百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第97歩 カレンファイブ

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 従姉妹さんの一件が落着した年、春にFさんは中学校に入学した。

中学に進学すると偶然、従姉妹さんと同じクラスだった。

 中学校に通いだしたFさんは校舎の体育館入口のところに
白いワンピースを着た女の人が、いつも立っているのに気がついた。

周囲の人には見えていないらしく、なんで居るのかも気にしなかった。

 ある月曜日の朝、一時間目の授業は英語だった、先生の授業を受けていると黒板横に貼られているカレンダーが目に入った。

40センチほどの大きさで月ごとに、めくるタイプで下部にカレンダーが印刷されており上部大部分に女の人の肩から上が描かれた絵が印刷されていた。

女の人の絵というのが少し変な絵でFさんが『変わった絵だな』と思って見ていると

絵の女の目玉が

―ギョロ、ギョロ
左右に動き出した。

それは人間っぽい動きではなく無機質な表情のまま
ギョロギョロ目玉だけが動いている。

印刷された絵なので無機質で当たり前だが、それが余計に気味悪くギョロギョロと動き続けているのでFさんは手を挙げて先生に報告した。

「先生、カレンダーの目が動いています」

一瞬、教室は、しんと静まり返り先生がカレンダーを見た。

目玉は動くのを止めた。
「Fくん、君はまだ寝ぼけているのか?」先生に信じてもらえなかった。

 一時間目が終了してFさんがカレンダーのそばに行ってよく見てみたが、ただ絵が印刷されたカレンダーのままで目玉は動かない。

おかしいなと思って考え込んでいると4人程クラスメイトが集まってきて
「自分も見た」と言ってきた。

その中の一人はFさんの従姉妹だった。
みんなで本当に見たかどうか確認し合った。

ほかの生徒たちも見ているはずだが怖かったのか見ていないのか
集まってこなかった。

あれこれ話しているうちにFさんは、いい事を思いついた。

 カレンダーの顔、目の部分、特に黒目の部分を鉛筆で丸く囲み印を書き込んだ。
もし本当に目玉が動けば、ひょっとしたら丸い書き込みから目玉が
ズレるかもしれないと考えた。

二時間目、授業半分でカレンダーに注意していると
やっぱり時折、目玉が動く。

―ギョロギョロ

中休み5人が集まって確認すると書き込みの印から黒目が確かにていた。

 次の日
5人が黙っていれば、いい気になってカレンダーの目玉は

――ギョロギョロ

あざけ笑うように元気に動いた。

その日の授業がすべて終わって5人はカレンダーの前に集まった。

 Fさんの従姉妹がカレンダーに手をかけると一枚引き剥がした。

―ジャー、ジャオリッ

四つ折りにして引き裂き一枚だけ、もう一度引き裂いて五枚に分割し
「明日どうなるのか確かめよう」とそれぞれカバンに入れて持ち帰った。

 翌朝5人が集まってカバンから引き裂いたカレンダーを持ち寄って合わせてみると、まるで表面を火であぶったかのように
 
 五枚とも、すべてになっていた。
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