百物語 箱館「怪談」散歩(一話完結・短編集)

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)

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第1歩 マネキン

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 Kさんが4歳の頃、夕方、居間でTVを囲み家族で夕食を摂っていた。
家族とは父母、兄、姉、Kさんです。
Kさんは、ちょっとトイレに行こうと思い居間から廊下に出た。

薄暗い廊下の途中に台所があり突き当たりを曲がるとトイレに続く短い廊下がある。
そこまで来て、ふと薄暗い廊下でトイレを見るとドアの前に人型の何かが

大きさは50センチ程で右に左に、行ったり来たりしている。

足音がする。
―タッタッタッ、タッタッタッ、タッタッタッ・・・・・

『なんだろう・・・・』
それは、ちょこまかと二本足で歩き右に行ってはきびすを返し左に行っては踵を返す動作を繰り返している。

薄暗いのでよく見てみようと少し前に進んでKさんはギョッとした。

 どこかで見たことがあった『般若の面』そっくりの顔をした小人だった。
 
頭には二本の角も左右に生えていて、まだ行ったり来たりしている。
―タッタッタッ、タッタッタッ、タッタッタッ・・・・・

異形の者との遭遇に全身に震えが来た。

『鬼がいるっ!』

幼いKさんは夢中で走り急いで居間に戻ると大声で祖母、父母、兄弟に訴えた。
「トイレの前に般若の顔した小人がいるっ!鬼だよ!」

しかし家族は全員無反応でKさんを無視し、黙ってTV画面を眺めている。

「・・・・・・・・」

「ねぇえっ!、ねえってばあっ!」
 
「・・・・・・・・」

 もう一度、訴えたが家族は皆まるで『マネキン人形』のように動かない、こっちを見ることもせず全員無表情のまま動かない。

 怖くなったKさんは廊下に戻り恐る恐るトイレを見るとドアの前に、まだ居る。

―タッタッタッ、タッタッタッ、タッタッタッ・・・
行ったり来たり。

暗い廊下を少しでも照らそうと台所の電灯を点けた。
―カチリ
紐を引っ張ると同時にパッと小人は消えてしまった。

居間に戻って家族に聞いた。
「あれは何?」
マネキン人形の様に固まった家族は誰も何も答えず無言のままだ。

「・・・・・・・・」

 気味が悪かった。

 仕方がないのでKさんは外に出て小用を足し、早々に、ふて寝した。

それきり、小人が家に出現することは無かった。
あの時以来Kさんは自分の家族全員が嫌いになってしまい未だに仲が悪いと、つまらなそうに言う。

「小人は、どんな服を着ていましたか」おぶちが聞くと

「裸だった」という返答であった。
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