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第3章 鬼屋が来ます

第6話 死神

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 私は腹が減ったので買い置きの袋ラーメンを2個作りました。
すると私が動き回ったのと食べ物の匂いにつられたのか彼女は目を覚ましました。

先ほど頂いた菓子折りはバームクーヘンで、しかも私の大好きなチョコ味でした。

「これ、よかったら食べなよ」彼女にバームクーヘンと、お茶を出しました。

「ラーメンあるけど食べる?」

「あー一応いただきます・・・あのー、すいませんでした迷惑かけて」

「ああ、まぁね、いつもこんななの君は?」

「いーえ初めてだす、これイタダキマース、む・おいしいこれ」

「あははダスってなんだよ」

孤独な毎日が続いていたせいもあって私は少し浮かれていたと思います。

「おじさんシキって名前なんだよね?」

「ああ、なんで?」

「あのー私、市立病院の看護師なんです、シキさんって、まさか身内の方、最近、亡くなったりしてませんか」

「えっ?・・・おふくろ死んだけど・・・」ラーメンもテーブルに置きました、卵をとじた塩ラーメン・海苔・ゴマ入りです。

「えーっ!あの式さん?」

「なに、まさか知ってるの」ラーメンがうまい。

「あ、じゃコレもイタダキマース『クピッ、ズルズル』これおいしい」

「だろコツがあるんだよインスタントは」突然の、お客に私は嬉しそうだったはずです。

 彼女は偶然にも母が入院していた病棟勤務の看護師さんで、よく母の状況確認などしてくださった方でした私が珍しい苗字なので覚えていたのです。

「こんな偶然あるんだねー」

「偶然じゃないかもしれませんよ」と彼女は言いました。

病院で彼女はマスクをしていたので当時、顔はわかりませんでしたが彼女の方は私に見覚えがあったらしく
「それで酔っ払って、ついて来てきてしまったと思う」と話しました。

あれこれ話すうちに私の名前からローカル冊子の怖い話コラムが話題になりました。

「いつも楽しみに読んでたんだ、そっか式さんって、こんな人だったんだ」

「ん、がっかりした?」

「別にぃ・・・」

「看護師さんだったら仕事柄、不思議な体験とか、あるんじゃない?教えてよ今度、ハンバーガーくらいしか御礼できないけど」

「あのさぁ・・・怒らないで聞いて欲しいんだけど・・・」

「なに?怒んないよ常識のない若者にはクラブで慣れてるから」

「んー私、若者じゃないんだけど、もう27来年28歳」

「へぇー若く見えるね」

「髪の色と服装のせいよ、おじさんもいくつか知らないけど若いジャン」

「お世辞はいらないよ馬鹿な落ちこぼれの大人だな、ただ寒い大人にだけはなりたくないよ・・・今、言いかけた怒らないでって話は何なの?」

「式さんのお母様の病室に黒い人影が、いつも立ってたんですよ、たまに病院ではあることなんですよ、私たちは『お迎えさん』って呼んでます」

「そうか、そうなんだ、じゃ迷わず成仏してくれるかな」
中身のない強がった軽口を言いました。

「・・・ごちそうさまでした」

「今度ゆっくりオバケ取材させてよ」

「いいですよ今度は私がゴハンおごりますね迷惑おかけしましたし本当にすいませんでした、あの女の人には誤解されたんじゃないですか私、会って説明しましょうか?」

「いらないよ返ってごちゃごちゃしそうだし、これくらいの事で誤解して怒ってるんじゃ俺のタイプの女じゃないよ心の大きい人じゃないとね、恋人でもないし」

「そうかなぁ、でも男に関して心の大きい女なんて存在しませんよ・・・」

「おー、言うねぇー」

私は名刺を渡して電話番号も交換しました。
彼女の名前は『アサミ』と言いました。
私は彼女を家の近くまで車で送っていきました。

 後日、母の遺骨を、お寺に収めて葬式が終わった。

『ようやく、あのまわしい介護生活から解放されたんだ・・・』

 開放感から私は昼間から酒を飲んでみたり好きなだけ寝てみたりして過ごし仕事も生活費もないくせに働く気力も無く自堕落になっていき、
さらに1週間が経過お悔やみの言葉は誰からもなく、かつての恋人も親戚も何の連絡もない。

 そりゃそうだ誰にも知らせていないし今までだって誰かに今どうしているかなんて心配されたこともない。

世の中、人間そんなもんだ。
現に、この二週間どこからも誰からも連絡は、ないじゃないか・・・
携帯が止まっているのかと2回も確認したが止まってはいない。

要は居ても居なくても誰にも思い出されることもない存在価値の無い人間なんだ・・・俺は
『いつ、死のうか・・・』
気が付けば、そんな考えで頭の中がいっぱいでした。

 先日、顔見知りになったアサミちゃんから何か、ひやかしメールの一つも来やしないかと期待もしていたけど来るわけない・・・

『あはは・・・馬鹿な寒いオヤジになってしまったんだな俺は・・・
さて、いつ死のうか・・・
その前に、お世話になった人やなんかに連絡でも入れたほうが、いいのかな・・・』

 伸縮自在の白い物干し竿をロッカーと洋服ダンスの天板に乗せてズボンのベルトを使って首吊りをしようと輪の中に頭を入れました。

その時
「フフッ」
と背後で男の声が聞こえ視線の先にある鏡の中に真っ黒な人が写りこんでいました。
『ああ、お迎えさん・・・なんだ・・・来てくれたんだ・・・』

台にしていたダンボールが体重でじわじわと潰れていくと
グイグイとベルトが首に食い込んでビリビリと痛みが走り
こめかみ周辺が圧力を感じ始め息が苦しくなってきました。

「う・・うぐぅー・・・」

『がんばってみたけど・・・ダメだった・・・みじめな最後だな・・・みんな・さよなら』
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