JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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最終章 大団円へ

第16話 ビッグランナウェイ

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 このアパート解体の当日、朝、静華は瞑想に入っていた。
現世とは違う冥界の花畑に和華を伴い二人で神様達に話しかけていた。

もちろん天照大神あまてらすおおみかみ様、素戔嗚尊すさのおのみこと様や不動明王様にも問いかけてはみた。
光が見えたり点滅したりして反応はして頂けても言葉として問いかけの返答は頂けるはずもなかった。

 神様は以前の地球が滅ぶ前までは、よく人間と対話をして知恵を授けたりするだけでなく、神が人間同士の争いにまで加担した結果、
200万年もの間、生命が生活できない環境にしてしまったのを踏まえ今世は一切、直接人間との会話は基本的にタブーとしたのだった。

だがデビルイーター・鬼子母神様が奇跡的に和華と静華に対し御返答を下さった・・・

「おい、どういうつもりなんだっ!キシボンとはのことだ?
あー?消滅したいのか、お前ら、なめてんのかっ!」

「えー?だって誰も、お返事くれないんだもん」と和華。

「えー?じゃキシリンとかがい?」恐れ多くも静華が言ってのけた。

「はぁー・・・まったく・・・神をなんだと思っているのだ、お前ら」

「私たちのスターでアイドルよ!おっぱい大きいし!」和華が叫び、ニッコリと微笑む二人。

じゃらりと首飾りを鳴らし鬼子母神様が、うな垂れ呆れた・・・
「で、そのアイドル様に何用だ」

「アラハバキ様に、お会いしたいの、どうしたらいいのかな・・・」
と静華。

「そうか・・・和華が気を失っている時にホテルの部屋でアラハバキが助けてくれたそうだな・・・和華は見たんだろう?ハバキを、光のままだったか?和華なら視る事できたとは思うがな・・・」

「はい見ました体力を使いきって倒れた私と剣じいさまを助けるため
マルダおじさんの体を使って代わりに悪魔を倒してくださったの」

「ふーん、どんな姿だった?」

「最初は首から上が白い馬の顔だったんだけど途中からマルダおじさんになったわ、でも背中から翼が生えていて肩や腕が凄く太かったの・・・」

「そうか静華は会ったことがないのだな?」

「私が小さかった時に山に入って道に迷い心細くなって一人で泣いていたら急に目の前に馬が現れて助けてもらったことがあるの」

「どんな馬だ」

「茶色くて綺麗な馬でした、泣いていた私に頭を押し付けてきて、まるで付いて来いという仕草をして
私はその馬に触りながら一緒に歩いていたら、いつの間にか眼下に村が見えてきて嬉しくなって少し小走りに村に向かって・・・振り向いたら、
もう馬は居なくなっていたわ・・・
その話を父にしたら、それはアラハバキ様の化身に違いないと言ってたの・・・」

「ふうん彼らしいなアラハバキは神々の中でも有名な神だが彼の歴史は古い大国主命おおくにぬしのみこと様が地球上の土地雛形とちひながたとして日ノ本ひのもとの形を整えていた時に空から現れて無言で手伝ってくれたらしい・・・」

 話によると外宇宙からやって来たアラハバキは肉体を持ち300年ほど生きていたが肉体が滅ぶと高次元の精神的存在になったという。
 
 アラハバキは世界各国に植物を発生させ後年は馬を作り増やすことに尽力し肉体を失ってからも縄文時代の日ノ本に現れ植物と馬を増やしたのだという、まるで人間への贈り物でもするように・・・

 体の大きい馬が草を食べ水を飲むだけで生きていく事ができるのは
彼の研究の成果で糞すら農業に使用できるだけでなく
高い知能を持ち人間のために働く事すらしており
頭が下がるほど人間にとっては好都合な存在が馬であった。

「静華、彼は影に徹した奥ゆかしい善神だ、おいそれとは会えぬ」

「でもインプラントがあり血液にも特殊な検査結果が出たのがシキマルダです彼が覚醒すれば会えないでしょうか」

「覚醒?無い無い、彼の先祖が昔、ハバキの馬を世話して子孫を増やしたのだ、その時にシキ一族の者たちに伝染病が発生してハバキの仲間が宇宙より飛来し医学的な施術を行い特殊な抗体遺伝子が混じったのだ。
ハバキは自分と波長の合う者にインプラントして監視しているだけのようだ」

「そうですか・・・」

「まぁ、そうガッカリするな、お前らしくもない、ところでな、あの唄やめたほうが良いな」

「えらいやっちゃの事でしょうか」

「そうだ、おふざけはいらんぞ観音菩薩様も見ているのだし第一、不動明王様や素戔嗚尊すさのおのみこと様の怒りを買ったら命は無いぞ」

「いいえ私達は大真面目です此の度の大祭りは榊原一族の無念と悲しみを払うべく準備いたしました。
もちろん人々をも救うための修行と修練を積んで今日の晴れ舞台のために覚悟して参ったのです、あの政治家たちも鬼屋も絶対に許しません」

「そうか・・・まぁ悪魔消滅の、めでたい祭りだしな・・・
しょうがねぇなあーわかった、もう何も言うまい大神様も大きな心で受け止めてくださると、信じよう」

さて

 政一郎が休憩後、再び祭りが再開、すっかり陽は暮れていた。
神楽衆が呼吸を整えるように、ゆっくりと演奏を始めると
氏子衆が発声を始め護摩と燈明の火が強くなった。

―チン! カン!カン! ドン!トントン チン!カン!・・・
―へーーーーーああーーーーーああーーーーあ おおーーーーーー

夜空には、おくらげ様や金剛力士様を始めとした光の玉が浮かび
じっと祭りを見ている。

その下を保安部の要請で海上保安庁のエキスパートが操作するドローンがぐるぐると監視、撮影しながら飛び回る。

アナウンスが入る
「祭り再開です塀の外にいる係員以外の方々は非常線の外に避難してください。
テントの前に防弾ポリカボードの設置を、お願いいたします。

万が一怪我人が出ましたら遠慮せず近くの人は救助願います。
出口の外にドクターと救急車が待機しています。

ここまで進行し現在、死者はゼロです。神様に感謝致します・・・」

静華がテレパシーを使う
「青龍・白龍、良い?ディフェンス頼んだわよ」

「はい、お任せ下さい」

二人の龍はテントの前に全身を伸ばし防御の体制に入った。

―ドンッ! チン! カン! ジャラララン! ドン! チン!・・・・
―ああーーーーあああーーーーーやぁっ! おおおーーーーーーーーっ!

 一方、少し離れた橋の上には武藤刑事と小林、小辻が陣取り祭り見学を始めていた。
「小辻、ジュースあとおにぎりやらバナナなんかも買ってきた、お菓子もあるぞ何か見えるか様子はどうだ?」

武藤が話しかけると右手を包帯でぐるぐる巻きにし肩から吊っている小辻が、はにかみ答える。

「はい双眼鏡バッチリ見えます。祭師の彼女達と、いつか話してみたいです」

「これが終わったら紹介するよ、ほら舞台の脇に居る冠をつけているのが筆頭神官の静華さんだ、で、今舞台に上がったのが和華さんだ小学生だけどスゴイ超能力者なんだ・・・」

菅原組の機械が設置され、氏子衆がおり、護摩が焚かれている。
ドローンが飛び回り、無数の光の玉が空に浮かんでいて
現場周辺にはパトカーと緊急車両がパトランプを回転させている。

大勢の関係者が非常線の外で、アパートの行く末を見物していた。

「うーんスゴイですね、こんなの見たことも聞いたこともない、
お空の光も信じられません・・・」

「ああ、あれは神様達が集まってきて下さってるんだそうだ」

「へぇえーー、すごいっ!」

「ほら燈明のところに式もいる」

「あホントだ、がんばってシキさん!」
双眼鏡を覗き込み祭りに夢中になっている小辻だった。

舞台では榊原四天王が神座に陣取り不測の事態に備えた。

神座中央に和華が立ち、刀を振り始めた。
―フォン フォ フォン!
刀を台座に置くとアパート側に向かって手の指を組み合わせ
榊流真言を唱えた。
「あっきゃーのん かむい おーぺれ こんさんげ 
観音菩薩様、地蔵菩薩様 招来っ!」

空から鐘の音が響く
―カーン!
氏子衆が魂を込め大きな声で合唱を始めた。
―おおおおおーーーーーーーーーーーー

すると二つの光の玉が降りてきて燈明の上で止まった。

和華がヘッドセットから言う
「菅原さん私の声がみんなに聞こえるようにスピーカーにつないでください」

「りょうかい、おい聞いたな、和華さんのマイクすぐにスピーカーに繋げ」

「はい」テント内の菅原組の部下が、すぐにセレクターを操作する。

その時アパートから石礫いしつぶてが和華めがけて大量に飛んできた。
―シュ、シュシュシュシュ
もし和華の頭部にでも当たろうものなら大怪我するに違いない。

「あぶないっ!」

手前で護摩壇に座る和華の父上、政一郎が危険を察知して立ち上がった。

 そこへ白龍と青龍が瞬間移動して石礫を受け止めた。

 そしてバラバラと地面に石が落ちた。

その時、空で見守っていた帝釈天王様がいかずちをアパートに発射した。
「ばかものっ!」
―ドドーンッ!バキバキバキーッ!

非常線の外に居た待機組の警察官などが思わず声を上げざわめいた。

「おおーーーーー」

アパートはグラグラと揺れたかと思うと地面から、わさわさとレギオンが何匹も這い出てきた。

―ぐあぐあっ・・ゲビゲビッ・・・ザワザワザワ・・・・・

「牛鬼だっ!アレックス!」
「OK!」

警戒していた黒衣の二人は待ってました言わんばかりにホースを構えテントから飛び出した。

二人の背中には南警察署から差し入れてもらった特殊なショットガンが
1丁ずつ、たすき掛けで装備されていた。

ヘッドセットから塀の外に待機していた消防士に号令が入った。
「放水始めますっ!」
「了解っ!」
ポンプ車のエンジンが回転数を上げ謙とアレックスが
プールの聖水をレギオン達に浴びせかけた・・・

―ザァーーーーーーー
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