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第33歩 ケロっと
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板金屋さんのTさんから聞いた話。
今から三十年前Tさんはアパートで一人暮らしをしていた。
部屋は居間と奥に畳部屋の寝室がある。
台所+居間の壁には入居した時から黒いシミ汚れがあった。
のちにアレは血痕だったと思うと語ってくれた。
仕事は肉体労働、帰宅すると開放感から寝付きは良かった。
しかし入居して間もなくTさんは毎晩のように悪夢を見るようになった。
寝ていると・・・
「うおーうわあおー」という唸り声が聞こえてきて目が覚めてしまう。
時計は深夜3時を指していて、その日は、そのまま寝てしまった。
翌朝、普通に出勤、無事仕事を終え帰宅。
前夜の事は、すっかり忘れ眠った。
「うーうーおーっ」低い唸り声が聞こえて、また目が覚めた、だが体が動かない。
『あれっ』
もがいてみたが体が反応してくれない。
壁の時計の針は夜中3時を指していた。
『また3時か』と思うと、まだ声が聞こえる。
「ううーーっうっうあーっ!」
『夢だと思っていたのに夢じゃないのか』と思った時さらに声が大きくなった。
「うわあら、あーっ、うおーらぁーっ!」低い唸り声から怒鳴り声に変わった。
呼吸が苦しくなってきて必死にもがいていると、急に動けるようになり助かった。
「もうー、なんなのよぉー」眠くて眠ってしまった。
翌朝、何事もなかったように仕事に出かけた。
帰宅して夜も普通に眠った。
しかし夜中、ふっと目が覚めた耳鳴りがする天井も、ぐるりぐるり回っていて部屋全体が揺れている。
完全に地震だと思った、だが体が動かない。
『えっ何?なに、なんなの?』
やがてギューンと体の筋肉が硬直すると
―ドン、ドン、ドン、ドン、ドン
壁を叩く大きな音がしだした体は動かない。
『あれー動かない・・・』
部屋がぐるぐると回る。
『目が回るう・・・うわぁヤバイっ』
パニックになり、その後気絶したらしく
「ハッ」気が付くと朝になっていた。
それが毎日一週間続いたり、かと思えば、
しばらく何もなかったり、なんと五年もの間その部屋に住んでいたのだという。
ひどい時などはドカン、ドカンという音がする中、
両足を捕まれジャイアントスイングされた事も・・・
朝起きた時に、ひっくり返って逆さまに寝ていたりした事もあったという。
私は話を聞いていて現象も凄まじいがTさんの眠気の凄さに驚いた。
そんな、ある日、身内がアパートに遊びに来て3歳になる男の子を連れてきた。
その男の子が急に
―ワァーと泣き出した。
「おにがいる」奥の部屋を指差して言う。
「もう帰る」と言って聞かない子供の姿を見てTさんは初めて引越しを決意した。
私はTさんに、いくつか疑問をぶつけた、というより、なぜか腹が立っていた。
「毎晩のように、そんな目に遭って、どうして引っ越さないで
五年も住んでたんですか?普通すぐに引っ越したりしますよね、
おかしいでしょ、そんなの、
それとも何かに取り憑かれていたんですか?何も考えてないですよね」
Tさんは急に怒り出した私に困惑しながら言う。
「自分でもおかしいんだけどさぁ夜中は怖いし苦しい思いをしても
朝になるとケロっと忘れてんだよねー
アパートに帰って来てもケロっと忘れて、まったく何も考えず住んでました」と言う。
「ケロっとですか・・・」
「はい、ケロっと・・・」
私は、それが納得いかなかったが事実だという。
「ケロっとねぇー・・・」
「あはは」と、二人共、笑うしかない。
腹は立ったままですけどね・・・
今から三十年前Tさんはアパートで一人暮らしをしていた。
部屋は居間と奥に畳部屋の寝室がある。
台所+居間の壁には入居した時から黒いシミ汚れがあった。
のちにアレは血痕だったと思うと語ってくれた。
仕事は肉体労働、帰宅すると開放感から寝付きは良かった。
しかし入居して間もなくTさんは毎晩のように悪夢を見るようになった。
寝ていると・・・
「うおーうわあおー」という唸り声が聞こえてきて目が覚めてしまう。
時計は深夜3時を指していて、その日は、そのまま寝てしまった。
翌朝、普通に出勤、無事仕事を終え帰宅。
前夜の事は、すっかり忘れ眠った。
「うーうーおーっ」低い唸り声が聞こえて、また目が覚めた、だが体が動かない。
『あれっ』
もがいてみたが体が反応してくれない。
壁の時計の針は夜中3時を指していた。
『また3時か』と思うと、まだ声が聞こえる。
「ううーーっうっうあーっ!」
『夢だと思っていたのに夢じゃないのか』と思った時さらに声が大きくなった。
「うわあら、あーっ、うおーらぁーっ!」低い唸り声から怒鳴り声に変わった。
呼吸が苦しくなってきて必死にもがいていると、急に動けるようになり助かった。
「もうー、なんなのよぉー」眠くて眠ってしまった。
翌朝、何事もなかったように仕事に出かけた。
帰宅して夜も普通に眠った。
しかし夜中、ふっと目が覚めた耳鳴りがする天井も、ぐるりぐるり回っていて部屋全体が揺れている。
完全に地震だと思った、だが体が動かない。
『えっ何?なに、なんなの?』
やがてギューンと体の筋肉が硬直すると
―ドン、ドン、ドン、ドン、ドン
壁を叩く大きな音がしだした体は動かない。
『あれー動かない・・・』
部屋がぐるぐると回る。
『目が回るう・・・うわぁヤバイっ』
パニックになり、その後気絶したらしく
「ハッ」気が付くと朝になっていた。
それが毎日一週間続いたり、かと思えば、
しばらく何もなかったり、なんと五年もの間その部屋に住んでいたのだという。
ひどい時などはドカン、ドカンという音がする中、
両足を捕まれジャイアントスイングされた事も・・・
朝起きた時に、ひっくり返って逆さまに寝ていたりした事もあったという。
私は話を聞いていて現象も凄まじいがTさんの眠気の凄さに驚いた。
そんな、ある日、身内がアパートに遊びに来て3歳になる男の子を連れてきた。
その男の子が急に
―ワァーと泣き出した。
「おにがいる」奥の部屋を指差して言う。
「もう帰る」と言って聞かない子供の姿を見てTさんは初めて引越しを決意した。
私はTさんに、いくつか疑問をぶつけた、というより、なぜか腹が立っていた。
「毎晩のように、そんな目に遭って、どうして引っ越さないで
五年も住んでたんですか?普通すぐに引っ越したりしますよね、
おかしいでしょ、そんなの、
それとも何かに取り憑かれていたんですか?何も考えてないですよね」
Tさんは急に怒り出した私に困惑しながら言う。
「自分でもおかしいんだけどさぁ夜中は怖いし苦しい思いをしても
朝になるとケロっと忘れてんだよねー
アパートに帰って来てもケロっと忘れて、まったく何も考えず住んでました」と言う。
「ケロっとですか・・・」
「はい、ケロっと・・・」
私は、それが納得いかなかったが事実だという。
「ケロっとねぇー・・・」
「あはは」と、二人共、笑うしかない。
腹は立ったままですけどね・・・
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