百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第68歩 狐山

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 大工のKさんが18歳の時、街から少し離れた山中に現場があった。

山は豊かで樹々が豊富な所だった。
通勤には曲がりくねったりはするが一本道を
トラックで上り下りしていた。

 ある日、仕事が夕方5時半に終了して帰宅することになった。

いつも先輩がトラックを運転してKさんは助手席だった。
帰り際ほかの大工さんが冗談で
「山ん中だから、きつねにばかされんなよおー」
笑いながら自家用車で先に帰った。

「さて俺達も帰るか」
Kさんと先輩がトラックに乗り、でこぼこ道を走っていると
トラックの前を

―さっ 狐が横切った。

「あ、キツネだ」なおガタゴトと下りを走っていると

―さっ
また狐が横切っていく。

「先輩さっきからキツネすごい、いますね」言うと

「おい、なんか変じゃねぇか、さっきも、ここ曲がって下りたわ」

「そうですか?」

いつもなら10分も走ると大きな国道に出る。

でも時計は既に6時になろうとしていた。

「そうですね、いつもなら、もう国道に出てますよね・・・」

山道は一本道で脇道は無い、なのに先程からぐるぐる
同じ道を廻っているようだった。

どんどん辺りは暗くなっていく。

二人共無言で走りKさんがふと先輩を見ると顔色が青くなっていた。

「あっ」先輩がブレーキをかけた。

「またキツネ横切ったわ」
辺りは真っ暗でトラックのエンジン音が響きライト周辺だけが明るい。

「何よこれ・・・化かされてんのか」

「・・・」
先輩もKさんも落ち着こうとタバコに火を点け走り出した。

「おっ!」

すると間もなく、あっさり国道に出た。

時計は6時半になっていて国道まで10分のつもりが1時間も、
かかってしまった。

二人共、ホッとしたが、すっかり口数が少なくなっていた。
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