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第27歩 従姉妹

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介護の仕事をされているKさんに聞いた話。

 Kさんが女子高生の頃ある日、部屋の窓が

―コン、コンと鳴った。

 二階の部屋で窓の外に人が居るはずはない。
『気のせいかな』思っていると、お兄さんが部屋に、やって来て

「今、階段のところに、おじいちゃんがいた」と言ってきた。

Kさんの、おじいさんは遠い所に住んでいます。
居るはずがないのです・・・

まもなくして親戚から連絡が入り祖父が亡くなったと知らせてきた。
 
 それから少し日が経った頃Kさんと同世代の従姉妹いとこが熱を出して寝込んだ。
 
 最初は風邪かと思っていたのだが検査の結果、重大な病気と判明して緊急入院する事になってしまった。

 Kさんは従姉妹が早く回復しますようにと部屋の机に写真を飾り祈った。


次の日の朝、早くに母に起こされた。
 
 従姉妹さんは助からなかった。
突然の事で親戚も自分も悪い夢を見ている気持ちになっていた。
 
 お通夜からKさんは帰宅して部屋に入ると
飾ってあった従姉妹の写真が額から半分、上に飛び出していた。

『えっ!なんで?挨拶に来てたのかな・・・』

 その日の夜、Kさんは夢を見た。

先日、亡くなった祖父が出てきて
「従姉妹はなあ、じいちゃんが、ちゃんと連れて行くから一円玉を多めに入れておいてくれ」

そこで目が覚めた。

 朝になりKさんは母に夢の事を話した、そこで
「一円玉とは何の事か」母に聞くと

「お前知らなかったのかい、あれはね三途の川の渡し賃なんだよ」

 おとむらいの経験が無かったKさんは死者にお金を持たせて、あの世に送る風習を、その時、初めて知った。

 言われたままに一円玉は多めに収められたのだという。
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