JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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最終章 大団円へ

第14話 コンバットinアフリカ

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 木をなぎ倒した地面より次から次に大グモ妖怪が這い出てくる。
それを見つめアレックスの顔色は見る見る青ざめていった。

『日本にもがいるのか・・・』

 その昔、彼には兄のように慕っていたが居た。

 名前はスティーブン・マッコイ。

 言わずと知れたハリウッドスターだ。
その彼をアレックスはしたっていたしスティーブンも好意的だった。
端的に言うとスティーブンもアレックスも本人の努力と
優秀なエージェントのおかげで既に億万長者だった。

 ある日スティーブンはアレックスをアフリカ旅行に誘った。
名目は恵まれない地域に援助物資と多額の寄付をしに行く事だった。

「行く場所は治安に問題があるから身分を隠す、牧師に変身して行くんだが民間の軍事警備ミリタリーサービスも依頼済みだ、
アレックス、君にも是非来てもらいたいボランティアだが普通じゃない、大事な事なんだ」

 そう言う大先輩のスティーブン・マッコイ、最初は彼も軽い気持ちのボランティアだった。
地元の教会に出入りして色々な医療物資や食料、現地通貨に両替済みの現金を寄付して回った。

 現地では事情に詳しいアメリカ人の大学教授であり博士号も取得した遺伝子研究の第一人者エミリー・ジョンソンが居て、マッコイは意気投合し信頼関係を築いていた。

 彼女は『ミトコンドリア・イブ』の研究のため調査に参加するうち現地の牧師や国境のない医師団とも親しくなった。

 マッコイはセレブ界にも顔は出していたが、どうも連中のやり口には賛成できなかった、その結果のボランティア活動だったが・・・・

ある日、運命が訪れた。
「面白いから一緒に来ませんか」
ブロンドのエミリーが意味深な微笑みでマッコイを誘った。

現地馴染みの牧師と見慣れない牧師がマッコイを連れ、ある家に到着した。
「父と子と精霊・・・・」
「うせろ!うじむしどもめっ!」
「アーメン!」

 それはエクソシズムの現場でマッコイは見てしまった、悪魔を・・・
「ジーザス・・・」

 億万長者のハリウッドスターはアフリカのあばら家で呆然と立ち尽くすのみで何の役にも立たなかった。

「私たちは神の、お手伝いをしています」そう告げる神父様。

エクソシストの戦いを見てしまったマッコイは体が震える程の衝撃を受けて経済面でボランティアするだけでなく自身も本格的に修行を積み本物のエクソシストになった。

 やがてマッコイにアレックスも同じ経験をして弟子になりエクソシストになった。
財源には不自由しない。

 そして映画で共演した大場謙おおばけんの事も知り、彼が同じような境遇で活躍していると知るとアレックスはケンタッキーバーボンで謙と義兄弟の契りを交わした。

「あの時と同じだ・・・」アレックスの古い記憶がよみがえる。

 マッコイとアレックスの二人は南アフリカ・ケープタウンから北に100キロの位置にある農村に来ていた。
村の教会に居る南アフリカ国籍の牧師からSOSが来たからだった。

 遺跡発掘現場にも精通するエミリー教授によれば、
現地の牧師エリオットは貧しい村民の相談役で生活・病気・マフィアの対処で精神は、もうボロボロになっていた。
仕事どころか彼には静かな場所での休息が必要だった。
 そのうえ
農村の畑から見える丘が実は古代の遺跡だということを発見した墓荒らしが金品詐取目的のため遺跡を掘り起こして厳重な扉を爆破し無理やり開けてしまった。

 するとが発生し墓荒らしは煙を吸い込むと皆、命を落とした。

やがて夜になると黒い煙が実体化して大きな蜘蛛になり、村を徘徊しては村人たちを襲い始めた。

 完全重装備の傭兵を引き連れてマッコイとアレックスは村に到着し蜘蛛退治の準備を始めた。

 夜、蜘蛛が遺跡から這い出てきた。
「アレックス、試してみたいことがある、俺が失敗したら遠慮なく手榴弾やミニガンで派手にやってくれて構わない、だが俺が失敗してからだ、いいな!」

 牧師のマッコイは十字架とデコボコのポットに入った聖水だけを持って蜘蛛に向かっていった。
それは通常の精神状態では誰も真似できない行動だった。

彼の目前に人間の体くらいはある大きさの蜘蛛が居た。
「シュー」
マッコイだって怖い・・・
「神様、たまには協力していただけますか?」
やけくそで、そう呟くとポットの聖水を蜘蛛にぶちまけた。
「アーメン!」
―バシャッ! 化物に水を浴びせた!
「ギョーーーーーッ!!」
蜘蛛は苦しみ悲鳴を上げると、その場で体が溶けて死んでいった。

 沈黙の神が力を貸してくださった、やけくそで命を投げ出した億万長者のハリウッドスター、スティーブン・マッコイに・・・

マッコイは全速力で引き返して来た。
「アレックス、聖水だ!バケツでもなんでもいい大量に聖水を作って、
この化け蜘蛛、レギオンにぶちまけるんだっ!!まだまだ群れをなしているぞっ!なるべく発砲は控えて聖水で退治するんだ!」

『ハァハァッ』と息を切らしながら言うマッコイに傭兵が手を上げた。

「マッコイ神父!作戦の長期化も考えて炊飯や飲み水用にと思ってな、
折りたたみの布バケツ50枚あるんだが今なら安くしとくぜ」
8人の傭兵は皆ニヤニヤと笑っていた。

「それは・・・ホントか?オーマイガッ!」

アレックスの目の前で車のライトだけを頼りに暗闇に居るレギオンを退治するため十字架と聖水だけを持ってマッコイは命懸けで神を信じた。

大急ぎでアレックスと傭兵たちが聖水を作り、マッコイと傭兵は蜘蛛めがけて聖水を、ぶちまけだした。

アレックスは唖然とした。
「あんなモンスター相手に、すごいひとだ・・・」

急な作戦変更だったが聖水作戦でレギオン退治は完了した。
それに弾薬や手榴弾が、どこまで効くのかは未知だった。

「マッコイ神父、この残った大量の爆弾と弾薬どうします?」
「あぁお前の期待に応えてマフィアのアジトに全部食らわしてやろう」
「でも神様、許してくださいますかね?」
「大丈夫さ俺も、お前も、こうして生きてるじゃないかハハハッ!」
「イエス、ハハハッ」
「ヘイ傭兵さんたち!もうひと仕事して家に帰ろう!」

何年も経っているのにアレックスには昨日の事のようだった・・・



 唐突にヘッドセットからアレックスと大場、菅原本部長の会話が飛び込んできた。

「Ken-san, I want to talk to Sugawara-san, ask for an interpreter」
『謙さん、菅原さんと話したい、通訳を頼む』
「have understood」
『わかった』

「菅原さん、すいません、アレックスが大事な話があるそうです」
「どうぞコチラへ!」

アレックスの話では、あの木の根元から噴出しているのは人体に危険な黒い煙だという事、
陽が暮れると煙は大きなレギオンとなり実体化して人間を襲うこと。
そして蜘蛛ことレギオンの退治には聖水が一番有効だという事が説明された。

謙さんが言う
「菅原さん、アレックスのアイディアですが塀の外のビニールテント3つありますよね、あのテントの屋根を外して応急的に鉄パイプで台座を作ってプールにしてもらいたいのです」

「いったい何を始めようというのですか」

「アレックス、What are you trying to do?」
『どうするつもりなんだ』

「If there's one of them, it's no wonder there are 50 or 100 of them. Maybe there should be their boss too. It was the Legions who dug a hole in the basement of the bank, no doubt.」
大場が通訳した。
「あれが一匹いれば50や100いても不思議じゃない。多分、奴らのボスもいるはずだ、銀行の地下に大穴を開けたのはレギオンたちだ、間違いない。と言っています」

「そうですか・・・」

「You can make a pool of holy water and use a fire engine to spray it to defeat Legion. That's why I beat it with holy water at once. Lucky there was a fire engine.」

「聖水プールを作って、それを消防車で放水してレギンオンを倒す、刀や銃でも殺せるが、それだと腹からが出てきて厄介なんだ。
だから一気に聖水で倒す、消防車が居たのはラッキーだよ。
と言っています。
以前、アレックスに聞いたのですが、あの煙は実体化すると土蜘蛛になります、多分親玉の山蜘蛛はアパートの下に潜んでいます。
あの蜘蛛は牛鬼です。
聖水をかけるとアッサリ溶けて死にます。
陽が暮れて抜刀演舞に入れば恐らく大量の牛鬼が這い出てきます。
しかし聖水が用意できれば勝利は確実になります」

「牛鬼か、わかった、すぐ始めよう」

 世界共通に屍のあるところへ牛鬼は巣を作る。

菅原組はアパートの斜め向かい神楽衆の隣で陣取っていた。
「おい、さっきの三本木が倒れた時の映像、コレとコレ同時にリプレイ再生してくれ」
「了解です」
「それと、みんな聞いてくれ敵のひとつは牛鬼だということがわかった。
牛鬼は慌てず聖水をぶちまけてやるだけで溶けて死ぬそうだ、ペットボトルたくさん用意しよう」

「了解しました、おーいペットボトルの聖水100本もってこい!」
「はいー、いますぐっ!」
菅原組の若手が走り回る。

モニターが15台、カメラも15台、通常、人感、音感、赤外線、熱感センサー付きのカメラも配備されており、常に録画されていた。
 通常のカメラ映像では黒い煙が録画されていたが、熱感センサーの映像では立派な牛鬼の姿が録画されていた。

、ま少数なら四天王様が対処するだろう』

ここからが臨機応変対応のプロ、菅原組の腕の見せどころだった。

「茂木副署長、大至急、消防車、ポンプ車、敷地に入ってもらうよう無線連絡願います、それと待機している警察官全員、塀の外に集合してもらいます。
尾形建設の作業員たちにも全員塀の外に集合するよう指示願います。
あーっと社長さん、ちょっと大至急お願いがありますうーっ!
あっ茂木さん警官たちの作業軍手、いっぱいここにありますから自由に使ってくださいっ!」

待機していた消防車、警察官、建築作業員たちが封鎖敷地内に
と集まってきた。

橋の上にいた刑事二人
「武藤さん、出番みたいですよ」
「おお何だか知らねぇけど
「はい」
大きなビニールテントをひっくり返して何とか応急的に鉄パイプを組んだりして台座としてプールを作り、道路の消火栓から水を引き入れ、
ご祈祷塩を混ぜたあとアレックスのお祈りをして聖水を作る。
陽暮れまで時間は無いがで勝負だ。

 現場は火事場のような忙しさになった。

前代未聞の消防車と聖水を使っての悪魔退治作戦が始動。

「静華さん、聞いてますか大場です」
「はい」
「差し出がましいようですが悪魔は弱い者から標的にします。尾形君と式さん、大丈夫でしょうか?」
「はい、尾形君には下がっていただいて式さんだけ残っていただこうと思います、聞いてる?尾形君」
「えっ!下がっていいんですか、じゃすぐに下がります」

式は思った。
『え!じゃ灯明の番、俺ひとりかぁーまぁ何とかなるかな、
でも蜘蛛だの妖怪だの、やっぱ怖ぇーなーアレ』
静華は
「マルダ」
「はい」
「マルダはね火の心配だけしていればいいの」
「了解」
『また心読まれた』

大場がヘッドセット・で言う
「静華さん、ひょっとしたらですが悪魔に引っ張られて
もやってくるかもしれません注意してください」

「えぇ大丈夫よ、今日はシバ神様もスサノオ様も
見守ってくださっているわ」

「はい、そうですね」

「もし・・・」
「はい」

が来るなら手間が省ける、父上も想いを遂げることができる、
日本の神々と我ら四天王が一丸となって消滅させる。
来なくても、いずれ探し出して思い知らせてやるわ」

「そのときは是非、同席させてください」

「またまた無理しなくていいのよ」
「無理なんて、私もかたきを討ちたいのです」
「それもいいけど、撮影見学に
「はぁー、お安い御用です」
「和華もよ?あと母も」
「了解です」

「おーい菅原だけど、みんなにの世間話どうかと思うよ」

「いやーらしいっ」

「やらしいって・・・」

もうすぐ陽が沈む。
「カーン、カーン、カーン」神楽鉄板厘の小気味よい音が現場に鳴り響く・・・
「ああーーーーあああーーーー・・・・・・」氏子衆のコーラスも続く

黒い瘴気しょうきを氏子衆が吸い込んだりしないようにがコマメに動き回り覇気はきを吹付け消滅させていた。

 龍神様、頼りになります。

 神座では宝剣の先で足元に円を書き、剣を台座に置くと
和華が懸命に指を組んで榊原家に伝わる呪文を唱えていた。

発志はっしっ!どうっ!かみさまぁー!」

―カン!カン!カン!ドンドンドンドン! カンッ!
―あああ あーああーーーーーあーあ あーーーーー

金剛力士様は腰を落とすと四股を踏み、瘴気こと牛鬼を踏み潰し退治していた。
「むぅっ!」
―ズシンと地面に振動が伝わってくる。
その周りを付かず離れず青龍が覇気を口から吹いてお手伝いしている。

 周囲の人々には、三本木の根元で上がり下がりする光の玉と周囲をぐるぐる動き回る見えていない。

金剛力士様と青龍の姿が見える者は霊視能力のある人間だけだった。

 その様子を静華と、剣一郎、城一郎が見守っている。

静華は
『何か忘れている・・・なんだ?・・・』
すぐそばの地面に小さめの祠と半分壊れた木箱が転がっている。
木箱から紙幣がはみ出して見えた・・・
古い紙幣もあるが現代の紙幣もある。

『この金は誰が埋めた・・・頭取の家族か?・・・』

静華のテレパシーが発動した。
「しまったあっ!父上、向かい側の長屋に頭取の家族や一族の人々が残っている!危ないっ!」
「そうか、うっかりしてた、おい青鬼・赤鬼、瀬津せつつや!どこにいる?居るんだろ?」

どこにいたのか、なみ彦の隣に四人の男女が姿を現した。

「はい、お呼びでしょうか」
皆、城一郎に、お辞儀をしている。
「見ていたな?」
「はい」
「向かい側に長屋が数件あるが、そこの人たちが危ない、助けに行くぞ刀を持て」
「ハッ、わかりました」
「おーい刀鍛冶衆、頭領以外の四人、柴刀しばがたな持ってちょっと来てくれ」
「はい、了解しました」

「じゃ静華、何かあったら呼ぶかもしれんが、ちょっと行ってくるぞ」
「わかりました、父上気をつけて」
「おう、まかせろ俺は既に死んでいる」
「死んでないわよ、なみ彦の身にもなってねっ!」
「ああ、そうだった、気をつけるよ」

「兄上!」
「わかった、長屋だな」
「はい」
目に見えぬ四人と刀鍛冶四人、なみ彦こと城一郎の白装束、
護摩壇前の政一郎の守護法力。

合計十人は、戦国侍の如き立ち振る舞いで
現場向かい側、無乗庵裏手の長屋に急いで向かった。
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