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最終章 大団円へ

第4話 デビル・ディスカッション

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 静華さんは左手に数珠じゅずを巻きつけて握り指を2本突き出し
目の前の奥さんに向け字を書き切り始めました。

その手の形を手刀しゅとうと呼ぶのだそうです。

「エイ、イザ、ヤア、オン・・・」

イザ・ヤアは伊弉いざの神様、全知全能神様を同時に意味します。

低い声で囁き両手を合わせると何やら祝詞のような、お経のような言葉を唱えました。

「トウジンダンダン・・・ネンピー・・・ヒッカヤウン・・・」

すると静華さんの衣服か、または存在そのものが光に包まれ出しました。

奥さんは
「ウゥウウー」とうめき声を上げました。

「ノウアクサンマンダァー・・・・ウンマァ・・・」

「ウゥウウアウアー・・・・」

お経のような、真言というのでしょうか?
そんな静華さんの御辞おことばと、うめき声が交互に続きました。

二人が会話しているように感じたのはどうやらしきだけで部屋の外にいる刑事さんたちには会話のようには聞こえていなかったようです。

やがて10分ほど経った頃、静華さんが
「マルダ、拘束帯一回緩めて両腕出して、その状態で腹巻みたいに胴体にだけ拘束帯まいて頂戴」と言いました。

「え!大丈夫ですか」

「大丈夫、飲まず食わずじゃ彼女の体が持たないわ、それに、この召使めしつかいにも食べるという事のありがたさ、思い出してもらうわ」

「召使?食べる?・・・」

「いいから、ベルト緩めて指示どうり動いて」

「はい」
『たのむから、暴れたりしないでくれ・・・・』

私は静華さんに言われるがまま拘束帯を半分外して怖々こわごわ、両腕を自由にしました。

 奥さんの腕は傷だらけで所々内出血しており紫色になっていました。
多分、私の殴った跡もあるはずです・・・ごめんなさい・・・
考えてみれば奥さんだって弱き一人の人間です。
いたましく思えました・・・・

後で説明してもらったのですが、この時、相手の心が読める静華さんと奥さんは二人だけの、いえ奥さんの中に入り込んでいる悪魔と

こんな会話をしていたのだそうです。

「おい、お前、名を名乗れ日本にどれくらい居る、日本語は理解できるのだろう?」

「・・・・・・ウゥ」

「黙っていてもいいが今ここには鬼子母尊神様きしぼじんさまがいらっしゃる、
日本の有名なデビル・イーター様だ、お前が邪悪な者ならば
今すぐお前を八つ裂きにし地獄の業火で永遠に焼かれることになるが、いいのか?」
『ニャクアクジュウイー・・・リーゲーショウカ・・・ネンピー・・・』

「待ってくれ・・・俺は連れてこられたんだ主様あるじさまに」

「主様?お前、どこから来た、まず名を名乗れ」
『ネンピーカンノンリキ』御辞おことばが室内に響きます。

「ウゥウ・・・俺の名はタイガだ」

「どこの生まれだ、なぜ日本に来た」『イザ・ヤア』

「俺は・・・私はヨーロッパ、スペインにいた、結婚し幸せだったが、
ある日、国王の魔女狩り隊に、妻と子を処刑され、私も捕まり
拷問の挙句、苦しみぬいて死んだのだ・・・」

「ふーん、それで、なぜ常世とこよに行かん、なぜ冥界に行かず此処ここにいる?」
『シューソクヒーチューカイ・ネンピーカンノン・・・・』

「ウゥウゥ・・・はい、国王を恨み城に行き彷徨さまよっていたところを主様に見つかって蛇の姿に変えられとらえられたのですグルゥゥウウウ」

「ほー、お前の言う主とやら魔道士だな、
第二次世界大戦末期に世界各国を渡り歩き、どさくさに紛れ怪しい魔術を各地に施し歩いて回ったのは知っているぞ、そうか金魂様の正体わかった、やはり蛇・・・管狐くだぎつね
『ショーヨクガイシン・・・ワクグーアクラー・・・ドクリュウショーキートウ、ネンピー・・・・』

「・・・・・・グルゥゥ」

「苦しいか?」『イザ、ヤア』

「光が・・・まぶしいのです・・・目が痛い・・・」

「そうか、まず、この日本のおにぎり、さんどいっち、だんご、水とお茶、食べてみぃ。
そして一旦その体から出るのだ、お前の主には私から、お前を解放するように話す、心配せず言うことを聞いてみないか?」

「グゥ・・・・・食べる・・・」

「食べろ、お前、死んだ自分の妻と子供が今どうしているか気にならないか?」
『ヤアレン』

「ウァア・・おぉ・・・考えてもみなかった・・・」

「そうか魂は不滅なのだ、気にならないか?それと、お前どうやって、この奥さんの体に入った?」

悪魔は初めて慈悲じひの心に接し、恐る恐る水を飲み、おにぎりなど夢中で食べだした。

『うまい・・・食べ物は・・こんなにうまかったのか・・・』
「そうれ・・わぁ・・・ごぼ・・・」
悪魔は食べ物を口からこぼし、その目から涙が流れ始めていた。

ま、奥さんが食べてんだけどね。

別室で様子を見ていた武藤・小林刑事も驚きだした。
「武藤さん・・・」
「ん・・・めし食って・・泣いてるな・・・」

静華が言う。
「オイ食べ物は飲み込んで、それから話せ汚い、もったいないぞ、おいマルダ、ティッシュ」

「はい」

悪魔が言った。
「はい、地面を探り、水脈のまま井戸を探り当てました、そこに、この奥さん家族が居たのです・・・モグモグ・ゴクリ」
『ウウアアゥアゥウウ』

「おい、そろそろ体、具合悪くないか?実は水やおにぎりに少し御祈祷塩を混ぜておいたのだが、どこか苦しくないか?」

『アグア・グウグウグウ・・・ウガウガ』
「いえ・・ぜんぜん、なんともないですぅ・・・モシャモシャ」

「なに?苦しくないか?地中を走り回ったか?そうか、
出来でかしたぞタイガ、お前は蛇なんかじゃないぞ、
お前、管狐となって手足が生えてからどれくらい経つ?
お前自身も気づかぬうちにになっているぞ、まだつのもなく心も体も小さいがな」

『グウゥアグアグウガ・・・ウガガウラウルルゥルゥルゥ・・・』
「え?なんすか、そのコクリュウとか?グスッ・・・うわ、これ、おいしいー!」

団子も食うタイガ・・・奥さん

「あーあー鼻水も一緒に食うやつあるか汚い、マルダ、ティッシュ!」

「ああ、はい!」

二人が何を話しているのか半分しか解りませんでしたが
私は奥さんの鼻やら涙やら拭いてるうちに
本当に自然に私の頬にも、なぜか・・・涙が流れてまいりました・・・

 悪魔タイガ、彼が神様ヤハウェイから頂いた分霊わけみたまは死んではいなかった。

あるじに命ぜられるまま動き、人々をひどい目に合わせてきたがタイガは、その都度、自身の心も傷め
『いつか自分は大地獄に落ちて這い上がることもできないだろう』
そう自分の運命をうれいていたのだった。

 そして、とうとう自分を倒しに神の使いがやって来て
怖くて仕方がなく、半ばやけくそになって暴れたり襲いかかってみたり、どうせ地獄に行くなら、めちゃくちゃにしてやろうと思っていた。

 しかし、よく聞くと鈴木さんと小辻さん、あの刑事二人を襲ったのは自分ではないとタイガは言い出した。
「急に入れ替わったんだ、信じてくれ・・・ガフゥ・・・あの主は鬼屋に隠れている・・・」

静華が東京のホテルでレッドシグナルを発信した、あの夜。

確かに並みの悪霊・悪魔ではなかった・・・

静華は予め用意していた青いぎょくを手のひらに取り出すと
タイガに呪詛をかけ、
その玉の中へブラックドラゴン・タイガを封じ込めた。

帝雅タイガよ、いつか我らの力になってくれ、強くなって戻って来いよ」

 その玉は、かの夜叉ヶ池に通じている。

異空間で白龍と青龍が待っており各・龍神様と八大龍王様による裁判が行われ自力で蛇から龍にまで変貌したタイガは静寂に包まれる夜叉ヶ池の底で罪滅ぼしの行に入ることになった。

「あの青い不思議な玉は私が子供の頃、よく川で遊んでいた河童からもらったものだ」と静華さんは言った。

奥さんとタイガは完全に分離された。

それでも奥さんの罪が消えるわけではなく、静華さんの計らいもあり弁護は堀之内先生に依頼することになった。

少しでも奥さんの刑期が短くなりますようにとしきは願いました。

「我ら一族の敵は悪霊と、かの魔導士、悪魔を召喚しあらゆる災いを起こす奴ら、宿敵なり」

今まで、どんな経緯があったのか私には、わからない。

でも、夜、現場にて月に向かって叫ぶ静華さんの姿は
一生忘れることはない。

「アビラッ!」
『鬼屋、お前だけは絶対に許さん』


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