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番外編
七福神社
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七福神社にたどり着いた。
竹藪の中に静寂な空間が広がっていて、小さな木々がいくつか並んでいる。
日差しを遮っていて、余計に寒さを感じたのか、吐息するだけで小さな霧が広がった。
「コノハ、やっぱり寒いね」
「でも、アキラの手はぬくもりがあって温かいから!」
そう、僕はコノハと手をつないでいる。
家族連れも友達連れまでもいて、かなりの混雑だ。はぐれないように、しっかりと握っている。
「アキラっ! すごい混んでるね──!」
「そうだね。例年より混んでるなぁ」
鳥居の端の前に一礼を済ませ、くぐろうと思ったとたん、踏みとどまった。
参道の真ん中は、神様の歩く道だと聞いたことがある。
向こうの社まで繋がっている参道を見つめて、コノハに尋ねた。
「参道の真ん中は、神様の歩く参道だよね? 僕は参道の端のところを歩くけど、コノハは神さまだから参道の真ん中を歩くのかな?」
「そうだけど……やっぱり、あたしはアキラと一緒にいたいから真ん中を歩こう!」
そう言いながら、僕の手を握って引っ張ろうとするコノハ。
とても着物が似合っていて、見惚れてしまう。
「じゃあ、僕は神さまの付き添いとして歩くよ」
「うんっ! 大丈夫! あたしが許可するのだ――!」
ドヤッとするコノハに、僕はやれやれと半ば呆れ返った。
手水舎に着く。
年季の入った屋根の下に水盤がある。造形の龍の口から、チョロチョロと水が流れていた。
僕は杓子ですくって、手を清めた。
コノハを見やると、杓子で水盤をバシャバシャと遊んでいた。
水飛沫が僕の顔に浴びた。めちゃ冷たかった。
「こらーっ!」
「えへへ!」
本当にコノハはイタズラ好きだわ……。
うっ、周りから視線を感じる。
周りを見渡すと、白い目でにらまれた。
「元気な兄妹だねぇ!」
と、見知らぬお婆さんまでも言われた。
いったん気を取り直して、ささっとこの場から離れる。
僕はコノハを叱った。
「コノハ……いたずらはダメだよ!」
「なんで? アキラの顔を清めただけだよ?」
「え?」
「え?」
お互い見つめたとたん、ぶっと笑みがこぼれた。
本当に兄妹みたいだ。
「ははっ、全く……コノハは意地悪だなぁ」
「あはは、初笑いだね!」
コノハは、腹を抑えてクスクスと笑う。
そんな僕たちは、手をつないで社へ向かっていった。
竹藪の中に静寂な空間が広がっていて、小さな木々がいくつか並んでいる。
日差しを遮っていて、余計に寒さを感じたのか、吐息するだけで小さな霧が広がった。
「コノハ、やっぱり寒いね」
「でも、アキラの手はぬくもりがあって温かいから!」
そう、僕はコノハと手をつないでいる。
家族連れも友達連れまでもいて、かなりの混雑だ。はぐれないように、しっかりと握っている。
「アキラっ! すごい混んでるね──!」
「そうだね。例年より混んでるなぁ」
鳥居の端の前に一礼を済ませ、くぐろうと思ったとたん、踏みとどまった。
参道の真ん中は、神様の歩く道だと聞いたことがある。
向こうの社まで繋がっている参道を見つめて、コノハに尋ねた。
「参道の真ん中は、神様の歩く参道だよね? 僕は参道の端のところを歩くけど、コノハは神さまだから参道の真ん中を歩くのかな?」
「そうだけど……やっぱり、あたしはアキラと一緒にいたいから真ん中を歩こう!」
そう言いながら、僕の手を握って引っ張ろうとするコノハ。
とても着物が似合っていて、見惚れてしまう。
「じゃあ、僕は神さまの付き添いとして歩くよ」
「うんっ! 大丈夫! あたしが許可するのだ――!」
ドヤッとするコノハに、僕はやれやれと半ば呆れ返った。
手水舎に着く。
年季の入った屋根の下に水盤がある。造形の龍の口から、チョロチョロと水が流れていた。
僕は杓子ですくって、手を清めた。
コノハを見やると、杓子で水盤をバシャバシャと遊んでいた。
水飛沫が僕の顔に浴びた。めちゃ冷たかった。
「こらーっ!」
「えへへ!」
本当にコノハはイタズラ好きだわ……。
うっ、周りから視線を感じる。
周りを見渡すと、白い目でにらまれた。
「元気な兄妹だねぇ!」
と、見知らぬお婆さんまでも言われた。
いったん気を取り直して、ささっとこの場から離れる。
僕はコノハを叱った。
「コノハ……いたずらはダメだよ!」
「なんで? アキラの顔を清めただけだよ?」
「え?」
「え?」
お互い見つめたとたん、ぶっと笑みがこぼれた。
本当に兄妹みたいだ。
「ははっ、全く……コノハは意地悪だなぁ」
「あはは、初笑いだね!」
コノハは、腹を抑えてクスクスと笑う。
そんな僕たちは、手をつないで社へ向かっていった。
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