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12-4.妖精卿と最悪の再会編4【R-15:自分で誘惑】

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 ヴァルネラは俺の望みを全て叶えると誓う、大概のことは実現できると言って。
 けれどその言葉には惹かれない、俺が求めていたものはその前にあったから。

「俺、そういうものがほしいんじゃない。ヴァルネラだって、分かるでしょ」
「じゃあ、他にどうすればいいんですか!? 私が渡せるものなんて、「そう思ってくれる、気持ちが嬉しいんだけどな。俺は」」

 勘違いで我を失ったヴァルネラが悲壮な声を上げるが、俺は口づけで訂正する。
 拒否しているわけではないと伝える為に正面から抱きしめると、彼は息を吞んだ。

「俺はさっきみたいな言葉がたくさん欲しい。……どこにも行かないで、とか」
「あぁいうの、情けないって思わないんですか。私、絶対格好悪いって思われたと」

 俺に良い所を見せたいヴァルネラは、自身を取り繕おうと必死だったらしい。
 確かに出会った頃の印象は最悪だったし、治してほしい部分もあったけれど。

「そういうところ、嫌いじゃないって言ってるのに。……ね、本当に俺が好き?」
「好きです、絶対に貴方を手放したくない。こんなの初めてで、うわっ!?」

 彼の気持ちを確かめたくて尋ねると、熱に浮かされたように想いを繰り返される。
 だから俺はその途中で彼を寝台に押し倒し、その上に跨って愛おしい唇を奪った。

「可愛い、ヴァルネラ。慌てる姿、俺もっと見たいなぁ」
「あ、あんまり揶揄わないでください! ……でも貴方からの口づけは嬉しいです」

 体なんか何回も重ねてるのに、ヴァルネラは頬を染めて初心に照れている。
 俺が唇を啄んだり甘噛みしたりすると、目元を染めて小さくはにかんだ。

「好きな人に触れられるのが、こんなに幸せだなんて知らなかった。私じゃ、そう思ってもらえないかもしれないですけど」
(そっか。そういえば俺の気持ち、まだ伝えてなかったな)

 俺よりも存在自体が格上なのに、心の形は大差ないと今更ながらに思い知る。
 だからできる限りの想いを込めて、俺からも率直な告白をした。

「俺も好きだよ、ヴァルネラ。我儘な奴だけど、恋人にしてくれる?」
「……もちろん! それに好きな人だと、我儘に付き合うのも楽しいんです!」

 ヴァルネラの表情から仄暗さが払拭され、代わりに無邪気な笑顔で満たされる。
 部屋は柔らかな朝焼けに包まれ、長かった夜がようやく明けた。



 問題が解消したことを伝えに、俺達はスペルヴィアの屋敷を訪れている。
 けれどヴァルネラはディーロに拉致され、結果一人で説明をする羽目になった。

「では仲は修復されたと考えていいんだね? いや、それ以上になったのか」
「うん。でも買い物中にヴァルネラと鉢合わせたの、スペルヴィアの差し金でしょ」

 そして話に区切りがついて紅茶を啜った後、俺は気になっていたことを口にする。
 よく考えたら広い街中で、しかも短期間で発見されるなんて偶然が過ぎていた。

「ばれたかい? あれだけ憔悴した姿を見せられては、同情してしまってね」
「鎌をかけた部分もあるけどね。いや、怒ってるわけじゃないけど」

 彼がヴァルネラに肩入れしている素振りはあったし、今回は良い方向で解決した。
 だが彼は深刻に捉えているようで、申し訳なさそうに頭を項垂れている。

「しかし、君を危ない目に遭わせたことは謝罪する。翅に執着していなかったから、大丈夫だと考えていたんだ」

 彼の推察は当たっていたが、ヴァルネラが誘拐するのは予想外だったのだろう。
 実際にディーロから事情を聞いて、屋敷に乗り込む寸前だったらしい。

「見た目ほど酷くはないから、そんな謝らなくていいよ。確かにヴァルネラの魔力と噛み痕だらけだけどさ」

 告白の後は魔力供給ではなく、情を交わす為の性行為を延々と受け入れていた。
 甘やかに散々愛されて足腰が立たなくなったが、後悔は全くしていない。

 ……起きた時の蕩けた表情は悪くなかったし、本当に俺のことが好きなんだって分かったから。

「それに色々、面倒見てくれてありがとう。自暴自棄になってたから、助かったよ」
「こちらこそ、家門の問題が片付いたからお相子だよ。……? なんだい、この音」

 肩の荷が降りた俺達は穏やかになるが、今度は魔道具の駆動音が聞こえてくる。
 そして音が鳴り止むと、ばたばたとした足音がこの部屋に近づいて来た。

「グレイシス、体は大丈夫!?」
「俺は大丈夫。けどそんなに魔道具抱えて、なにしてたのディーロ」

 ノックもそこそこに扉が開かれ、息を切らしたディーロが俺に飛びついてきた。
 けれど彼が持つ魔道具には使用された痕跡があり、不穏な気配を漂わせている。

「妖精卿を問い詰めてた! あんなになるまで、グレイシスになにしたのって!」
「暴力的なことはされてな「でもめちゃくちゃえっちな目には遭わされてたじゃん! ちょっと察してはいたけどさぁ!」」

 どうやらヴァルネラを連れ去った後、ディーロは尋問を行っていたらしい。
 けれどまだ気が済まないのか、魔道具を振り回して怒っている。

「しかし、ちゃんと叩きのめしたようだね。よく妖精卿相手に立ち向かったよ」
「グレイシスを泣かせることしたら許さないって、絶対に言いたかったし。まぁ本当は俺も言える立場にないんだけど」

 未だに施設でのことを引きずるディーロは、途中で語彙が小さくなっていった。
 けれど彼にも悪夢から解放されて欲しくて、俺からも抱き返して感謝を告げる。

「それも、もう気にしないで。俺も落ち着くところに落ち着いたし」
「ありがと、グレイシス。……幸せになってね」

 俺の言葉を聞いても膨れ面だったが、最終的にはディーロも祝福してくれた。
 これで彼はようやく、俺のことを気にせず歩いて行けるようになる。

「うん。今までありがとう、ディーロ」

 ずっと手を引いてくれた存在だからこそ、これからは自由に生きて欲しい。
 俺も心配させないくらい、ちゃんと前を向くようにするから。





 けれど報告を終えてから数日経っても、ヴァルネラはあまり触れてくれない。
 気持ちは伝えあったのに、相変わらず口づけや接触程度で終わってしまう。

「ねぇ、もっと酷くしてよヴァルネラ! 俺の体、もう大丈夫だから!」
「分かってください、大切にしたいんです! もどかしいのは分かりますが!」

 最初は混ざってしまった魔力を抜く為に、軽い触れ合いだけを楽しんでいた。
 けれど黒い翅が消えた後もヴァルネラは慎重で、必要以上に臆病になっている。

「俺がいいって言ってるのに! もういい、ヴァルネラは手を出さないで!」
「えっ!? じゃ、じゃあどうすれば」

 放置された体は既に熱を持て余し、ヴァルネラを求めてずっと疼いていた。
 だから悪いのはそっちだと煽って、俺は自分の服をはだけさせていく。

「俺がしてるの、指を咥えて見てて。……んっ、んぅ、あんっ!」

 半分ほど服を脱いだ俺は自分で後孔を広げて、指が沈んでいく様を見せつける。
 ヴァルネラは歯を食い縛って耐えているが、どこまで意地を張れるだろうか。
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