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親を選んで生まれてくる

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わたしの知らないところで、評議委員会の方々が私を審査していたそうです・・・

「彼はマイナス20相当が妥当です」

「しかしですな、いくつか粋な良いこともしており、まるっきりという事もない」

「私も同じ意見です、ただ、もう少し行動力が足りない」

「いや的外れとはいえ、彼には同情の余地もありますよ」

「んーーー・・・・」

わたしの案内係の方がやって来ました。

案内係の方は人間で言えば中年なのか、おじいさんなのか
白髪の見た目にしては背筋が伸びていて若い匂いがしました。

優しい感じの瞳で少しうすら笑いを浮かべていて
こちらが下手な冗談を言っても受け流してくれそうな・・・学校の先生みたいな感じがしました。

そして「今度生まれ変わるとしたら、どの人生が良いか」と

10通りの人生シナリオを見せてくださいました。

「うわー、どれも結局、大変そうですね・・・・」

「ん?そうか、今のお前にはもったいないくらいだと、私は思うがな」

「あのー、わたしも貴方のような案内係としてココで過ごすことは出来ないでしょうか」

「それは、まだ無理だと思うぞマイナス20の前世では、ありえない」

「はぁ・・・」

「こっちの・・・コレ、このシナリオで、この親じゃ・・・ちょっと見てみろ」

「はい・・・あの人たちですか?」

「そうだ、あれはキツいぞ、もしクリアできれば、お前0地点には戻れそうだが、イヤ・・ちょっと無理だな、あれは誰にも耐えられん・・・」

「たしかに・・・シナリオも山あり谷ありで・・・その後も・・・」

「んー、いっそ、このままココにいたら良いんじゃないか?」

ココは、暗くて、寒くて、真っ暗闇、話し相手もいない・・・地獄の底です。

「嫌です、お願いです、もう一度チャンスをください、お願いします!」

「んー君は前回も同じことを言っていたが、結局・・・死んでしまったじゃないか・・・」

「いーえ、今度こそ、今度は大丈夫ですから、任せてください」

「じゃ、このマイナス20を0にする、このシナリオと、この親で挑戦するというのだな」

「ハイ、絶対に期待に応えます」

「しかし、このバカ親にバカ社長、悪魔のような友人、君を見放す恋人や嫁、病気、火事、事故、災害、裏切り、借金地獄に長い長い孤独・・・・絶対無理だな・・・」

「・・・・人々を愛し、愛されるよう、頑張って期待に応えます!」

「誰も期待などしとらん、お前の魂じゃないか、ま、死なないよう、せいぜいやれ」

「はい、ありがとうございます」


こうして

私は、この世に生まれてきました。

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