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第3章 鬼屋が来ます

第5話 ちょっかい

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 さんざん面倒かけて、この世を去った母が骨になって家は焼けたまま。

その後、良い思い出が一つもない家を解体して土地を売り介護で狂った生活費の借金、施設、病院、葬式で作った負債を一括返済する手はずです。
それでチャラ無一文です。

 水道管に問題がある実家だったので未練はありませんでした。

私は自分の事務所に安いパイプベットを持ち込んで、ようやく、ゆっくりと緊急電話の来ない眠りにつく毎日を満喫していました。

 しかし今日は椅子で眠りました。

前夜、憂さ晴らしに馴染みのクラブに顔を出して年の離れた若者に混じり
すみっこに陣取って、しこたま飲みました。
『しこたまって・・・死語?』

 昼近くに事務所で目が覚めると僕のベットに若い女性が寝ています。
グーグーといびきをかいて・・・誰だっけ?

『あーあ、しょうがねぇなぁ』

コーヒーなんぞ飲みながらボーっとしていると
そこへ冊子編集部の高野女史が珍しく訪ねてきました。

・・・・タイミングよすぎ・・・・

「こんにちわー式さん、これ、この間の・・・あっ、すいません私、帰ります」
高野さんは、すぐに踵を返し帰ろうとしました。

ベットに女が寝ていたからです。

「すいません失礼します・・・」

「あ、ああーちょっと待ってっ!何でもないから帰らなくていいよ」

「私、何も知らなかったものですから・・・失礼します」

「いーーーいやいやいやホント大丈夫だから帰らなくて」

私は彼女を引き止めました。

「高野さんが考えてるようなこと、いっさいっ!何もないからっ」

「・・・」

するとベットで寝ていた彼女が起きました。

「うるさいなあー」
起き上がって『ヨダレ』を拭きながらキョロキョロして言います。

「あんた誰?んーーなんで・・・此処どこですか、あれ今何時?
私のスマホ・・・あっやっべぇーーやっちまったよぉー・・・もう・・
あれ・・・あぁあ今日、休みだビビったぁーあれっ、奥さん?」

「違います」と高野さんが言いました。

「ふーん・・・おじさんトイレどこ・・・」
彼女はトイレに行き私と高野女史は顔を見合いました。

「いやこれには事情がありましてですねぇ・・・」

「あーそうですか別に私に事情なんか説明しなくていいです」
あれ・・・怒ってる、なんで?

トイレから彼女が出てきた。
「おじさん頭痛くて、もう少し休んでいいかな・・・あと水ある?」
冷蔵庫から水を渡すと、また俺のベットに入りやがった・・・オイッ。

「あ、ありがと・・・ここどこなのかな昨日・・・」

「あのなぁ昨日テキーラで酔っ払って帰る俺についてきたんだよ。
それで、おんぶオバケみたいに、おぶさってきた挙句に眠っちまったんだよ」

「そう・・・なんだ・・・・グォー・・・」
また眠りやがった・・・・

「あ、高野さん、すいません、ご用事は何でしたっけ」

「はい、まずコレ先日の取材相手から、お世話になりましたって菓子折りです。
何か神社の、お祓いの御礼だとかで、これ渡しましたよ、それじゃ」

「あ、コーヒーでもいかがですか?」

「結構です、と、ごゆっくり、お邪魔しました」

『帰っちゃった・・・あーあ、それにしても、この娘は・・・
せっかく高野さんが寄ってくれたのに、タイミング悪いな・・・俺。
それにしても、この娘、どういうつもりだ?
俺、何か、したっけかな・・・』

ぐっすりと眠る彼女を見ていると、かわいいと思ったり、意味もなく嬉しいような腹立たしいような・・・
でも人が居てくれるだけで、やっぱり嬉しい気持ちになっていました。
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