百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第5歩 心霊スポットには行かない

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 季節は夏、八月の末、私は友人とナンパした女子2名の計4名で私の車に乗り込み地元で有名な心霊スポットの墓地を目指して車を走らせました。

心のどこかでナンパした女子と何かドラマが生まれはしないかと淡い期待を胸にウキウキした気持ちでした。

 道がわからない私のナビは友人のK君でした。

後部座席には、もう名前も憶えていませんがナンパした女子2名。
確か二人は職場の先輩後輩だと言っていました。
バックミラーに映っていた、ふたりの姿は今でも覚えています。
私は安全運転で現地に向かいました。
 
 目的の墓地に行く途中、山に入り林を抜けて行くのですが道は舗装道路では無く穴だらけの悪路で何度も車の底面が地面とぶつかって
―ガツン、ガツンと音を立てました。
車のマフラーなどを壊すのが嫌だった私はスピードを落とし穴に注意しながらゆっくり進みました。

 もう少しで目的地と言うところで突然!

車の屋根がバットで叩かれた様に、ものすごい音を立てました。
―ドバンッ、バンッ!バンッ!!!
「うわぁーあーっ!」
「キャーッ!」
「キャーッ、むりむりむりむりーっ!」
全員が悲鳴を上げ私は急ブレーキで停車しました。

すると慣性の法則で
―ゴロン、ゴロンと屋根から音がして何かがフロントガラスに転がり落ちていきました。

怖くなって、もう肝試しどころでは、ありません。

「もう帰るぞっ!」

私は咄嗟に狭い道でハンドルを無理やり切り返し、来た道を慌てて引き返しました。
真っ暗闇の細い山道を下っている間、みんな何も話しませんでした。
4人共、完全に怯えていました。

 下の舗装道路バイパスの街灯がある所まできた時、
私は車から降りて屋根を確認しました。

バットのようなもので勢いよく叩かれたような感触があったからです。

他の三人は無言のまま座っています。
「車の屋根、へこんでるかと思ったけどキズひとつないわ」

他の三人も車から降りて確認し始めました。
「ホントだあー」
「・・・・」

音の大きさからも車の屋根が凹んでいてもおかしくない衝撃が確かにあった。
なのに屋根は、なんともありません。

 そして急ブレーキをかけた時
―ゴロゴロとフロントガラスに転がってきた物が私には
「人間の手首に見えた」と皆に話すと
助手席にいたK君も
「それを見た」と言ってきました。

大声を出したせいか皆、気が抜けてしまい家に帰ろうという事になりました。

 時計は深夜2時を回っていました。
ゆっくりと車を走らせると反対車線側の歩道を、お揃いのワンピースを着た中学生くらいかと思われる女の子二人が歩いている。

周囲は見通しの良い畑しかない。家もない。

田舎の深夜の2時です・・・。

女の子たちと、すれ違って
「おい、こんな夜中に、あの子達どこ行くのかな?」私は助手席のKくんに聞くと
「え?女の子?何処に?」
「今、歩道歩いてじゃん、二人、お揃いの白い服着て・・・・」

私は減速して止まり、ふりかえってみたが、何処にもいない。

「あれ?」

すこしバックして辺りを探したが原野と畑があるだけで誰もいない。

誰かが言いました。
「おばけじゃないの?・・・」

 結局ナンパした女子たちとは、それっきりになりました。
 
 偶然でしょうが・・・

後日、会社の帰りに私は車のハンドルが利かなくなり反対車線に飛び出して大事故を起こして車は廃車になってしまいました。
「あっ!あああ・あーっ!!」
目に見えない何者かにギューッとハンドルを持って行かれた
あの感触が今も忘れられません。

あの日一緒だったK君も後に居眠り運転で電信柱に激突する単独事故を起こし車を廃車にしました。

K君は10日間入院しました。

二人共、幸い命に関わることは、ありませんでした。

 後日そのスポットにまつわる話を、あちこちから聞かされる事になって精神異常になる者や原因不明の高熱で命を落とした人がいると
聞かされ無防備で怖いもの知らずだった自分自身を恥じました。

 これが私の厄年に起きた出来事です。
 
そして、これで全てが終わった訳では無かったのです・・・
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