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第36歩 朝っぱらから
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ある御夫婦の話。
ある朝、奥さんが目を覚ますと隣の布団に居るはずの旦那さんの姿がない。
いつもは奥さんの方が早起きなので
『珍しい事もあるものだ』と思いながら居間に行くと旦那さんが座り込んでいる。
「なにやってんの」
話しかけると旦那さんは一瞬こちらを見て四つん這いで
奥の座敷に入っていき、まるで猫のように拳を握って顔を洗う仕草をして
―ニャーオ
一声、鳴いてみせた。
「何朝っぱらからふざけてるのっ!」
奥さんは、きつく言葉を投げたが旦那さんは、しゃがんだまま、
じっとこちらを見つめ何も言わない。
その表情は感情が無いような冷たい顔だ。
明らかに、おかしい。
旦那さんは、やがて家の中を動き回り台所の水を舐めたり皿を舐めたりしだした。
奥さんは段々怖くなってきて町内の、ある小さな神社に駆け込み一部始終を管理されている氏子《うじこ》さんに話した。
早朝だったにも関わらず話を聞いた氏子さんは祭壇に手を合わせ、
こちらに向き直って言った。
「あなたの家の床下に猫の死体があります、見つけて供養してあげてください」
半信半疑で奥さんは家に戻ると旦那さんはソファーで寝ていた。
「もしもし・・・・」
すぐ身内に電話で事情を話し男衆が3人手配され、とりあえず奥の部屋の床板を剥いでみると、そこに猫の死体が横たわっていた。
市役所に問い合わせ何とか死体を処理することができた。
「まだ気持ち悪いから帰らんといて・・・・」
呼ばれた身内は、出前の食事を食べながら快諾してくれた。
その間、旦那さんは寝ていたが
奥さんは家の仏壇にむかって線香を焚き、
お経を唱えていると旦那さんが正気に戻って起きてきた。
「この騒ぎは何事か」と訊く。
旦那さんは何も憶えていなかった。
猫に心当たりはなく知らない猫だった。
「迷惑な話です」と家人は言う。
人知れず物陰を探して主人に別れも告げず静かに息を引き取る猫たち・・・
私は思わず
「迷惑じゃなくて良い事しましたよ、祟りというよりも、
お知らせじゃないですか、仏間の床下ということで、
おそらく家のご先祖様が猫に出て行くように言って
行き場所に困った猫が旦那さんの体を借りたんじゃないでしょうか、
ご先祖たちに揶揄される事から解放されて猫にとっては良かったし
早々に発見できて良かったと思いますよ
病原菌も発生するし腐り出したら事ですよ、きっと良い招き猫になってくれてますよ」
と気休めを言いました。
それにしても、その神社の氏子さんスゴイです。
ある朝、奥さんが目を覚ますと隣の布団に居るはずの旦那さんの姿がない。
いつもは奥さんの方が早起きなので
『珍しい事もあるものだ』と思いながら居間に行くと旦那さんが座り込んでいる。
「なにやってんの」
話しかけると旦那さんは一瞬こちらを見て四つん這いで
奥の座敷に入っていき、まるで猫のように拳を握って顔を洗う仕草をして
―ニャーオ
一声、鳴いてみせた。
「何朝っぱらからふざけてるのっ!」
奥さんは、きつく言葉を投げたが旦那さんは、しゃがんだまま、
じっとこちらを見つめ何も言わない。
その表情は感情が無いような冷たい顔だ。
明らかに、おかしい。
旦那さんは、やがて家の中を動き回り台所の水を舐めたり皿を舐めたりしだした。
奥さんは段々怖くなってきて町内の、ある小さな神社に駆け込み一部始終を管理されている氏子《うじこ》さんに話した。
早朝だったにも関わらず話を聞いた氏子さんは祭壇に手を合わせ、
こちらに向き直って言った。
「あなたの家の床下に猫の死体があります、見つけて供養してあげてください」
半信半疑で奥さんは家に戻ると旦那さんはソファーで寝ていた。
「もしもし・・・・」
すぐ身内に電話で事情を話し男衆が3人手配され、とりあえず奥の部屋の床板を剥いでみると、そこに猫の死体が横たわっていた。
市役所に問い合わせ何とか死体を処理することができた。
「まだ気持ち悪いから帰らんといて・・・・」
呼ばれた身内は、出前の食事を食べながら快諾してくれた。
その間、旦那さんは寝ていたが
奥さんは家の仏壇にむかって線香を焚き、
お経を唱えていると旦那さんが正気に戻って起きてきた。
「この騒ぎは何事か」と訊く。
旦那さんは何も憶えていなかった。
猫に心当たりはなく知らない猫だった。
「迷惑な話です」と家人は言う。
人知れず物陰を探して主人に別れも告げず静かに息を引き取る猫たち・・・
私は思わず
「迷惑じゃなくて良い事しましたよ、祟りというよりも、
お知らせじゃないですか、仏間の床下ということで、
おそらく家のご先祖様が猫に出て行くように言って
行き場所に困った猫が旦那さんの体を借りたんじゃないでしょうか、
ご先祖たちに揶揄される事から解放されて猫にとっては良かったし
早々に発見できて良かったと思いますよ
病原菌も発生するし腐り出したら事ですよ、きっと良い招き猫になってくれてますよ」
と気休めを言いました。
それにしても、その神社の氏子さんスゴイです。
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