百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第32歩 続・おっかねぇもの

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 この話の流れが少し違和感のある、この話は執筆中に事故や不可解なことに加え
私自身の体調も崩れ身内にも不幸があったので
色々影響が無いように中盤から終盤にかけて一部カットいたしました。

 昭和初期、私の住む街は意外にも、まだ街の開発が途中で
繁華街・住宅街・主要道路も現在の姿には程遠く、
すこし外れると雑草が生い茂るだけの広大な原野が、
あちこち散見されるような状態であった。

開発の遅れた原因は定期的に発生した大火事も関係していたという。

 その原野に大きな樹齢百年を楽に越えるブナの木が一本そびえ立っていた。

周辺にも比較的、若い木々が生えていたが開発に伴い切り倒されてしまった。

ただし、その大木だけが何故か切り倒されずに残されていた。

 やがて60年代に入り街で馬車やオート三輪が少なくなってきた頃、道路開発が徐々に進みアスファルト舗装の道路が増えてきた。

 かつて荒涼とした原野に立つ例のブナの大木周辺にも公共施設が建設され周囲の土地も住宅地として分譲されて近隣住民の数が急激に増えた。

 そして公共施設建設に伴い隣接する主要道路は大幅に面積が確保され立派な直線道路建設計画が実行された。

あらゆる観点から大型車両も楽に走れるほどの幅と長距離のガードレールも設置され幅も充分な歩道が確保された。

 それなのに、その大規模な道路の、ど真ん中には例のブナの大木が切り倒されることもなくそびえ立ったままであった。
 
 ある日、学校でクラスメイトが何か騒いでいる、聞けばくだんの大木に車が激突して大騒ぎになっているという。

 小学生の私は、その木の事を知っていたが普段は自分の通学路ではないので大木のある道は使用しない。

 だが事故現場というものを知らなかった私は興味本位で下校時、遠回りして件の大木目指して歩いた。

現場は歩道も通行止めになっており警察と消防も居て、やじ馬が沢山いた。

その後も夜中に観光に来たドライバーや地元の暴走車などが誤って木に激突する事故は無くならなかった。

 広く長い直線道路なので特に遠方からのドライバーは、まさか道の真ん中に大木が立っているとは思わないのだろう。

 その十五年後、大人になった私は自分で車の運転をして友人K君の家に向かっていた。

K君の家に到着すると隣の家に提灯ちょうちんが下げられており、お葬式の真っ最中だった。

 K君の部屋に案内され少し落ち着くと彼は、こう切り出した。

「今そこの葬式、見たか」

「見た」と伝えると彼は思いもしない話を語りだした。

 友人K君とは高校時代の同級生で、かなり離れた所に住んでおり
彼の口から語られた話に私は、とても驚いた。

私の子供時代によく見かけていた例の道の、ど真ん中にそびえ立つ大木の話を始めたからだ。
 
 その話は、こうだった。
 
 今、隣の家のお葬式は、あの木と関係があるかもしれないという。

件の大木で事故が多発するので反射板など設置していたが効果が薄く
近隣の住民や遺族から苦情が訴えられ
道の中央にある件の木を切り倒す事になった。

 業者が入札募集されたが、なぜか応募が無く
逆に市から工事代金が高額で提示され、ある土木会社が手を上げた。

 伐採工事当日、道路は通行止めになり警察も協力のもと
クレーン車が出動し木の上部にワイヤーが掛けられ
チェーンソーで切り倒す段取りとなった。

 土木会社の作業員がチェーンソーの刃を入れる所を作るため
切欠けを作ろうと斧を振り下ろしたところ斧の柄が

―バキッと音を立てて折れて振り下ろした勢いからか
刃が作業員のすねに刺さり騒ぎになった。

会社の仲間が怪我人を病院に運び作業が続けられた。

通行止めやら、やじ馬も居て落ち着かないが何とか、その日のうちに作業しなければならない。
それ程、たくさんの人間が関わっていた。

ところがチェーンソーを木の根元にあてるとエンジンが止まる。

―ブーン・・・ブン・・ブン・・・・・

予備のチェーンソーもエンジンが、かからなかった。

 結局、お役人の進言で、その日の作業は中止となった。

怪我人発生、クレーン車、足場、警備員など無駄になり大損害になった。

元はと言えば木の立っているところに道路を作ったのは人間であり木に責任は無い。

工事を請け負った会社の社長が工事中断になった後、家に帰ると
自宅の地面が地盤沈下しており
家が大きく傾いてしまい家に住めなくなった。

 その後しばらく大木はそのままだったが
最近、私がその道を通ると大木は跡形もなく綺麗に撤去されて平凡な舗装道路が、
そこにあるだけだった。
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