ＪＯＬＥＮＥジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。

最終章 大団円へ

第1話 榊原静華・見参！

実は、その後の事、全然覚えていません。

わたくしマルダ・・・やってしまいました。

情けないことに私は眠りに就いてしまい・・・
次に目を覚ましたのは
ナント・・・約２４時間後だったのです。

熱を出し、うなされたのは和華さんではなくて・・・
わたくし式です・・・申し訳ありません・・・なさけないです。

多分ちょっとした隙に何か悪いものを憑つけて帰ってきたらしいのです。

読者の皆さん、どうか、わたくしシキ・マルダを殴ってください。
笑ってください。

この大事な時に・・・そう、この大事な時に限って！

わたくしと云う人間は・・・わたくしと云う男は・・・

やってしまう・・男なのです・・・

私がソファーで目を覚ますと、そこには皆さん集まっていらっしゃいました。
軽く毛布が、かけられていました・・・

「あっ、おきたよーマルダぁーオハヨー大丈夫？」

和華さんが心配そうに私の顔を覗き込んで、そばに居ました。

「起きたか、この馬鹿」武藤さんです、上から見下ろし笑っています。

そして・・・念願の祭師・榊原静華さんが目の前に居ました。

「マルダァーあはは、おはようー」

あぁ・・・本物だ・・・夢と一緒で・・・綺麗な女人ひとだなぁ・・・

他にも社長に尾形君、西条先生に茂木さんまでいらっしゃって・・・
あれぇー、僕の友人あの天才料理人の土井良憲くんまで居ます。

カレーの美味しそうな匂いがします。

この時の私の顔ほど間抜けなものは、この世界のドコにも無いでしょう・・・

このあと記録させて頂く事柄は
後に警察の方や静華さんや尾形君に聞いた事であります。

失踪した奥さんは朝８時前に、なんと尾形君の家に姿を現し
居合わせた尾形君の、お母さんが対応したそうです。

「あんた誰？なに？」と、お母さんが例の奥さんに言うと

彼女は『スッ』と近づくなり

『ふーーーーーっ』と、お母さんに息を吹きかけました。

そこで、お母さんは気を失って倒れてしまい、
すぐに気が付いたらしいのですが
台所の包丁が２本、そして軽四の車が盗まれてしまったのです。

お母さんは、ただ事ではないと、すぐに１１０番通報しました。

通報を受けた警察は服装から逃げ出した例の奥さんと断定され
緊急指名手配が再発令されました。

時刻は朝８時半。

警察官２名が空港に静華さんを、お迎えに行き
降り口ゲートから静華さんが出てくると挨拶を交わし
警察官は左右に陣取り警護しました。

静華さんは黒っぽいトレンチコートにリクルートスーツ姿だったそうです。
日本刀を革ケースに入れ肩に掛けていました。

歩き出すと看護師の服を着た例の奥さんが、すごい形相で皆を睨みつけ
静華さんら三人の前に立ちはだかりました。

盗んだ軽四で移動して、静華さんをロビーで待ち伏せしていました。

視える人が見れば
目が釣り上がり口が耳まで裂けて歯を剥きだしていたそうです。

「フーッ、グルルルルゥーガァウッ、グルルルルー」
その嘶いななきは犬か狼のようでした。

彼女の両手には大きな包丁が、それぞれ握られています。

そして―ズンズンッと歩いて静華さんに向かってきました。

若い制服警官は
「止まりなさい！刃物を置きなさい！撃ちますよ！」
と叫び周囲にいた旅行客たちは悲鳴を上げ逃げ出しました。

「きゃーーーー！」逃げ惑う人々・・・空港内は騒ぎになりました。

「止まりなさい！」
警察官の威嚇を無視してズンズンと奥さんが包丁を手に向かってきました。

一発、天井に向け威嚇射撃がなされました。

「パン！」

「キャー」と、どこかで悲鳴が上がり周囲の人々が逃げ出しました。

静華さんが、すぐに反応しました。
「撃つな、馬鹿者！誰かに当たるぞ！お前らあー下がれぇー！」

静華さんは左右の警官を激しい動きで後ろに追いやると

ケースから刀を出し『スラスラ』と鞘さやから抜きました。

その間も狂った奥さんはズンズンと向かってきます。

大きく鼻から息を吸い、少しずつ吐き出しなが、静華さんが言います。

「イザ・ヤア・・・」

低い声で、そう言い、刀を前に差し出し敵を睨みつけ
二人は対峙しました。

その場にいた警察官は静華さんが、その刀で暴漢を斬ると思ったそうです。

静華さんは日本刀を相手にかざして真横に一回、刀を振りました。
「ひとーぉ」
―フォンッ　刀が空を切りました。

大きく足を開き刃先を敵に向け構えました。

「ふたぁー」
―フォン、フォンッ！真横に二回空を切ります。

すると狂った奥さんの動きが止まり苦しみ出しました。

「ウグゥウウー、ウゥー」

「我が名は一族、四天王の一人、榊原静華だぁーっ！
貴様あーっ！名を名乗れぇっ！！」

さらに静華さんが動きます。

「みぃー」
―フォン、フォ、フォン、三回・・・
いえアルファベットのＺと空に書くように刀を振りました。

「よぉー」
―フォン、フォン、フォンフォ、フォン、フォン刀が踊ります。

「いつぅー」
―フォン、フォン、フォン・・・・漢数字を相手に向け書いているようです。

「ウグゥー・・ウゥアァアア・・・」敵は苦しんでいます。

そして
『カラン！』と悪魔の取り付いた奥さんが包丁を床に落とした時

警戒していた武藤刑事が飛び出して走り寄り体当たりをして
奥さんを床に倒し手錠をかけました。

「カクホーぉーおーっ！！」
バタバタと他の刑事さんや警官が寄って集って身柄を確保しました。

いつの間にか空港警備員と制服警官が周囲を囲んでいたそうです。

「おい、お前らホテルに急げ！」
静華さんはボサッっとしていた迎えの警官２名に促しました。

刀を鞘に収めながら足早にパトカーに向かい静華さんがホテルに到着したとき

部屋で私が爆睡していたため誰も応答する者がなく
ホテル従業員の手によってドアが開けられると

うめき声をあげて、うなされ眠る私がソファーに居たのです。

聞けば高熱を出し、うめき声を出していたとか・・・

そして今・・・
目が覚め、みんなに囲まれていたのですが
一つ大変な事に気がつきました・・・

私の股間にオムツが充てがわれていて明らかに用を足していました、
小ですが・・・ナニコレ？・・・

「あー」

私が、それに気がつき目を白黒していると

「私がオムツしたのよ、あははっ！」

綺麗な・・・し・・・静華さんが笑っています・・・っと言うことは、
えーっ！！・・・全部見られた・・・

みんなも笑っています・・・

だれか・・・これは夢だと・・・ぼくに・・・言ってください・・・