百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第59歩 双子通信

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 ある日、私はAさんと酒を飲んでいた。

Aさんは兄弟がいて双子だという。

四方山話よもやまばなしをしているとAさんの顔が
急に苦痛の表情になった。
「あー痛ぇ」
お腹をさすっている。

私が
「どうしました」聞くと

Aさんは
「弟に電話する」と言って携帯を持った。

「何、どした、いー、やんや解った、早く薬飲めよ」と言って電話を切った。

そばで、やり取りを聞いていた私が、どういう事かと
Aさんに聞くと弟さんが何かに当たったらしくお腹を壊しているという。

「弟さんがお腹壊すとAさんが、お腹痛くなるんですか?」

「それが、小さい頃から兄弟どっちかに何かあると、なんともない片方も痛くなったりするんだ」と云う。

「前に、頭痛がひどくて薬飲んでたら弟からすぐ連絡きたこともある」

双子とはいえ、そんな事が、あるのかと私が不思議がっていると
前に、もっと嫌なことがあったのだという。

 Aさん兄弟が18歳の時。

Aさんは地元に居て弟さんだけ地方に就職することになり、あるビジネスホテルで泊まり込みの新人研修に参加したときの事だ。

 ある夜Aさんは日頃、感じたことない寝苦しさに襲われ目を覚ますと、そこは自分の部屋ではなく、どこかのホテルの一室だった。
 
 Aさんは混乱したが夢を見ているのだと思った。
 
その夢の中でベッドから半身起こそうとしたが体が動かない反応しない、おかしいなと思っていたら部屋の浴室から

―ゴトン
音がして浴室の中で男が首をつっているのが見えた。

 なるほど夢だからベッドに寝たままでも浴室の様子が見えるんだなと
割と冷静にしていると首をつったままの状態で男が浴室から出てきて
少しずつベットに近づいてきた。

『うわ、怖い・・・』

首をつった男は
「うーーー」と気味の悪い声を出しながら少しづつ近づいてくる。

しかし体が、いうことを聞かない、このままではどうなるか解らない、
必死に起き上がろうともがいていると急にドスン!と
体が落ちたような衝撃を感じAさんは目を覚ました。

 周りを見回すと自分の部屋だった。

『これは・・・』

Aさんは急に今見た夢は研修中の弟かもしれないと、
すぐに携帯で呼び出した。

「兄貴ぃ・・・・助かった」

予想通り弟さんは研修で充てがわれたホテルの部屋で金縛りに遭っていて浴室から幽霊が出てきたが携帯の音が部屋に鳴り響いた途端に金縛りが解けて幽霊も見えなくなり助かったと事情を説明した。

「その部屋ダメだホテルに言って部屋変えてもらえ」

 後日、弟さんは助かったことの御礼をAさんに言ってきたが
Aさんは将来もし逆の立場になったら助けてくれよなと弟さんに話した。
 
「頭痛や腹痛くらいなら良いけど、ああいうのは、もう勘弁して欲しいわ」と当たり前のように語った。
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