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第15歩 続・赤い服の女
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お堅い仕事をされているOさんに
「何か怖い話はありませんか」投げかけると
「ありますよ、けど信じてもらえるかな」と前置きして、この話を切り出した。
Oさんは若い頃よく呑《の》みに出たという。
洋楽好きのOさんはバーに行ったり、なじみのスナックなんかが好きだったそうだ。
夏が終わり少し涼しくなってきた頃
Oさんは残業を終え近所のラーメンセットで晩飯を済ませて
「今晩は、どう過ごそうか・・・」と考えながら車を走らせていた。
土曜日、夜9時頃、信号待ちで車を止めた。
何気なく歩道を見るとシャッターの降りた店の前に
赤い服を着た女が立っている。
「待ち合わせかな・・・」
そう思って見ていると女と目が合ってしまい視線を外せなくなった。
女は無表情な感じだが、その端正な顔立ちに赤い服というところにギャップを感じOさんは少し、その女に興味が沸いてきた。
信号待ちだったが偶然、後続車が居なかったので、そのままハザードを点けOさんは窓越しにシャッターの前に立つ女に話かけてみた。
「こんばんは、待ち合わせですか」
女は答えない。
気まずくなる前にOさんはさらに話かけた。
「良かったら呑みにでも行きませんか」
女は、こちらに近づいてくると勝手にドアを開け助手席に乗り込んできた。
「おっと話が早いなと思いました・・・」
とりあえず道なりに車を出し運転しながら色々と話かけてみたが返事がない。
ちらりと横目で見ると色白で美人だった。
「どこか行きたいとことかある?」
すると女は
「焼き場に行きたい」と言う。
道なりに走っている車は確かに火葬場のある山方面に向かっている。
だがOさんは
「なあに暗い事言ってんの、じゃ夜景でも見に行くか」
火葬場とは全く逆方向に車を走らせた。
今は夜間通行止めになってしまったが80年代当時は山の端に位置する岬は夜景が一望できるデートスポットになっていた。
Oさんは岬の駐車場に着いた、遠く夜景が浮かんで見え美しい景色だった。
車を止め女に軽く自己紹介でもしようかなと思った時、ふいに
―ガチャリ
ドアを開けて女は歩いていく、その先には電気の灯った観光客向けの公衆トイレがある。
「トイレかな?」
それにしても愛想の無い女だなと思い少々面白くなかったが声をかけたのは自分だしな、と女の背中を見ているとトイレには入らず
岬の崖になっている方に行き姿が見えなくなった。
Oさんは何事かと車から降り走って後を追いかけた。
崖だと思っていた所には下に続く階段があって赤い服の女が階段を降りていくのが見えた。
Oさんはすぐ追いつこうと階段を下りだしたが真っ暗で足元が覚束《おぼつか》ない、女の背中は、もう随分下まで行っていた。
―ザーー、ザザーー・・・・寄せては返す波音が聞こえてくる。
「おーい、どこに行くんだあー」
どんどん降りていく女を追いかけながら叫んでみたが波音に消されているのか
声は届いていないようだった。
転ばないように注意しながら降りて下に着いた。
岬の下は岩場になっていて海からの波が押し寄せ足場はゴツゴツした岩しか無かった。
『結構な岩場だなぁ』思いながら女を探すと大きめの岩の上にしゃがんでいる。
女のいる岩場にも
―ザブン、ザブン・・・・波しぶきが立っている。
『こんな暗いところで良くあんな所にいったなぁ』と思いながら声を掛けようと近づいて行った。
暗くてはっきり見えないはずの白い腕がクッキリと見えた、
よく見ると女はしゃがんで両手を差し出し海の水を汲んで口に運び
『ゴクゴク』飲んでいる。
それを見た途端Oさんは背中にゾクーと寒気が走った。
驚いて大声で叫んだ。
「お前っなにやってんのよおーっ!」
すると女は岩の上でスっと立ち上がり、こちらを見た。
真っ暗なはずの岩場に立つ女の白い顔がハッキリと見えた。
もの凄い形相で、こちらを睨みつけると
「キャアーハハハハハハハハーッ」響きわたるような大声で笑いながら
スーッと女の体がそのまま沖に移動して行った。
「お、お、お・・・・・うわぁーあああーー!!」叫びながらOさんは、つんのめったり足を滑らしたりしながら振り向きもせず階段を必死に駆け登り車に戻って岬を後に逃げ出した。
よほど慌てたのか手足は泥だらけだった。
何より怖かったのは逃げて階段を登っていた時で後ろに女が、ついて来ているのではないかと心も体も縮み上がったという。
「何か怖い話はありませんか」投げかけると
「ありますよ、けど信じてもらえるかな」と前置きして、この話を切り出した。
Oさんは若い頃よく呑《の》みに出たという。
洋楽好きのOさんはバーに行ったり、なじみのスナックなんかが好きだったそうだ。
夏が終わり少し涼しくなってきた頃
Oさんは残業を終え近所のラーメンセットで晩飯を済ませて
「今晩は、どう過ごそうか・・・」と考えながら車を走らせていた。
土曜日、夜9時頃、信号待ちで車を止めた。
何気なく歩道を見るとシャッターの降りた店の前に
赤い服を着た女が立っている。
「待ち合わせかな・・・」
そう思って見ていると女と目が合ってしまい視線を外せなくなった。
女は無表情な感じだが、その端正な顔立ちに赤い服というところにギャップを感じOさんは少し、その女に興味が沸いてきた。
信号待ちだったが偶然、後続車が居なかったので、そのままハザードを点けOさんは窓越しにシャッターの前に立つ女に話かけてみた。
「こんばんは、待ち合わせですか」
女は答えない。
気まずくなる前にOさんはさらに話かけた。
「良かったら呑みにでも行きませんか」
女は、こちらに近づいてくると勝手にドアを開け助手席に乗り込んできた。
「おっと話が早いなと思いました・・・」
とりあえず道なりに車を出し運転しながら色々と話かけてみたが返事がない。
ちらりと横目で見ると色白で美人だった。
「どこか行きたいとことかある?」
すると女は
「焼き場に行きたい」と言う。
道なりに走っている車は確かに火葬場のある山方面に向かっている。
だがOさんは
「なあに暗い事言ってんの、じゃ夜景でも見に行くか」
火葬場とは全く逆方向に車を走らせた。
今は夜間通行止めになってしまったが80年代当時は山の端に位置する岬は夜景が一望できるデートスポットになっていた。
Oさんは岬の駐車場に着いた、遠く夜景が浮かんで見え美しい景色だった。
車を止め女に軽く自己紹介でもしようかなと思った時、ふいに
―ガチャリ
ドアを開けて女は歩いていく、その先には電気の灯った観光客向けの公衆トイレがある。
「トイレかな?」
それにしても愛想の無い女だなと思い少々面白くなかったが声をかけたのは自分だしな、と女の背中を見ているとトイレには入らず
岬の崖になっている方に行き姿が見えなくなった。
Oさんは何事かと車から降り走って後を追いかけた。
崖だと思っていた所には下に続く階段があって赤い服の女が階段を降りていくのが見えた。
Oさんはすぐ追いつこうと階段を下りだしたが真っ暗で足元が覚束《おぼつか》ない、女の背中は、もう随分下まで行っていた。
―ザーー、ザザーー・・・・寄せては返す波音が聞こえてくる。
「おーい、どこに行くんだあー」
どんどん降りていく女を追いかけながら叫んでみたが波音に消されているのか
声は届いていないようだった。
転ばないように注意しながら降りて下に着いた。
岬の下は岩場になっていて海からの波が押し寄せ足場はゴツゴツした岩しか無かった。
『結構な岩場だなぁ』思いながら女を探すと大きめの岩の上にしゃがんでいる。
女のいる岩場にも
―ザブン、ザブン・・・・波しぶきが立っている。
『こんな暗いところで良くあんな所にいったなぁ』と思いながら声を掛けようと近づいて行った。
暗くてはっきり見えないはずの白い腕がクッキリと見えた、
よく見ると女はしゃがんで両手を差し出し海の水を汲んで口に運び
『ゴクゴク』飲んでいる。
それを見た途端Oさんは背中にゾクーと寒気が走った。
驚いて大声で叫んだ。
「お前っなにやってんのよおーっ!」
すると女は岩の上でスっと立ち上がり、こちらを見た。
真っ暗なはずの岩場に立つ女の白い顔がハッキリと見えた。
もの凄い形相で、こちらを睨みつけると
「キャアーハハハハハハハハーッ」響きわたるような大声で笑いながら
スーッと女の体がそのまま沖に移動して行った。
「お、お、お・・・・・うわぁーあああーー!!」叫びながらOさんは、つんのめったり足を滑らしたりしながら振り向きもせず階段を必死に駆け登り車に戻って岬を後に逃げ出した。
よほど慌てたのか手足は泥だらけだった。
何より怖かったのは逃げて階段を登っていた時で後ろに女が、ついて来ているのではないかと心も体も縮み上がったという。
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