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第6章 エンジェルサークル

第11話 無理をしました

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「西条先生、一族の祓い、どう思いますか」茂木さんが聞きます。

「ん、古神道、道教や仏教、ユダヤ教、キリスト教のエクソシズム、あの結界刀のヘブライ文字を見る限りでは、その全てが関わるようですが、独特の方法を用いているのは間違いないでしょうな、ひょっとして、これが影の神道学と関係があるのではないかと・・・」

「・・・あっ!」護摩壇の見学をしていた茂木さんが声を上げました。

和華さんが御神楽に合わせ儀式を始めようとしたのですが
膝が二回ほど『カクリ』と崩れ、地面に膝を打ちました。

様子が変です。

「茂木くん!」西条先生が茂木さんに指示を出しました。

「ハイ!」
茂木さんは和華さんに走り寄ると声をかけました。

「大丈夫ですかっ」

目隠しをしたままの和華さんが言いました。

「んむぅ、ちょっと式さん達を呼んでください・・・椅子を、椅子をお願いします」

「おーいシキさーん、オガタくんーちょっと来てくれぇー」

呼ばれた私たちは急いで、そばに行きました。

茂木さんは自分たちが座っていた椅子を和華さんに持ってきました。

「和華さんのおじい様、椅子です」

「あぁ式さん、気が付いておりましたか私は剣一郎けんいちろうと申します。四天王の一人です」

「はい」

「和華は、おとといから働き詰めで、ろくに休まず、ここまできましたが
無理をさせてしまいました、このままでは和華の体が壊れてしまいます。

本来であれば悪魔たちに名乗りを上げ、抜刀演舞で
戦いを挑むところですが、この状態では無理です。
よって祝詞を上げ、私たち独特の魂散華こんさんげという菩薩様にお越しいただく儀式のみ行い本日は引き上げたいと思います。

その間、式さんには可能なだけでかまいません太鼓に合わせ結界刀を打ち込んでください。
尾形さん、お父様を、お呼びしてください護摩壇と灯明に油や木をくべていただきたい・・・
式さん、今できる精一杯やらせていただきます。
静華も夜明けとともに、こちらに参ります。和華の事、頼みます」

目隠しをした和華さん。
剣一郎様が無念そうに頭を下げられました。

「はい、わかりました」

「やるか、尾形君」
「ハイ」

椅子に座った見た目が和華さんの剣一郎様が誰かに話しかけるような感じで祝詞のりとをあげ出しました。

少し離れると、どんな御辞おことばを話されているのか聞こえない程度です。

独特に手の指を合わせ、魂散華の儀式に入られたようです。
「おん、ねがいやおよろずのぉー・・・」
『ゴーオーン、カーンッ!』
空から鐘の音が響き渡りました。

「ここにいる死霊・悪霊ども、成仏しそこねた者たちよ、
妖魔に縛られておる理由など無いはずだ、
今、此処に地蔵菩薩様、観音菩薩様がお前たちを導くために
姿を表せられた。
地面の下に居る者たち鬼屋に巣食う者たち
成仏したくはないか転生したくはないのか?
このような好機、そうそうは無いぞ、さぁ皆、此処に集まりなさい」

私と尾形君とで結界刀を打ち込み始めると彼の会社の方たちが5本ずつ刀を持って後ろを10人ほどで付いてきました。

ねこを押すのはヤメて神楽に合わせ行列は歩き出しました。
笛の音と太鼓がスピーカーから鳴り響きます。

「ぴーーーぴーーーぃドンドン」立ち止まります。

「はい二代目」従業員さんが尾形君に刀を差し出します。

その刀を尾形君が地面に立てたところで
私が木槌で地面に打ち込みます。

―カンッ、カンッ、カンッ

『風が強くなってきたなぁ』と思い、ふと護摩壇の方向を見ると
灯明の上空に光の玉が左右に音もなく浮かんでいて、その周りに
大小さまざまな光が集まっていました。

「ぴーーーぴぃーーードンドン」

呑気にしている場合ではありません、すると鬼屋アパートから
ざわざわした気配とミシミシという家鳴りがしているのに気がつきました。

尾形君もそれに気が付いているようでしたが私たちは行列の先頭です無駄話している暇はありません。

こうして次々と刀は打ち込まれ地面が一瞬、地震のように波打ったり
時折、アパートから
―ドンッ!という大きな音がしたりはしましたが
みな怪我も事故もなく作業は進んで行きました。

悪魔が負け惜しみを言っていたそうです。
「何やら始めおったなっ!
神よ見ているか、ハハハハハ。
相変わらず黙して語らずか、そうすれば罪人の方から
具にもつかない言い訳を勝手に始めるからな
今の俺のように、ハハハ。

此処ここじゃあ違う名前で呼ばれているそうだな。
俺は別に宝探しに来たんじゃない。

気がついたら宝島に勝手に流れ着いてたってところだ。

楽しいか、まだ愚かな人間どもを擁護ようごするのか、ああーん?
物欲の塊で飽食な、性欲と名誉欲、権利欲に命を懸けるような
あのバカ共を・・・神よ何が楽しい何が望みだハハハハ!

 我らを召喚した魔道士や信者を、なぜ罰しようとはしない?

ならば我らが、あの呪物を集め踊りセセラ笑っている馬鹿共を代わりに地獄へ招待してやる、感謝しろ。

 さぁ覚悟しろ馬鹿共っ!千年でも永遠にでもその舌を毎日引っこ抜き心臓に槍を突き立て
手足をもいで目玉につるぎを刺してやるっ!」
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