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最終章 大団円へ

第13話 魔物出現

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 なぎ彦さんに祖父・剣一郎様
なみ彦さんに静華の父・城一郎様が憑依して
一緒に和華さんが先に現場に入場しました。
「和華、ご飯食べたか」
「うん、食べた カレーとそうめん」
「城一郎は?」
「ハイ、それが憑依する前に食事は終わってましたが、なに、帰る前には私も何か食べますよ」
「おお、わしも誘ってくれや」
「ん?あははは、お父さんチャンス逃したんですね」
「うん・・・」

四天王の四人はテレパシーで会話ができます。
私と尾形君にはヘッドセットが用意され装着しました。
ヘッドセットは四天王、黒衣の御二人と菅原さんにつながっています。
マイクはON・OFFスイッチつきです。

 静華さんの今日の衣装は頭に金色の飾りの付いた冠を着けていらっしゃいました。
『お化粧か・・・気合?いや・お見事、綺麗だなぁー・・・』

ここ最近の装束とは違って両腕や背中に金色糸で神様の御名前の刺繍は無い衣装でした。

その代わり金色のベルトのような細めの帯、細めの袴を履いていらっしゃるのですが
腰の周辺から足元にかけて白と赤と金色のスカートのようなのが巻かれています。
 すいません正式な衣装の名前を知りません。
しかし前の部分は空いているので、まるでコートの下部分のみを腰に巻いているような感じです。

入場前に静華さんから、お話が少しありました。
「尾形君、マルダ、二人共、今日までありがとう。
こういう現場で怪我人や事故死が起きる時は当人が持ち場を離れた時と相場は決まってるの、尾形君、燈明柱の火、お願いね」

「はい」
「ハイ」
『なんだ・・・今日で終わりみたいな言い方だな・・・』

――静華は三重で留守番をしている母・水仙との会話を思い出していた。

『しかし、その尾形君とマルダさん、いったいどこまで頼めますか』
『わかりません・・・』
『そうですね、できるとこまでで引き取って頂いた方が・・・』
『イザという時、マルダさん助けてくれないかな』
荒葉馬鬼アラハバキ様ですか?そういう気持ちなら駄目ですよ、情けない。
誰にも頼らず私達だけで対決するのです。
万一、マルダさんの命に関わる事態にでもなったら責任は誰が取るのでしょう、妙な考えは捨てなさい』

『はい』


「マルダ、持ち場を離れないでね、もし何かあれば指示を出すから
何があっても絶対にスタンドプレーに走らないでね、ヨイ?
二人共、持ち場は離れないこと!」

「はい、ひとつだけ質問いいですか、現場の大小さまざまな光は何なのでしょう・・・」
静華は窓の外を見ながら指差し説明をはじめた。
「そう見えてたの、でもまだ繋がっていないからわからないのね。
あれは未成仏の霊魂、氏子さんたちの守護霊や守護神も集まっているの。
大きな光は氏子さんたちを守る
【白龍】と【青龍】
あのふたりも持ち場は動かないように指示を出してるから
私たちの守護は神様に、お願いしているのよ・・・
ホラ、空に・・・いらっしゃってるでしょ神様が。

これが正義のお祭り、愛と光よ」

「はい」
「はい」

私たちも入場して、燈明柱の鉄かご左右に火を入れました。

静華が思う
【あの解体が終わった公園の隣に立っていた柳の木あれは誰かが鎮魂のために植えたのね。
あの木の下に誰かが眠っていたわ掘り起こしたけど、もう意識はなかった、それで柳の木も切り倒して新しく植えることにしたの。
 時々、何が正しくて何が正しくないのか、いったい?
誰が悪いのか?・・・解らなくなる時そこにすきが出来るのね】

さて龍の二人、いつでも世界中、瞬間移動できるので
故郷の村と静華の護衛は慣れたものでした。

目の前であれば同時に二箇所、ドッペルゲンガーの如く
姿を現すことが可能な程、特殊な能力がありました。

「なぁ青龍」
「なんだ」

「静華さま、喜んでくれるかな」
「たぶんな驚く顔が早く見たいな」

「それにしても遅いな、呼んで来い青龍」
「まあ、あわてるな、守護に集中だ」

「なあ青龍」
「なんだ」

「俺たちのメシいつかな」
「・・・」

「なあ青龍」
「おいっ!」

「どした」
「さっきから、お前わざとだろ集中しないとヘマするぞ」

「ちぇっ」

非常線の外には、武藤刑事と小林刑事も居ました。

「始まるみたいですね」
「うん」
「いや初めて見ましたよUFO?すごいっすよねアレ」
「もう驚かねぇよ・・・」
「あっ双眼鏡!そっか準備いいなぁ武藤さん」
「こんなので見てると誰かに怒られるかもな」
「こっそり動画とっちゃおうかな・・・」
「やめろよ公安が来てる、服務規定違反になるの忘れたのか」
「冗談ですよ、しかし武藤さん、あの二人なんか不思議な二人ですよね」
「ん?静華さんか」
「違いますよ尾形君と式さんですよ巻き込まれるにしたって限度がありますよ、ふつう・・・」
「あぁ俺も、それは考えたが不自然な感じはないな、むしろ今までの方が変だったのかもな不良中年にも来る時が来たのさぁー」
「なんか、そういうのあるんすかねぇ・・・」
「怪談好きが度を越した姿なんじゃねぇか・・・」
「先輩、俺にも貸してください双眼鏡」
「おお」

会場にアナウンスが響きます。

「この母なる大和の国、平和な日が一日でも永く続きますように
終わりなき世を願いまして、大祭りを開催いたします」

 「非常警戒開始」

―ズバッっと稲光のように空中の御くらげ様が光りました。
ぐんぐん降りてきて先ほどより低い空に静止しました。
まったく音はしません。

「大祭りは10年ぶりの開催、榊原家・四天王の完成は約150年ぶりです。この世にとどまっておられる御二人と祭師様に感謝致しましょう」
 
現場周辺に雨が降り出しましたが鋼鉄の塀で囲まれた祭り会場には
なぜか一滴の雨も降ってきません。

御神楽の曲が変わり神楽笛と大型の三味線、琵琶びわ、琴が重奏します。

 アパートは北向きで、その手前に政一郎様が榊原流の祝詞とマントラを唱え護摩壇を担当。
 
政一郎様の前には昨日まで静華さんと和華さんの使用していた刀が台座に安置されており
魔除けの役目を勤めていました。

 その後ろに一度、魂散華こんさんげをして仮浄化した部分に神座舞台があり、
まず和華さんが榊原流・巫女舞を始めました。

 胸を透くような神楽笛の重奏、太鼓、琴が響きました。
「ツーイーーーーートン!ジャラララン!」

 和華さんが頭に榊原流・金幣飾りを乗せ、鈴を手に持っています。
 そして、ひらり、ひらりと蝶のように舞いました・・・

氏子衆たちの合唱が響きます。
「むーずーかしいーりくつわーしらないーありのーままのーこころでーいきーるー」
続いて氏子衆たちの大きな掛け声です。
「我らの和華さま!!!]

「シャン!」
鈴を鳴らし和華さんは左右の腕をまっすぐ横にのばし
凛と立ちます。

「どうかーかみさまーねがいよーとどーけーーーーえーーーー
あああーあーああーああーあーーーーーーー」

「カーン!・・・カーン!ツイーーーチン!ドン!カーン!」
楽器も響き渡り迫力ある合唱に鳥肌が立ちました。

『ストレートな面白い唄だな・・・面白いなんて言っちゃダメなのかな・・・
あっ・・・誰かに聞かれてるかな・・・』

初めて第九の合唱を聞いた時を思い出しました。
尾形君も圧倒されたらしく燈明柱の下でまきを握って舞を見ています。

 いつになく真剣な表情の和華さん、かわいいです。

 舞台、後ろには普通、氏子衆の席が設けられるのですが三本の木が立っていて、なおかつ地面に大量の遺骨が埋められている事が予想されるため
皆さん塀沿いに陣取って合唱していらっしゃいます。

「カーン!・・・カーン!ツイーーーチン!ドン!カーン!」
「ああーあああー・あーあ・あーーーーーーー・・・」

 私はポツリと囁きました。
「これが・・・祭り・・・」

随分前の静華さんとの会話を思い出しました・・・
「そうですか、書けるものなら別に書いてもかまいませんよ、ただし今までも私の祭事、書いた方いましたが、みんなボツだったようです。
あんまり現実離れしている事が多いのでボツになったんじゃないでしょうか」

『そうか、こういう事だったんだな。
嘘こくなって、冒涜ぼうとくだとか神様関係と機密事項だって言って国の誰かに怒られそうだもんな、書くのあきらめようかな・・・』

「マルダ、そんな事いいから風が出てきたし燈明と護摩壇の火もっと大きく燃やして」

ヘッドセットから・・・いや違う、頭の中に直接、静華さんの声が響きました。
舞台の脇で出番を控え立って、こちらを見ています。

『今日は一段と綺麗だけど、なんか怖っ!』
静華さん・・いや静華様、
完全に私を、がっつり睨みつけていらっしゃいます・・・

「はい」頭の中で答え
尾形君にも促し薪を繰べ、特に護摩壇の火を大きくしました。

政一郎様は、もう汗をかいていらっしゃいました。
「えいっ!かな ひゃっかうん うんたや たやうん・・・・」
私は頼まれもしない飲料水を座席横に多めに置いてきました。

ひらり、ひらりとトランス状態かと思うような足取りで
和華さんが神座で舞っています・・・

やがて例の黒衣くろごの二人が見慣れぬ剣を二人で持ち
一歩、また一歩と近づいてきて、和華さんから持っていた
鈴を受け取り
国宝の剣を和華さんに手渡しました。

 和華さんは受け取った剣をすぐに鞘から抜いて
両手で構えて数回振りまわすと
―ブン!ブンッ!ブン!

「あーかな かむい おーぺれ 金剛力士様 招来っ!!!」

「イザ!ヤァ!」
頭上に剣を構え、先端を三本の木に向けました。

「カーン!」厘音りんおんが現場の空に大きく響きました。
その時ぐるりと和華さんの目玉が回転して白目になりました。

「え!?」

神降ろしでは神官や巫女の目玉が、そうなるのです。

三本の木の前に音もなく光の玉が出現。
『ああっ!』
わたしは見ました、仏像などで見たことがある同じ姿で
3メートルはある金剛力士様の御姿を・・・

多分・・・ほかの人々には光の玉に見えているのかと思います。

「あいや まかれな うんかな かむい おーぺれっ!」
―ブン!ブン!ブンッ!ブンッ!!
そう唱えると和華さんは剣を下から上にすくい上げる動作を何度かすると

「イザ!ヤァ!」と叫び剣を構えました。

イザは、いざなぎ・いざなみの尊様、ヤァはヤハウェイ様、大日如来様、天御中主神アメノミナカヌシ様を意味します。

金剛力士様は目の前の3本の木を前に腕を広げると腕が伸びて
まとめて抱え木々を前後に揺らしました。

「むぅ」
『ミシッ!バキッ!ミシミシッ!バキッ!』

御神楽と合唱が響きます。
『ツイーーーーーーカーンーーーベン!ジャララン・ドン!ドン!ドン!チン!ツイーーーードンドンドンドン!』
「あああーああーあーああ・あーーーーー・・・」

3本の木がまとめてなぎ倒され、地面から黒い煙と祠や木箱、遺骨らしきものが出てきました。
そして驚いたことに
鋭い爪を持ち頭に角を生やした1メートルほどの大きさの
気味悪い蜘蛛が地面から這い出てきました。
―シュー!
菅原組の誰かが叫びました。
「なんだあれはっ!?」

を見ていた黒衣のアレックスさんが叫び
ヘッドセットの音声が私の耳で大きく響きました。

「Ah, there! isn't it legion!」
『あっ、あれは!レギオンじゃないか!』
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