百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第58歩 選手交代

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 私の友人Mさんは建築業一筋の人で、
ある日、興味深い話を聞かせてくれた。

ある廃業した大型店があり、そこを改装して某量販店にする現場が、
おかしいと言う。

 外装はともかく内装工事の業者がコロコロ入れ替わる。

Mさんは関係のない別の現場で一緒になった内装屋さんが、
そこの現場に少し入っていたのだと聞いた。

 問題の現場は納期が迫っており急ぎだという事で
現場に入り内装工事にかかった。

昼間は問題ないが夜になると建物内に不審者が現れる。

―バタバタと走り回ったり

「すいませーん」呼ぶ声がする、だが誰もいない。

しょうがないので仕事を始めると

「おーい聞こえないのか」
「キャハハハハ」声が聞こえてきて

突然、電源が落ち真っ暗になって気味が悪く、やってられないのだという。

 噂で続きを聞いてきたMさんが教えてくれた話によると、
とうとう納期が迫って困った元請け会社が

【おばけは出るがギャラは三倍】と触れ込み、あちこちに連絡を入れまくり時間に余裕のある現場を後回しにしての猛者職人が集められ即席の改装チームが組まれた。

 チームは昼組と夜間組に分けられた。

現場監督も用意周到に電源が落ちれば
鼻歌交じりで大型発電機を使って対処し壁や床を貼り。

職人がトイレに閉じ込められれば携帯で仲間に助けを求め。

CDやラジオで怪しい声をかき消し
夜中だろうが監督は買い出しを行い何人前も牛丼弁当を差し入れ
連日24時間作業したおかげで工期に間に合わせたのだという。

そして、この大騒ぎになった現場というのが前述、第43歩で紹介した「慣れました」の飲食店と目と鼻の先に位置した現場だった。
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