90 / 101
第89歩 TV出演
しおりを挟む「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
バベル病院の怪
中岡 始
ホラー
地方都市の市街地に、70年前に建設された円柱形の奇妙な廃病院がある。かつては最先端のモダンなデザインとして話題になったが、今では心霊スポットとして知られ、地元の若者が肝試しに訪れる場所となっていた。
大学生の 森川悠斗 は都市伝説をテーマにした卒業研究のため、この病院の調査を始める。そして、彼はX(旧Twitter)アカウント @babel_report を開設し、廃病院での探索をリアルタイムで投稿しながらフォロワーと情報を共有していった。
最初は何の変哲もない探索だったが、次第に不審な現象が彼の投稿に現れ始める。「背景に知らない人が写っている」「投稿の時間が巻き戻っている」「彼が知らないはずの情報を、誰かが先に投稿している」。フォロワーたちは不安を募らせるが、悠斗本人は気づかない。
そして、ある日を境に @babel_report の投稿が途絶える。
その後、彼のフォロワーの元に、不気味なメッセージが届き始める——
「次は、君の番だよ」
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
たまご
蒼河颯人
ホラー
──ひっそりと静かに眺め続けているものとは?──
雨の日も風の日も晴れの日も
どんな日でも
眺め続けているモノがいる
あなたのお家の中にもいるかもしれませんね
表紙画像はかんたん表紙メーカー(https://sscard.monokakitools.net/covermaker.html) で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる