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最終章 大団円へ

第12話 馬火戸と馬瑠蛇

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 少しでも休んでおこうとシャワーをあびて横になってみましたが
流石さすがの私も眠る事はできません。

『西条先生、おみやげ喜んでたな・・・俺もいつか先生みたいに笑顔の人になりたいな』

奥様の事や初めて西条邸に尾形君と二人で伺った日の事など思い返していました。

先生は妙に私の名前と出身地について何か知っているようで、
矢継ぎ早に話をされました。

「式さんという名前は珍しいですな、どちらの出身ですかな・・・
青森ですか・・・尾駮沼辺りの、ご出身ですかな?
つかぬことを思い出したのですが、まさか貴方、馬と火戸と書いて馬火戸まかどという村の御出身なんて事は・・・
えぇ!それは、本当ですか・・・
失礼ですが、マルダという名前、漢字はないのですか・・・
うーん・・・『馬瑠蛇』と書くのですね・・・
それは・・・なんということでしょう・・・

私の亡くなった友人に民谷というもの好きがおりましてな、
いつか馬火戸に旅しようと話した事がありました。

なぜかと言いますと、彼は東京、新宿の旅館で行われた会合に参加した時に、その昔、柳田国男さんの弟子だったという方が参加者に居て文献に残されてない話をしたそうです。

柳田さんが北海道と東北に残る独特な神信仰『おしらさま』と『あらはばき神』の関係について書生達に打ち明けたのだそうです。

『世に出していいものと、わるいものがある。選別、それは我々研究者の役割なのだ』と、馬火戸まかどは、読みは同じですが元々は魔門まもんと呼ぶものたちが居て・・・ハイそうです。

ほらアイヌの木彫り、よく男女夫婦の物が多いでしょ・・・
おしらさまも男女の人形や木彫りを御神体にしており・・・

馬火戸村の奥に山がありまして麓には温泉もあります。
山奥に行く道には鳥居があって住民は、そばに近づかない掟があるのだそうです。
なんでも、その昔、山子やまごと呼ばれるキノコ・山菜取りが深山に迷い込んで見たそうで・・・」

 深山の森の中に、ぽっかりと、まるで牧場のような原野が出現して、
そこには野生の馬たちが優雅に走り回っており
驚いてみていると
時折その馬たちは、まるで人間の会話のようにいななきあっていたのだそうで、
すぐそばには、まるで今で言うアポロの宇宙飛行士のような格好の人間が馬の餌・水などを用意して世話していたと
命からがら戻ってきた山子は、そう言うと亡くなったという
古い伝説が残っているそうです。

先生が続けて話して下さいました。
「なぜアポロの飛行士かというと現代人の私たちが勝手に言っているだけですが伝説で語られる姿形すがたかたちが正に現代の宇宙服に似ていて
縄文時代の遺跡から出た遮光器土偶ともソックリなのです。

 そして村の者たちは其処そこ安原葉場木あらはばきと呼び、えーとそれ・・・こういう文字を書くそうです・・・
で禁足地にしたのだそうです。

村では魔を馬という漢字にすり替え幕末時代に登記記録を作ったという話もあります・・・・」

「あのー先生、私、午年うまどし生まれです、おまけに親に私は馬小屋で生まれたのだと本気とも冗談とも取れる話を聞いています・・・
しかも私の両親とも育ての親ではありますが歳が離れていまして、その上まったく血はつながっていません」

急に先生は落ち着かない態度になりました。
「えーーーー、話が逸れましたな、この話は、いずれ別の機会にしましょう、えーとアパート周辺の話からいたしましょうか・・・」

あの時・・・西条先生、変だったな何を思っていたのかな・・・

昼12時
菅原さんの部下に女性がいらっしゃっており
祭り会場のアナウンスが始まりスピーカーで案内がされました。

「みなさま、こんにちは、まもなく15時より大祭り開催いたします。

榊原一族の皆様、沈黙の行、ごくろうさまです。
食堂にて皆様の、お食事が準備してございます。
なお水の個人携帯許可が出ていますので
お好きなだけ、水は、お持ちください。

榊原一族の方どうぞ順番に食堂へ、お立ち寄りください。

官庁の方々、建築関係の方々、民間警備の方などは13時より食堂の方に、お立ち寄りください、お食事の用意がございます。

警察、消防、建築関係、警備保障の方々は、お仕事の道具など
すぐに撤去作業開始してください。
重機以外の作業車両はプレハブ、トイレ横の駐車スペースに移動していただき鍵は差し込んだまま駐車してください。

警察官・消防士、警備保障の方およびパトカー、消防車両は敷地の検問より外に出て頂き一般道路にて待機願います」

後に菅原さんに聞いたのですが大場健さんとアレックスさんは
実は静華さまに
『アラハバキ神を見れるかも知れない』と言われ
来日したという話も聞きました。

そして
ひそかに地元財閥・北条グループの一人娘で函館南警察署・署長
『北条一凜』様が差し入れにいらしていたのだそうです。

差し入れの品は岩塩と聖水が同時に発射できるショットガン2丁
だったそうです。

「茂木さん、どうも」

「ハッ、ご苦労様です、静華さんとは、もうお会いになりましたか」

「ん、いや私が祭りの現場に来るのを嫌がっているから、もう帰るよ、それにじゃないしな、菅原さんと静華には全てが終わってから話してください。
二人に、よろしくお伝えください。
それでは、おたくの署長にもよろしく、失礼いたします」

「ハイッ」
茂木副署長は真っ直ぐと立ち、あらためて敬礼をした。

差し入れのショットガンと弾は、黒子の二人に渡されました。

アナウンスが会場に響き渡ります。
「14時には、榊原一族、ケイ・エイチ・ティーのみ敷地に配置されます。
それ以外の方は理由に関わらず関係者の方でも排除されますので御注意ください。
質問がある方は至急アナウンス部、菅原まで、お申し出ください。
なお私たち保安部は警視庁公安官立会いのもと武器の携帯を許可されています、予め御了承ください。」

「おはようございます」尾形君がやってきました。
「うん」
「あれ、式さん元気ないですね、体調悪いですか」
「むしろ、その逆、興奮しちゃって本番で息切れしないか心配になってきた」
「ああ、わかりますコレ飲みますか強壮剤、あと高いドリンクもありますからポケット入れておくんで、いつでも言ってください」
「おお、気が効くじゃないか」
「親父の入れ知恵ですよ」
「お父さんは?」
「はい見学許可が出て神楽衆の後ろで茂木さんと西条先生と一緒に陣取るようです、何か緊急な場合、対応もしないとダメなんで」
「そっか・・・」

氏子衆さんは男性だけではなく女性が10人いると聞きました。

13時過ぎに
静華さんと和華さんが楽屋入り、なぎ彦さんと、なみ彦さんも一緒で
神官の衣装に着替え、氏子さんと身なりのチェックなどされていました。
そこで、私は初めて直に政一郎様に対面いたしました。
政一郎様は尾形君の会社に保管されていた道具を現場に運び込み色々準備されていました。

時間前ですが楽器の音が聞こえ始めました。

「カーン・・・ジャラン・・・カーン・・・ジャララン・・・」
定期的なリズムでずっと繰り返され

政一郎様の祝詞が始まると護摩壇に火が入りました。

ついで氏子衆の合唱も始まりました。
太鼓の音も大きく鳴ってきました。
―ドン!ドン!ドン!―ドン!ドン!ドン!

「ああーあ・あ・ああーーーーーあーなーこーきけーーーーへーぺーいれぇー・・・」
「ああああーああーくないきけーえーーーーあーぼーかあーくうーくうー」
「弊幣霊!符那異鳴放意!」
『へいぺいれいーふないなほい!』

―ドン!ドン!ドン!―ドン!ドン!ドン!

「Ken-san, is this a Kage Shinto song?」
『謙さん、これが影神道の歌か』

「that's right」
『そうです』

14時半頃、アナウンスがありました。
「皆様、上空を御覧下さい、神様がいらっしゃいました
私たちを見守ってくださっています」

窓から上空を見上げると、ほのかに強弱を繰り返す光を放つ
大きな白い楕円形型の不思議なものが浮かんでいます。
15メートル・・・20メートルはあるかもしれません。
底面から何本かの足のような?触手?のようなものが
下に垂れ下がっています。
しかしタコやイカのように動いたりはしていません。

それが皇居上空にも現れることがあるという
『御くらげ様』です。

ずっと後に教わったのですが他にも種類があるらしく
尻尾や毛まである、一つ目ぞうりむし様とか

お玉様と呼ばれる夜空を泳ぐ、光る・おたまじゃくし、など
数種類の化身があるそうなのです。

楽屋で待機して瞑想中だった静華さんが言いました。
今日の衣装、背中に榊の家紋か?
「御くらげ様だ、アメノミナカヌシ様の化身、和華!準備は出来ましたか?」
「はい、お姉様」

薙彦なぎひこ那魅彦なみひこ、おじい様と父上を、お呼びしなさい」

「はい」

なぎ彦と、なみ彦は紅白のハチマキを赤が表になるように
目を塞ぐ形で頭に縛りだしました。
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