あのまま近づいていたら、俺は、また……。

 舞奈はやれやれと肩をすくめる。

「【掃除屋】だ。今しがた屍虫を殺った。清掃班を回してくれ。……いや、明日香がいないんだよ。目印だと? …………廃墟。いや他にないんだから仕方ないだろう?」
 驚く俺に構わず、舞奈は携帯をかけていた。
 相手は【機関】の支部だろう。

 明日香の魔法がないと残骸の始末ができないらしい。【掃除屋】なのに。
 そんなことを考えて少し笑う。
 すると舞奈は俺を睨んで、

「よかったら聞かせてくれよ、兄ちゃん。今度はどういう理由で死にかけてたんだ?」
 そう言って口をへの字に曲げた。

 そして俺たちは、舞奈の案内で廃墟の街を歩く。

「【機関】の戦闘タクティカル学ランか。兄ちゃん、執行人エージェントになったんだな」
 舞奈は俺を見やってぽつりと言った。

「あんまりその服に頼るなよ。対刃/対弾効果があるらしいが、防げるのはナイフ程度だ。馬鹿力は防ぎようがないし、得物に異能力がかかってもアウトだ」
 面白くもなさそうに語る。

「だから戦う時は2人以上で挑むんだ。防御や身体強化の異能力者に前衛をまかせて背中から殴れ。真正面からやり合ったら命がいくつあっても足りないからな」
「手厳しいんだね」
「スマンが本当のことだ。異能力にに目覚めたからって、戦闘のイロハが自動的に身につくわけじゃないからな」
 その言葉に、凹まなかったと言えばうそになる。
 けど、それは事実なのだろう。
 異能の力に目覚めた俺だが、舞奈のように戦える自信はない。

「わかりました、先生」
 だから素直に答える。

 舞奈は少し意外そうな顔をした。
 言い返されると思ったのだろうか?
 だが代わりに、

「それじゃ、もうひとつ聞きたいんだけど」
 俺は舞奈に問いかける。

「なんだよ?」
「さっきのが屍虫だってどうしてわかったの? 俺には人間と見分けがつかなかった」
 その問いに、舞奈は口元に笑みを浮かべる。

 巻きこまれた部外者ではなく正式に執行人エージェントとなった今、俺には知らなければならないことはたくさんある。
 けどフィクサーからは、執行人エージェントとしての最低限のルールしか聞いていない。
 だから、この世界の先輩である舞奈に、戦い続けるためのルールを聞こうと思った。
 そんな意気ごみを察してくれたのだろう。

「この前の仕事で最初にやっつけたのは、泥人間って種類の怪異だ。淀んだ魔力が人の形をとった奴で、弱いけどいろいろな種類の異能力を使う」
 舞奈の言葉に俺はうなずく。
 以前にも聞いた話だ。

「で、屍虫ってのは人間がなるんだ」
「人間って……人間!? そんな、どうやって!?」
「難しいことじゃないさ。ヤニを吸うのさ」
 その言葉に、俺は驚愕する。
 そんな簡単なことで、人間が怪異になるなんて。

「受け売りだけどな」
 だが舞奈はと平然と言葉を続ける。

「あいつらは、大昔の魔法使いが生贄とか使ってた頃の名残なんだ」
「生贄……?」
「生贄ってのは、ある種の魔法を使うために捧げる人間や動物のことだ」
「いや、生贄がどんなものかは知ってるよ」
 苦笑する俺に、舞奈は「そっか」と答える。
 驚愕の事実に動揺していた俺だが、脱力したせいか落ち着きを取り戻していた。
 舞奈は何食わぬ顔で話を続ける。

「戦争とかやってる頃は捕虜を使ってたらしいが、平和なときにはそうもいかない。でるかでないかもわからない犯罪者を使うのも心ともない」
 舞奈は何食わぬ顔で話を続ける。
 俺は緊張しながら拝聴する。

「だから、ある種の薬物を使って生贄に相応しい犯罪者予備軍を探すことにした」
 言いながら顔をしかめる。

「そいつは他の何とも間違えようもないくらい臭くて、中毒性がある。しかも常習することで生き物の身体を変化させて生贄に向いた怪異――脂虫に作り替える」
「それって、煙草のこと……?」
「ああ、そうさ。だいたい、吸ってる本人は気持ちいいけど周りに糞みたいな臭いの毒ガスをまき散らす嗜好品なんてものを、まともな人間がスパスパ吸うわけないからな」
 話の流れから薄々そんな気はしていたが、驚いた。
 だが、それが事実なのだから仕方がない。

 むしろ話してくれてよかった。
 その事を知らなけらば、人だと思って近づいたら襲われた、なんてこともありえる。
 というか、さっきあった。

「つまり、煙草ってのは、ぶち殺しても倫理的に問題ないゲスを怪異に変えて、ついでに普通の人間と区別するための目印なんだ」
 あんまりと言えばあんまりな言い分である。
 だが街で見かける喫煙者の言動を考えると十分に納得のできる話だ。

 ただ、人間のすぐ近くで怪異が普通に暮らしているという事実が怖かった。
 これからは千佳が奴らに近づいたりしないよう、気をつけないといけないと思った。
 小夜子も気をつけないとと思って、彼女は俺と同じ執行人エージェントだと思い出す。

「で、ある種の異能力者や魔道士メイジは今でも脂虫を使う。たとえば【断罪発破ボンバーマン】は、脂虫を爆発させて結界に穴を開ける異能力だ」
「そんな異能力があるんだ」
「ああ。でもって怪異の魔道士メイジは、脂虫を発狂させて屍虫に変える魔法を使う。ヤニが浸透した身体に悪い魔法が作用することによって、身体能力が上昇するかわりに獣みたいに人を襲うようになるんだ。そして元には戻らない」
 その言葉に、俺は再び絶句する、
 舞奈は構わず言葉を続ける。

「つまり、くわえ煙草でそこら辺を歩いてるヤニカスどもは脂虫だ。身勝手で臭い以外は人間と同じだ。だが、ある種の魔法をかけると屍虫になる。ここまではいいな?」
「あ、ああ……」
 自分たちのすぐ近くに何食わぬ顔で潜んでいる危険におののきながら、うなずく。
 舞奈は先を続ける。

「で、大屍虫ってのは、そのスゴイ版だ。身体が完全に魔法に置き換わってるから屍虫よりずっと強くて、普通の攻撃は効かない。人間が変身した式神みたいなものかな」
 舞奈の言葉に、俺はうなずく。

「奴らに有効打を与えられる攻撃は魔法くらいしかない。それ以外の中途半端な傷はあっという間に治っちまう。ま、ライフル弾や手榴弾をぶちこめば治る間もなく粉砕できるんだけど、まさか街中でライフル持ち歩くわけにもいかないしな」
 そう言って、やれやれと肩をすくめる。そして、

「それはともかく」
 話をもとに戻す。

「この前の3匹は、泥人間の魔道士メイジがこの術で作ったんだと思う」
「じゃ、その泥人間をやっつけたから、もう屍虫は出ないってこと?」
 そう答えたものの、すぐに首をかしげる。

「でも、さっき……」
「ああ、まだ他にも屍虫を作りまくってる奴がいるらしい。ほら、ここんところ物騒なニュースが多いだろ? 【機関】が手を回したのさ」
「うん、今朝も傷害事件のことやってたね」
「怪異の仕業だなんて言えないから、詳細不明の傷害事件ってことになるんだ。あと、不審者に注意しましょうとか言って臭そうな絵がでたが、あれも見た奴が脂虫を避けたくなるようにって描いたんだってさ。【機関】のせめてもの善意だな」
 思った通りだった。
 だが、当たって楽しい予想ではない。

「どうせなら注意とか言ってないで根絶やせばいいのにな」
「そうだね」
 舞奈は肩をすくめ、俺はうなずく。

 今までただの不快な人だと思っていた隣人が怪異だったという事実が怖かった。
 ある日いきなりバケモノに変わって人を襲う、人と変わらぬ容姿の怪異が街にいて、俺や千佳の近くで暮らしている。
 その事実を恐ろしいと思った。でもどうしようもなくて、

「でも、舞奈ちゃんも詳しいんだね。その……ちょっと明日香ちゃんみたいだった」
 内心の恐怖を押し隠すように、冗談めかして言った。

「大事なことだから話してやってるんだがな」
「いや、茶化したりしてゴメンよ」
 そんな俺に、舞奈はひとりごちるように語る。

「兄ちゃんは中3だから、あたしより4つ年上なのか。それだけの時間を平和に暮らしてきたんだから、今まで人間だった奴と戦えとか言われても困るよな」
「そりゃ、まあ……」
 内心を見透かされて曖昧に答える俺を、だが舞奈は真正面から見つめる。

「でもな、今の兄ちゃんは違うんだ。あんたは日常を捨てて、戦うことを選んだ」
 その言葉に、俺はうなずく。

 今や俺は普通の中学生じゃない。
 異能力者で、執行人エージェントだ。

「だから、味方と、敵と、どっかで線引きをして、自分の中で守りたい奴と消すべき奴をはっきり区別しとかないと、いつか死ぬ。自分か、あるいは守りたかった誰かが」
「わかってるよ。わかってる、つもりだよ……」
 口ごもりながら、答える。

 舞奈の今の言葉に反論の余地などないことは俺にだってわかる。
 そんな舞奈は、味方と敵の境界線をどこに引いているのだろうか?
 そして、ずっと以前から執行人エージェントだったという小夜子は。
 聞いてみたくもあり、聞くのが怖くもあった。その時ふと、

「ところで舞奈ちゃん、僕たちはどこに向かってるんだい? また仕事?」
 疑問に思って聞いてみた。

「いんや。この前の仕事でまとまった金が入ったから、今日はお休みだ」
 だが大金が入ったと言うわりには嬉しくなさそうなしかめっ面だ。
 俺は首をかしげる。
 そんな視線に気づいた舞奈は、口元に誤魔化すような笑みを浮かべる。

「あたしのアパートに行くのさ。せっかく近くまで来たんだ。茶ぐらいおごるよ」
「でも、新開発区の奥のほうに入って行ってないか?」
「安心しな、奥って言うほど進まないよ。人が住める範囲に限りがあるからな」
「まさか……」
「ああ、言ってなかったっけ? あたしのアパート、新開発区にあるんだ」
 その言葉に、俺はまたしても目を丸くした。


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