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6.神さまとおはなし
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神さまと色々とお話をした。
僕は神さまだと分かったとたん、背筋を伸ばしてしゃんと正座をしている。
神だよ? 神の前で失礼なことをすると、天罰が下るかもしれないんだぞ。
先まで、お稲荷様と狛犬様を呼び込む神の力を、見せつけられた今は、神の存在を信じることになった。
その神さまは見た目は少女なのに、平安時代から生まれたそうだ。って平安時代だと! それって千歳以上じゃないですか……。
神さまはなぜか、うつむいていた。さっきまでは明るい感じで挨拶してきたのに、どんよりとうつむいているのが気になった。
「あたしの名はないんだ。神の法、まだ合格していないんだ……」
「名前がないんですか……」
神の法? 神の法なんて初めて聞く言葉だけど、その前に神さまがなぜ、ここに来たのか知りたい。神さまなのだから、よっぽど大きな理由があるはずだ。
畏まるように言葉を選んで、尋ねた。
「神さま。お言葉ですが、どうして、ここにいらっしゃるのでしょうか?」
そう口にすると、神さまはぷく――っと頬に膨らませて、なぜか格闘技のように構えのポーズをした。
「あたしが神だと分かると、畏まってくるのね。あたし、可愛いのに、それを見てくれないの、残念!」
シャドーボクシングのように、シュッシュッとしてくる神さま。
本当に、神様なのか疑うわ! まるっきり威厳がなく、子どもみたいだ。
「逃げてきたんだよ!」
…………はっ? 逃げた? そんな理由で、僕の部屋に住まいこんだのか。
「逃げたというのは、どういう意味でしょうか?」
そう問いかけると、神さまはなぜか話を逸らす。
「ここにいるときだけ、名前決めてくれない? お願いっ!」
そ、逸らされた。うーん。名前か……。
見た目はお茶目な異国情緒の衣装を着ていて、人形のように可愛い少女なんだよね。しかも、神様だし……。
そういえば、木花之佐久夜毘売っていう日本神話に登場する女神様がいることを脳裏に浮かぶ。一目惚れするほど美しく、桜の如く世の中の栄えをもたらす神様だ。
これなら、神さまにはピッタリではないだろうか。
「じゃあ、コノハはどうですか? 木という漢字と花という漢字から木花だけどコノハにしています」
「あっ! いいねっ! あたし、気に入ったっ! あたしの名はコノハ! アキラっ! 宜しくねっ!」
嬉しそうに飛び跳ね、僕の周りをぐるぐると飛行機のようなポーズをしながら走り回っていた。
神さまだけど、子どもみたいで微笑ましくなる。
って、今は深夜だぞ!
「今日は遅いですので、静かにしていただけますでしょうか? 近所迷惑になりますので」
「あっ、そうだったね。静かにするよっ」
律義に椅子に座り込み、じっと僕を見つめてくる。
うう、眩しい。やっぱり、真剣な眼差しをしているコノハを見てると、神々しいオーラがすごく表れているのがわかるぐらいだ。
──ピンポーン。
インターホンが鳴っていることに気付く。
こんな深夜にインターホン?
……ま、まさか。詐欺ではないよね?
恐る恐ると、玄関ドアのドアスコープから眺めると、天女のような女性、巻物を括り付けた杖を手に持っている老人、分厚い本らしきものを持っている怖そうな男性が並んでいた。
って誰だ? 新たな詐欺?
コノハのところへ寄り、玄関ドアの向こうにいる3人について聞いてみることにした。
「玄関ドアの向こうに、3人がいるようですが、コノハ様、どなたか分かりますでしょうか?」
「げぇっ! バレたのっ!」
手をあげて驚くようなポーズで見せるコノハに、僕は頭を傾げた。
ま、まさか……。
「アキラさん、いますよね? ドアを開けてくださいませんか?」
ドアの向こう先から、透き通るようなうっとりする声が流れてきた。
なんて、美しい声なんだ。というより、何で僕の名前を知っている!?
そんな声に惹かれたのか、ふらっとドアを開けようと立ち上がると、コノハに止められる。
僕の足をガシッと、しがみつくように。
「やめて! 開けないでっ!」
涙目になって、うるうると僕を見つめて泣きわめくコノハ。
だが──、
「神さま、いますね? 隠れても無駄ですよ。分かっていますから」
玄関ドアの向こう先から、怒りに満ちた声が流れてきた。美しい声と感じたせいなのか、固唾を呑んでしまう。
このままでは、まずいと思った僕はしがみつくコノハを抱えながら、ドアを開けることにした。
コノハはうーうー! と、うめき声をあげているが無視しよう。
「遅くなってすみません。何か御用でしょうか?」
玄関ドアを開けて、そう口にすると、目の前の3人は安堵したかような表情を顔に浮かべている。
「お邪魔します。私たちは神の国から来ました。天照大神といいます」
「ワシは寿老人じゃ」
「俺は思兼神だよ」
詐欺どころが、ほ、本物が来たよ……。
僕は神さまだと分かったとたん、背筋を伸ばしてしゃんと正座をしている。
神だよ? 神の前で失礼なことをすると、天罰が下るかもしれないんだぞ。
先まで、お稲荷様と狛犬様を呼び込む神の力を、見せつけられた今は、神の存在を信じることになった。
その神さまは見た目は少女なのに、平安時代から生まれたそうだ。って平安時代だと! それって千歳以上じゃないですか……。
神さまはなぜか、うつむいていた。さっきまでは明るい感じで挨拶してきたのに、どんよりとうつむいているのが気になった。
「あたしの名はないんだ。神の法、まだ合格していないんだ……」
「名前がないんですか……」
神の法? 神の法なんて初めて聞く言葉だけど、その前に神さまがなぜ、ここに来たのか知りたい。神さまなのだから、よっぽど大きな理由があるはずだ。
畏まるように言葉を選んで、尋ねた。
「神さま。お言葉ですが、どうして、ここにいらっしゃるのでしょうか?」
そう口にすると、神さまはぷく――っと頬に膨らませて、なぜか格闘技のように構えのポーズをした。
「あたしが神だと分かると、畏まってくるのね。あたし、可愛いのに、それを見てくれないの、残念!」
シャドーボクシングのように、シュッシュッとしてくる神さま。
本当に、神様なのか疑うわ! まるっきり威厳がなく、子どもみたいだ。
「逃げてきたんだよ!」
…………はっ? 逃げた? そんな理由で、僕の部屋に住まいこんだのか。
「逃げたというのは、どういう意味でしょうか?」
そう問いかけると、神さまはなぜか話を逸らす。
「ここにいるときだけ、名前決めてくれない? お願いっ!」
そ、逸らされた。うーん。名前か……。
見た目はお茶目な異国情緒の衣装を着ていて、人形のように可愛い少女なんだよね。しかも、神様だし……。
そういえば、木花之佐久夜毘売っていう日本神話に登場する女神様がいることを脳裏に浮かぶ。一目惚れするほど美しく、桜の如く世の中の栄えをもたらす神様だ。
これなら、神さまにはピッタリではないだろうか。
「じゃあ、コノハはどうですか? 木という漢字と花という漢字から木花だけどコノハにしています」
「あっ! いいねっ! あたし、気に入ったっ! あたしの名はコノハ! アキラっ! 宜しくねっ!」
嬉しそうに飛び跳ね、僕の周りをぐるぐると飛行機のようなポーズをしながら走り回っていた。
神さまだけど、子どもみたいで微笑ましくなる。
って、今は深夜だぞ!
「今日は遅いですので、静かにしていただけますでしょうか? 近所迷惑になりますので」
「あっ、そうだったね。静かにするよっ」
律義に椅子に座り込み、じっと僕を見つめてくる。
うう、眩しい。やっぱり、真剣な眼差しをしているコノハを見てると、神々しいオーラがすごく表れているのがわかるぐらいだ。
──ピンポーン。
インターホンが鳴っていることに気付く。
こんな深夜にインターホン?
……ま、まさか。詐欺ではないよね?
恐る恐ると、玄関ドアのドアスコープから眺めると、天女のような女性、巻物を括り付けた杖を手に持っている老人、分厚い本らしきものを持っている怖そうな男性が並んでいた。
って誰だ? 新たな詐欺?
コノハのところへ寄り、玄関ドアの向こうにいる3人について聞いてみることにした。
「玄関ドアの向こうに、3人がいるようですが、コノハ様、どなたか分かりますでしょうか?」
「げぇっ! バレたのっ!」
手をあげて驚くようなポーズで見せるコノハに、僕は頭を傾げた。
ま、まさか……。
「アキラさん、いますよね? ドアを開けてくださいませんか?」
ドアの向こう先から、透き通るようなうっとりする声が流れてきた。
なんて、美しい声なんだ。というより、何で僕の名前を知っている!?
そんな声に惹かれたのか、ふらっとドアを開けようと立ち上がると、コノハに止められる。
僕の足をガシッと、しがみつくように。
「やめて! 開けないでっ!」
涙目になって、うるうると僕を見つめて泣きわめくコノハ。
だが──、
「神さま、いますね? 隠れても無駄ですよ。分かっていますから」
玄関ドアの向こう先から、怒りに満ちた声が流れてきた。美しい声と感じたせいなのか、固唾を呑んでしまう。
このままでは、まずいと思った僕はしがみつくコノハを抱えながら、ドアを開けることにした。
コノハはうーうー! と、うめき声をあげているが無視しよう。
「遅くなってすみません。何か御用でしょうか?」
玄関ドアを開けて、そう口にすると、目の前の3人は安堵したかような表情を顔に浮かべている。
「お邪魔します。私たちは神の国から来ました。天照大神といいます」
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